表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/38

第三十話 双子の姉妹



 ワイルドボア。

 この第2階層にて出てくる巨大猪のことである。

 正確はきわめて獰猛。敵を見つけると突進などといった、高い攻撃力を 持った攻撃を仕掛けてくる。

 ただし、技は直進的なので軌道から体をそらせばダメージを与えられる ことはない。


 確か掲示板にそう載っていたはずだ。

 彼女たちが相手をしているのは間違いなく、ワイルドボア。

 そして彼女たちは二人だけで戦っている。

 ワイルドボアに見つからない、ぎりぎりの距離で見てみるとワイルドボ アのHPがまだ、六割近くあるのに対して彼女たちのHPはすでにオレン ジゾーン、三割だ。

 このままでは分が悪い。乱入するべきか、否か。


「トウマさん。どうします?」

 クイナが聞いてくる。僕の良心的にこれをほうっておくわけには行かな い。

 僕は彼女たちに指示を出す。


「僕が、彼女たちに許可を取ってくる。もし取れたら、その場で合図する から、すぐさま陣形を組んで突撃してね」

 みんなはこくりと首を縦に振り、了承する。

 僕は勢いを出して、彼女たちの近くに行き、許可を求める。


「おーい!大丈夫か?助太刀しようか?」

 ………………。

 返事なし。

 聞こえてないのか?

 だけれども無理に聞くわけにも行かないし、いざというときは隠れて乱 入させてもらおう。

 彼女たちに待機するように合図を送りその場で待機させる。

 僕は彼女たちとワイルドボアの動きを見て、いつでも出撃可能な状態に する。

 僕のスキルの構成は攻撃よりだが、防御に転換できなくもない。『無限 回復』なんかはその典型だ。

 ダメージの減るスピードが一定量以下なら、ダメージの減るスピードは 遅くなる。それゆえに『防御系』のスキルと誤認させることができる。

 一応鎌にもこのスキルの取得方法を規制されているので、こっちとして はうれしい限りだ。


 彼女たちはいまだ、ワイルドボアとやり合っている。彼女たちはあと一 撃でも攻撃をまともに食らえば一発で終わる。

 頑張ってほしいと心の中で応援している気持ちと、こいつらがいなくな ればこいつの経験値をもらえるよな〜というダークな思考をしている自分 もいる。

 だが、そんな葛藤をしている間に彼女たちは窮地に陥った。

 彼女たちのHPがレッドゾーンにぎりぎり入ろうとしているところで、 ワイルドボアは止めをさそうと、突進の体勢に入る。

 盾士のHPもぎりぎりでおそらく次の一撃も耐えられない。

 すまないが、こっちとしては観戦の立場ではいられない。もし打ち所が 悪くてあの巨大な牙が刺されば『アンダーシャツ』のアビリティは発動し ない。転移も発動せずにゲームオーバーだ。

 そんなものは夢見が悪くなる。


(『ステップ』!)


 僕はいつものスキルを使い、彼女たちの戦闘の間に入り込む。

 同時に突進をスタートさせるワイルドボア。僕はわずかに、ボアの突進 に間に合い、盾士の子との間に入り込む。受身を取ってやつの攻撃を受け る。

 同時にHPバーが一気に二割強持っていかれた。襲いくる衝撃に吹っ飛 ばされそうになりながらも、歯を食いしばり何とかその場に踏みとどまる 。

「みんなあぁぁぁぁ!いっけえぇぇぇ!」


 僕が合図すると彼女たちはすでにぎりぎりまで近くに寄っていたのか、 近くの林から飛び出し、即座に攻撃をシフトする。

 タマが、見たことのない双剣スキルで二回敵の即頭部を突く。

 次にクイナが僕が一度だけ使ったことのある『三日月切り』を使いさら にHPを持っていく。ここまで、三割ほど。

 最後に彼方が、『ファイアボール』の上位版の『フレイムショット』を 打ち出す。

 そこまで撃って残りは一割にも満たない数ドットだった。ワイルドボア は、さっきの攻撃で吹っ飛び息も絶え絶え。もう攻撃してくることはない だろうと、ボアを最初に相手していた彼女たちに止めを刺させた。

 そして、彼女たちの前に僕は立ち、


「すいませんでしたー!」

 謝った。

 一応、不可抗力ということではないが、マナー違反をやってしまったの だ。謝るのは当然のことだろう。

「あ、い、いえ別に、こちらこそ危ないところを助けていただいてありが とうございます」

「ありがとうございます」


 先に謝る銃使いの女の子に、追従するように盾士の女の子がお礼を言う 。

 ああ、双子か。とってもよく似た双子………え?

 もしかして、このタイミングでか?

 まあ、とりあえずごまかそう。


「そ、そういえばさっきのでHPがほとんど残ってないだろう?僕の回復 薬をあげるから使って。マナー違反のお詫びだ」

「あ、すいません」

「いいって、いいって」


 双子か……それにしても似てるな。双子だから当然か。見た目からする と一卵性だな。

 性格はあまり似てなさそうだけれど…………。


「トウマ!ちょっと!カムオン!」

「分かったよ。分かってるよだから離して!」

 いきなりタマに連れられて彼女たちから距離をとった。

「トウマ、彼女たちかしら?」

「いや、考えにくい。単なる偶然だろうよ。このゲームには3万人近くい るんだぜ?なら、双子の二組や三組いたっておかしくはない」

「やっぱり………偶然よね!」

「そうだよ偶然だよ!」


 僕は脳に発信される第六感を強制遮断した。無理やり。

 いやな予感レーダーは今も反応しているがそれでもかまわずに話す。


「それにしても、二人だけでよくあんなのに挑もうと思ったね。………レ ベルは?」

「あたしは19で、こっちは18です」


 と元気よさそうに片方が答える。

「この辺のモンスターは適正レベルが22ほどだから少し足りないな……」

「どの口が言ってんのよ」

 僕はゲームにいち早く適応できたからあんな無茶な真似ができたんだ。 しかも今はモンスターが強いからトレインはできない。

「じゃあ、僕たちは行くから……」


 そう言って、僕たちは退散しようとすると………。


「待って!」

 僕はびくぅ!と肩を震わせ、その場に押しとどまった。

 後ろから発せられる気迫はとてつもなく大きい。先ほどのワイルドボア を凌駕してると一瞬思ったぐらいに。


「あたしたちを一緒に連れて行ってくれない!?」

 僕は流れるような動きで回れ右をする。

 彼女の目を見て、右足を引き、腰を下ろす。その動作にも寸分の狂いは ない。

 そして、右膝をつき、ついで左膝もつく。

 そのまま前傾姿勢になり、額を地面にこすりつけた。

 ――そう、土下座である。


「勘弁してください!このパーティはいろんな意味でいっぱいいっぱいで す!」

 僕は残り二人、最低一人は男を入れるための空席にしていたのだ。

 そこに彼女たちが入れば、勢力図は5対1、宿屋に行こうものなら速攻で PK騒動が起こる。

 この世界でのパーティは6人が限度。この空席を譲るわけにはどうして も行かないのだ。


「あたしたちはパーティには誘われてるんだけれども、いつも男の人ばっ かりで……でも、ここなら女の子がいるから入れてもらってもいいかなー と思って……」

「ええと。なら、女性しかないパーティを探すなり何なりすればいいじゃ ないか」

「掲示板で探してもその情報が当てになるとは限らないじゃない」

「どうしてもこのパーティじゃなきゃだめ?」

「だめ」

「そっちの子も?」

「はい…」


 ………断りにくい。

「なら、僕はこのパーティを抜ける!」

「「「ええっ!?」」」

「こんな女の子ばっかりのパーティにいられるか!僕は知り合いのところ に戻る!」

「じゃあ、地図とコンパスをよこしなさい」


 タマ、この野郎。いや、野郎じゃないけれど。

「いいよ!予備はあるんだ!ざまぁ!」

「じゃあ、予備も頂戴」

「なんでそんなことをしなくちゃならない」

「いや、コンパスを一つ紛失したら予備が必要でしょう?」


 くそ!僕の持ってるコンパスは二つのみ。一つはタマが持っている。こ の状況でこれをもっていかれると……。

「いや、そもそも、一つあるなら十分じゃないかははは」

「おおっと手が滑ったあぁぁぁぁぁぁぁ!」

「コンパスウゥゥゥゥゥゥゥ!」


 タマが思いっきり振りかぶってコンパスを投げた。森の中に落ちたコン パスは見つけるのは不可能だ。

「これで、私たちについてくるか、森の中で永遠に迷い続けるか、二つに 一つよ!」

 僕は思案する。

 このまま引き返しても、コンパスがない以上道に迷う可能性は大だ。モ ンスターに襲われれば、間違いなく転移させられる事態になるだろうし、 つまり、こいつらについていかないとリスクが大きい。

 うぬぬぬぬ。

 まことに不本意だが、彼女たちもほうっておけないしなぁ。しょうがな い。


「分かったよ。よろしく」

 僕は折れた。

「ありがとう。あたしは焔」

「ボ、ボクは(そそぎ)。よろしく」

「ん?ボク?」

「ああ、雪は一人称が『ボク』なのよ。あまりにも気が弱いからせめて、 呼び方だけでも、って」

「へえ、そうなんだ」


 生まれてはじめてみた。ボクっ娘。

 実際にいるもんなんだ。ふうん。……可愛い。


「僕はトウマ。一応このパーティのリーダーをしているよ」

「私は蒼碧。あだ名はタマ。よろしく」

「私はクイナです。よろしくお願いします。焔さん。雪さん」

「……彼方。魔法使いです。よろしく」

「みんなよろしく」

「よろしくお願いします…」

「あ、そうだ。これ、さっきドロップしたんだけど使ってよ」

 そうして渡されたのは、ワイルドボアの素材ドロップ『巨大猪の牙』だ 。正直言ってどうしろと……

 と思ったところで、端っこのほうでとある文字を見つけて気が変わった 。ありがたく使わせてもらう。


 こうして、彼女たち二人は僕らのメンバーに入りました。

 僕、このパーティからぬけたほうがいいと思うんだ。僕はまだ死にたく ない。

 僕らは新たなメンバーを加えて、次の街に向かっている。

 僕のパーティに盾士が入ったことで、僕はサブタンクとなり、やっとア タッカーとしての本職をまっとうできる。

 一応これでも『拳闘士』です。

 みんな忘れてないよね?


 焔たちが入ったことで僕らの戦闘はよりスムーズに進むようになった。 スマートは『賢そう』って意味だったような……。

 そんなことより、焔の銃の援護射撃はすごい。

 誤差がほとんどなく、誤射も同時にない。

 使っている銃はオートマチックかな?銃に詳しくないのでまったくよく 分からない。

 だが、あの形はオートマチックだと思う。


 大して雪さんの使っている盾はヘルアントのドロップ素材を使って作ら れたものらしく、防御が結構高いのだそうだ。

 もちろん雑魚狩りは行われたようだ。

 それにしてもこの双子は似ている。入れ替わられると本当に気づかない のではないかというぐらい。

 目つきはどちらもややつり目だ。髪の色も金髪で瞳の色は蒼。完全に外 国人の見た目だ。


「それにしても二人とも似てるな。……やっぱり双子?」

「うん。あたしたちは双子よ。私が一応姉で、雪が妹」

「へえ、そうなんだ。どっちがどっちとかよく間違われない?」

「ぜーんぜん。雪が私と性格が似てないから間違えようがないのよ」

「双子って不便だと思ってたんだけど意外と面白いものなのかな」



「ねえねえ、トウマのやつ自分は双子は苦手だーみたいなことを言ってお いて自分が一番楽しそうよ」

「そうですね。とってもいい雰囲気でずるいです」

「ええ。クイナは少し自重しましょう」

「……とにかく、リーダーの邪魔をするんですか」

「ええ、会話に割り込んでやるわ」



「へえ、そうなんだ。僕たちの住んでるところ意外と近いんだねー」

「はいはい、こんなのと話すより。私たちと話しましょ?」

 おい、こんなのとはなんだ。こんなのとは。

「まあ、いいか。敵襲が来たら教えるから」

 そう言って僕は彼女たちの少し後ろを歩くことにした。


 そもそも、女子たちはやはり同性と話すのが一番楽しいだろう。

 僕には同性がいないよ。ぐすん。

 はあ、

「消えたい」

「「「「!?」」」」

「ああ、あれはね―――」

 とタマが僕の行ったせりふの解釈をしてくれる。もう、いろいろと疲れ たよ。しかもこのせりふの意味を割と捻じ曲げてくれた。

 意味はこの場にいたくない。それを彼女は『この場にいるのがちょっと 恥ずかしい』と言った。

 間違ってはないな。今度お礼を言ってあげよう。

 それよりもいつから僕の周りで女性の人口密度が上がり始めたのだろう 。


 しばらくすると、モンスターがやってきた。

 出てきたのは、フォレストピューマ。森豹。

 もちろんすばやさは高い。

 猫特有のしなやかさも兼ね備えており、まだら模様は森の中ではあまり 目立たない。森にいる豹とサバンナにいる豹は体毛に色が違うらしい。

 豹は僕たちをロックオンしたようで、僕らの様子を伺っている。

 一応彼女たちにも言っておかなければ。


「敵襲の可能性があるからいつでも武器の抜ける体勢にしておいて」

「うん!分かったわ!」

 声がでかい!

 その声を合図にするかのように豹はこちらにものすごいスピードで突っ 込んできた。


 そのスピードは軽く自転車並みといえる。

 時速30kmはくだらない。僕はとっさに反応して彼女たちの前に立つ。

 思いのほかあせっていたのか、スキルを即座に発動してしまった。

 拳闘士第1スキル『拳乱打』。夥しい量のパンチで相手の体力を削って いくというスキルだ。

 昔のバトル漫画のような速さで繰り出される拳は半ば自分が動かしてい ないがゆえに客観視すると結構えげつない。


 だが、あせったゆえか拳はあまり深手とならなかったようだ。だが、H Pの3割は持っていけた。

 先ほどのワイルドボアは、そこそこ大きめな図体に見合うように中々の HPの多さだった。だが、今回は違う。ソロでも倒せそうなモンスターな ので一応これは余裕だ。

 そのまま、次にスキルの出せる時間の硬直が終わった直後、一気に距離 をつめ、あごを蹴り上げ、のけぞったところに拳闘士第2スキルの『正拳 突き』を繰り出し、一気に止めを刺した。

 ふう、駆逐完了。


「トウマ。初見の敵を瞬殺ってどうなのよ?」

「まさか、そんなわけないよ。ほら、どんどんこっちに来てるよ」

 周りには10以上のフォレストピューマの群れ。

 豹って群れるものだったかどうかは怪しいが、最悪『ゲームだから何で もあり』の一言で片付けてしまえる。

 それよりも、この群れをどうするか、だ。


「僕は、一気にある程度片付ける。雪さんは彼方の援護。焔は各メンバー への援護射撃を頼む。」

 そういって、僕は駆け出し、手前にいる豹を蹴り上げ、膝蹴りとエルボ ーで挟み込み頭をつぶす。

 拳闘士は攻撃範囲は狭いが、どの職業よりも高い腕力を持つ。おそらく 、腕力で拳闘士に勝てる剣士はほとんどいない。

 むしろ並の剣士にすら凌駕する腕力を持っている。まあ、腕だけじゃな く全身のステータスが高いんだけど。


「そいっ!」

 手刀の一閃で、豹をなぎ払う。さすがに刀の形を模しても斬撃属性は加 わらない。

 だが、気休めにはダメージは上がる。たった数ドットだが、それでも変 わらないよりはいい。あと数ドットのどころで僅差で負けるということは たまにある。

 それはあまり好ましくない。しかもここは森の中。

 ここでの動きをインプットされている彼らと僕らでは明らかに地の利は 向こうにある。その上数ですら向こうが上なのだ。なら、勝てるための方 法は全て試しておくに越したことはない。

 なぎ払い、時に刺し貫き、時に殴る。

 時と状況にあわせて攻撃方法を変えるのも必須だ。


 気づけば、敵の数は減っており、残りは数頭という数だ。

 数はこちらのほうがやや上。

 もちろんこちらも無傷では済まず、何回か回復薬を使う姿が見られた。

 僕はダメージを食らっても回復していくがそれでも負けるときは負ける 。僕も一回ほど使った。

 とりあえず、最後に新しい指示を一つ。


「彼方。魔法でどーん!」

「……了解。リーダー」


 彼女は魔法の詠唱を始めた。

 その間は彼女は無防備のため全力で守る。一応この数だが、それでも他 のモンスターがやってこないか見張っていないといけない。

 あたりを見渡すが特にモンスターの気配はない。

 彼女の魔法の詠唱が終わり、モンスターに魔法が降りそぐ。




「『フローズンスピア』」




 すると、数多もの氷の矢が空中3メートルのところに突然出来上がり、 豹たちの体に無残に突き刺さった。

 これだとオーバーキルもいいところだ。

 一頭あたり5、6本は刺さっている、血が噴出していたなら間違いなくト ラウマになっていた自信がある。それでもあのデスセンティピードほどで はないけれども。


「ふう、ありがと。彼方」

「……これくらいお安い御用です」

「それよりもトウマさんが敵をちぎっては投げちぎっては投げをしていた のは驚きましたけど」

「投げたけど、ちぎってはないな。できるだけ一頭一頭にかける時間は長 くはしていなかったと思うけれど」

「だからってさすがに拳と膝で頭を叩き潰すなんて中々できない芸当だと 思うんだけど?」

「気にしない、気にしない」

「気になるわね。教えて!」

「焔はさっきから声が大きいから少し小さくしようね」


 もしかしたら僕はとんでもないものを拾ってしまったのかもしれない。

 その日の夜。

 何とかやっとの思いで僕らは宿を見つけた。

 まだ、もう一つの切り株は見つかっていないが、明日中には次の町へつ くはず。

 この世界には宿はあるものの、基本的に食事は自炊だ。

 たまに食事つきもるが、それはたいていお高い宿ため余裕のある旅をし ている人しか泊まらない。

 まあ、宿のある場所はモンスターが回りに出てこないのでそれだけでも 大分ありがたい。中には宿が建っていない安全地域もあるらしく、そこを 自力で見つけ出して宿屋を営むという中々奇特なプレイヤーも少数ながら 存在しているらしい。

 僕には真似できない境地だろう。


「それにしても剣と魔法のファンタジーの世界に、囲炉裏っていうのはミ スマッチじゃない?」

「いや、半分サバイバルみたいな生活をする世界では『世界観』よりも『 現実的』を選ぶんじゃないかな?」

「いや、だって」

「第一この世界でレンガの家の宿なんてものを作れるわけがないよ」

「どうしてよ?」

「じゃあ、材料をどこから運ぶ?町からでもいいけど時間がかかるし人手 もかかる」

「そもそも、レンガなんて材料は売られてないしね!」

「うん、焔ボリュームを下げよう」

「あ、ごめんなさい」

「うん、分かればいいよ」


 僕らは現在、剣と魔法のファンタジーなVRMMOの話をしていたのだ 。この世界は時にいろいろな国のいろいろな文化が混じっている。

 今回、というか今まで泊まってきた宿屋(道中)は全部囲炉裏だった。

 みんなが向かい合えるという意味や暖かさを感じる、分かち合うという 意味でも囲炉裏はいいとは思う。

 ただ、みんなのイメージするファンタジーは日本のものではないはずで 、そこに日本の文化を投入するのはいかなものかということだ。

 日本最古のファンタジー小説は『竹取物語(かぐや姫)』といわれても しっくり来ない人がいるのではないだろうか。

 僕はまあ、しっくり来ないけど納得はいく。

 そういう意味では街の宿屋の食堂も世界観ブレイカーな気がする。


「よーし、そろそろできたぞー」


 僕は囲炉裏で作った料理をみんなに振舞っている。

 ちなみに鍋。野菜と肉さえあればできる、万能料理の一つだ。闇鍋をす る気にはなれないけど。

 肉は町で買い置きしておいた市販の肉。そろそろ消費期限が切れそうだ ったから丁度いい。ちなみにワイルドボアもドロップでそういうものもあ るらしいのだが、猪肉は食べたことがなく、どんな味がするのか分からな い。

 まあ、そもそもドロップをしていないので、あまり関係ないのだが。

 だが、収穫はあった。武器の素材をドロップしてくれた。猪のビジュア ルにあるあの大きな牙だ。

 実際丈夫なのか分からないがあれで拳闘士用の武器が作れる。ずっと己 の拳一個で戦ってきた僕としてはそろそろ武器の一つや二つぐらいほしい なーと思っていたので次の町で鍛冶のスキルをもつプレイヤーかNPCに でも頼んで新しい武器を作ってもらう。


 そして、この牙で作られる武器の種類としてはトンファーだ。

 他に武器としてはナックル系のメリケンサックなどは有名だ。中には中 二病大好き『指貫グローブ』なるものもあったりするのだが。中々面白い 武器種がそろっている。

 とりあえずは先に夕餉だ。


「じゃあ、今日は焔と雪さんの新入祝いということでかんぱーい!」

「「「「「かんぱーい!」」」」」

(そういえば僕、このまま街へ入れば本当に殺されかねないよな……)

 今考えても不安しか残らない思考をしながら、パーティを楽しんだ。

 途中から思考を振り切るほど楽しんだ。

 だってそうしないと不安なんだもん。


「で、そういえばさっき聞きそびれたけど、二人は最近スレで上がってる あの双子なわけ?」

「え?あれね。あれはあたしたちで間違いない」

「ボクたち、町で『パーティに入らないか』ってよく誘われてたんだけど 、全部断ったんだ」

「へえ、どうして?」

「あたしたちはお互いがお互いに一番よく知ってる間柄だから他の人たち とうまく馴染めないかなーと思って」

「ボクは、ちょっとみんなが怖く見えたから……」


 なんか地雷っぽい。

「ああ、なんとなく分からなくもないかも」

「えっ?トウマのところも双子か誰かいるの?」

「いや、だけど僕の場合はそこの蒼碧と、リアルの弟かな?」

「弟?いるの?」

「いるよ。そこの蒼碧は幼馴染でね。僕の部屋に入ってくるんだ。無断で ね」

「そこはいい。はよ、続けろ馬鹿トウマ」

「うるさいだまれタマ。……まあ、今回こいつに初めて言うけど、実は僕 はこいつが『無断で』部屋に入ってからすることはたいてい決まってるん だ」

「えっ!?私初耳」

「「え?」」

「そりゃ初めて言ったからね。まず、僕の机の中を漁る。その次に僕のベ ッドの下を漁って、最後に僕の本棚からゲームと本を少々『無断で』拝借 して出て行くんだ」

「えっ!?何でトウマが分かるの!?」

「そりゃ伊達に十年以上幼馴染やってないよ」

「くそう、今度から順番変えてやる!」

「ちなみに今まで確認してきたパターンは3通りだ」

「「「!?」」」

「さすがにこれ以上は何か僕のイメージが今以上に悪くなりそうだから黙 秘権を行使する」


 といい、僕が胡坐かいている状態から立ち上がろうとすると。

(((((ビクッ!)))))

 スタタタタタァァァァァァ………

 あれっ?みんなが僕から距離をとろうとしてくるんですが?

「あのう、どうしました?」

「トウマさん見損ないました」

「ねえ、トウマってこんなに危ないやつだったっけ?」

「……リーダー。さすがに擁護し切れません」

「姉ちゃん。怖いよう、怖いよう……」

「大丈夫よ。……雪。お姉ちゃんが守ってあげるから」


 一体何が問題だったのだろう。

 みんなの僕を見る目が怯えと、失望なんですけど。


「み、みんな?本当に何?」

「トウマ。本当に失望したわ」

「いや、僕は何も?」

「いや、軽くストーカーの御業(みわざ)会得してるわよ」

「いや、お前のほうが恐ろしい。タマ」

「私のような清く正しい子はいないじゃないの!」

「じゃあ、お前。両親の許可なく家に上がりこんで、なおかつ僕に許可な く私物を持ち出した挙句、たまに絞殺しようとしてくることをお前は犯罪 ではないと?不法侵入と窃盗に目をつぶっても殺人未遂までは目をつぶれ ないぞ?」


 スタタタタタァァァァァァ……


「ちょっ!みんな!何で離れるの!?」

「やっぱりトウマさんのほうが比較的危なくない人だと思います」

「あっ、さりげなく僕も危ない人に分類ですか」

「トウマさんのやってることは十分危ないことだと思います」

「いや、僕なんとなく人の癖を把握したがる癖がついてるんだ」

「お姉ちゃん怖いよ。リーダーのトウマさんも怖いけど、蒼碧さんはもっ と怖いよ…」

「大丈夫よ。更正すればまだどうにかなるから」

「いや、僕は焔と雪さん以外の癖を多少なりとも把握してるからね」

「「「!?」」」

「いや、今のは半分冗談」

「「「ホッ……」」」

「本当はタマの癖をほとんど把握してる」

「トウマ」


 タマは僕の肩に手を置き、

「嘘はやめなさい」

 そう諭した。

「ごめん。今までのは嘘。イッツジョーク」

「トウマさん。あまり心臓に悪い冗談はやめてくださいね?」

「……リーダーが言うと本当にそれっぽいのでやめてください」

「いや、僕は嘘が苦手なんだけど……」

「「ジー……」」

「本当は………」

「「「「「…………」」」」」

「…………」

「「「「「…………」」」」」

「タマの行動範囲と、不法侵入のくだりだけだったんだ」


 それだけで再びみんなから少し距離をとられた。


「トウマの馬鹿……」

「タマのあほ」


 そして僕とタマは喧嘩した。


「そういえば、二人ともさ」

「「………なんですか」」

「いや、距離をとらないでよ……。二人とも二つ名がついてたって知って た?」

「「「えっ?どういうこと?」」」

「何でトウマまで参加してるのよ?」

「いや、出来心で」

「まあ、いいわ。二人とも二つ名がついてるって知ってた?」

「知らなかったわ。自分たちの噂が流れてる程度だと思ってた」

「ボクもそう思ってた」

「実は、二人がパーティに入ってから少し掲示板を見てみたんだけど、二 人の二つ名が決まってたのよ」

「うわっ、中二臭い」


 そして僕には大体予想がついている。


「ええと、名前はかまいたちさんからで、名前が『二人ぼっち(ソロデ ュエット)』」

 そしていうと予想通りだ。

 あの中二病はネタに上がる人片っ端から二つ名を付けていくのだろうか 。

 まあ、基本的に双子は目立つから一発で分かるだろう。僕みたいにモン スタートレイン程度じゃ気づいてくれないわけだ。


 すると突然メールが届いた。

 ……鎌からだ。件名は……『なんとなくだけど……』

 本文は、『夜遅くだけどごめんなさい。もしかして僕のことを噂してい ましたか?』

 こいつは本気でなんなのだろう。

 少し頭が痛くなりそうだ。


「ごめん、僕は今日はもう寝る。また明日」

「お休みー。トウマ」

「「おやすみなさい」」

「おやすみ。焔、雪さん」


 そして僕はその部屋をあとにして部屋に戻って寝た。

 一体鎌は何者なのだろう。

 超能力でも持っているのだろうか。

 まあ、冗談だが。

 次の日

「よーし!今日から頑張っていくわよー!」

「元気いいなぁ」

「お姉ちゃんモンスターが来ちゃうよ。喋るの禁止!」

「…………」


 ここに来て雪さんの沸点を超えたようだ。

「いつもいつも姉ちゃんは、いい?いつも大きい声で話すからモンスター がよってきちゃうんだよ。だから、少し小さめに話してね?いい?」

「(コクコク)」

「ならよろしい」

 なんか雪さんのほうがお姉さんっぽいな。


「少しぐらいは静かにしないとね。ごめんなさい」

「こっちとしても、そのほうがありがたいよ。まだあまり仲良くないから きつく言えなかったんだけど……。ありがとう雪さん」

「いえいえ、こちらこそスミマセン。それとボクのことは雪でいいですよ 」

「えっ?ああうん。分かったよ。雪」

「こちらこそ、よろしくお願いします。リーダー」

「基本的にはおとなしそうな子には『さん』付けて呼ぶからね」

「あれっ?私は呼ばれませんでしたけど?」

「さあ、助けた挙句結構親しくなったからじゃない?」

「ああ、なるほど」


 楽しそうだなー。

「じゃあ、そろそろ行くよ」

 みんなが肯定を示したところで僕らの旅は再開した。

「えっと、この方向か」

 頼りない地図を元にあたりの特徴を見て、番号の書かれた切り株を探す 。

 これをあと1つ見つけて歩けば、町はもう目と鼻の先だ。


 このゲームは今現在ログアウト不可能。

 理由はバグによるジャック状態。

 バグを消去するためには、一度このゲームに設定されているラスボス的 存在のボスを倒せとのことだ。

 一番最初に考えたこととしては、そういったことは普通は起こらないよ うになっているのではないかということだ。

 管理者としての権限も持っていかれるというふざけたバグ。

 運営は僕らのサポートをしつつ、なおかつ、バグの解析をするといって いる。

 この世界はもう、遊びではなくただクリアするためだけに存在するよう な世界になってしまった。

 それでもこの世界のプレイヤーは、攻略を楽しみ、レベル上げを楽しみ 、そして、人との関わりを楽しむ。


 表沙汰は半ばデスゲームだが、裏ではMMO本来の楽しまれ方はしてい る。

 一応PKが起こらないように注意はされているようだが。

 まさか、本当にPKが起こるなんてことはないよね?


「みんな、この辺に切り株はない?」

「ええと、そうですねー」

「…………」

「……あっ!あったよ!」

「ありがとう雪!で、番号は?」

「ええと、?って書いてあるよ」


 近くまで見てみると、○の中に下に横傍線が引いてありその上に6と書 いてあった。地図と照らし合わせてみると間違いない。ここは6番の切り 株だ。

 一応ちゃんと思い通り進めていたようだ。

 あとは、ここから南東に向かって進めば、次の町、『蓬の町』に着くら しい。

 距離はともかく方角は正確なので、この方向に行けば問題ないだろう。

 ………磁場が狂う設定が間になければ。


「『蓬の町』に行こうか。ここから南東に行けばつくらしい。今日のお昼 ごろにはつくだろう」

 みんなが返事をしたので、僕は先頭を歩き出す。

 とりあえず、あの町に着いたら念のために新しいパーティの人を探して みよう。

 そして、数時間歩く。


 その間に何度かモンスターとの戦闘を何度かして、レベルが上がる。

 そして、町につくころには僕らのレベルは全員レベルが20を超えていた 。


この章で終わります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ