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第三話 初めての戦闘



 僕がこのゲームを始めて30分。

 僕はフィールドを駆け回っていた。


「ぬおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 理由は至極簡単。

 草原にいる雑魚モンスターの代名詞といっても過言ではないあの流動体のフォルム。

 家庭にある道具でその存在だけは簡単に再現できるあのぶよんぶよんボディ。

 僕が逃げているその存在は―――


 緑色のスライムだった。


「きゃああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 思わず、女の子みたいな声が出る。だが仕方がない。画面越しのゲームならともかく今は視界や感覚がリアルになったその世界であの緑色のぶよぶよした液体か個体かよく分からんようなあの生き物。正直ちょっと怖い。それともステータスを上げれば平気になるだろうか。

 だが、今は怖い。


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 僕の声を聞いて反応したスライムや他のモンスターが僕の後ろについてくる。これはフィールドが夜なら、百鬼夜行ではなかろうか。スライムの大群を引き連れるプレイヤー。どう考えてもおかしなやつだ。

 そんなことを考えながらも敵はどんどん僕の百鬼夜行の列に加わる。これはきっとモンスター列車だ。確か、こういう状態で他のプレイヤーにターゲッティングさせることをトレインって言うんだっけ。

 列車。言いえて妙だ。

 そんなことを考えていないと僕の精神は崩壊しそうだった。

 でもこのまま逃げているだけでは埒が明かない。

 怖いけれど、戦わないとレベルが上がらない。太刀使いになりたいから片手剣の熟練度を早く上げなければならない。

 『冒険者』の職業では装備は装備して上がる熟練度はその職業の人たちに比べて遅い。器用貧乏の代名詞冒険者といってもおかしくはないだろう。

 勇気を出して、腰に携えたショートソードに手をかける。

 ショートソードを右手に持ち、スライムたちに向き合う。

 敵は、14体。

 スライム10体、狼4体。

 そいつらを、相手に僕は文字通り牙をむいて立ち向かった。


 『ステップ』!

 まず、この戦闘が始まる前にレベルを上げておいた『ステップ』を使う。スタミナバーの使用量は減り、移動距離は50cmほど増えた。技のこつのようなものをつかむのと同じ要領なのだろう。

 そのステップを駆使し、僕は敵をよけつつ、ショートソードで攻撃していく。

 5回連続のステップでスタミナが切れたので『自然回復』でスタミナがある程度回復するまでその場で動かず襲ってくる敵を捌いていく。

 左右、斜め右下、下、左上とショートソードで襲ってくる敵にカウンターで返し、スタミナを回復させつつ攻撃をしのぐ。

 そのうち何度か同じように攻撃してきた狼のうち2体が、僕のショートソードでのカウンターで死んだ。

 死んだというか、光の粒のようになって消えていった。それは大変きれいだったがあいにく今はそんな余裕はない。

 そしてスタミナが半分くらいまで回復してきたところで僕は身をかがめ、『ステップ』を使う。


「がうぅぅぅ!」


 狼2体が噛み付いてきて少しHPが減ったがそこはあまり気にはしない。

 本当に気にするときはHPがオレンジゾーンに突入してからだ。

 今回は回復アイテムを一個しかもって来ていないので無駄遣いはできない。

 この世界では痛みは大分緩和されており今みたいに噛まれても、痒い程度にしか感じていない。それも防御力やHPが上がることで完全に痛みを消すことができる。

 『ステップ』でモンスターの群れを抜け、群れの後ろに回りこむ。

 腕に噛み付い離れない狼たちを振り払い、片方ずつとどめをさしていく。

 残りはスライム10体。ここまでやれば1回回復をする程度で済むかもしれない。


「うおぉぉおぉぉぉ!!」


 ショートソードを片手に構え、スライムに向かって吼える。

 ソードを右に薙ぎ左に薙ぎ、時には攻撃を受け流し、そして時には攻撃を受けながら、スライムを駆逐していった。

 時間が伸びる感覚。ゆっくりと鮮明に襲ってくるスライムの動きが見える。

 1体を斬りつけ、回転を交え体をひねりつつ攻撃をよける。そんなことを繰り返し精神を削りながらスライムと戦っていった。

 時々攻撃をよけられ、地面を力いっぱい切りつけて手がしびれるということがあったりしたが何とか戦いにはなっていた。

 気がつけば、スライムは三体までに減っており残りHPは3割、完全にオレンジゾーンに突入している。

 一個しかない回復ポーションを飲み、HPを回復させる。

 一回深呼吸をしながらもスライムから目を離さない。もう少しの間だけと、集中力を全開にしスライムに向き直る。

 スライムたちは同時に襲ってくる。これは、ゲームなはずなのに高度にこちらを追い詰める思考的な動き、人工知能AIみたいなものを備えているのだろうか。最初のころより明らかに強いし動きが最初と別物。本当にすごいものである。

 ただしステータスは上がっていないようなので動きの無駄をある程度なくしたということだろう。

 長時間戦っていたためか、入れなおしたなけなしの集中力もすぐに切れてしまい、バランスを崩してしまった。

 すると、左右からこっちに向かっていたスライムは正面のスライムとぶつかり、ベチャッと耳障りな音を出し光を散らし消えていった。

 あ、アブネエ。

 これで、戦闘は終わったと見ていいのか。周りにモンスターの気配はない。ターゲッティングされている様子はない。

 ………ふう、疲れた。


 ポーンというレベルアップ音が聞こえた。

 『スキル『戦場兵士』を取得しました』


 僕はレベルアップとともによく分からないスキルを手に入れた。ちょっとメニュー画面から今の状況を見てみよう。

  トウマ LV.3

 装備 武器 ショートソード(片手剣)

     腕 皮の篭手

     胴 皮の服

     腰 皮の腰巻

     足 革の靴

 この状態からスキル一覧を見て、

[スキル一覧]

 『ステップLV.2』

 『ジャンプ』

 『自然回復』

 『ど根性』

 『戦場兵士』

 から、戦場兵士のスキルを選択する。

 『戦場兵士』 同時に5体以上のモンスターからターゲッティングされるとステータスがあがる。

 なるほど、これはバフ系スキルというわけか。基本的にソロのときに使えそうなスキルだな。他には盾士とかがもっておいたらよさそうなスキルだな。

 それにしても今日は疲れた。まあ、現実ではあんまり時間が経っていないんだろうけど。さて、ログアウトしよ―――あれっ?メニューの一番下のログアウトボタンを押したのにログアウトできない。おいおい、ここで変なバグか?冗談は笑えない。

 ………一時的なものだろう。最初のあの町に戻ってみよう。


 町に戻ったときにみたものは、困った顔をしたプレイヤーたちだった。


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