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第二十八話 攻略編 キーイベント2

 あれから2日、合計5日ほどかけて僕らはイベントの行われる一番近くの町にやってきた。

 『ストリトライト』という町で、規模は、この階層最大の規模を誇るらしいアルムの町よりは小さい。というか、規模は村ほどだ。とはいえ、普通に広い。全部見渡すのには1、2日ほどはかかりそうだ。

 本当だったら、4日ほどでつくはずだったのに尺八さんのモンスタートレインのせいで消費が激しくやむを得ずに1日ほど歩みを遅らせてしまった。

 尺八さんとは本当に久しぶりだと思う。実際半月ぶりだ。

 今に今まで忘れていたといえばおそらく彼は怒るだろうからそんなことは言わない。

 

 ちなみに、前のあのときのことは怒っていないのか聞くと、「ああ、あの時は俺が悪かった」と謝罪してくれた。なんとなく申し訳なくなってお酒をおごった。もちろん僕はジュースだ。味が濃いねジュースは。


 で、肝心のイベントだが、これの発生条件がプレイヤーのパーティ最低10以上のパーティがこの町に滞在していることが条件だ。

 そして、ここが一番難易度が高い。

 適正レベル15という最難関の場所なのだ。

 理由はいくつかある。危険とのリスクをわきまえての判断だ。一つ目はこのパーティにはタマと彼方がいる。その結果、幾分か戦闘において有用な情報を持っている彼女たちはこのイベントでも普通に動けると思ったからだ。

 二つ目は、レベルアップのため。確かに適正レベルは上だが、それでも十分倒せる。一応リスクとも考えてみた結果一つ目の彼女たちの持つ情報があればどうにかなると踏んだ。

 三つ目は、ここに来るであろう『他のパーティ』の強さだ。『適正レベル15』で、『最低10パーティ』が勝てる強さのパーティとなっている。だが、他のプレイヤーたちは安全圏をとった上でレベル17ほどまで上げてくることを予想した。そうすればこちらもある程度安全であるだろうということだ。しかもここに来るプレイヤーはここが最難関であることを知らないはずがない。するとここに来るプレイヤーはある程度ゲームで実力のあるプレイヤーとなるだろう。


 以上がこのイベントにやってきた理由だ。

 一応安全を見極めるため一定数以上の回復アイテムは保持している。

 一人20個の回復促進剤と回復薬、そしてスタミナ回復促進剤。彼方にはスタミナ回復の変わりに魔力回復剤を持たせた。

 僕一人ではどうしようもなかったのでみんなでお金を出し合ってここまでそろえた。

 一応お金はモンスタートレインのおかげでドロップ品もあったのでそういったものも足しにさせてもらった。

 おかげでクイナの武器は新調できそうだ。

 彼方とタマはもともとベテランプレイヤーなので持っている装備や、武器は下層なんかではほぼ手に入らないであろう優秀な武器防具ばかりだ。


「現在この町にいるプレイヤーは僕らを含めて7パーティ35人だ。あと1、2日もすれば10パーティそろうと思う」

「分かったわ。本当にやればできるのにやらないんだから」

「僕は本気でやろうと思ったことか、あるいは好きなこと以外はしたくないんだ。分かれ」

「それを分かった上で言ってるのよ」

「はあ、まあ頼りにしてるよ。一応このイベントは体験済みなんだろう?ならみんなにそのとき出てきたモンスターの情報とおおよその数なんかを教えてくれるとありがたい」

「まあ、ちゃんと教えるわよ」

「……リーダー任せてください」

「ああ、頼りにしてるよ彼方」


 僕は彼方に笑いかける。すると彼女は照れたようにそっぽを向きタマは逆にこっちに抗議の視線を向ける。


「女たらし」


 失礼な。僕は本音を言っているだけだというのに。

 で、尺八さんには臨時的にとはいえパーティに入ってもらった。彼もこのイベントに参加する予定があったとかでレベルは14だ。実は僕たちの中で一番レベルが高いという事実。そして僕がほしいと思っていた盾士。

 で、レベルはどうやってあげたのかというと例に漏れない雑魚狩り。

 大体そのエリアに出てくるモンスター適正レベルレベルの1.5倍ほどになるまでに狩るんだとか。なので、一つのエリアには比較的長期間滞在するは目になるらしい。


「それにしてもあんなところでお前と会うなんて思わなかったよ。坊主。元気してたか?」

「ここにいること自体が元気である証拠ですよ。それにしても盾士でしたか。僕のパーティに入っていただいて感謝します」

「そうかそうか。で、誰が本命なんドベラッ!?」

「冗談もほどほどにしましょう」

「い、いきなり殴るなんていうのはなしだろうよ」

「良いじゃないですか。防御力も高いし体力もあるんでしょう?」


 実際半分本気で殴ったのに彼のHPは2割も減っていなかった。素の攻撃力なら全ジョブ最強ともいえる拳闘士の攻撃を食らってこれほどとは防御が硬すぎる。


「で、本命はいないんだな?」

「え?ああ、僕はあんまり興味がないといえば嘘にはなりますがね」

「じゃあどうして?あんな美人さん方をパーティに入れておいてそれはないと思うぜ?」

「……一番好みに近いといえば……あの蒼碧ですけど」

「ほう、タマちゃんか。お前も中々いい目してるじゃねえか」


 ねえ、考えてごらん尺八さん。15歳の僕が推定12歳(本当は15)の女子が好みって言うのと、推定20代のあなたがそんなことを言うともう一種の犯罪ですよ?

 というか、たまに聞いてくる好みにあいつがあわせてくるというのが真実だが。ショートからセミロングにかけての髪の長さが一番好きなんだ。見た目は同い年ぐらいかな。そう簡単には好みは変わらないぞ。


「まあ、それはおいておいて、尺八さん。ちょっと話があるんですけどいいですか?」

「ん?ああ、いいぜ。なんだ」

「尺八さんってボッチなんですか?」

「ぶふぅ!」

「あっ、やっぱりボッチだったんですね」

「お、お前!いくらなんでも本気でそういうことはねえだろ!?」

「まあ、友達が一人もいないといっていたのは尺八さんですし、僕は特に言うことはありません」

「くそぉ!いくらなんでもひどくないか!?」

「あなたを見てると思うんです。哀れで情けないと」

「ひでえ!ひどすぎるぜ!」


 前の分のせめてもの意趣返しだ。

 やられたらやり返す。倍返しだ。

 そして次の日、イベントが開始される。


 イベントの開始の合図はNPCだそうだ。最初に「ひえぇ!あの岩山から巨大蟻たちの群れが出たぞぉ!」という。

 そこを引き金に、モンスターたちと戦い、なおかつ穴を埋めていくという作業をする。





「ひえぇ!あの岩山から巨大蟻たちの群れが出たぞぉ!」


 そのNPCの悲鳴を聞いて、みんなは緊張感を高める。

 それが数秒もするとみんな殺気に変わり、空気が恐ろしいほど変わる。

 まるでそれが一つのあり方のようだ。

 もうすぐここは戦場と化す。総勢12パーティ62人まさか、ここまで人が来るとは思っていなかった。みんなも早く外に帰りたいんだね。

 その中には、どうやら鎌もいるらしくその辺の人に頼んで聞いてみたところ、全員レベル24という馬鹿げたレベルで挑むのだという。……僕はあいつといるとどことなく気が抜けてしまいそうなので鎌には会いに行かない。

 そして、タマたちから聞いたこのイベントについてだ。


 モンスターの総勢はその町にいるプレイヤー×12倍ほどらしい。逆に言えば一人12体殺せば出現が収まる形になる。そして種類としては『ジャイアントアント』が主力部隊として10体に1体ほどの割合で『ヘルアント』が出てくる。さらにその中で最低1体出てくるのは『デスアント』だ。そして出てくる確率はヘルアントの10分の1。実質100分の1だ。

 強さは当然ヘルアントより強く、防御と体力に優れている。

 攻撃はそこまで強くはないものの普通にジャイアントアント並みにはある。

 ジャイアントアントとヘルアントの見分け方は基本的に、牙の大きさだ。牙が大きければヘルアントらしい。

 そんな中、ヘルアントたちはただでさえ学校の校舎の2階分くらいの高さがあるのにその巨体の群れは、正直言って怖い。


 大体出てくる数は744ほどだ。そのうちデスアントが出てくる確率は7、8体。どれほどのものかは分からないがやるしかないだろう。

 さあ、戦闘タイムだ。

 プレイヤーたちは森に向かって走っていった。

 あれから30分。

 モンスターの群れはとどまることを知らない。

 どうやら、このイベントは他のモンスターを呼び寄せるらしい。

 出てきたモンスターの中で一番強かったのはデスセンティピード。あのムカデ野郎だ。

 他は今まで戦ったことのあるモンスターたちだ。この戦いに身を投じてからとんでもない勢いで経験値を取得した。おそらく経験値にブーストか何かかかっているのかもしれない。


 このイベントでは二人から三人一組ほどで組んで戦うらしい。

 後衛組一人前衛二人、うち一人は盾士といった具合に。

 とはいえ、その辺にいた人たちを寄せ集めただけなので前衛三人とか、後衛二人組とか言うのもちらほら見受けられる。後衛組は戦線から外れて岩山から攻撃魔法を放つところもいる。

 そんな僕もすでにジャイアントアント4体目だ。

 正直言うとこんな極限状態で戦うのはなれているので、あまりプレッシャーを感じていない。しかもどうでもいい余談だが、このイベントにおいて『ある一定の人数』を満たさなかった場合、爆弾が支給される。今回もその例に漏れずに爆弾が各パーティのリーダーに2個ずつ配られている。

 爆弾は5個ほどあれば、入り口をふさぐことができるらしい。

 あの穴からモンスターがポップしなくなるまで狩り続けてそこから埋めようというのがいつもの戦いらしい。

 だけれども、一番大変なのがこの乱闘状態だ。

 誰がどこにいるかを把握できていないこの状況、不用意に敵を吹っ飛ばすような大技をぶつければその先に味方がいるかもしれない。 

 一応最終安全装置(転移とアンダーシャツ)があるからいいもののそれがなければ以後普通に大惨事だ。というかそれが普通に機能するかどうかすら怪しい。


 僕は4体目のやつに止めを指し、5体目にさしかかろうとしたときに、ヘルアントに邪魔をされる。

 とっさに受身を取ったもののHPの減りは激しくいきなり3割持っていかれた。だが、持っててうれしいレアスキル『無限回復』は僕のHPを回復させていく。

 僕は『ジャンプ』を使いその辺のジャイアントアントを足場にしてさらに飛び上がる。

 高さは約15メートル。普通に怖い。どきどきするが気のせいだろう。

 下の乱闘状態をある程度把握し、拳を下にしてヘルアントの弱点(クリティカルポイント)を狙いにいく。

 重力の加速に任せて放たれた隕石のような拳は僕のHPを半分まで減らし、敵のHPを七割持っていった。そのまま『ツバメ返し』を使用。

 ヘルアントを何とか殺し、次の敵に当たる前に回復薬を使用する。HPは8割ほどにまで回復し、一時的にだがスタミナの回復能力も上がる。それでも促進剤ほどではないが。

 これではきりがないといった感じがする。というか、この状況をほぼ一人で切り抜けていること事態一種の奇跡ともいえる。


(みんな、大丈夫かな……)


―――――


「クイナ!下がって!」

「はいっ!」


(『双突』!)


 私は双剣の第2スキルを発動させる。双突というのはその名のとおり、双剣で2回突く技だ。

 私は第4スキルまで持っている。そのアドバンテージは大きい。このゲームは相当やりこむような類のもので一つの技を覚えるのにレベルを7や8ほど上げないと習得できない。まあ、その分極限まで『ユニークスキルに近いレアスキル』というものまで存在するらしい。

 このゲームが人気の理由はそれがあるからともいえる。

 まあ、今はどうでもいい。

 私はクイナと彼方と尺八と組んでヘルアントと対峙している。

 トウマは、人の荒波にもまれて消えてしまった。だが、フレンド登録のところには今ログインされている常態かどうか確認するシステムがある。それがちゃんと機能しているところを見るとトウマはちゃんと生きているらしい。


(ほんっと、しぶといわねえ)


 そう考えた心はトウマに対するものかヘルアントへのものか。

 とにかく残り一割のところまでつめてきている。

 そう考えたところで声が聞こえる。


「……下がってください!『ウォーターボール』!」


 大きな水の玉がヘルアントに注がれてヘルアントが死ぬ。

 光の粒子になって消えていくが、それを気にする暇もなく次のジャイアントアントたちがやってくる。

 数にして3体。

 ここまで来てかなり消費しているため、回復薬を使って回復させる。彼方も魔力回復剤を使いほとんど切れ掛かっていたMPを回復させる。

 トウマは人波にもまれてどこかへ消えていった。だけれど、あいつが生き残ることを信じるしかない。

 だけれど、今回で『自爆癖』が発動したらどうなるか分からない。とりあえず、ここで耐えしのぐしかない。あいつなら、一人でもどうにかなる。いざというときは鎌を探すだろうし。


「行くわよ!」


 双剣を構えて指揮を執る。あいつのパーティを守れるのはメンバー一人一人。

 ジャイアントアント3体くらいなら一人1体でどうにかなる。

 彼方には尺八が着いている。なら、私たちは安心して戦える。


―――――


 もうモンスターは打ち止めのようだ。穴があると思われる方向からはモンスターが1体も来ていない。

 とにかく、これで安心してかえ―――

 ズゥーン、ズゥーン、ズゥーン

 すると迫る死の足音が………

 引き返そうとした僕の目の前に現れたのは………

 ジャイアントアントよりもでかい……

 ヴオォォォォォォォォォオオオ!!!

 鼓膜を震わせる雄たけび。地響きを起こす足音。

 ヘルアントなんて目じゃない、中ボスクラスの超巨大蟻――――



 デスアントだった。



 うわぁ、蟻って鳴くんだぁ。

 僕はやつに背中を向けて全力で走り出した。

 もちろんみんなのいる方にだよ。一人で勝てるわけがない。

 僕はとにかくシステムアシストを駆使して全力で走る。

 すると、モンスターたちの群れはまだ、プレイヤーたちと対峙している。くそっ!せめて、誰か手の空いているやつはいないか!

 そう思い、前方の障害物に注意を払いつつ周りにフリーのプレイヤーがいないかを探すと……いた!

 僕はそいつのいる方向に走っていき、声をかける。


「デスアントだ!手を貸してくれ!」


 そう叫ぶとそいつは後ろを振り返り、僕とその後ろにいるデスアントを見つけて顔面を蒼白にした。

 そいつはさわやかそうな青年で大きな盾を持っている。

 その見た目で盾士かよと思うがあいにく自分も人のことは言えない。そいつはとっさに盾を構えて攻撃を受け入れる体制になる。

 僕はその青年の構えた盾に幅跳びをする。ステータスによって距離もスピードも現実と比べると段違いだ。一瞬処理がついていかなくなりそうになるがそれでも何とか処理をする。

 僕と青年の距離はあと3メートル。

 僕は足を伸ばし、青年の盾にドロップキックをする体制になる。僕は心の中で「ごめん」とつぶやき、青年の盾にドロップキックを放つと同時に『ジャンプ』を発動させる。

 青年は盾スキルを発動させたのか、その体はまるで岩のようになって動かない。そんなことを気にしている場合ではないと空中に浮かびつつ考える。

 背中を反らせて空中でムーンサルトを極めて、その勢いを利用して蟻たち共通の弱点頭頂部に蹴りをぶち込む。

 だが、さすが中ボスクラス。

 ほとんどHPバーに変化がない。

 そして、スキルを使ったであろう盾士の青年のHPはヘルアントの攻撃を真っ向から受け4割も持っていかれている。

 僕はけりを使って着地したあとに、『拳乱打』をやつの横合いからぶっ放しふっとばす。

 見方たちのいない方向へ吹っ飛ばしたので今以上の乱闘になることはない。そして僕はとっさに回復薬を出し、青年に使う。


「ごめんなさい」

「いや、ありがとう」


 やつのHPは僕のスキル一つをまともに食らったのに2割も削れていない。

 くそっ!頑丈すぎる。


「さっきも攻撃受け止めさせておいて悪いけれど、人手をここに集めてほしい。空いてる人をとにかく。僕はここで持ちこたえるから」

「ああ、分かった。気をつけろよ」

「すみません」


 僕はデスアントに視線を戻しつつぶっきらぼうにそういった。

 まさか、あれほどとは。いやはや、とんでもないな。スキルを使っても2割がやっと。絶体絶命。

 スタミナ回復のスピードを上げる、スタミナ回復促進剤を飲んで呼吸を整える。

 順序は『ステップ』『ステップ』『拳乱打』『ツバメ返し』だな。


(『ステップ』『ステップ』―――)


 ビュンッと、ステップをすると風を切る音が耳元で鳴る。そしてもう一度ステップを使うと、ヘルアントの目の前に来てスキルを使うのに絶好のチャンスになる。


(『拳乱打』つばめがえ―――)


 やつの目の前にきてスキルを放とうとしたところ、やつのでかい頭に吹っ飛ばされる。

 そこら辺の木にあたりHPバーは一気にオレンジゾーンまで吹っ飛ぶ。同時に僕の意識もぶっ飛びかける。

 勝てるわけがない。そう思った。


 ズゥーン、ズゥーン


 歩いてくるやつの足音がやたらとゆっくりに聞こえる。


 ズゥーン、ズゥーン


 流れている時間がとてもスローになる。


 ズゥーン、ズゥーン


 頭が痛くなって視界がぐるぐる回って何も考えられなくなる。

 蹂躙されて、

 なぶられて、

 最後に残ったもの単なる絶望だけ。これで死ぬんだな。まあ、現実でどんな影響があるか分からないけれど麻痺とか起こしていなければいいな。

 そう思い、その視界で最後に見たものは………。


 とても長い刀。その長さは普通の人間並みあるのではないかというくらい長い刀。太刀。

 そこにいたのは、カズさんだった。


「よ、よう……久しぶりだな」

「か、カズさん……」

「祝いはあとだ。さっさと回復しろ!」

「はいっ!」


 僕はとっさに回復薬を使って回復する。デスアントに向かいつつ、カズさんに「下がって!」といいつつ、拳のスキルを発動させる。

(『拳乱打』!)

 弱点には当たらなかったがこれで、1割ほど持っていくことができた。僕は助けられてばっかりな気がする。


「ハァハァハァ、大丈夫か?」

「ええ、もうだめかと思いましたよ」


 そして、聞きなれたレベルアップ音が聞こえてくる。どうやらタマたちが倒したことでレベルが上がったらしい。この音はすでに2回目だ。僕のレベルは、14。そして待ちに待った、あのシステムの声が聞こえてきた。

『拳闘士スキル『正拳突き』を覚えました』


 その言葉を合図にトウマは切り替わった。

 トウマは拳を構えて、カズは太刀を構える。

「どっからでもかかってこいや!」

 その言葉を発したのはトウマなのか、カズなのか、あるいは両方なのか分からない。

 蟻は体勢を立て直し、こちらにものすごい勢いで突進してくる。

 トウマはそれに第2スキルの『正拳突き』で対応する。一度鎌に見せてもらってイメージトレーニング自体はできている。

 拳にスキル特有のエフェクトをまとい、正拳突きを放つ。

 トウマと蟻が衝突し、空気がはぜ、周りの木々が揺れる。トウマの手元は直視できないほどに光っており、その中心は見えなくなっている。

 だが、スキル自体の熟練度で、押し負けそうになったときに、カズとトウマは同時に動いた。

(『ツバメ返し』!)

(『水流切り』!)


 トウマは左の拳を突き出し、右手を引っ込める。

 そして、デスアントの下でカズがスキルを発動させる。

 太刀の第4スキル『水流切り』とてつもないスピードでなおかつ、流れるように対象を切るスキル。

 2回目の正拳突きでやっと押し返し、水流切りで確実なダメージを与え、何とか相手のHPは4割ほど削ることができた。

 残り4割。今のをもう一度やればどうにか倒せるだろう。

 だが、今のはお互い極限状態だった。

 そんな技をもう一度やればおそらく致命的な失敗をしてしまうだろう。だが、それをしないと倒せない。今はおとなしくするしか出来ない。


「悪い!少し遅くなった!大丈夫か!?」

「あ、ああ、何とかね」

「少しお互いやりすぎちまったみてぇでさ、頭のヒューズが切れそうなんだ。悪いが、後は頼む」

「任せてくれ」

「知り合いですか?」

「ああ、ちょっとな」

『うおぉぉぉぉぉ!!』


 やってきたのは、数人のプレイヤー。

 全員ベテランのようで、歴戦の戦士を連想させる。

 そして、あっという間にデスアントを片付けた。


「あ、ありがとう」

「ああ、ありがとう」

「いや、こっちこそここまで弱らせておいてくれてありがとう。経験値を結構手に入れれたし」

「そうか。そういえばまだ、イベントのほうは終わってないの?」

「そろそろ終わる。一部のパーティの魔法使いや魔導師が出口のほうに向かっていったからな」

「じゃあ、そろそろ終わるね。少し休もう」


 僕は、痛む頭を抑えつつ、木にもたれかかった。


「他にデスアントの発見報告は?」

「確か今ので最後のはずだよ」

「犠牲者は?」

「今のところ不明」

「そうか………」

「あとで合流してみれば分かるさ」

「そうだね。本当に助けてくれてありがとう」


 そして僕はスイッチの切れたロボットのように気を失った。

 キーイベント、『アリの出口埋め』 クリア

 犠牲者0人(ただし、町に転移されたプレイヤーはいる)

 今回の戦役者、鎌、ノディタ、黒服、カズ、かわ、ポロロッカ。

 討伐数1位『デルタライン』討伐数75 デスアント2体

 目を覚ますと、宿屋だった。

 正直途中からほとんど覚えていない。確かデスアントを倒したところまでは覚えているんだけど。

 辺りを見回すと夜明けだろうか。

 まだ、外は薄暗い。右手首を振り、目の前にメニューを出して時刻を確認すると、『アリの出口埋め』のあった次の日朝早くということになる。

 部屋の中には誰もいない。

 少し寂しい気もするが、それ以上に今はこのパーティが誰も欠けていないかがどうか心配だ。少なくともイベントが成功したのは分かる。

 だが、………みんなのことが心配だ。

 僕はベッドからおり、みんながいるであろうとなりの部屋と下に向かっていった。


 コンコンコン

 返事はない。

 コンコンコンコン

 返事はない。

 耳を扉に当ててみるが、何も聞こえないし誰かがいる気配もない。

 仕様がない。下に行こう。もしかしたら、僕が気がついていないだけで女子勢は寝ているのかもしれないと思ったけれど尺八さんは隣にいなかった。せめて、彼だけでも起きているだろう。

 下に行くと案の定、尺八さんはいた。

 僕は近づき、声をかける。


「尺八さんおはようございます」

「…………」

「尺八さん?」

 顔をのぞきこむが何の変化もない。

「ちょっ!尺八さん起きていますか!尺八さん!」

 揺さぶっても叩いても彼は反応しない。

「尺八さん!起きてくださいよ!ねぇ!」

 そこまで揺さぶってやっと起きたようだった。

「よう………トウマ。おはよう」

「おはようじゃないですよ!一瞬死んでるのかと思いましたよ!」

 きっと僕を見つけたかわもこんな感じだったんだろうな。

「ははは、悪いな。お前といたら体に障るかと思って俺はここにいたんだ」

「そうですか………心配かけてすいません」

「いや、俺はいいけどよ。彼女たち大分怒ってたぜ?多分めちゃくちゃ怒られるだろうな」

 彼はいたずらめいた笑顔を見せて立ち上がった。

「まあ、お前は今回頑張ったって聞いたんでな。それは構わねえけど、あんまり心配はかけすぎんなや。俺も少し、ひやっとした」

「そういえばここに運んできたのは、カズさんですか?」

「いや、あの鎌が運んできてくれたぜ」

「鎌がかぁ」

「一応弟子らしいじゃねえか。どんなことをしたのか、知らねえけど強くなったのは分かったよ」

「はは、ありがとうございます。鎌は元気そうでしたか?」

「ああ。だが不気味だったな。笑顔をほとんど崩さねえから何を考えているのかいまいち分からん」

「僕もそう思いますよ」

 笑いながらそう答える。

「ありがとうございました。後で彼女たちにも謝っておきます」

「ああ、元気でやれよ」

「えっ?」

「いやな。他のパーティからお誘いがあったんだわ。一見お前のパーティはタンクに不便してなさそうなんでそっちに行かしてもらうことにした」

「そう、ですか……寂しくなりますね」

「そう落ち込むなや。フレンド登録したんだ。またすぐに会えるさ」

 そう言って彼はいかつい手を僕の頭の上において軽く乱暴になでる。

「じゃあな。坊主」

「ええ、お元気で」


 僕は寂しいという気持ちを押し殺して彼を見送った。

 別れというものはどうしてもなれない。

 タンクを引き入れる作戦、失敗。


 そして後ろを振り向くと彼女たちの姿が。

「トーウーマー?」

 タマがとてつもなく素晴らしい笑顔で僕を呼びかけてきた。

「トウマ。私たちに言うことはない?」

「はい、このたびはご心配をおかけしてまことに申し訳ございませんでした」

「…………」

 タマはふうっとため息を吐いて

「もう、あんたは私たちのリーダーなんだからあんまり勝手な行動をしないでっていうのと、心配をかけさせないで」

「ああ、今回ばかりは本当に申し訳ないと思っているよ」

 今回ばかりは死に掛けたわけだから反省しないわけには行かない。

「もう、トウマさん……あまり心配かけないでくださいよぉ……」

 半分涙目でしかってくるクイナ。思いのほか彼女にもダメージがでかかったらしい。

「……リーダー。もう無茶はしないでください」

 そういう彼方もどことなく表情が不安げだ。

「まあ、今回は不問にするけど、次はないわよ?いい?」

「分かりました」

 そしてもう一度盛大にごめんなさいをした。


「で?これからどうするの?トウマ」

「ああ、一回アルムの町に戻ってから軍備を整えよう。今回ので半分近く消耗したからね。町へ戻って軍備を整えて、あとはひたすらレベル上げ」

「………どこでレベル上げをするんですか?」

「この町へ向かう1日目の宿の近くを周辺にモンスターを狩っていこう……いや、やっぱりここで消費を補ってこの辺でレベル上げだ。一応攻略の前には掲示板か何かに書き込まれるはずだからそれを見て行動しよう。もちろん限界ぎりぎりまでレベル上げはする」

「そういえば今回のイベントでレベルはどれくらい上がった?私2」

「私は3です」

「……私も3」

「僕は2だ」

 「ふーん」とタマは返事する。もともと何か意味があったわけではなさそうなのですぐに会話は途切れた。

「尺八さんがいなくなって寂しいですね……」

「まあ、尺八ならどうにかやっていくでしょ」

「……他のパーティから誘いを受けたからそっちに行くといっていましたし、案外楽しくやっていくでしょう」


 僕らはここらでレベル上げをすることになりました。

 そして一ヵ月後

 数多のプレイヤーたちが集結し、第1層『草原エリア』をクリアし、第2層へと歩みを進ませていった。


 もう一つの作品のほうもよろしくお願いします。

 活動報告のように、二章は半分ほどまで出来ています。

 しばらくはもう一つの作品を書いて、修行をしてきます。コメディは内輪ネタや自己満足が多々含まれているので…。それに頼ることなくコメディの練習をしてきます。

 書き直しはしない方針です。変化を実感してみたいので。

 つまり、二章の半分までは正直言ってつまらないです。

 コメディ展開に入ったら、ストーリーの流れを理解しておくほどでいいかと。

 コメディの練習、頑張ってきます。

 この作品は次回チートのほうを一区切りついたら再開します。チートのほうは二十話程まで書いてきます。

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