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第二十七話 攻略編 キーイベント1

 あれから僕は体に異常がないことを確認して、みんなのところへ行った。

 時間はそれほど経っておらず、1、2時間気絶していた程度だった。暴徒は案の定というかなんというか、彼女たちが取り押さえたらしく、僕は一命をとりとめた。

 彼女たちにはちゃんと感謝しないといけない。あのまま、攻撃を受け続けていたら間違いなく死んでいただろう。

 それにしてもなぜ気絶したのだろう。

 痛みはそれほど感じないように設定されているはずだし、そういった状態異常系のスキルは使ったとも………まさか、ねえ。


 まあ、一応とめてくれたので彼女たちにお礼を言った。

 クイナは「トウマさんのお役に立ててうれしいです」とまぶしいほどの笑顔で答え、

 タマは「あんたに死なれたらお義母さんになんて顔向けすればいいから分からないから」と、半分理解したくない言葉で応じ、

 彼方は「……リーダーが無事でよかったです」と素直に無事を祝ってくれた。

 僕は最高に素晴らしいパーティメンバーに出会えたのかもしれない。


 で、それからしばらくして夕食のころ、

「明日から、僕らは攻略に出ようと思う」

 とみんなに提案した。

 みんなは、変な顔をしていた。悪いものでも食べたのか?とかそんな感じの顔。失礼な。

「トウマ、あんたのことだから今更どうしてなんて聞くだけ無意味でしょうけど、一応聞いておくわ。何で?」

「正直に言うと、今の僕たちは結構レベルも上がってきた。タマや彼方がいるおかげで、この階層のボスについての情報もある。もっと詳しく見れば掲示板が一番なんだろうけれど、信用性に欠ける情報がいくつかあるからね。で、話を戻すよ。それを含めた上で、パーティの連携、レベル上げ、攻略ができるという三拍子があるこの状況を生かそうと思った」

「で、でも私のレベルは皆さんよりも少し低いですし」

「大丈夫、パーティに入ったくいなにも経験値が入るから」

「……リーダー。ですが、その前にはキーイベントをクリアしないといけませんよ?」

「それについては報告がある。運営に掛け合って、一つのクランを作ってもらった。これは『このゲームにログインしている全プレイヤー』が対象だ。だから、キーイベントにいたっては誰かがクリアすればみんながクリアしたということになる。だから、僕らだけでそのイベントをクリアしても全員にちゃんと影響がある」

「なんか、初めてトウマがまともに見えてきたわ」

「まともは余計だ。ざっと僕の本気はこんなもんだ」


 僕は胸を張り背中を少しそらす。


「明日は、この町でいくらか物資を調達して、明後日にはこの町を出発、受けるイベントは東のイベント『アリの出口埋め』」

「アリの出口埋めというのは名前からして想像はつきますけど、一応どういったものなんですか?」


 と、このゲームは初めてのクイナが聞いてきたのでそれに答える。

 このゲームの草原地帯において出てくる数々の昆虫モンスターたち。それらの中にジャイアントアントがいたのを覚えていることだろう。

 彼らの巣はいくつかの出口がある。そのうち一つを埋めるのが『アリの出口埋め』。もちろん、他のプレイヤーにも同じようなイベントがある。

 『アリの出口埋め』のほかに『奥なしのほら穴埋め』、『底なしの迷路埋め』、『北の土砂崩し』といったように。それらのイベントはもちろん、キーイベントであり、クエストである。そして、それらを全部クリアするとこの階層の真ん中、このアルムの街より、少し北にある部分に一つの穴ができる。そこから、この階層のダンジョンが見つかりボスへと進んでいくという流れだ。


 だが、これは『MMO』なので一人でもクリアできるようにはなっている。出口埋めという名前とはいえ、一人や一パーティなどで行う場合、爆弾が支給される。

 それで、入り口を崩すという身も蓋もない方法でそのイベントをクリアするらしい。

 一応、僕が収集した情報はこんなものだ。

 それらを一応クイナに説明した上で質問がないかを聞いたところ、「どうして、明後日なのか」とのこと。

 まあ、それに対する答えは一つ。


「時間がかかるからだよ」

「え?」

「えっと、ここからその場所に走っていけば二日ほどで着くんだけどそこまで、急いでいるわけでもないしできればパーティの連結を深めるためにそこまで急がずに、とも言わずに、普通に行きたい。道中出てくるモンスターを倒せばその日の分の道の宿屋には泊まれるし、ドロップアイテムがあればそれも加工できる。悪いことだらけじゃないから急ぎすぎずのペースで行きたいなーと思ってね」

「分かりました。明日、『私の』買出しに付き合ってもらえませんか?」


 すると、タマが突然僕の腕へ手を伸ばしてきて、腕を組んできた。身長差的にかなり危ない絵になりそうな予感を抱きつつタマは、僕に言う。


「私も明日、いろいろ買わなきゃならないの。だから、トウマ。私の買い物に付き合ってくれない?」


 えー。


「……リーダー。あきらめてください」


 彼方もなんか何を言っているのか、僕には分からない。

 そして、僕らの夜は更けていく。


 だが、僕らの夜はまだ終わらない!

 鎌がいなくなって、クイナが入ったことによりとんでもない問題が発生した。

 僕らが泊まるために借りている部屋は二部屋。その両方が二人部屋。

 女三人に加えてリーダーである僕男。そうだ、部屋が足りないのだ。一応僕の部屋に女子を置くなんていうまねはしたくない。心労が……。いや、タマならいいか。

 ということでタマと一緒に寝ようと誘ったところ。


「変態!ロリコン!」


 と、クイナらしからぬ口調で暴言を受けてしまった。やめて!僕の心のHPはとっくに0だ!オーバーキルやめて!

 そしてタマは勝ち誇った様子で決してないわけではない胸をそらす。ああ、もう面倒くさい。


「やっぱ、一人で寝るわ。三人で頑張れ」


 と、判決を下して、僕はその場をあとにしたのだった。

 で、聞いてみるとタマは床で猫のように丸くなって寝ていたという。

 次の日目がさめる。

 もちろん下に行くと、みんなすでに起きていて、朝食をいただく準備はできているようだ。

 本当にこいつらは一体いつ起きてるんだろう。めっちゃ早いんだけど。

 今日は久しぶりに和食を食べたい気分だったので焼き魚と玉子焼き、味噌汁をいただいた。

 いやー、おいしいね


「じゃあ、今日は必要なものを買いに行くよ。携帯食料と水。ついでに食材もいくつか買っておこう」

「「「はーい」」」


 昨日の男性客が爛々とした目でにらみつけていたのはここだけに記しておく。怖いよ。背筋が凍るなんてものじゃないよ。


 9時くらいになってから、みんなで行動をし始めた。

 うん、正直に言うと変なことになるだなんて思わなかったよ。


「トウマさん!これ、買って良いですか!?」


 と、クイナが指差すのはイヤリング。一応装飾品だが、特殊効果のあるものもある。一応クイナが持っているものもその類で、火属性の魔法を二割カットするものだ。


「お金にあんまり余裕がないしな。また今度で」

「大丈夫です。ポケットマネーがありますので」

「あっ、うん。そう……」


 女の子に強く言えない僕だった。

 だが、タマもなぜかそこに入り込んでくる。


「ねえねえ、トウマ。これどう思う?」


 と、彼女が手首にあてがうものは腕輪。正直に言うと今までの状況的に『エンゲージリング』とか出されると思っていたのに、ここに来てそれとはちょっと拍子抜けだった。

まあ、タマも女の子ということか。うんうん、歳相応………やべえ、無理して大人ぶってるようにしか見えない。お世辞にも歳相応には見えない。


「…………(プイッ)」

「ちょっ!トウマ!何で目をそらすのよ!トウマ!聞いてんの?トウマ!」

『うるさい!』


 はい、タマと僕は怒られました。すいません。この馬鹿ロリのせいで。一応これでも僕と同い年とかちょっと信じられないんだけど。


「……リーダー。似合いますか?」


 最後に彼方が、ブローチを見せてくれた。

 まあ、彼女には紅いルビーは似合っていると思う。いや、ルビーが紅くないとかじゃなくて、色が彼女にぴったりって言うだけだ。


「似合うよ。とってもきれいだ」

「……ありがとうございます」


 なんか目をそらされた。照れているのだろうか。僕としては嫌われるようなことはしていない……はず!

「「「ふぅ……買った」」」

「お前ら本来の目的忘れてるだろ」


 一応釘をさしてみた。


「「「えっ?買い物ってそういうことじゃない(の?)んですか?」」」


 ぬかに釘だったようだ。または暖簾に腕押し。えぇー。理不尽すぎるでしょ。


「今日は携帯食料とか、水とか食材を買うって昨日説明してなかったっけ?」


 僕は額に青筋を浮かべんばかりの怒りの込めた笑顔で彼女たちに対応する。


「「「あっ、そういえば」」」

「ちょっとそこに座れ」


 あのあと、再び本来の買い物を済ませた。装飾品は手放せというほど僕も鬼ではないので各自装備していることを条件に、僕らの買い物は終えた。


―――――


 シャー………

 シャワーの水の音が聞こえる。

 その水しぶきは、髪を伝い、肌を伝い、四肢を伝い下へと流れていく。

 そして私は自分の体を見る。

 小さい。

 何から何まで小さい。

 身長とか。……いろいろ。

 む、胸はそこまで小さくないわよ!平均より少し劣っているだけで……小さくはないはず!

 最近は大きいのよりも小さいほうが好まれる傾向にあるって以前テレビで見たから!でも、女としての自尊心的には……。


「むー!」


 自分のものを押さえて思う。

 これ、少しぐらい大きくならないかしら?たとえば体の余計な脂肪をこっちに……。いや、世界中のみんな!私に少しだけ体脂肪を分けて!そこまで多くなくても良いから!


 シャー

 シャー

 シャー。

 男なんて死ねば良いのに。

 何よ!ちょっと大きいからって調子に乗って!クイナが……うぅっ。彼方も同じような悩みだったわ。同志ができた気分よ。


 そういえばトウマって、『昔からゲームは得意だけど』『失敗したらリセットする癖がある』のよねえ。

 大丈夫かしら。突然リセットしようだなんて思わなければいいけれど……


 外に聞こえることのないシャワーの音の中で私は一つの不安の種を見つけてしまった。


―――――


 次の日。

 いよいよ出発だ。

 正直に言うとこれから、何が起こるかなんてわからない。僕として一番の懸念は『自爆癖』。

 僕はRPGをやっているとよくパーティのメンバーが死ぬことがある。それが、単なる盾要因だったらよかったのだが、僕の場合、仲間の重要ポジションが死んでしまうととたんに萎えてしまう。ゲーマーとして恥ずべき行為か、あるいはそれがゲーマー本来の姿かは置いておいてそういった性質だ。

 なので、もし、このゲームで『そういったこと』が起こると廃人になってしまうかもしれない。

 多分タマもこの癖については気づいていると思うので、おそらく同じ懸念事項だろう。

 タマは僕をフォローし、僕は僕自身をフォローする。

 うわっ、字面が格好悪い。

 だが、仕方がない。そういったキャラクターなのだから。


「準備はいいかねぇ!?」

「良いわよ!」

「良いですよ!」

「……行きましょう」


 僕らの旅の1日目、スタート。


 まずは、このアルムの町を東北東に向かって歩く。もちろんコンパスを持って。この状況でタマに任せてみろ。地図とか何もなしに廃人プレイヤー域に突入してモンスターに蹂躙されておしまいだ。

 だから絶対にタマにはコンパスと地図は持たせない。

 以前の『マイナスから始める人生ゲーム事件』のことをきっかけにそう思った。


 最初は順調な滑り出し。

 だが、それはあくまで『最初』だ。

 たとえどんなに適応力が高くても、ちょっとしたことで大変なことになる。

 僕らが相手をしていたモンスターは、いつぞやとはまた違う容姿の『盗賊』だ。

 個体差や、容姿に多々の違いはあれど基本的にステータスは『すばやさ』寄り。移動速度が速く、攻撃がよけられやすい。僕は『無限回復』があるため攻撃を食らっても平気だが、残りの二人は違う。

 双剣使いである、タマは器用さにマイナス補正がかかっている。だが、器用さとすばやさの伸びが速い。レベルリセットによるステータスリセットでかなり器用度が落ちているがベテランプレイヤーなだけあって、盗賊相手には互角に戦える。

 だが、大変なのは彼方だ。

 一応後衛という立ち回りなので、距離を詰められると魔法は使えない。

 魔法のエフェクトは自分にも害があるものだからだ。

 爆破なんかに巻き込まれたらひとたまりもない。今の状況ならなおさら。

 なので、彼女にはクイナが常についている。

 まあ、これが盗賊に対する連携みたいなものと思ってくれればいい。


「ふう、何とか勝てたわ」

「僕はそこそこ余裕だったよ。まあ、人の姿をしているのが厄介なんだけどね」


 盗賊は人間の形をしている。

 分かるだろうか。

 あの時はモンスターとして意識していたたからよかったものの、こうやって改めて対峙するとやっぱり人間を殺しているような気分になってしまうのだ。

 罪悪感は消滅のエフェクトとともに消えていくが、やっぱり、戦い終わったあとにたまに聞こえる断末魔はあまり耳にいいものではない。


 正直その程度ならまだよかったのだ。

 ここから、イベントの開始場所に向かう場所への道中、デスセンティピードがそこそこの確立でポップしている。

 さて、ここで情報を整理してみよう。

 デスセンティピード。

 すばやさと防御がやや高く、その上適正レベルも高い。

 そして、一番の特徴は巨大な図体だ。もうその気持ち悪さは計り知れない。今でも軽くトラウマものだ。

 長さ50メートルもの図体を鎌は一撃で屠っていたがこちらはそう簡単には行かない。


 そう、出てきちゃったのだ。

 デスセンティピード。

 いやー大きいですね。

 もうみんなの足はガクブル状態。みんなもう涙目です。

 だけどさ。ここで男見せなきゃいつやるの!?今でしょ!?

 僕は無理やり不敵な笑みを作り、構える。

 あ、もちろん攻撃は彼女たちですよ。僕は攻撃を受け止めてなおかつそこにカウンターを叩き込む係です。

 あんな虫と戦うなんて、とんでもない!


「おりゃあぁぁぁぁぁぁ!!」


 飛び上がったタマの双剣による右手での振り抜きがデスセンティピードの首?元を狙う。

 まあ、首周りだけでも数メートルはあるムカデの頭は切り離せない。

 そして、タマはムカデからのヘイトをとりターゲッティングされる。ムカデはそのでかい頭を器用に傾かせて空中にいるタマの体を狙う。

 タンク兼アタッカーの僕はその間に入り込み、『拳乱打』のスキルを使う。

 その夥しい拳の数々にセンティピードは大きく空に向かいのけぞる。

 この状況で、誰でも良いから攻撃してくれればよかったのだが、少なくとも誰も攻撃を加えようとしない。


 おそらく、クイナがこのパーティで慣れていたなら、この状況でも攻撃をしたのだろうが、残念ながらそれはなかった。

 まあ、今は僕たちがターゲッティングされているので地面に着地すると同時、『ステップ』を使い、タマを抱えて距離をとってムカデからの『頭部で押しつぶし』的な何かを回避する。

 そこに隙を見出した、クイナが『三日月切り』で止めを刺す。

 真ん中から真っ二つ。

 断末魔が聞こえる。


 本当にトラウマになりそうな光景だった。


「ふう、すいません。さっきは結構チャンスだったのに攻撃ができなくて」

「いや、まあ、結果的に無事だったからよかったよ」

「スミマセン。本当にスミマセン」

「ああ、トウマが女の子を泣かせてるー!」

「……リーダー、最低です」

「泣いてないから!もう、やめてくれよ!僕何もやってない!」

「時に優しく言葉をかけたら傷つくこともあるのよ。覚えておきなさい」

「分かりました。タマ」

「伏せ」

「おまえ、実は調子乗ってるだろ?」

「分かった?」

「分かり安すぎる」

「……リーダーとタマは仲がいいですね」

「まあ、腐れ縁だから」

「幼馴染でしょうが」

「本当にうらやましいです」

「どこがっ!?こいつ人の部屋に入ってきてはゲームを漁っては勝手に持っていくし、僕の秘密とかを勝手に覗き見て脅迫してくるし、一体どこがいいのやら」

「でも、お互いが必要以上に入り込まないというか、お互いの距離を無意識に把握してるから遠慮がないんですよね」

「そういえば、以前こいつの部屋のベッドの敷布団の裏のシーツの中に隠されていた、秘蔵コレクションがあったんだけど……」

「えっ?」


 クイナの笑顔が途中で凍りついた。

 彼方は少し頬を赤くするという反応。

 だが、あえて言わせてもらおう。『そういったものは持っていない』


「嘘をつくな嘘を。僕だってそのぉ……興味がないといえば嘘になるけれどそういったものは未成年は買えないようになってるだろ?常識を見ろ常識を」

「えっ?でも、あんたの読んでいる小説には大体そういったものが……」

「現実と創作物をごちゃ混ぜにするんじゃありません」

「で、今のは嘘なんですか?」

「うん、嘘嘘。根も葉もない真っ赤な嘘」


 そんな分かりやすそうなところに隠すわけないじゃないか。

 隠すならもうちょっとまともなところに隠す。

 2日目 

 僕らはイベントの一番近くの町に向かって歩みを進めている。

 その道中、ジャイアントアントよりもやや大きいヘルアントや、前回ちょっと倒すのに時間がかかったデスセンティピードなどと戦った。

 正直言うと、僕らはややレベルが足りてないが、それでもなお大丈夫なのは適正レベルの表記がソロでの討伐を対象とした場合なのが助けだった。

 えっ?お前、ジャイアントアントを適正レベル前に倒しただろ?

 あれは僕の奥の手の一つだから、おいそれと使えないんだよ。使った後はとてつもないぐらい疲れるし。


「トウマさん、レベルが上がりました!」

「おおー、で、これでレベルが9だっけ?」

「はい、皆さんに追いつけました!」

「おめでとう!よくやったわね!」

「……クイナさん。お見事」

「ありがとうございます!」


 このゲームにおいて、パーティはあまりレベル差がつかないように調整されている。

 経験値は『モンスターに設定された経験値×パーティメンバー』で計算して、ダメージを一番多く与えたやつが経験値を多くもらえるが、それでももらえる経験値差はそこまで多くない。

 もし、パーティ内でレベル格差が起こるようなことがあればそれはよほど壊れたパーティバランスだ。

 鎌たちみたいなのがその例。

 そういえばことあるごとに鎌たちって例に上がってる気がするな。


「それにしても、そろそろお昼じゃない?」

「そうですね。じゃあいただきましょう」

「お腹減ったな。じゃあ、みんな大好き携帯食料だ!」

「「「…………」」」

「あれっ?みんなどうしたの」

「あのう……携帯食料飽きちゃいました」

「まだ2日目なのに?」

「でもさすがに朝昼晩これじゃあねぇ……」

「……リーダー。お願いです、料理作ってください」

「…………」

「「「…………」」」

「…………」

「「「…………(ウルウル)」」」

「…………分かったよ」

「「「(パァッ!)」」」


 さすがにね。あんな目で見られたら、どうすればいいか分からないよ。とりあえず作るしかないでしょ。


「じゃあ、とりあえず、持っているものでどうにかするしかないね。携帯食料は……干し肉だから、だしとかに使えるかなぁ?」


 他にあるものは、調理器具、ちょっとした食材(野菜、卵)、必要最低限の調味料。あと、お米。

 できるかな。

 いや、これだけでも多少できるはず!


「とりあえず作るからちょっとも待ってて」

 この世界には料理スキルというものがある。

 これは、この世界におけるヘルプの一つみたいなもので『現実で料理ができない人』のためのスキルだ。

 ある程度の材料があれば、どんな調理をしようと、味付けをしようとそこそこの味になる。そういうスキルだ。

 分かっていただけただろうか。つまり、現実が料理ができる人、あるいは現実で料理に自信がある人はこのスキルをとることはあまりない。

 それこそ、以前の鎌とかわの怖がりようといったら………。あれは、ないな。ポロは一体どこのそんな自信があるのだろう。


「さて、この材料で作れるものか」


 火は、簡単に起こせるからいいとして、その日を使った料理はなんにするかだ。

 簡単な料理になるのは目に見えているのだが………。そうだ!

 小学校のころの飯盒炊爨ときの実力を発揮させてもらおう。メニューは、チャーハン。肉と野菜もあることだし、いっちょやってみましょう。


「~♪~~♪~♪」


 その様子を後ろから見ていた女子勢は、


「なんかトウマさんが主婦に見えます」

「あいつ家でも料理をある程度するからね」

「……リーダーの意外な一面を見ることができた気がします」


 できれば、こういうところは忘れてもらいたい。というか、タマ。お前僕よりも料理うまいだろ。こっちで料理しろ料理。


「上手にできました~」


 1時間半ほどしてできたのは、干し肉とねぎと卵で作ったチャーハン。肉は少し硬めだったのであまり合いそうにはなかったのだが、ご飯と一緒に炊いたらなんとなくうまくいった。閃きは大切ですね。


「「「「いただきまーす!」」」」


 四人でいただく食事(僕作)は、どんなものか感想をいただいた。


「どうですか?みなさん」

「「「普通」」」


 やっぱ、発想のひらめきの天才ではない僕には正当な評価だと思います。


「でも、携帯食ばかりで、味に偏りがあったので新鮮です」

「うん、久しぶりにしてはまあまあの出来じゃないの」

「……普通。普通」


 まあ、満足はしてもらえたのでよしとしよう。

 やっぱり自分の作った料理がおいしそうに食べてもらえるとうれしいよね。……普通だけど。

 3日目


 今日は、積極的とはいえないにしろレベルを上げるために戦うという方針だ。

 だが、回復アイテムの数には限りがあるので、数が少なくなってきたら戦闘はやめて一気に駆け抜けていく。

 景色は先ほど少しずつ変わってきて、1、2日目に見ていた草原ではなく、だんだん緑のおい茂る山などが見えてきた。

 目的の場所が確実に近づいてきている証拠でもある。

 この辺に出てくるモンスターは、ヘルアント、デスセンティピード、盗賊と加えて、ジャイアントスパイダーという蜘蛛のモンスターまで加わってくる。

 毒性は持っておらず、防御やすばやさ自体はそこまで高くないが、器用さが高く攻撃がかわされやすい。

 特徴的な攻撃は蜘蛛の巣をはくことで相手のすばやさや動きを制限する技だ。視界の範囲が広く、真後ろ以外はほぼ見えるというチートモンスターだ。掲示板……こういう情報があるというのはとっても便利です。

 みんなの駄弁だけでなく、それ以外の必要的な情報を載せてくれているからありがたい。


「それにしても、あれね。モンスターとほとんど出くわさないわね」


 タマが周囲を見渡してぼそっとつぶやく。


「まあ、しょうがないよ。一応季節設定は冬だから」


 気温自体は変化しないものの冬という設定のため、あまり虫系統のモンスターは見かけない。

 それこそ、道中戦ってきた虫系統のモンスターは種類こそあれ数はあまりなかった。一番多く対峙したとすればジャイアントアントぐらいだろう。


「……リーダー。あれはなんでしょう?」


 彼方が指で草原地帯のほうを指差した。

 その先には………モンスターの大群。

 …………えっ?

 一瞬理解が追いつかなかった。

 なぜどうして?どういうことなの?こんな中、モンスターの大群なんて、季節にとらわれないモンスターを集めることをしなければならない。だけれども、あれを確認する限り、虫系統のモンスターがほとんど。

 デスセンティピードが2体、ジャイアントアントが3体、ヘルアントが2体。うわぁ、死亡フラグが満載だ………


「よし、逃げよう」

「「「えぇっ!?」」」

「仕方がない。ここは戦略的撤退だ」

「ちょっと!あそこにひとがいるんだけど!?」


 まあ、誰かが列車をしているのには予想ついている。まあ、しょうがない。どうにかなるだろう。


『ちょっ!そこの人助けてぇ!お願いしまーすうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!』

「どうする?助ける?」

「……くそっ!助けますよ!みんな!」


 僕は拳を構えて、先攻部隊のタンクとして向かった。そしてそこでであったのは………。


「おぉ!?坊主久しぶりじゃねえか!」


 僕が椅子ごとひっくり返した尺八さんでした。

 まさかこのタイミングで出会うとは思わなかったよ。


「…………」

「ちょっ!無言で走り去らないでくれよ!お願いします!」

「ちぇっ、しょうがねえなあ。いくよ!みんな!」


 向こうからやってきたのは、双剣を持ったタマ、そして、片手剣のクイナ。その少し後ろでは彼方がいる。

 僕はいつものごとく拳を構えて、『死の怪物列車デスモンスタートレイン』を見据える。僕が瞬時に下した判断はこうだ。

「各自、自由にモンスターを殲滅。尺八さんは彼方を守ってください。あの魔法使いです」

「あ、ああ、分かった」


 僕は拳を構えて、デスセンティピードと、ヘルアントを2体動時にターゲッティングし、一気に距離を詰める。ヘルアントの大きさは高さ5メートルと大きさ自体はジャイアントアントと変わらないが一番の武器はあの巨大蟻よりも高い防御力とそして、高い攻撃力だ。

 もちろんデスセンティピードにはかなわない。あいつの牙には一応毒があるらしい。

 僕は『ステップ』で駆け出し、『ジャンプ』で地面を踏みしめて飛ぶ。

 一気に飛び上がり、ヘルアントの頭に着地と同時に更に『ジャンプ』を使う。今の『ジャンプ』の衝撃でヘルアントのHPは1割ほど削れ、僕がターゲットされる。

 そこから僕は更にスキルを使う。デスセンティピードの折り曲げられた体の背中を利用して更に『ジャンプ』する。今のでスタミナが半分ほどにまで減る。

 その状態からやつの弱点である口元の上を捉えてそこに拳を構える。


 デスセンティピード。全長25メートルほどあるその半分は地面についており残り12メートルは蛇のように地面から浮かせて前進している。そして結果やや前方向に傾いているため頭の高さは7メートルほど。その高さにある頭を拳で打ちぬき地面に這い蹲らせる。

 すると僕の体はもちろん、投げ出される――が、僕の真下には僕をターゲッティングしたヘルアントが待ち構えている。

 体勢を整えそこから、ヘルアントの頭に着地と、同時に『ステップ』を使いデスセンティピードに向かって止めを刺す。

 落下の勢いもあいまって足場にされたヘルアントのHPは更に3割ほど削れ残りは6割。


 僕も先ほどの落下でHPが3割ほど持っていかれた。

 足場にするために蹴りつけられたヘルアントのほうがダメージが大きいはずなのだがやっぱり耐久力もあるらしい。働き蟻だけに体力がある。

 だけれど僕のHPは『無限回復』で現在進行形で癒されている。

 スタミナの回復も多少早いので『ステップ』で距離を詰めて、『拳乱打』で消滅させる。


 そして見回してみると多少時間はかかったもののみんなも全滅させたようだ。

 

「ふう、助かったぜ」

「うん、よかったよかった。じゃあ、今回のイベントに尺八さんも参加してくれるよね?」

「え?いや、俺は別の用事があるからこれで―――」

「ね?」

「えっ、いや、そのぉ」

「ね!?」

「あの、ええとぉ…」

「ねぇっ!?」

「あ、はい」

「ありがとうございます。あっそういえばフレンド登録し損ねましたよね。フレンド登録してくれませんか?」

「あ、ああ」


 半ば無理やりな感じで僕のパーティにまた一人仲間が増えました。

 ちなみに今の戦いでみんなのレベルがうなぎのぼりだった。

 僕とタマと彼方は3上がりクイナは2上がった。

 尺八さんは今回どのモンスターにも攻撃していない上に僕のパーティにも入っていないので、経験値0でした。

 残念!

評価とかくださると全裸になって喜びます。いや、本当に全裸にはなりませんけど…。次回、一章最終話。結構展開飛びます。土曜日です。

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