表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/38

第二十四話 帰還、宿屋にて。

「ふう、戻ってきたぁ」

「少し疲れましたね」

「そういえばみんなどこに行ったんだろう?」


 見渡す限り一面の人。もう夕方なのにまだここまで人がいるところを見ると夜になっても人であふれかえっていることだろう。


「宿じゃないですか?」

「ああそうか、とりあえずフレンド登録から呼び出してみよう」

「そうですね」


 お互いがお互いのフレンド登録者の画面から目的の人に向けてメールをする。僕は一応鎌に連絡をした。あいつは中二病だが、一応一パーティの長だ。きっとみんなをまとめてくれているに違いない。

 そう…………だよね?


「ああ、私のほうはこの近くの宿みたいです。リョウカさんが来てくれます!」

「あれっ?クイナって確かリョウカさんのことを『マスター』って呼んでなかったっけ?」

「あれは、リョウカさんがカフェの営業時間の間だけですよ。基本的によほど重要な事柄じゃないと仕事中にリョウカさんとは呼びません」

「へえ、そうなんだ。いやぁここに来てそんなことを知ることになるとは思わなかったな」


 はははと、僕は右手を頭の後ろにおいて、頭をかきながら笑う。

 …………そろそろ良いだろうか?


「ねえ、クイナ。冷たく引き離しといて言うのもなんだけど………」


 僕はまじめな顔をしてクイナにそう言った。

 僕は彼女がどことなく僕に依存してきそうだったのでとりあえず一度引き離した。が、もうそれも必要ないだろう。罪悪感もないといえば嘘になるし。

 頼られるのは嫌いじゃないが、かと言って依存されるのとは違う。

 持ちつ持たれつ、僕とタマみたいな関係を築きたい。僕はそう思う。

 彼女の戦闘スタイルは敵の陽動に使えるのでそれも有用だと思ったからというのもある。

 

「僕のパーティに入ってくれない?」


 まあ、もしかしたら入ってくれないかもね。さっきの誤解も解けこそはしたものの、見た人を不快にさせるような情景だったのだろう。

 そういう意味では嫌われてるかもしれない。


「はい、ありがとうございます。でも、一応リーダーたちと話し合ってから決めます」

「うん、ありがとう」


 一応第一関門はクリアだ。

 ついでにクイナが入った後のことについて考えておこう。

 男一人(鎌は除外)に女三人。嫐られるのがオチだ。

 男女男での嬲るではなく女男女での嫐。これ重要。僕一人だと女子を相手しきれない。

 よし、もしクイナが入ってきたら、治癒師(男)をパーティに入れよう。そうしよう。


 リョウカさんが来て一緒に鎌も来たので僕らは一緒に宿に行った。

 そういえば一つ気になってることがあるんだよな。

 鎌についてだ。

 鎌がどうして僕にお金を請求をしなかったのか。

 僕が一時的にとはいえ尊敬をして、曲りなりにも師匠ともいなくもない。だが、彼のプレイスタイル上、情報と対価がつき物だった。

 何かをすれば何かをもらう。何かをもらえば何らかの形で返す。

 僕の知る鎌の噂というか、タマから聞いた噂だ。

 その彼は、僕に対してはほとんど対価という対価を求めてこない。そして僕もそれを払っていない。

 変な疑問を胸に、僕たちは宿屋に向かっていった。


 鎌は気を利かせてくれたようで、部屋を二部屋取り、男女と分けていた。

 この状況でなら、心置きなく話せることだろう。


「なあ、鎌」


 僕はベッドに腰をかけて、もう一つのベッドに腰をかけている鎌に話しかけた。


「うん?なんだい?」

「お前さあ、一応情報を売るのにはお金を一応もらってるよね?」

「うん?ああ、それね。そうだけど?」

「じゃあ、どうして僕にはお金を請求しなかったの?」

「特に理由はない。気に入ったから。じゃ、駄目なんだろうねえ………」


 鎌と僕は数秒見つめあい、鎌が堰切ったように話し始めた。


「僕はねえ、僕に尋ねてくるいろいろな人を見てきた。まあ、全員君のような子だったよ。最初に答えた質問以外は」

「…………」

「この世界では、どうしても拳は不利だ。リーチも短いし動きは単純だ。だから、僕の元に尋ねてきた人はみんな、剣や槍の使い手。君を見てこいつには教えたいってそう思わせる何かがあった。だからさ」


 相変わらず中二臭漂う回答だと思ったけれども、そこはスルーして黙って聞いた。


「まあ、あくまで実験みたいなものかな」


 最後に言った。


「鎌はどうして拳闘士になったの?」


 その言葉を聞いて鎌は何もない虚空を見上げて言った。


「それが、今の僕の自己表示みたいなものだからかな」

「くさっ!お前本当に中二臭い!」

「それが結構まじめな話なんだよねえ」


 鎌はあの笑顔で僕に続ける。


「僕は、最初に太刀使いになるつもりだった。でも、僕はならなかった」

「はあ」


 その話しは聞いたことがある。だが、なんでならなかったのかまでは聞いていない。


「発端はこのゲームを始めたばかりのころだったかな。当時はまだ、サービスが始まったばかりだった気がする。でも、十分たくさんの人たちがこのゲームをプレイしていた。

 そんな中僕は一人歩いていたんだよ。アルムの町を。僕も片手剣使いをやっていて、そのころは結構楽しかったよ。で、あるとき固定パーティから誘われたんだ。その固定パーティに誘われて入ったんだ。

 でも、1階層をクリアしようとしたときかな。そのときのダンジョンはいやに狭くてね、横に三人並ぶのがやっとだったんだ。

 リーチが長いということは狭い空間では不利だった。僕たちのパーティは全滅寸前まで追い込まれたよ。僕と一人だったかな。その子と逃げだして、何とか戻ってこれた」


 鎌がそこまで言って、一泊おいてから「でも……」と続ける。


「その子が言ったんだよ。『何で仲間を攻撃したのか』ってね」


 あれっ?これってもしかしてあれなパターン?


「僕の攻撃、間違って味方にも当たってたみたいでね。振りかぶりのモーションや、振り切った剣にぶつかってっていうことが多々あったんだ。もちろん僕も他のみんなからそういった攻撃を受けなかったわけじゃない。

 僕がそのときのパーティでの役割はアタッカー兼タンクだったからHPや防御が高くてさ」

「いや、もう良いよ!そこまで言わなくも良いよ!散々長々と語った挙句ようは前のパーティで仲間攻撃しちゃったから転職しちゃったんだろう!?そういうふうに要点だけをまとめようよ!中二病と日本人特有の『もったいぶったしゃべり方』とかなしにさあ!」

「僕、仲間、攻撃した!以上!」

「片言になってる!脳筋みたいになってるよ!いや、今の職業的にぴったりなのかもしれないけれどもさあ!」


 ドンッ!


 隣の部屋からけりつけられたような音が響く。僕と鎌は思わず体をビクッ!と震わせて音のした壁を見た。


「隣にいるのは、タマたち?」

「イエス!」

「じゃあ、静かにしたほうが良いよ。夜うるさくするとあいつ容赦ないから」

「オーケー。じゃあ、静かに話そうか」

「そうしよう」

「じゃあ、次は君の番だよ。正直本命は誰?」


 不意打ちだった。

 いきなりのことで心臓が振るえ、急速に唇は乾き、冷や汗が出てくる。

 だってさ、この流れでいきなりそういう類の話とかなしでしょ。


「ちなみに耳打ちでお願いね」

「え?あ、うん」


 できるだけ恥をさらす相手は少ないほうがいい。

 僕は彼の耳に顔を近づけ、大声を出そうと気づかれぬよう直前に吸い込んだ空気を吐き出そうとした瞬間、


 ドォン!


 扉が勢いよく開き、そこから、タマと彼方が見てきた。


「鎌!そういうのはなしでしょ!?」

「はてさて、何のことやら」


 鎌はしらばっくれている。しかも演技は堂に入っている。こいつは外で演劇か何かでもやっていたのか。そういえばリョウカさんのところでもその演技のスキルを使ってたな。


「だってあんたたち男同士よ!それが、そのぉ………顔を近づけるなんて………うぅ」

「ああん!?聞こえんなぁ!?」


 鎌、絡むのはやめなさい。かわとポロとつるむと少なからず性格が荒んでいくのだろうか。


「……リーダー。ちなみに誰なんですか?」

「黙秘権を使おう」

「なら、仕方がありませんね」


 彼方はあっさり引き下がる。おそらく巻き込まれたのだろう。だが、彼方の顔が少し不安げな顔だったのはなぜかは分からない。


「それよりも、君たち、どうして人の話を盗み聞こうとしてたのかなぁ?」


 まさかこいつ、あいつらをおびき寄せるためにわざとあんな話を持ちかけたのか?

 確かに女子は恋バナをすると聞いたことがある。


「え、えっとぉそのぉ………」

「ああん!?聞こえんなぁ!?」


 鎌、天丼するのをやめなさい。やっぱりあの二人は人の皮をかぶった妖精だったり悪魔だったりするのだろうか。


「…………まあ、おびき寄せたのは君たちと交流したかったからなんだけれどね。今日は無礼講だ!お互い腹を割って質問タイムといこうじゃないか!」


 なんだかんだ言っても鎌は楽しいやつだ。

 空気は読まないこともあるし、中二病発言はするし、時にそれ以上に何を考えているのか分からないことがあるけれど、こいつは少なくとも悪いやつじゃない。


 今夜は非常に楽しい夜になりそうだ。


―――――


 夜中に一着のフレンドからのメールが来た。

 差出人はかわ、内容はノルマ達成とのこと。

 僕はそれに『明日合流して、ポロの連絡を待とう』と返す。それに対する返事はオーケー。

 時刻は真夜中の3時。みんなはもう各自の部屋に戻って寝ている。

 となりではトウマ君が寝ている。とっても気持ちよさそうな寝顔だ。だが、何で猫みたいに布団に包まっているのか突っ込むべきなのか。

 明日には彼らに言ってこのパーティを抜けさせてもらおう。トウマ君は分かってくれるだろう。


「それにしても、不思議だなぁ」


 ウイルスのバグとやらがどうしても気になって仕方がない。

 普通こういうのはプログラムを書き換えられない限り、起こりうることはないはずなのに。

 誰かが、アクセスをして書き換えたか、あるいは運営の誰かが手を滑らせたか。

 だが、一度作ったプログラムに『書き足す』ことはあっても『書き換える』ときにはバグが起こらないかテストをしてもおかしくはないはずなのに。

 なぜ、バグったのか。そこは、気になるところだ。

 前代未聞の奇バグ。運営は今もウイルス解析やらなんやらやっていることだろう。おそらく、ウイルスの解析なんてものはほとんどできていないだろう。

 ログアウトできないというバグの都合上、そういったものは間違いなくブラックボックスだ。下手にいじれば、クリアできなくなり一生元に戻れない可能性すらありうる。

 ならば、運営は完全にサポートに回るしかない。まあ、それでもウイルス解析は行っていくだろう。どのスクリプトが異常を起こしているか分かれば、即座に対応できるはず。期待しないで待っていよう。


 キャラ紹介 No.8 彼方

 ジト目、プラチナブロンドのセミロングのお下げ。

 無表情ではないが声が小さく、あまりしゃべっていないと思われがち。

 トウマやクイナと同じく、苗字と名前をあわせてつけた名前。

 もしかしたらこれが鎌の最後の……何でもないです。

 一章はそろそろ完結に近づいてきましたよ。あと五話ほどで終わります。

次週、地雷作者の面接が迫る。

「どうしてこの学校を受けようと思いましたか?」

「えとっ!あのっ!そ、その!――」

 作者の将来の分岐点が……決まる。

 来週水曜更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ