第二十二話 再会 前編
僕には、何が起きたのか分からなかった。
本当に何が起こったのか分からない。今の僕には到底理解できそうにない。
だって、知り合いの女の子が僕を見るなり、泣き出して走り去っていくんだぜ。
理解しろなんていわれたほうが酷な気がする。
まあ、その程度ならよかった。
彼女のパーティメンバーと思わしき人たちが僕を敵を見るような目で見てくる。
僕は無実だというのに。だが、クイナがここにいるということはあの人がいる可能性もある。
そう思い辺りを見回すが、目当ての人物が見つからない。
「私を探しているのか」
突如殺気を感じて、僕は回避行動をとろうとしたが、時はすでに遅し、いや、彼女に目を付けられていた時点でもう遅かったとも言える。
首筋に銀色に光るナイフが当てられる。
これほど肝を冷やしたことはないだろう。全身の毛穴という毛穴から汗が吹き出るような感覚がする。
「ふむ、中々成長しているな」
リョウカさんは淡々と感想を述べた。一方的に殺人直前までやっておいて成長もクソもない気がするが。
「まあ、それはおいといて、だ」
彼女は突然目つきを変えて、僕をにらみつける。
そして、彼女は握りこぶしを作り僕の頭頂部に拳を振り下ろした。
僕のHPバーが2割ほど吹っ飛ぶ。うわぁ、この人普通に強いやあ。
「お前は馬鹿か?」
「な、何が?」
『無限回復』で再生していくHPを横目にリョウカさんからの威圧的視線と言葉に返す。
しかもいきなり馬鹿呼ばわりをされたことに若干の怒りと驚きを隠せずに返す。
「クイナがお前が女の子をはべらせている最低野郎だと思ってしまったな。お前は行かなくても良いのか?」
「何でですか!僕は何も悪いことはしていないでしょう!ねえ、みなさん!」
僕が、彼女のパーティメーンバーにそう訴えかけると、彼らまでリョウカさんと同じような視線を投げかけてきた。
四面楚歌とはまさにこのこというのか。ほら、仲間からすら冷たい目線を送ってきてるんだぜ?
鎌はまあ、事情を知っているからいいとして。
「まあ、あれだ。とにかく追っていけ。多分町の外にいるはずだ。クイナのレベルはそこまで高くないんだ。悪いが、頼む」
「ち、ちなみにいくらなんですか?」
「――――7だ」
「なら、先にレベル上げといてくださいよ馬鹿ぁぁああぁぁぁぁ!!」
(ステップ、ステップステップ!)
僕はステップを使って、町の外に向かって高速移動を始めたのだった。
そのレベルでこの辺を歩こうものならキルされかねない。
―――――
「はあ、クイナにもあいつにも困ったものだなぁ」
「まあまあ、そう言わないであげてくださいよ」
一応彼女だってそういうことは自覚しているはずだ。彼女がリアルで何があったかは知らないけれどそういう風になるに至ったことがある。
「ああ、鎌か。二人はどうした?」
「レベル上げですよ。僕がカウンター戦術で盾やっていたら二人とのレベルに差ができてきたんで調整の為に」
「そうなのか」
相変わらず、リョウカさんは大変そうだ。まあ、僕は大変すら面白さに変えてしまう変換機能がついているのでそれほど苦痛に感じることはない。………勉強以外は。
いやいやそういうことではなく。
「それにしても、お前がいたのにどうして――――ああ、そういうことか」
「?」
「お前とクイナは一応顔を合わせてはいるがあの時はメイド服だったし、何よりアクセサリーのかつらを付けていたからな。間違えたのか」
「ちょっと待って。それだと僕が素で女の子と勘違いされたって言うこと!?」
まあ、女顔って言われたことがないといえば嘘になるけどさ。
「そういうことだろうな…………」
リョウカさんは珍しく苦虫を噛み潰したような、顔をする。
「「まあ、いっか」」
そして何事もなかったかのようにもとの顔に戻った。
あの二人とかかわるにはこういう割り切り術も必要なのだ。ちなみにいくつか言っておこう。僕とリョウカさんはなんだかんだ言っても根本的なところで同じなのでツッコミという気質は実は同じだったりする。
パーティを組んだ直後は二人そろって、ツッコミをよくやったものだ。
そう思いながらトウマ君の消えていった人ごみの中を眺めていた。
それに女顔どうこうって話もいまさら感がある。
「じゃあ、ずっとここにいるのも邪魔になるし、そろそろ引き上げるか」
「ええ、そうですね」
僕は彼女たちに向き直って彼女たちに指示を出す。
「みんな、さっさと宿を取りましょう!みんなそろって路上生活なんていやでしょう?」
僕は彼女たちをせかし、宿を取るようにさせる。
彼はまったく女難の相が強いらしい。その女難に巻き込まれている僕ってどうよ?
いや、変な意味じゃなくて、クイナさんが間違えた僕って女の子として間違えたんだよね?うわっ、………男としての自信なくした。
ま、まあいい。
とにかく、あとは彼に任せるとしよう。漢を見せてあげなよ。トウマ君。
さて、僕も宿探しに取り掛かるとしよう。
このまぶたの熱は夕日の光にしみた目玉の熱に違いない。決して泣いているわけじゃない。
―――――
どこだ!
辺りを見回すがどこにもいない。
やはり町の外に出たか?くそっ!ああ、手間ばかりかかる。まあ、彼女がほかの人に頼れたということは成長した証か。
さすがに、周りは信用できる人ばかりじゃない。僕だったからこそ良かったものの、他の男とかだったりとかしたら以下云々。
彼女とは依存し始める前に一回別れたのはやはりよかった。
どことなく弟と同じ雰囲気がしたからそういう意味では弟に感謝というべきか。
兄弟のように依存する感覚はお互いを堕落させていくものだ。
それより今は彼女だ。
このゲームの町の広さや地理関係はリアルに極めて近い。
なので、一度迷うと中々外に出られないのが実情だ。
場合によっては町から出ることにすら一日かかるかもしれない。
だから、とりあえず高いところに上ってそこから、町の外へ向かっての出口を探す。
彼方に案内してもらった、あの場所だ。
町の外に向かう場所を探し、クイナの走っていった方向から一番近い入り口は………向こうだ!
僕は、そこから飛び降り、着地と同時にステップを使い出す。
落下によるダメージでHPが大分削れていたのだが、どうせすぐ治る。『無限回復』のいいところは『自然回復』と違い、スキルを使っていても回復するという点である。
まあ、スキルを使っていると若干回復速度が遅くなるが。
スキルがスタミナが切れて発動できなくなると即座に歩き出し、スタミナがある程度回復するまでは競歩ぐらいのスピードで町の外に向かって歩く。そしてステップの繰り返しだ。
そして、町の外へたどり着いた。
見渡してみるとそこには草原が広がっており、少し日が傾いて夕方になりかけている草を少し紅く染めていた。
まだそこまで遠くにはいないはず。そう思い町からかけだしってしばらくする。
その中に一人人の影が合った。
クイナの影だ。やっぱり予想通りだったらしい。
僕はそこまで、彼女を刺激しないように近づき声をかけた。
「クイナ」
どう声をかけたらよいのか分からず、まじめモードで声をかけた。
振り向いた彼女は泣いていたのか、目元が赤くなっている。僕にはなんでそんなことになったのかまるで理解できていない。そういうところもリアル志向なのかとかいう気の抜いた思考は出てこない。
「と、トウマ……さん?」
「さっきはどうして逃げたのさ?いきなり逃げ出されたら傷ついちゃうじゃないか。ウサギは寂しいと死んじゃうんだぜ?」
「トウマさんは、寂しそうじゃなかったです」
うーん。通じないか。
「………クイナ、ちょっと来てみ」
僕は彼女に手招きをして、近くまで来させる。あまりほかの人に聞かれたくないし、聞いている人も少ないのだけれどそれでも、こさせた。
「えっ?」
「クイナ、もしかして誤解した?」
「はぁ……?」
「さっき、リョウカさんから『お前は女の子をはべらせる最低野郎か』って言われちゃってさ。端から見てるとそういうふうに見えたのかなって思ってさ。もしそれで気分を悪くしたのなら謝るよ」
これが今の僕の本音だった。
「い、いえ、私が勝手に誤解しただけなんです」
彼女からは許しの声が出た。
やっぱり誤解………だったのかな。
そうなのだろう。割り切ろう。
「さあ、戻りましょう。みんなが心配してしまいます」
そういうと彼女は屈託のない笑顔を見せた。
やっぱり女の子には笑顔が一番だよね!
僕の口にも自然と笑みがこぼれて、彼女に笑顔で返していた。
このとき僕は本当の意味で彼女と再会したのかもしれない。
だけどこういうときに限って邪魔が入るんだよな~。
僕はこういうハッピーで終わりそうなところに茶々が入るのは一番嫌いなんだ。
ああ、腹が立つ。
「よう、そこの。金目の物を置いて去ってもらおうか?」
珍しく僕は怒った。
僕の怒る沸点は3つ。
1つ目はムードをぶち壊されること。
2つ目はなんとなく。
3つ目は僕の大事なものに手を出されたとき。
以前のゲームのデータ削除事件は3つ目に該当。
ムードをぶち壊されるとどことなくイラッっと来る。
なんとなくはカルシウムが足りていなかったりどことなく違和感を感じているとき。
まあ、自分を必要以上に非難されたら怒るのは3つに入れてはいない。
「人の邪魔してくれてんじゃねえよ。このクソども」
胸の中にもやもやと黒い感情がわきあがってくる。
単に今目の前にいる盗賊たちが、『プレイヤー』だったらまだよかった。
だが、このムードから空気を読まずに割って入ってきたところを見れば予想はできるだろう。
モンスターではないが結果的にモンスターと同じような扱いを受けているやつら。
名前『盗賊』
アイテムを狙って襲い掛かってくる、NPCたちだ。
キャラ紹介 No.6かわ
忍者。顔の下半分を隠している。
三白眼。一撃で殺すことに命を懸けている。
『暗殺』『隠密』『ツバメ返し』『儚木』の4コンボは恐れられている。戦ったらほぼ確実に死ぬから。
なので、ゲーム内で鎌の情報を漏らした、あるいはもらそうとしたプレイヤーをキルする。もちろん、もらされたプレイヤーには口止めをする。それができないようであればキル。
となっている。
鎌は「別に殺さなくてもいいんじゃない?」とかわに言っている。が、それをやめようとしないので今のところは保留になっている。
二つ名持ちで『見えない敵』と呼ばれている。
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短くなってしまった。
まあ、半分つなぎみたいなものでこれも構想にはあったもののそこまで重要なものじゃないですし。
昨日私立の入試でした。いやあ、疲れた。
多分このあとがきが全部の中で最長。




