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第二話 魚釣りはヘラで始まりヘラで終わる


 ホワイトアウトからさめると、視界に色がついた。

 見渡す限りに広がる草原。

 頬をなでる風。

 降り注ぐ太陽の熱。

 ああ、これって癖になりそうかも。なるほど。感覚もクオリティが高い。こういうのはやっぱりあれだ。うん。なんというか、とにかくすごい。

 僕の初期装備を見てみよう。

 トウマ LV.1

 装備 武器 ショートソード(片手剣)

     腕 皮の篭手

     胴 皮の服

     腰 皮の腰巻

     足 革の靴

 なるほど、この見た目は皮装備か。これからモンスターを倒してお金を稼いでいくというわけか。僕はどっちかというとあれだな。片手剣よりも、太刀とかのほうが好きだな。よし、早速町に向かって歩いていこう。

 そういえば、こういうのって大体スキルって物があったはずだ。メニューを呼び出して、スキルの欄を選択し自分のスキルを見る。

 スキル 『冒険者』 冒険者バランスの取れた職種。攻撃や魔法どちらも覚えるがやはり、物理攻撃アタッカーとして使いたい。

 『ステップ』 スタミナを消費し高速で移動するスキル。

 『ジャンプ』 スタミナを使用しジャンプする。

 『自然回復』 戦闘時以外、スキルをしないことでHPとスタミナを回復する。

 『ど根性』 HPが1割をきった場合、防御が30%アップ。毒などの状態異常にかからなくなる。

 なるほど、みんな基本はこんなスキルなのか。

 よし、早速使ってみよう。持っているものは使わなくては損だ。

 『ステップ』!

 頭の中で念じるというそれだけで、体が思った方向に勝手に動く。少ししたあと再び体が動くようになるったので、町があると思える方向にステップを連発しまくった。途中スタミナ切れになって、しばらくしたあと再びステップをしてを繰り返して町に向かった。

 スタミナはHPと同じようにバーになっているのでとても見やすい。



 一番近くの町に着くのには十分ほどだった。

 その間ステップにはまった僕はずっとステップを使い続け、気がつけばステップのレベルが上がる直前のところまで来ていた。

 もう少し頑張りたかったけれどあいにく僕はゲームを満喫したいのだ。廃人プレイヤーみたいに最初の町の近くでレベルマックスとかいうふざけた芸当をするつもりはさらさらない。ゲームバランスはちゃんと考えられているのだ。ここまでは一体もモンスターと遭遇しなかったのはここら一体はモンスターと遭遇しないように設定されていたからに違いない。


 さて、これから初めてのネットゲームを始めていくのだ。

 まず、町のつくりを見に行ってみよう。


 ええと、ここらは商店が立ち並ぶのか。

 NPCたちが運営する商業店とプレイヤーたちが運営する商業店の二種類がある。

 NPCたちが運営する商業点の特徴は最初の町と言うことでお手軽な価格設定と皮の装備よりも豊富でいい種類の武器防具がある。

 逆に、プレイヤーたちが運営する商業店には、価格設定が序盤にしてはやや高く、その代わり序盤を優位に進めるほどの武器防具をそろえている。

 普通に楽しみたい場合はNPC、手軽にレベルアップしたい人にはプレイヤーということになるのだろう。

 MMOというのは自由度が実に高い。

 しかも、序盤ということはここには同じ実力ほどでしかも素人のプレイヤーたちがいるということだ。パーティを組むのにも最適だし、フレンド登録数もここで増えていくことだろう。

「それにしてもすごいなぁ」

 感嘆をこめてその商店街の地区を眺める。まだはじめて間もないプレーヤーのほとんどがここに集まっている。町は活気にあふれ、見たことのない昭和の時代のイメージと重なる。そこには、家族でプレイしている人こそほとんど見ないが、兄弟でプレイしている人やカップル、リアルの友達が実に楽しそうに町を歩いている。

 MMOは本当にすごいものだ。

 ………こんなところで一人寂しく町の様子を眺めている僕がとても惨めに見えてくる。

 この目頭の熱さは目にごみが入っただけだ。


 『ファンタジーファントムソード』は、10の階層に分かれている。NPCが持っている各階層の簡単な情報を見ると、なんと、ここには第7層にゴーストなどのアンデッド系のモンスターが出てくる階層がある。ファントム………あ。

 そういえばこのゲームのタイトルにあるファンタジーとファントム、ソードの英語のスペルの頭文字をとると『FPS』になる。オンラインなのに一人称ってどういうことだよ。

 このゲームのスタッフはこういった細かいネタを組み込んでくるのが大好きらしい。

 『○○ ○○ ONELINE』から単語の頭文字を普通はとるものらしいのだが、そこは『FPS』。常識から少し外れている。


 さて、ギルドに向かってみよう。

 ギルドといえば組織。

 ファンタジーの小説でよく取り上げられるギルドは冒険者ギルド。

 このゲームでは、冒険者と謡ってはいても、初期の『冒険者』というクラスの職業から、初期に選べるいくつかの職業『片手剣使い』『弓使い』『魔法使い』『盗賊』『盾師』『神父』『ダンサー』『槍使い』『拳闘士』といった具合にいくつもの職がある。しかも、『片手剣使い』『弓使い』『魔法使い』『盗賊』には、上級職があり、そのうち『片手剣』と『魔法使い』には上級派生の職業がある。また、サブ職業で、鍛冶師と商人といった職業もある。

 実に幅がひろく、とっても、自由度が高い。

 僕は、太刀を使えるようになりたいので、『片手剣』の職に就くことにした。

 ちゃんと熟練度を上げればその職業の技が使えるようになる。

 このゲームでは、職業ごとにステータス変動があり、初期は『冒険者』となっており、補正は全ステータスをプラス10するというものだ。レベルの低い間は、冒険者でレベルを5ほどまで上げ、そこから職業を変えるというのがセオリーのようだ。

 僕もそれに習い、外である程度レベルを上げてから、『片手剣使い』の職業に就くとしよう。ちなみに冒険者の利点は初期ステータスの底上げだけではなく『全ての種類の武器』を装備できることだ。とはいっても上級職の武器は、一度その職業になったものしか装備できないという縛りがあるが。そしてその武器を装備している間はその上級職のスキルが使える。

 廃人プレイヤーの行き着く先は冒険者ということか。


 釣りはヘラで始まりヘラで終わるとはこういうことを言うのだろうか。


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