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第十九話 到着アルムの町

 あれから二日。

 僕らは、アルムの町へ向けて歩き続けた。

 途中でジャイアントアントたちからモンスターが変わり、昆虫へと変わっていった。巨大な蟷螂や飛蝗、時には蝶といったものまで出現した。

 蝶が出てきたときは彼方さんは本当に役に立った。それにお礼を込めて褒め称えていると。


「……別に。たいしたことじゃないです」


 といって顔をを赤らめてそっぽを向いた。照れているのだろう。まったく、かわいらしい。好感度がアップだ。

 そう思って、タマへの対応をおろそかにしていると。


「ふーんだ!私はどうせ役立たずですよー!」


 と、こっちがいじけてしまった。なんでこっちがご機嫌取りをしなければならないのだろう。さっきのとき無理矢利押し付けて置けばよかったか。くっ!悔やまれる。

 それにしてもあれだな。こっちに来てもう一週間を超えたな。

 未だに1層を攻略したと言う報告もないし、攻略組は何をしているのだろう。

 そう思ってタマに聞いてみた。……ご機嫌取りもかねて。


「ねえタマ。結構時間経ってると思うんだけれど、そこまで攻略されていないのはなんで?」

「そこの理由はまず一つ目は第2層のマップが実装されていないことと、こっちの攻略が異様に時間がかかっていることが理由よ。一昨日話した様に、このゲームは加速されているから、やり込めるようなシステムになっているのよ。だから1つの階層をクリアするのに異様に時間がかかるのよ。マップ然り、イベント然りね」

「……しかも、今はログアウト不可の状態。何がきっかけで死ぬか分からないから慎重に行動をしているのもあると思います」


 なるほど、それなら時間もかかるね。

 そういえば僕らって一応適正レベル以下で攻略をしてるよね。僕とタマは。この辺の適正レベルは8からだ。

 僕らのレベルはあれから1つ上がってタマと彼方さんは8、僕は7という状況になっている。

 僕は基本的にタンクの仕事をしているので、攻撃に回ることがない。このゲームではとどめをさした人には経験値に補正がかかるようにしている。

 なので、鎌がレベルが高かった理由は今、どことなく予想がついている。

 タンクとして利用されて、攻撃を受ける。で、そのまま相手にカウンターといったところだろうか。


 そう見てくると本当に鎌が不憫に思えてくる。

 何?友達にする相手、間違ってるんじゃないの?

 もういっそ言ってやりたい。というか、鎌は喜んで利用されて相手の攻撃を拳一つで押し返している情景すら思い浮かぶ。

 あれ?もしかしてあいつ……マゾ?

 ……………まさか……………ねえ。


 こうして、僕らの一日は過ぎていく。

 このゲームでは道のところどころに宿屋が設置されている。

 基本的にいつでも休めるとのようにとの配慮だ。

 大体半径1kmに1個から2個ほど設置されているので、宿が埋まっているということもあんまりない。

 今夜は彼方さんのパーティ加入祝いということで僕がおごることになっている。当たり前だ、これが男の甲斐性ってやつだ。

 今までパーティ祝いをしなかったのは道を多少ショートカットをしたため、宿屋が道中になかったからだ。

 夜中に火をたいていると凶暴化したモンスターたちが襲ってくるのでそういったことができなかったのだ。


「……ありがとうございます。私のためにここまでしてくださって」


 もうこの子に告白したい。耳を澄まさないと聞こえないような小さい声も愛嬌に思えてくる。


「おい、そこの変態」

「はは、何のことかな?」

「見るなら私のことだけ見ろ」

「むしろそっちのほうが危ない気が、ブワッフ!!」


 いきなりアッパーとは、卑怯なり。

 変な声が出てしまったじゃないか。このゲームでは痛みがないとは言え、鈍い痛みはちゃんと通るんだぞ。脛を殴られて骨が折れたらすね打ったぐらい痛いんだぞ。


「……私のことは彼方でかまいません。では、みなさん。乾杯」

「「乾杯!」」


 彼女はとても、おとなしくてどことなくクイナと似ている子だ。周りに気を使ってそうなあたりが特に。

 まあ、なれないパーティだ。しばらくはそっとしておこう。しばらくすればきっと、ちゃんと話しかけてくれるようになるはず。

 今夜のパーティは他の部屋に誰もとまっていないこともあって大いに盛り上がった。

 ちなみに僕は、テンションが上がりすぎて眠れなかった。

「ああ、眠い」

「ちゃんと寝てなかったからでしょ」


 寝不足でした。

 ですよねー。当然ですよねー。

 すごいまぶたが痛い。涙が出ない痛い。

 水を目の中に入れよう。すると、少しは楽になるかもね。というか、なんでこんな時だけ目茶苦茶痛いのかな。そこをリアルに再現してんじゃねーよ。

 お昼は、まあ携帯食料でどうにかして、それ以外はずっと、モンスターを倒してだのなんだのってもう大変なのさ。

 ちなみに、アルムの町の前には川が流れているので、それが目印。


 もちろんその近くには魚系のモンスターや、それを狙うモンスターがいる。

 目撃情報例としては一番有名なのは熊。それに狙われる、虹鱒っぽい巨大な魚。鮭じゃないんだ。

 鰐なんかは違う階層で出てくるらしい。

 他にこの辺で出てくるのは、毒性のない蛇ぐらいだろうか。

 そう思い、再び歩き出そうとしていたときに異変は起きた。


 ドドドドドドドドドドド…………


 地面が揺れ、何かの群れが近づいてくるような音がする。

 だが、このあたりには群れで行動するようなモンスターはいない。

 正直に言うと、心当たりはないでもない。目をこすり集中する。

 すると向こうから何か巨大な影が。

 それは、毒をもっていて漢字で書くと百の足。

 名前にするとムカデ。

 巨大なムカデが、僕らに向かって走ってきていた。

 サイズにすると、実にジャイアントアントの5倍。25メートルもの長いからだが、僕らに向かって突進をしてきた。

 これがゲームでなければ軽く失神する自身がある。ついでに言うとすでにトラウマになりそう。


「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」


 僕ら3人の声が見事にこだました。普段声が聞き取りづらい彼方の声まで僕らと同等、またはそれ以上の声を出していた。

 ははは、彼方までびっくりしてるよ。

 もういやだ。ログアウトしたい。

 そう思いながらも、みんな涙目で武器を体勢を整えた。多分ここまで消極的な戦闘は初めてだと思う。

 僕は拳を構えて、タマは双剣を構えて、彼方は杖を構える。

 やっと少しバランスが整ってきたパーティだ。大切な仲間をここで失いたくない。

 でも怖い。恐怖≦仲間を見捨てることへの罪悪感、でよかった。下のイコールは気にしない。

 ちなみにやつの名前は、デスセンティピード。

 ポップ率はそこまで高くはないらしく、出会えば死亡フラグといわれる初見殺しさんだ。

 初見殺しという名のゆえんは、まあ、でかい図体にかなわないこと。

 打撃系の攻撃が弱点で、魔法防御はそこまで高くない。だが、斬撃や、刺突系統の攻撃はほぼ効かない。

 虫を刺して殺すより、つぶして殺すほうが確実だ。まあ、真ん中から真っ二つにしてやれば一撃で死ぬらしいが………


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………


 あんな鋭くて、毒がかったような牙の中から真っ二つにする勇気はもうとうない。

 二人は女で一人は虫嫌いな普通の少年。

 あ、これ本当に死ぬかもしれない。

 ああ、さよなら。みんな。


 死を覚悟したとき、奇跡は起こった。

 今となっちゃ奇跡といえるかどうか疑問だけれど。偶然?必然?

 まあ、運がよかったとだけ言おう。


「このムカデさっさと死にさらしゃー!」


 突如現れた影に僕は驚いた。

 ここまで高頻度で出くわすともう腐れ縁としか言いようがない気がする。

 そう、突如現れて、ムカデの頭を蹴り飛ばして一撃であのデスセンティピードを葬った影は。

 僕の師匠、鎌だった。

 ええー。


「なんで鎌がいるんだよ!」

「我は、神出鬼没のスキルを持っているゆえな。こういうこともあるのだ」


 こいつ格好いい声音で格好悪いこと言ってるぞ。そんなスキルないだろうが。


「へえ~!この人が鎌か~!」


 アクセの猫耳をピクンピクンさせて鎌に興味津々のタマ。


「やあ、久しぶりってほどでもないか。あれ?クイナさんとはいないの?」


 こいつは知っていてわざと爆弾を投下させようとする傾向にある。そのことは僕は知ることができたでけでもよしとしよう。


「ねえ、トウマ。クイナって誰よ?名前から察するに女の子よね?前言ってた女の子?ねえ、そいつとどういう関係?」

「お前には関係ないだろ!?っていうか苦ぢい!」

「……リーダー。私も個人的に興味があるのですが」

「な、なんで彼方まで?いでででででで!か、関節極めないで!それだけはリアルで痛みが伝わるから!」

「それを知っててやってんのよ。関節が必要以上に曲がらないようにそういう調節を利かせてくれた運営に感謝」


 ぎいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ………

 僕の関節からそんな音が聞こえそうなぐらいひねり上げられている。ははは、鎌今度お前をぶん殴ってやる。


「そんなことより、鎌はどうしてここにいるの?」

「ああ、まあ、いろいろだね。今ちょっとパーティを解散して個人でレベルを上げているんだ。僕は20まで上がったんだけど他の二人がちょっとレベルが上がらなくてさ。それでもかわはもうすぐ20に上がってくるみたいだけど」

「ポロは?」

「うん、あいつはもう無理って言うぐらい魔法乱発してるよ。魔導師で詠唱短縮を使ってるからね。一応、結構なスピードで上がっているよ」


 それでも、普通の魔導師などの遠距離中距離形にしてはだ。

 このゲームでは一応経験値はパーティ全員にいきわたるがそれでも、仕様上『均等』というわけではない。

 相手のHPから、各メンバーが与えたダメージから個々の経験値取得量が決まるという仕組みのため、前衛を兼ねる鎌にいたってはそれはいたって当然ともいえる。


「で、今はレベルが20まで上がるまでは自由行動。たぶんこの辺だと3日ほどかかるかな?」

「ちなみに鎌の今のレベルは?」

「一応、21だよ」

「ファッ!?」

「……ちょっと失礼ですがいいでしょうか?」


 彼方が割り込んできて鎌にいきなり質問をする。


「……この辺の適正レベルは8で高くても12ほどです。ですが何であなた方はそこまで大仰にレベルを上げるのですか?」


 そんな質問に鎌はいつもの笑顔で答える。


「理由は2つ。1つは早くもとのレベルに戻したいから。でも、あまり目立ちたくないんだよねえ。だから、みんなのレベルの上げているところでコツコツレベルを上げている。僕の持っているスキルの情報はあまり見られたくないし」

「なぜ?」

「それは、僕は本来ゲームがうまくないんだ。ならほかの人に勝れることは何でもやるべきだろう?」


 他のみんなに勝てることで並みのプレイヤーを圧倒する。確かにそれはそれでプレイスタイルのひとつといえる。


「……そうですか」

「僕はね。ゲームが得意じゃない。その上で何が大切かというと、把握することだよ」

「把握?」

「そう、把握。僕はこのゲームの世界において自分の体についてはほとんど把握していると自負しているつもりだ。自分の体が動く角度、どこまで傾けるか。自分の癖をどのように活かすか。そういうことを把握して戦っている。この攻撃力でどれくらいの威力が出るか、このスキルでどれくらい移動できるかも含めて。そうしてあとは戦い方で補っているんだ」


 鎌はいたって真剣な口調で続ける。だが、口元はゆがんだままである。


「どうやったって勝れない壁がある。壁は壊せなくても上れなくても、そこにいればいい。壁を見上げてその高さを測るだけでも意味のあることだから」


 もうこいつ異能バトルの主人公かなんかじゃないの?台詞がいちいちむず痒すぎる。


「うわ~……。トウマが中立派に入りたい理由が分かった気がする」

「……噂どおりの中二病ですね」

「ははは、通常運転だよ」

「まあ、鎌はそういうやつだから」


 みんなが鎌の中二病を目の当たりにしてちょっと距離をとろうとしていたとき。


「そういえばなんで君たちはここへ?まあ、多分その調子だと、アルムか『イベント』の途中だろうね」


 そのイベントという言葉にはあえて触れず、本来の目的を話した。


「じゃあ、僕もパーティに入れてもらえないかな?一応タンクで。多分そこのトウマ君がタンクやってたはずだったからレベルが少し足りないでしょ?」

「頼んだ、鎌」


 なんか鎌がパーティに追加された。

 だが、鎌はHPと攻撃力、火力にいたっては期待できそうなので頑張ってもらうとしよう。


「そういえば、どうしてデスセンティピードがやってきたんだろうねえ、鎌?」

「僕が一発でしとめそこなったんだよ。一回攻撃をはずして逃げ出したからあわてて追いかけたら―――ってわけ」

「なるほど………ってお前が全部悪いのかよ!」

「そうですごめんなさい」


 そこまで素直に謝られるとこっちも怒るに怒れなくなる。


「しっかりタンクやってよ、鎌」

「わかってるさ。リーダー」


 そういいながら僕らはアルムの町に向かって歩き出し、日が真上に昇るころにはアルムの町へついた。

 そのころ、鎌をのぞいた僕らのパーティのレベルは僕が2、彼方とタマが1ずつと伸び、僕は二人のレベルに追いついた。

 鎌がタンクをやってくれたおかげで僕はアタッカーとして思いっきり活躍できたよ。

「ちなみに、彼女たちに『無限回復』覚えさせたいんだけれど」

「駄目」

「っち」

 キャラ紹介No.3 リョウカ

 性格、口調が堅く、男勝りな気質あり。凛というイメージがぴったりな黒髪ポニテの和風美人さん。

 なぜか女性プレイヤーにも人気がある。二つ名持ちで『黒姫(ナイトメアクイーン)』と呼ばれている。

 男性プレイヤーからは姉貴、姉御、姐さんと呼ばれる人。

 敵に回すと悪夢を見ることからついた二つ名。

 休むとか言いつつ、何気なく更新

 しばらくは週1更新です。

 誤字脱字の指摘や感想をくれるととても嬉しいです

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