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第十八話 決闘システム

 決闘システム。

 これは、どんな形であれ大体のアクション要素を含むVRMMOには実装されているVRならではのシステムだ。

 ゲームによって若干ルールの違いはあれど、それは『他プレイヤー』と強弱を決定する、一つの自発的イベントというものだ。

 まあ、これに勝ったからといって本当にそのプレイヤーより強いかといわれると、そうでもない。

 まあ、じゃんけんのようなことが起こることがあるとだけいっておこう。

 ちなみに鎌たちのパーティがその典型的なものと鎌たち本人が言っていた。

 鎌はポロに強く、ポロはかわに強く、かわは鎌に強い。

 まあ、そんなことはおいておき僕は目先の勝負に集中するとしよう。

 カズの使う武器は太刀、全武器の中で最もリーチが長く攻撃力もそこそこ、だが、大剣ほどではないが小回りは利かないし、大剣で攻撃をある程度軽減というわけにはいかない。

 基本的に攻めを主に置いた配置というわけか。今回は少し僕は相手との相性が悪い。

 剣使いの中でも一番相手が悪い。

 大剣なら、防御をかいくぐれただろう。

 片手剣なら、そもそも隙だらけだし、双剣は攻めを主体においているため防御をして隙を突けばよかった。


「お前、グラップラーなんてふざけた職業なんてやめて、片手剣とかそっちにすればよかったのに」

「僕も最初はあなたと同じ職業を目指していたんですけれど、あれですね。王道じゃなくても別にいいかと」

「はあ?」

「少し前のスレッドで僕は話題になっていたんですよ。モンスタートレイン、知ってますよね?」

「ああ、まさかそれがお前か?」

「ええ、ちょっと無差別という趣向を変えて今は一対一で戦うようにしてますけど」

「ははぁ、中々面白いな」

「まあ、それほどでも」


 僕の目の前にウィンドウが表示される。そこには『カズさんから決闘が申し込まれました。受けますか?YES/NO』

 僕はそれにイエスを押し、承認する。

 ルールは相手のHPが1割まで削れば勝ちだ。アイテムは使用不可。

 簡単なルールだ。スキルも普通に使えるのでそれは最大限使わせてもらおう。


 『Ready? Fight!』


 その音とともに彼らは拳と、剣を構える。

 お互いの間に流れる一陣の風は、彼らにとっては秒や分の単位では表せないほど長いものだ。

 トウマの足がわずかに後ろにずらされた直後、カズはすかさずステップを使い、距離をつめ、その勢いのまま突きを繰り出す。

 トウマは、突然の攻撃に驚きつつもそれを、半身をそらしつつよける。


「へえ、中々やるな」

「いえいえ、こんなものじゃないですよ。長時間モンスターの中でやりあってきた僕の集中力をなめないでもらいたい」

「………確かに油断しすぎたな。俺もお前も」

「……ええ」


 彼らはお互いを侮りすぎていた。

 たかが『スレッドでネタにされる程度』、たかが『上級職程度』。

 トウマからすれば鎌に稽古を付けてもらったがゆえに、動きや実力が鎌に及ぶものではないことを理解していた。

 カズからすれば『拳闘士』という職に就いているというその認識の甘さから、そこまで強い相手ではないと思った。

 ただ、『拳闘士』というネタ職業は『どんな職業よりも自分の戦闘スタイルが現れる』という職業だ。

 拳という選択肢が合わなければ職業を変えればいいし、それでうまくいけばあとは自分のパターンを作ればいい。自分のイメージが、自分の動きが真っ先に再現される。それが『拳闘士』。


「それでは、次は僕から」

 トウマは敵を鋭い目つきで見据え、その敵の癖やしぐさを見る。

 そして、彼お得意のスキルでのフェイントを発動させる。


(『ステップ』『ジャンプ』!)


 彼は、体を普段では絶対に動かせないようなスピードで移動し、敵の目の前に突っ込んでいく。


「くっ!」


 彼は太刀を薙ぐが、トウマの体は宙に舞っておりその攻撃はすでに空を切っていた。

 トウマは太刀の動きに気を配りつつも、その拳を、彼の頭頂部にたたきつけようとしたところで、間一髪、カズは『ステップ』で反応をして攻撃をよける。

 そして、彼の手のひらからなぜか『魔法』である、ファイアーボールが放たれる。

 そして、それをよけることができず、その攻撃を初期装備の皮で受ける。

 HPは約1割ほど削れ、地面にしりもちをついてしまう。


「な、なんで…………」

「職業のほかに『サブ職業』が合っただろ?あれだよあれ」

「鍛冶師や、商人にしかなれないんじゃ?」

「いや、違う。メイン職業に連なるサブ職業はメインにある初期職業に加えた、『鍛冶師』やその他だ。ただ、サブ職業に初期の職業を就けても熟練度の上昇は3倍ほど遅い」

「なるほど、勉強になりました」


 トウマは再び立ち上がりカズを見る、トウマのHPは、すでに『全快』している。

 だが、彼はそれを見落とした。それが後々致命的なミスを犯す。


「お前の『拳闘士』熟練度はどんな感じだ?」

「僕は始めたばかりなのでまだ1つだけですよ」

「本当につくづく、……癪に障るなあ」

「まあ、落ち着かないと」

「ああ、今は勝負の最中だ。こいつに勝ってタマをパーティに引き込む。今降参すればお前もパーティに入れてやる。どうだ?」

「お断りします。僕はパーティは『自分で選びたい』。自分で選んで、楽しいと思えるようなパーティといたい」

「そうかよ」


 トウマたちはそこから会話をやめ、再びお互いの動きの読み合いをする。

 お互いが視線だけで牽制しあい、空気だけで動きを鈍らせる。

 先に動いたのはトウマだ。


(『ステップ』!)


 彼の『ステップ』でカズの太刀の間合いに入り込む。そして彼は次のスキルを唱えることなく、スキルではなく普通のステップで後退した。

 すると、先ほどと同じ攻撃パターンと読んだカズが『ジャンプ』を使われる前に、キャンセルさせてしまおうと放った突きが後退したトウマに掠ることなく前に突き出される形になる。

 その重心移動についていけなくなった体は前へと倒れそうになるところを無理やり踏ん張り、さらに一歩前に出し強制的にその突きの距離を倍にする。


 その、突きはトウマの左肩よりやや内側のあたりを突いていた。だが、その部位は心臓ではなく鎖骨よりやや下の部分である。

 トウマは痛いとは違うまた別の感覚に違和感を覚えていた。


「へへっこのまま俺がこの剣を動かせば俺の勝ちだ」

「甘いですね。油断しすぎですよ!」


 トウマは左側に剣が刺さっているという状況から、わざわざ『ステップ』で距離を一気に詰めてきた。

 当然そんなことをすればHPの減りは激しくなり一気に半分以下にまで減ってしまうことだろう。だが、彼にはそんなことは起きない。なぜならスキルを持っているから。『無限回復』。彼の師匠であり、友である鎌直伝のレアスキル。状態異常の効果時間を半分、回復量、スピードともに強化されたそのスキルは彼が減るべきHPの半分以上を補っていた。

 トウマはそのまま、彼との距離を殺し、その手に手刀を食らわせて、太刀を奪い取る。だが、もちろん装備できないので少なくとも彼が取りにいけないところまで投げ飛ばす。


「この、卑怯者が………!」

「僕が『拳闘士』だからって甘く見てました?僕が熟練度低いからってたいしたスキルを使ってこないとでも思いましたか?奥の手は最後まで隠しておくものですよ。第一、相手の武器を奪って投げるというのは決闘のルールにおいて何の問題もないはずですよ」

「く、くそぉおぉぉぉぉぉぉ!」


 トウマは半ばやけになってファイアーボールを乱射してくるカズに攻撃を的確によけ、なおかつ距離を詰めて、もう一つのレアスキルを発動させる。

 拳は、攻撃スキルのエフェクトをまとい、攻撃力の上昇を示す。


「『拳乱打』あぁ!!」


 高速で放たれる拳の数々、それら1発1発はカズの体を的確に打ち抜き、時はクリティカルにもあて、時ははずしてそして、本来のスキル発動時間が終わろうとしているときは彼のHPはまだ、3割ほど残っていた。

 『ツバメ返し』。トウマのもつもう一つのレアスキル。

 鎌が以前説明していたように、コンボ数が加算されていくようなスキルはそのコンボも1.5倍されると。それは、さらにもう一度放たれた拳の数々にカズはなすすべもなく前段受けきった。

 一撃一撃は弱くなってしまったが、カズのHPバーはすでに1割を切ったレッドゾーン。



『決闘はトウマさんの勝利です!』


 不利な条件から勝ち上がったトウマ。

 すると自然にカズのパーティメンバーからも驚きと拍手をもらっていた。


「はあ、俺の完敗だ。一体何のスキルだったんだ?」

「秘匿されてるので詳しくはいえないですけれど『ツバメ返し』です。あともう一つは『防御』系のスキルです」


 僕はさらっと嘘をついた。僕だってキルされたくないのだ。今はされなくてもログアウトバグから復活したときには多分キルされる。


「そうか、『拳闘士』だからって馬鹿にしたのは悪かったよ。それにしても本当に勝つだなんてな。………『ツバメ返し』を持ってるなら当然か」

「まあ、僕もスミマセンでした。一応タマと仲良くやってくれてたんですよね」

「ああ、残念だったなぁ」

「……そうだ!フレンド登録してもらえませんか?」

「おお!分かった!しようぜしようぜ!お前みたいなネタ野郎いるとこっちの話のネタも増える!」

「そうですか!僕もあなたに勝ったことを自慢させてもらいますね」

「おうおう!それはいい!お前の勝利に箔がつく」

「じゃあ、約束どおり後衛の人もらっていきますね」

「………あ、ああ」


 僕は一度した約束は(都合の悪いこと以外は)覚えているのだ。後衛の攻撃が手に入るチャンスをみすみす逃すわけがない。


「じゃあ、彼方、お前が行けよ」

「……彼方です。よろしくお願いします」


 カズが差し出してきたのは、後衛の魔法使い。彼方というプレイヤー名の少女だ。

 見た目はどことなく魔法使いとしたイメージがしっくり来る少女だ。

 ジト目というか半開きの目というか、どこを見ているのか少し分かりにくいし、この子大丈夫なんだろうか。一瞬不良在庫を押し付けられた気がするが、そんなことはないと心の中で頭を横に振る。


「こいつは見た目はホワーンとしてるが意外とすごいんだぜ?」


 ドゴーン!


「……意外とは余計です」

「よ、よろしく………」

「……よろしくです。リーダー」

「じゃ、じゃあ僕らは行くから」

「ああ、くそっ!負けちまった。また後衛を探さないとなぁ」

「まあ、今回のは貸しにしましょう。今度僕が埋め合わせをします。奪っておいてなんですけど」

「気にすんな。俺だって奪おうとしてたくちだ。お互い様だ」

「で?本人に許可も取らずに勝手に取り合いをした馬鹿野郎どもはどうすればいいの?」

「……………」

「……………」


 僕とカズは目を合わせて、即座にうなずいた。


「「逃げろ!」」


 僕とカズは後ろを振り返らず、追ってくる蒼碧の攻撃から逃げていった。


 キャラ紹介 No.2 クイナ

 黒髪ロング、目はパッチリとした少女。

 特徴は、リアルで歩けなくなったせいでのVRでの動きが不自然になった。歩き方などといった、日常的な動きはトウマによって矯正(?)されたため、そこまで目立つことはなくなったが、戦闘面においてトリッキーなあの動きは健在である。

 リョウカ曰く、「二つ名がそのうちつくかもしれないな」とのこと。

 戦闘描写、楽しいけど書いたあとに燃え尽き症候群が………。

受験が近いので、そろそろお休みします。早ければ2月の始め、遅ければ3月の終わりほどまでです。

 その間にも書きためておくので、すいません。

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