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第十五話 リア友、登場してくれるかな!?A.いいとも!

 彼女はあの恐怖に打ち勝ち、走ることで普通の体重移動やらなんやらを感覚として取り戻していた。これで歩くことに対する恐怖さえ思い出せなければあのクラ○見たいな事にはもうならないだろう。

 そんなわけで僕とクイナは今町に戻ってきて今後はどうしようか話し合っていた。

 彼女は僕といたいがこの町から離れたくないと主張し、僕は逆にこの町から離れて別の街でイベントクエストのクリアやレベル上げ、つまり攻略をしようとしている。

 NPCの運営する喫茶店で話しているのだが店の雰囲気もよくとてもいい感じなのに僕らだけどことなく浮いてる感じがした。


「じゃあ、パーティを解散して僕は攻略、クイナはこの町に滞在って事でいいね?」

「うう……。納得いきません………」

「僕もレベル上げとかないといざって時に戦えないからさ。精神を削るような戦いはできるだけよしたいし?僕もレアスキルを持ってるからそう簡単には死にはしないさ」

「どうしてですか?」

「どうしてって、言われても。僕は普通にゲームをすすめて行きたいだけだよ?」

「ゲームなんて、他のプレイヤーさんが進めてくれます。私たちはおとなしく待っているだけでいいんですよ」


 彼女はうつむきながら言ってくる。まあ、ここは価値観の違いだ。すれ違うならここで別れたほうがいい。


「とにかく、基本的にソロ……ってワケじゃないけれどレベルを上げてどこかのパーティに拾ってもらおうって考えてる。リョウカさんだってレベルを上げてるし、クイナもこの辺で上げられるだけレベルを上げて攻略組に参加まではしなくても自分のペースで進めるとかじゃ……だめ?」

「うう、守ってくださいよ~」

「そんなに僕も余裕があるわけじゃないんだよ。確かにパーティを組めばそれだけ戦闘はスマートに進むしいいこと尽くしだけど………僕がいたんじゃ君は強くなれないよ」

「そういうことではなくて」

「そういうことなんだよ。この二人のパーティは明らかにバランスが悪すぎる。最低でもあと二人、盾士かヒーリング、後衛の、魔導師や魔法使いの遠距離攻撃がないと。実際、鎌みたいなパーティ編成みたいじゃないと難しいんだ。鎌はタンク兼アタッカーだし、それについているポロって言うプレイヤーは魔導師。遊撃にかわっていうのまでいる。奇をてらうのも嫌いじゃないけれど、このパーティでは相性が悪すぎる。二人ともアタッカーじゃ不確定要素が大きすぎる」

「…………」

「じゃあ、僕は行くよ。お代は僕が持つから」

 

 そして僕はその喫茶店をあとにした。心残りがないといえば嘘になるが、彼女とちょっとかみ合わなかっただけだ。しばらくすればまた会うだろう。そのときにでも謝ればいいし、うん。そうしよう。途中からはわざとかみ合っていない会話をしたのはさすがに失礼だったな。

 無理矢理自分を励ますというのはどことなく自分に暗示をかけているようだった。逃げているようで大人気ないけれども仕様がない。

 人間割り切ることは大切なのだ。

 でもこれからどうしよう。丁度お昼時だし、さっきは何も食べてなかったからな。これからお昼ご飯を食べて、2つ目の町に向かうとしよう。


 お金は十分にあるが問題はレベルと時間だ。

 以前のオークやジャイアントアントのところよりもさらに向こう側に行く必要がある。実質行くだけなら、1時間ずっと走ればいいのだが、残念ながらモンスターたちがそれを良しとしない。適正レベルは10。最低でも8までは上げておかないと道の突破は厳しい。基本的にこのゲームはソロでもクリアできるようにはなってはいるがパーティを組むと敵がパワーアップする。

 ステータス上昇という意味でなく、単純にHPが多くなる。まあそれがソロで突破できる理由とも言える。

 このゲームはソロでクリアするのがハードモードなのだ。初期の僕みたいにモンスタートレインを作って突っ込んでいくということができるのは正直あまり長持ちしない。パーティを組むのは通常の難易度くらいの設定にされている。

 5体のジャイアントアントに1人で挑むのと、3人で挑むくらいの違いと思ってくれていい。

 まあ、とりあえず、僕はご飯を食べに行こう。

 この世界VRMMOではバーチャルな世界といえど料理の味をちゃんと再現してくれている。

 どんな料理も………とは行かないが。それなりの種類の味を用意してくれている。この世界でラーメンとか、場違い以外の何者でもないがそれでもVRの売りの一つとすら言える。

 端的に言うと、料理がうまい。美味。今の僕はたらこスパゲッティをいただいている。あの、濃い味とも薄味とも取れないあの味が好きなのだ。刻み海苔をかけた日には歯につくことも考えないといけないが。

 うん、とってもおいしい。


 じゃあ、これからのことを考えよう。

 この町でパーティに拾ってもらえるならそうしよう。そちらのほうが楽だし攻略も楽になる。だが、もちろんうまくいかなかった場合も考えておかなければならない。

 その場合はしばらくあのオークたちと戦闘をしてレベルを上げないとならないだろう。

 うう、あの巨大蟻に続くオークか。オークの素材はどれほどの価値があるんだろうか。掲示板で見ておこう。

 はあ、面倒くさいけれど念のために今日はレベル上げをしておこう。もちろんPKモンスターには気をつけよう。

 最初の町から出て、ジャイアントアントやオークの出る場所までやってきた。プレイヤーも見渡してみるといくらかいる。

 中にはあの宿屋で見かけたいじめられっこのパーティもいる。どんな戦闘スタイルなのかは分からないが上級職がいるんだ。そう簡単にやられるようなことはないだろう。

 オークの特性は、すばやい攻撃と高い攻撃力器用さが少し高く、こちらの攻撃が少し当たりにくいということだろうか。

 槍を持っていて槍使いの職業の一番最初のスキルを使ってくる。

 すばやさが高いため器用さが高くないと回避をよくミスって大ダメージなんてことになりかねないのでそういうことには気をつけようと掲示板情報には書いてある。


 そして懸念するべきは貫通だ。

 槍系統にはもちろんというべきかそのほとんどの武器に『貫通』の特性がついている。

 貫通は防御無視というか『対アンダーシャツ』というべきだろうか。言わずもがなHPを1残すというその利点を殺せる属性だ。

 防弾チョッキを着ていても心臓貫いたら終わり。

 身も蓋もない例えだ。

「はい、とうちゃーく」


 何があったかは省略。

 とにかくここで豚狩りをしなくてはならない。もちろんモンスター情報の確認は怠っていない。

 オークは以前説明したエトセトラ、に素材の情報。

 こいつを倒して手に入る素材はないが、逆に使っていた槍を落とすことがある。

 そのまま武器をドロップしてくれるのは初期の槍使いにはありがたい。

 まあ、『槍』と一括りにされているけれど、西洋で使われている槍派と東洋の長刀みたいな形状の槍派の人で目に見えない戦争が起こっているとのことだ。冷戦といえば分かりやすい。オークはもちろん東洋の古風な槍。もちろん槍使いといってもその二つに分かれている。西洋槍と東洋槍だ。運営にもランスとスピアを分けてほしいとの要望があり、それが実装寸前だったらしいというのがこの有様だ。しばらくはこれが続くだろう。

 長刀は昔は非力な女性でも男顔負けとは行かなくても戦うことができたそうだ。すごいね、頭脳って。


 というわけで早速地面に落ちている小石を拾って――――


「うぅおぉりゃあぁぁぁぁ!!!」


 思いっきりぶん投げた。

 オークのクリティカルポイントである頭にたまたま当たり、一気にHPをイエローゾーンまで追い詰める。

 うわっ、あれ予想外。

 今回は戦闘のデータを収集できるか分からないな。


「ぶもぉぉぉっぉぉぉ!!!」


 いやあ、いきなり激昂してきたよ。これ、倒せるかな?

 そして、一瞬気を抜いた瞬間には距離を詰められていた。


(はぁっ!?うそだろ!?)


 そんなことを考えながらステップで右へ飛ぶ。

 何とか距離をとり、自分の認識の甘さを再確認する。

 こいつの適正討伐レベルは6だ。あくまで普通に倒すだけならこれぐらいが適正というものであり、安全を保障するものではない。

 前のジャイアントアントで忘れていたがこいつはまたこの辺において別ベクトルに強い。

 こいつの特徴は槍使いの第一スキルとすばやさ。こちらは攻撃で短期的に持ち込もう。


 再び気を入れて、構えを取る。

 オークはこちらの様子を伺っているのか一向に動く気配がない。

 だが、その瞳には確かな殺気といえるものが混じっている。しかもこいつの槍には貫通がついている。今まで一番スリリングな戦いになることだろう。

 イエローゾーンにすでに入っているため、こっちのほうが有利だ。

 すると、オークの槍の先が薄い光に包まれた。スキルのエフェクトだ。とにかくよけないと串刺しにされる。


 槍使いの第一スキルはすばやい突きを放つというもの。その速さはスキルの中で一番発動が早い。

 時間の短い発動時間のおかげで最初の一撃にこれを使う人が多いらしい。威力は防御無視の武器と腕力に依存。つまり素での攻撃力。

 オークはそれほど素での攻撃力は高くないので威力自体はそこまで脅威ではない。

 だが、貫通だけは他の攻撃よりも比較的痛みを感じるようにプログラミングされている。

 痒いが、掻きすぎて皮がむけたあとぐらいに痛い。

 理由はまあ貫通が主な理由だけれども。

 刹那の間に僕のおなかの丁度ど真ん中に放たれてるその槍の攻撃を受け流すように身を回してよけ、その勢いで右足でハイキックを繰り出す。

 その衝撃を頭にくらい一瞬ひるんだのでそこを一気につく。

 こちらはハイキックでやつに背を向けた状態になったので後ろに即座に『ステップ』を使う。そして、その勢いを利用して肘鉄をやつの脂肪の溜まったおなかにぶち当てる。すると、先ほどのハイキックと今の肘鉄でHPが0になりやつは光の粒子になって消えていった。


 まあ、普通に勝てたかな。だけれども油断はいけなかったな。

 今度から気をつけよう。

 僕はそう思い。一度倒したことのあるジャイアントアントを探しに行こうとしたところで、リアルで聞き覚えのある声がした。

 そう、この声は、数少ないリアルでの友達の声。だけれども、嫌な感覚だ。

『まこと~!』


 くそっ!

 もうそこまで来ていやがる!というかリアルの名前を呼ぶな!ああもう!逃げたいけれども逃げれない。

 持っててよかった知恵発動しろ!

 すると、一週回って思考が逆にクリアになり、僕にゆっくりとした時間の流れを与える。

 こういうときはやや倒れ気味になって、腰を落として相手を受け止める体勢になる。そこから、タイミングよく頭を下げる。

「まこと~」


 すると案の定、リアルで見たことのある小柄な体躯。正直見た目は中学2年生並。だけれどもそいつは活発でとても明るいやつ。そんなやつの体が、僕の頭の上に影を作りつつ一瞬で通過していった。

 ドスッ!

 軽く人間の体からは聞こえてこないような音を出し、そいつは顔面から突っ込んでいった。

 ははは、ずっこけてやんの!

 あまりにもおかしかったので、ついついわらいをこらえきれずに笑い出してしまった。


「あはははは!ちょっ!マジでおかしい!マジでちょっとだいじょ―――ぶふぅっ!」

「ちょっとひどくない!?まこと!私のことをなんだと思ってんのよ!」


 頭頂部を抑えつつ立ち上がったのは、小柄で華奢な少女の影、姿は基本的にリアルでの姿を模しているが髪の色や瞳の色が違う。セルリアンブルーよりちょっと白みが増した、髪と瞳。そして――――猫耳だった。

 思わず我の正気とかいろいろ疑って目をこすって目を見開いて彼女を見るがやっぱり変わらない。彼女の耳はやはり猫耳だ。


「お、お前……………」

「ふふーん。見とれてたでしょ」

「いつから人間をやめてしまったんだよ!!」

「今もやめてないわよ!」

「じゃあ、その猫耳はなんだ!!」

「アクセサリーよ!なんでそこに気が行くのよ!」


 そして彼女の耳がピコピコとなる。


「嘘だろ!?お前………これが……アクセサリーだと!?」

「まこといっぺん眼科行ってみる?ついでに脳外科も」

「ああ、ごめんごめん。ちょっと取り乱した。それにお前もここにいたんだね。緑」

「まあね。ちょっと攻略してたらいきなり強制的に最初の『ムーラ』の町に戻されるわ。ログアウトできないわで大変だったのよ!」


 最初のあの町『ムーラ』なんて名前があったんだ。知らなかったな。


「それは災難だったね。で、こんなところで何を?」

「レベル上げしてたんだけど、ネット友達とはぐれちゃってね。それでメール昨日で話し合った結果、パーティは解散。個々で新しいパーティに入るようにって」

「で、一人?」

「う、うるさいな!私だって一人でやりたくないわよ!レベル上げるのだって結構大変だし………」

「今どれくらいのレベル?」

「えっと、レベル7の双剣使いだけれど……」

「じゃあ、パーティ組もう」

「えっ!?」

「僕もひとりで攻略は辛いと思ってさ。だからレベル上げしてたんだけれど。一人なら一緒にパーティ組もう?」

「オウケイ!」


 そして、八重歯を光らせながらサムズアップしてきた。


「よし!じゃあ、パーティのリーダーはどっちにする?」

「じゃあ、まことで。言い出したのまことだし」

「じゃあ僕で、名前は『猫の仇返し』と」

「ひどくない!?」

「ひどくない。ついでに僕のキャラ名はトウマだ。忘れるなよ?」

「分かったよ。私は蒼碧。前のパーティではタマって呼ばれてた」

「じゃあ、行こうか。次の町へ行く?それとも、一回戻る?」

「一回戻ろう。明日は一気に次の町へ行こう」


 そしてここに一つのパーティができた。

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