第十三話 別れて、そして、またいつか
「じゃあ、これでおしまいだ」
「ありがとう。おかげでこの数日で強くなった気がしたよ」
「まあ、僕らとまた会うだろうけど。そんときはよろしくね」
「俺たちは、『デルタライン』って言うメンバーだ。今まで言ってなかったからちゃんといっておく」
「じゃあ、誰がリーダーなの?」
「一応鎌がやってるよ」
ポロが鎌を指差す。人を指で指すな。失礼だろ。
「僕が一応リーダーってなってるけどみんな対等だよ。これ以上パーティに人材はいらないとも思ってるし」
「ははは、さすが我らが主人公。格が違うwww」
「よせやい!照れるだろ?」
こういうのを冗談だと気づけない鎌は相当馬鹿な気がする。
「まあ、俺たちは今からなくなったレベルを取り戻すんだ」
「そういえばレベルはどれくらいなの?」
「僕が17でポロが14、かわが15だよ」
「なんで鎌だけレベルが高いの?」
「ちょっといろいろと……」
「「俺(僕)が盾にしてるから」」
「なるほど、お前ら本当に最低だな」
「「よせやい!照れるだろ?」」
なるほど。このパーティの中で鎌がブッ壊れた理由は絶対この二人だ。しかも僕よりもかなり高いし。確かこのゲームのレベル上限が200だったような気がする。
「とりあえず、次会うときは第一階層のボスのときだろうね」
「ああ、じゃあね」
「じゃあ」
僕らは町で別れを告げて町の中へ散っていった。
一人は中二病で、一人はひねくれててマイペース、一人は外道と中々個性派ぞろいのパーティだったな。唯一気になったのはあのマイペースさと、かわの外道がいい感じに二人を引き止めているのがすごいと思った。
最後のほうで「次回からパッチを当てようかな」とか言っていた謎の言葉は僕の脳にしばらく残り続けるだろう。
修正パッチってなんやねん。
とりあえず僕も何かをしようかな。そうだ、クイナに連絡をしてみよう。『今暇?』送信っと。
すると、5秒後すぐ返事が返ってきた。
『暇ですよ』
よし、『じゃあ、リョウカさんのところで』
『分かりました』
とにかく、これでいいか。僕は準備をして、カフェに向かおうとした。そういえば、アイテムに封印薬のせいで把握し切れてないけれど今どれくらいあるんだろ?
『封印薬×20』『回復薬×3』『毒薬×2』
あれっ?回復薬が半分に減ってるんだけれども!?
あっ、ポロからメールだ。内容は『回復薬はもらった。なあに、授業料とでも思えばいい』
なるほど、僕が寝ている間にパクりやがったな………!なんて事をする野郎だ!くそうっ!
ちなみに封印薬を売ったら回復約3つ以上に売れたのでそれで回復薬5つ買った。なんか結果的に利益しかない気がする。うへへへへ!
と、行かないと。クイナが怒ってしまう。
じゃあ、レッツゴー。
・
・
・
迷った。
うん迷ったね。理由?知るかよそんなもの。僕は一度いった場所はあまり忘れたりしないんだけれどな。
ええと、確かあの角を右で曲がるんだっけ?あっ、あったあった。びっくりしたな。
そこには以前見た、『カフェクイーン』の看板がある。あの店が今回の目的地だ。
扉の前まで発して向かい、そのまま扉を開ける。
カランカラン――――
これで通算5回目のベルの音。相変わらずいい音を出している。
そこには、クイナとリョウカさんがいる。
「待ってましたよ」
「ああ、少し待たせすぎなんじゃないか?」
「そんなに遅れてた?」
「実際そこまでじゃないですけど………」
「気分の問題だな。というわけで今日はお前がおごってやれ」
「まあ、言われなくてもそうするつもりでしたけど………」
「私はいつものを」
「僕はオレンジジュースで」
「お前は毎回違うものを頼んでくるなぁ」
「ええ?文句がありますか?僕はとりあえずいろいろ頼んでそれから何が一番お気に入りか決めるんですよ。カフェオレは牛乳嫌いの僕でもおいしくいただきました」
「ちょっと待ってください。私と一緒じゃないときにここに来たんですか!?一人で!?」
「な、なんだよー。助けてくださいよ、リョウカさん」
リョウカさんは微笑ましいものを見るような目で僕らを見ている。これが大人の余裕というものか。そういわれてみればこの人いくつなんだろう。やり取りから察するに僕よりは明らかに年上だろう。17、8くらいだと思うのだが………
「リョウカさんっていく―――」
突如、頬を銀色の何かがかすめて飛んでいった。壁に何かが当たる音とビイィィィンとしなる音が聞こえてきた。ガクガクとゆっくり後ろを見てみると、そこにはフォークがいまだ若干しなりつつ壁に刺さっていた。きれいに、三股を突き出して。
そして僕のHPもわずかに減っていた。ほうっておけば『自然回復』で回復するだろうし、『無限回復』というもののおかげでさらに回復にすばやさが増した。
「そういうのはあまりレディに対して聞かないんだ。いいな?」
この人を敵に回したくない。素直にそう思った瞬間だった。
「ちなみにマスターは19ですよ」
と、クイナが言った直後のリョウカさんの顔の赤さったらもう、りんごといってもいいかもしれない。
しばらく談笑をしているとふとクイナが言ってきた。
「そういえばレベル上げをしていたんですよね?レベルどれくらい上がったんですか?見せてくださいよ」
このとき、僕は神を呪おうと誓った。
「あ、あの、うん、ちょっといろいろあってね。レベルが上がらなかったんだ………」
「そのいろいろって……………なんなんですか?」
突如、クイナの真後ろからさっきのようなどす黒い何かが。声にも若干エコーがかかっているようにも聞こえる。
「あ、あのー。ええと」
僕が挙動不審になって目を泳がせていた。いやー本当に神っているのかな?
そんな純粋な疑問を持ち始めたころ。
ガチャッとスタッフルームへ続く扉らしきところが開いて、中から一人の少女が出てきた。
その人は、『僕より少し小柄』で、『線が細くて華奢』で、『僕の知り合い』だった。
その扉の向こうから出てきたのは――――
メイド服を着た鎌だった。
目と目が合い、そして、お互い理解する。
大して長期間付き合いのない僕らでもなんとなくアイコンタクトで会話ができた。不思議なものだ。
(鎌、……何してるの?)
(こ、これは、………ポロたちにバイトをしろって言われて………)
(バイトをする理由は?)
(封印薬のせいで軍資金が尽きたからバイトをして来いって……)
鎌、お前とことん馬鹿だな。
鎌は、そんなことをお構いなしに表情を別人のように明るくして、
「いらっしゃいませお客様!」
演技もここまでどうに入っていれば中々のものだと素直に思った。鎌はもともと顔が中性的だったせいか一瞬女と間違ったけれどもこいつが男だと知っている。声のほうはもともと、ちょっと高めだったため、少し声を張り詰めるだけでそれっぽく聞こえる。
「ああ、こいつは臨時で雇ったウエイトレスだ。一応男だ。………ぷっ」
「ははは、マスター笑わないでくださいよー。………ちょっとあとでツラ貸せ」
言葉の端に鎌の本音が垣間見えた気がするがあえてスルーする。
「悪いな。……分かったあとで決着をつけよう」
「ええ!?乗るんですか!?」
ついツッコんでしまった。
「それにしても、この馬鹿の裸を見たんだがすごかったぞ。男なのにくびれがあるんだからな」
「そこ注目するところじゃないですよね!?ていうかいつ見たんですか!?」
「くびれ、ですか…………うらやましいです」
女の子の悩みは切実そうだ。
「いやいや、そういう問題じゃないからね!?君ッ!僕はねウエイターやりたいんだよ!『レス』じゃない、『ター』だ!男!ボーイ!」
「でも、男でもそんな体型になれるんですよね?いいなあ。ボンキュボンになりたいなー」
「上はボンじゃない!ああもう、面倒くさい!こんなところにいられるか僕は宿屋に戻る!」
こいつはいっそのことものすごいフラグを立てた。ここに来たら少なからず性格がすさんでいくものなのだろうか。僕はあんなふうになりたくないな。
「ちゃんと働いていけ」
ナイフを投げて鎌を脅かす。だが、鎌それに屈しない。ナイフを受け止めてこういった。
「僕に指図をしようって言うんですか?この『狂戦士』と呼ばれている僕に?はは、実にけっさ――――「命とられたいか?」くじゃなくて遠慮なく働かせていただきますはい!」
「(お)鎌。やっぱり苦労してたんだね」
「もう、本当にここにいたくない。は、ハハ、モウナニモコワクナイ」
ここに着て露骨に壊れ始めてきた鎌。みんなそろって弄りすぎたかもしれない。
「それよりも鎌はリョウカさんと知り合いなの?」
「うん、………昔ちょっとね」
「うん?」
「こいつのパーティに入ってたんだよ。私がな。だが、忍者が二人になったから私が抜けたんだ」
「それにしてもあいつらここにリョウカさんがいるっているのになんでいままで教えてくれなかったんだろう?」
「そりゃお前の反応を楽しんでいたんだろうさ。私は結構お前のリアクションが好きだったしな。確かあいつらはリアクション芸人鎌と呼んでいた」
「人を芸人扱いかよ!?ひどいなーあの二人」
「人だからいいじゃん。今の僕は……《ゾンビ》だよ?」
「………ごめん」
「なんとなくこの二人は絵になるな」
「はうぅ………男同士なんて不健全ですよ!」
「「違う!断じてそんなものじゃない!」」
なんてことをしながら僕らは談笑と言う名の暴走をした。
・
・
・
「じゃあ、僕は帰ります」
「どこに?」
「………………………」
「じゃあ、僕のところに来るかい?また歓迎するよ」
「「それは却下だ(します)」」
「ええー」
「だってこいつの保護の義務は終わったんだ。さっさと帰ってレベル上げでもしてろ」
「お、男同士なんて認めません!」
「さっきから言うようだけれども僕はそういう人じゃないから!」
「そうだぞ!鎌は性同一障害じゃない。女装癖だ!」
「お前、ボス攻略に見せかけてさらっと殺すからな」
「ははは、やれるものならやってごら―――」
『クケッ♪』
その言葉が突如、頭に響いた。なんとなくこれ以上はやばい気がする。
「悪かった。冗談だよ」
そして、今日の歓談は終了した。
店の入り口で僕はある提案をした。相変わらずおぼつかない足取りのクイナに話しかける。
「明日、クイナと一緒にレベル上げたいんだけどいい?」
「へ?」
メイド服姿の鎌とリョウカさんはほほえましいものを見る目に変わっていた。リョウカさんはともかく鎌は腹が立つ。
その不満をぐっと押し込んで僕らは明日の計画を立てた。
――――今日も路上生活だった。
―――――
「ただいまー」
あれから、リョウカさんにしごかれるように僕は働いてやっとの思いで宿に戻ってきた。やはり疲れは蓄積する。とても眠い。
「ああ、お帰りー」
「おお、戻ってきたか。どうだった?仕事は」
「お前ら、あそこにリョウカさんがいるの知ってたんだろ?何で教えてくれなかったんだよ」
「だって、ねえ?」
「だって、なあ?」
二人は顔を見合わせ同時にこういった。
「「お前の反応が面白いからに決まってるだろ?」」
「お前らちょっとそこになおれや!」
そんなことを言いながらも内心お礼を言っていた。また会えるとは、………まあ思っていたけれど。こういう予想外のハプニングでの再開は思いのほか嬉しい。そんなサプライズを企画してくれた二人にお礼という名の説教を食らわせる必要があるだろう。
「今度からは僕も混ぜろや、この野郎!」
疲れた。




