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第十二話 ごり押し勝負

 次に目が覚めたときには日が昇り、朝になっていた。

 昨日何があったか覚えていない。何かおぞましいものを見た気がするが………。多分気のせい。


「おはよう。昨日は大変だったな」

「え?なんかあったっけ?」


 かわがさりげなく何か言おうとしていたがかろうじて飲み込んだ。何か隠しているのだろうか。


「そういえば鎌は?」

「今日の準備をしてるよ」

「準備………ねえ」


 何をしているのか判らないが深く追求しないことにした。

「やあ、おはよう。気分はどう?」


 相変わらず口調だけはさわやかな鎌。


「とりあえず、今日は実践の訓練だって」

「それのどこに準備がいるんだよ?」

「まあ、それはね見てのお楽しみ。そうだ、確認のためにスキル一覧を見てみて」

「分かったよ」


[スキル一覧]

 『ステップLV.2』

 『ジャンプ』

 『自然回復』

 『ど根性』

 『戦場兵士』

 『無限回復』

 『拳乱打』(拳闘士)

 『三日月切り』(片手剣)


「あれっ?なんか新しいスキルが追加されてる?」

「それはどういうスキル?」

「え?『無限回復』だけど………」

「あちゃー。失敗だこりゃ」

「え?失敗したの?」

「まあ、それでも十分強いからいいよ」

「理想はなんだったの?」

「僕の持ってるレアスキルの一つ『再生』だったんだけど………」


 鎌は残念そうな顔をして、頭をかく。「まあしょうがないか」と開き直った。


「まあ、とりあえず。君の希望にこたえてもう一つレアスキルを伝授してあげるよ。あ、『再生』と『無限回復』の条件についてはもちろん秘匿でね。次に教えるレアスキルは比較的知られてるから秘匿する意味は無いんだ」

「また、毒薬とか飲むのは嫌だよ」

「そんなことはしないよ。次に教える、レアスキルはずばり『ツバメ返し』だ!」

「ツバメ返し?」

「うん。このスキルは直前にはなった通常攻撃、または攻撃スキルで与えたダメージの半分をもう一度与えるといったものなんだ」

「それのどこがすごいのか僕には分からない」

「そうだね。――――『コンボ』っていうスキルがあるんだけどあれは普通に習得できるスキルなんだ。で、そのコンボのレベルを上げていくと最大3コンボ。それで与えられるダメージは直前に放った攻撃の合計20%っていうものなんだ」

「へえ。それでそれで」


 饒舌になったところを止めるのも面倒くさいので、話を続けさせる。


「『ツバメ返し』はそんなものは関係なし。『コンボ』っていうスキルは硬い敵には有効だけれど、有効打になりきれない。逆にツバメ返しは硬い敵にはちょっと不利だけれど、直前に放った攻撃スキル、または通常攻撃に付与されている状態異常もそれに付与されるんだ。クリティカルであればツバメ返しもクリティカルになるし」

「なるほどなるほど」

「たとえば、一定確立でスタンさせる能力のスキルがあったとして、一回目で効かなくてもツバメ返しでその効果を発生させるって言うことが出来る。これがツバメ返しのスキル」

「ふーん」

「スタミナは1.5倍消費するけれど悪くないスキルだよ。連打系のスキルだとさらにコンボ数が1.5倍」


 そ、それは中々えげつない。


「その分隙がでかいから、タイミングを間違えると隙を見せることになるかもね」

「ちなみに、『暗殺』に『ツバメ返し』をやるっていうのも出来るぜ」

「お前どんだけ即死にこだわってるんだよ」

「即死、最高」

「てめえ一回死ねや!」


 鎌になんか変なスイッチが入ったようです。


「ま、まあとにかく。今日はそれを習得するんだよ」

「何をするの?」

「ツバメ返しっていうのは、嘘の中にある真の一撃を放つ技だ。とにかく、君が僕に拳を打ち続けて一定ダメージ与えることが出来たらそれで成功だよ。なんか本来の意味と逆っていうのはなー」


 鎌がなんかぼやいているがそこには気にせず質問をする。


「何で?」

「このスキルの習得条件は自分より一定ステータス以上の敵に、一定ダメージを与えることが条件なんだ」

「ちなみに、どれくらいのステータス差があればいいの?」

「それは、レベルによって比例していくんだ。たとえば、レベルが5のプレイヤーにはレベル15、レベル15にはレベル45といった具合に。あくまで目安だしそこまで気にする必要がない。ステータスで攻撃と防御がある程度ともなっていれば関係ないから」

「じゃあ、僕が鎌を一方的にボコればいいの?」

「まさか、ちゃんと当ててもらうよ。じゃないと修行の意味がないだろ?」

「ですよねー」


 鎌が変なところで厳しいやつなのは分かっていたので気にしない。ああ、男とばかりじゃなくてクイナとも話したい。あとで久しぶりにスレッドでも見てみよう。何か面白いものがあるかもしれない。


「じゃあ、早速はじめるよ!」

「分かった!手加減しないぞ、鎌!」

「はあ、はあ、はあ。何で……あたら、はあ、ないんだ、はあ、よ…………」

「まあ、中々筋はいいよ。もう少し見方を広げれば楽になるんじゃないかな?」

「視野を広く?」


 鎌には中々攻撃が当たらない。どういうことだろうか。その視野を広く見ることで攻撃があたるようになるのだろうか。


「も、もう一度!」

「ホイ来た!」


 もう一度さっきと同じように、ボクシングスタイルをとる。『ステップ』を使い距離を詰めて一気に右ストレート!

 ガシッ!

 また左手で止められた!くそっ!

 鎌は右手を振りかぶり攻撃態勢をとる。そのまま殴られると思ったが、そんなことはなく―――― 一気に引き寄せられた。

 その勢いのまま顔面を殴られそうになるのを、顔をそらししのぐ。そのまま左手でカウンター。

 そのパンチは顔面に決まったもののほとんどその効果を発揮してはいない。HPがせいぜい1割削れた程度。

 顔面に意識がいっていたせいか、左手の力が弱まっていたのでこれを機に脱出する。


「別にそういうことじゃないんだけどなー」

「じゃあ、どういうことだよ?」

「さあ、どういうことでしょう?」

「うわ、中二病腹立つ」

「ははは、そこはおいといてさ。次からは僕は手を使わないよ。それなら君も分かりやすくはなるんじゃないかな?」

「大分なめられてるな」

「君の戦い方のムラを多少矯正しようとしているだけさ。そのほころびがある程度矯正できれば君は今よりもっと強くなれるよ」


 僕は再び立ち上がり、鎌を見据える。

 敵はただ一人。鎌だけ。そこにもう何もいらない。ただ一人の人間がそこにいるだけ。


(『ステップ』!)


 一瞬で加速をして鎌との距離をゼロにする。

 そして、右手での掌底を軽く受け流されて、前のめりになってバランスを崩れる。

 そして何もできないまま地面に転がり、視界が回転する。


「君は、ちょっと考え方を変えてみよう。僕に攻撃の邪魔をされることが前提で考えてごらん?」

「え?」


 攻撃は当たらなければ意味がない。

 なのに受け流されることが前提の攻撃だなんてフェイントならまだしもそれじゃ、ダメージを与えられない。

 いや、待てよ。

 フェイントは、あくまで相手の注意をそらすためのものだ。

 だけれど、別に注意をそらすだけなら別にフェイクだけじゃなくてもいい。

 例えば、油断。さっきの僕なんかもその典型だ。

 『手を使わない』ということだけで、蹴りでの対応を予想していた。だが、実際は子供だましの引っ掛け。

 別に相手の視線をそらすだけなら、何だっていい。

 その代表がフェイントというだけ。

 なら、あとは、組み立てていくだけ。

 そうだな――――

 

「ふふ、準備できたかい?」

「できた、もう雑魚とは言わせない」

「君はどうレベル帯にしてはそこそこの実力だと思うけれど、決闘においてはそれは重要だよ。よく覚えておいてね」

「分かったよ。じゃあ、はじめよう」


 ボクシングのスタイルをとり、相手の構えを見る。相変わらず鎌は何一つ構えない。よほど僕の攻撃を受けきる自身があるのか。確かに相手を小ばかにしているような構えだが、実力は確かだ。

 前に出された足を思いっきり踏み込み、前へ出る。

 勿論、その速さはスキルの『ステップ』と比べるまでもない。

 というか『ステップ』というスキルはすばやさに比例して早く移動するスキルである。だから、遅くなるのも当然だし、出だしに『ステップ』使わないというのはタイミングをずらすという戦法を使う人もいるらしい。

 鎌はそれを見てただいつものように間の抜けた笑顔を出している。タイミングが多少ずらされていたようではあったが致命的な隙ではない。

 そして鎌の目の前まで来て、手を伸ばしてきたところで僕は『ステップ』を後ろに使った。鎌は体重移動のせいで前へバランスを崩して若干前のめりになっている。

 地面につくと同時に『ステップ』をもう一度使って、鎌との距離を詰めて体当たりを食らわせる。鎌はのけぞって致命的な隙が生まれる。だが、鎌のHP自体はそこまで減っていない。

 ここで手を緩めるわけには行かない。

 そこから、『拳乱打』を使い、一気にHPを削っていく。

 だが、鎌も今までも『こんな状態』から何度も抜け出してきた。伊達に廃人プレイヤーではないはずだ。

 鎌は、スキルで攻撃を受けているにもかかわらずにそのまま僕の鎧の襟にまで手を伸ばしてくる。だが、残念ながら僕にはスキルを中断するべなど持っていない。

 そのまま襟をつかまれて投げられる。

 その先で手を突いて何とか受身を取る。

  立ち上がり『ステップ』を使い、直後『ジャンプ』を使う。人の高さの2倍くらいまで飛び上がる感じにはまだうまいことなれていないがこの状況ならいける。脚を高く振り上げ、落下の勢いに任せて鎌の頭頂部めがけて落下する。踵落しだ。

 すると鎌は口の端を吊り上げ、その踵落しを受け止める体勢になった。

 重力落下に任せて攻撃力の増した攻撃と鎌のHPのごり押し勝負の行方は――――


『レアスキル『ツバメ返し』のスキルを習得しました』


 この運営の声によって僕の勝利のゴングがならされた。





 まずは1万PV達成です。これからもよろしくお願いします。

 もうしばらくしたら、書きだめ兼受験で更新が滞りだすと思います。

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