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第十話 疾風鎌鼬 前編

 夕日はもう沈み、町はろうそくやランプなどの優しい光に満ち溢れ包まれている。

 そんな中僕は思っていたことがあった。

 今は午後7時。完全に夜になった。

 僕は昨日のように掲示板を見て、スレッドの中に入りこむ。


349. 拳闘違いさん

 かまいたちさん。いますか?


350. かまいたちさん

 >>349

 待っていたよ。

 僕らのいる宿は、一番最初の街にある東側の地区にある、『ククーレ』の宿にいるよ。NPCに聞けば教えてくれると思う。


351. 無名の名無しさん

 ┌(┌^o^)┐ホモぉ…

 相変わらず、この無名の名無しさんは僕らを見つけると『┌(┌^o^)┐ホモぉ…』とやってくる。これしか能がないのかあるいは僕たちの絡みを想像しているのか、どちらにしろ腐っているのは間違いない。再実装されたゴーストエリアにバグで一人だけ放り出されればいいのに。

 とにかく、今から東の方へ急いで向かわなければ。

 町の中でも移動系スキルは使える。他にも決闘の間であればその相手だけに攻撃スキルが使えたりする。

 僕は『ジャンプ』のスキルを使って屋根に飛び乗り東に向かって『ステップ』を使って屋根を飛び移りながら目的地に向かっていった。

 基本的にみんなはあまりやらないことなんだけれど今は急ぎたいのでスタミナを使ってどんどん東に移動する。


 月夜をバックに屋根から屋根へと飛び移る人影。忍者か?いいえ、みんなが馬鹿にしている拳闘士です。


 途中で何度かスタミナが切れたが、スタミナ回復まで待って再び屋根を移動するという行為はステップの熟練度上げに役に立つ。だけれど、LV.1からLV.2には簡単にあがるくせに、LV.3には簡単には上がらない。そういう仕様らしい。まあ、簡単にあがってもつまらないしね。

 そういう意味では職業スキルもそうだ。

 転職をすること自体は可能なので1つの職業で全部の技を出すのにレアを入れなければ本人のレベルが80くらいまで上がる。

 廃人プレイヤーはモンスターにやられず熟練度をただひたすらに上げるという行為を繰り返してきたのだ。

 このゲームに存在する職業は17個。計算すると、1360ものレベルを上げるという明らかに常人の沙汰じゃないことをする。廃人プレイヤー恐るべし。


 そんなことをしているうちに目的地周辺まで来た。

 『ククーレの宿屋』ねぇ。道に下りてそれらしい入り口と看板を探す。

 街頭の明かりと窓からの光を頼りに目的の宿屋を探す。たしか、この辺だよな。

 そして、外の肌寒さにやられてくしゃみをしたときに、ふと頭を上げると『ククーレの宿屋』の看板が目に入った。

 やっとたどり着いた。

 いろんな通りを探したからからかもう1時間くらい経っている。

 やっとたどり着いたと息をまいて宿屋に向かって全力ダッシュをして入り込む。

 そこには暖かそうな暖炉とほんわかした、空気に包まれていた。ここにいるプレイヤーは今朝見た、スネガリ商店の少年と、どう見てもいじめられっこぽい漫画っぱなの少年、かわいい普通の少女に大食らいの体格の大きい少年がいた。なんかすごいパーティだな。

 最初からみた順に職業をスネガリ(?)は見ていると片手剣、だが、商人をメインにしていると思う。次にいじめられっこは銃使い。あの顔で上位職かよ。

 女の子は踊り子のような服を着ている。ダンサーだな。最後に大きい少年は大きな盾が背中に背負われている。盾士。あのこにぴったりそうだ。

 そう思いながら宿屋の店主をやっているであろうNPCのいる受付へ足を運び、


「すみません。人を探しているのですがここにいると聞いてきたんですけど部屋を見て回ってもよろしいですか?」

「はい、どうぞ」


 この世界のNPCの出来は思いのほか高いらしい。

 そして階段を上り、一番近くの部屋をノックする。

 コンコンコン


『誰ですか?』


 中から男の声が聞こえる。


「すみません。こちらにかまいたちさんはいらっしゃいますか?」

『ああ、かまいたちさん?は知らないけれど一番奥に鎌っていうプレイヤーはいるよ』

「ありがとうございました」


 そして、一番奥の部屋に行き再びノックする。

 コンコンコン

『誰ですか?』

「はい、ええとこちらに鎌さんはいますか?」

『ああ、ちょっと待って。今あけるから』


 そう言って床を踏みしめる音と鍵を開ける音が聞こえた。

 ドアを開けると、そこには細身で若干僕よりも身長が低い小柄な少年が現れた。顔は比較的中世的。


「やあ、待っていたよ。ささ、入って頂戴」


 入るように薦められたのでお言葉に甘えて入る。宿屋ということもあって部屋の中はさっぱりしている。


「君が拳闘違いさんだね。プレイヤー名は?」

「ええと、トウマです」

「トウマ君か、うん。いい名前だね」

「一応君の名前も聞いてもいいかな?」


 年下ぽかったのでちょっと砕けた口調になりつつ相手の自己紹介を促す。


「僕は鎌田。まあ名前の理由はいろいろあるけれど気にしないで」

「一応僕より年下なのかな?」

「15歳だよ」

「僕と同い年か。ええと鎌君は―――」

「鎌でいいよ」

「鎌は拳闘士をやってるんだよね?一応、拳闘士の先輩だからさ。詳しく教えてよ」

「まあ、そこまで詳しいわけじゃないけどね」

「それでもいいからさ。教えてよ」

「ちょっと待っててね。ふう―――――」


 一回呼吸をおいて、顔をうつむける。そして再び顔を上げたときには別人のような顔になっていた。いや、基本的に顔のつくりは変えてないんだけどこう、雰囲気が別人だ。バイクに乗ったあの人みたい。


「ええと、そうだね。じゃあレクチャーするよ。君は『守る人』になりたい?それとも『強い人』になりたい?」


 一瞬言葉の意味が理解できなかった。そしてかわの言った言葉の意味が分かった。――――あっ!かわのことを忘れてた!


「ちょっと待ってて!かわを呼ぶから!」

「あっ!あいつのこと忘れてた!」


 君友達でしょうよ、とか思いつつかわにメールを送ったところ『すぐ行く』と返事が返ってきた。


「で?さっきの質問に答えてよ」

「えーそんな中二病くさいことに答えたくない」

「でもこれがないとレクチャーできないよ」

「分かったよ…………。僕は――――」


 一瞬、考えて、


「強い人になりたい」

「じゃあ、君は攻撃とすばやさどっちが重要だと思う?」

「攻撃」

「ありがとう。今日はここに泊まっていきなよ。大丈夫、宿屋の料金はこっちで持つから」

「え?あ、はいありがとう」


 有無を言わさぬ気迫というものがそこにはあった。

 しばらく談笑していると、かわがやってきた。


「ありがと。お前のおかげで俺はここにこれた」

「いや、正直僕は君のことなんてついさっきまで忘れていたから」

「よっ!かわさん」

「よっ!―――じゃねえよ。探したんだぞ!」

「ごめんごめん………」

「ふう!すっきりしたぁ」


 突然、玄関とは別の扉が開き、鎌よりもさらに小柄な少年がドアの向こうから顔をのぞかせた。裸ということはどうやら風呂に入っていたらしい。


「ん?なんか増えてるねえ。この人が拳闘違いさん?」

「ああ、明日から早速修行だよ」

「へえ、鎌の質問にはどう答えたの?」

「攻撃重視だって。HPは捨てるつもりはないけど、僕直伝の『あのスキル』を二つほど」

「ああ、お前ってなんか知らないけどレアスキルをたくさん手に入れるよな」

「お前、チート主人公かよっていうぐらい」

「え?鎌そんなにスキルたくさん持ってるの?」

「まあ、気がついたらたくさんね」

「しかもこぞってレアスキルwww」

「もうゲームを冒涜しているとしか思えないwww」

「しかも、スキルの取得方法を独占している」

「さらに、スキルの情報を聞きつけたプレイヤーが来たら、鎌がやたらと面接を行う」

「そして『修行だ!』といって地獄のような方法を取る」

「ラストに追い返す。だから鎌の知っているレアスキルの取得方法を知っているやつがほとんどいないんだよ」


 仲間二人に散々な言われようである。


「面接のときに秘密を守れるかが聞かれるからその人たちがスキルの情報を公開しようとしない。一応僕らは知っているけれど、契約書を書かされてね。商売目的でしかその情報を公開できないし、その情報を秘匿する権利を相手に持たせる。相手がその秘密をもらしたら、プレイヤーをキルする」

「確かに中二くさいな」

「だって、情報と共有するのは友達だけでいいじゃないか。むやみやたらと情報を売り出したくはない。僕はあくまでプレイを楽しみたいんだ」

「ふーん。まあ、今日は厄介になる身だから必要以上に聞かないけどさ。絶対に友達少ないだろ?」

「まあ、そこの二人もお互いを他人だって思ってるけどね」

「「そうだ!こいつとは都合のいいときの友達だ!」」


 お互いを指差して怒鳴る、かわと少年。なんだろうこの外道な集団。


「僕は、トウマ。よろしく」

「ああ、ごめん。挨拶が遅れた。僕はポロロッカ。みんなからはポロで呼ばれてる」

「よろしく。ポロ」

「ああ、よろしく頼む」


 そしてその夜。僕はみんなと一緒に寝た。明日からは鎌に修行をつけてもらう。同年代に修行をつけてもらうなんて中々ない経験だけれど。それでも楽しみには変わりはない。そんなことを考えて僕は眠った。


 あれっ?疾風の要素も鎌鼬の要素もない。

 後編次回。


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