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川村物語  作者: 加賀浜子
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川村物語 第二話

こんなに本気で怒っている果色の顔は初めてかもしれない。いつも不機嫌そうな顔をすることはあったが、こいつは感情を露わにして怒る方ではなかったと思う。

果色はおれの動揺に気づいたのか、はっとして周りを見て、今度は不機嫌そうに、(気まずそう。とも、とれるかもしれない)顔をしかめると自分の足へ視線を注いだ。

すぐ横の万里を見ると、微妙な顔をしてはいるが、驚いてはいないようだった。仁坊はおれの言葉を聞くと、果色を見て、眉根を寄せ、顔をしかめて言った。

「何で。なんか文句あるんかよ。」

果色は黙っている。「またかぁ。」と、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた五郎に、おれは同じくらいの小声で訊いた。

「なぁ、どうしたんだ。仁坊と果色。」

おれの記憶の中で覚えている限りでは、仁坊と果色が喧嘩するところなんてほとんどなかった。小さい頃に二、三回あったような気がするといえば、そんな気もするが、その程度だ。そもそも、こいつらが本気で、「また」なんていわれるほど長く不機嫌に睨み合っていたことなんて、あっただろうか…。まあ、それも、おれの記憶の中でだけの話だから、おれのいない時にあったのかもしれないが…。

おれの問いを聞くと、五郎は少しためらいながらも答えてくれた。

「洪水の調査を始めようってゆい始めた時からなんじゃが…。」

五郎の話によれば、はじまりは洪水だった。仁坊が前々から、頻発する洪水に疑問を抱き、調べたいと思っていたのは、みんな分かっていたらしい。三人の前で初めてそのことを発表(さながら発表会のように仁坊の前に三人を並ばせたらしい。)したとき、五郎と万里はすんなり賛成したのだが、果色だけは猛反対したという。三人にとっても、いつも、あとから付いて行くタイプの果色がそんな態度をとるのは初めてで、最初は戸惑いを隠せなかったようだが、自分の考え、もとい(仁坊曰く)計画を嵐のごとく滅茶苦茶に言われ、流石に腹が立ち、仁坊も言い返した。それからと言うもの、ほかの事では普通に仲良くやっている二人だっだが、この話になると途端に顔色を変えて喧嘩が始まるのだという。本気の。

「文句あんならさっさいえよ。」

仁坊の低い声が沈黙したおれ達のほうへ掛けられる。本当に怒っているようだった。

「…じゃけぇさ、無意味なんで。」

そう言ったのは果色だ。相変わらず熱心に自分の靴を見つめていて、果色の表情は見ることが出来ないが、仁坊と同じように怒った顔をしているのだろうか。

「わしらが動いても、きっと何の解決にもならん…っ。」

最初は静かだった語気が、言葉を重ねるにつれてどんどん強くなっていくのが分かる。やはり苛立っているのだ。仁坊は果色の言うに任せているが、眉間のしわが果色の言葉を聞く度に深くなっていた。

「村役場も動いとるって聞いとるし!それなら邪魔にならんよう、こがぁなふざけた遊び、止めるべきでっ!」

叫ぶような声と共に果色はきっ、と仁坊を睨んだ。しかし、仁坊のほうも、我慢の限界だったようだ。多分、「遊び」で地雷を踏んだな。

「なにが遊びだっ!わしゃぁ本気でやっとるんじゃ!」

仁坊の怒声がとぶ。そう、仁坊はいつだって本気だ。それが裏目に出る時も、無きにしも非ず…だが。

果色は仁坊に怒鳴られても睨むのをやめない。むしろもっと力を込めて睨んだ。

「阿呆か!本気でやるなんて、馬鹿のすることじゃ!」

阿保と馬鹿のダブルパンチッ…なんて言っている場合ではない。友人が言い争っている現状を、面白おかしく実況しようとするなんてなんという愚か者だろう。嘆かわしいことこの上ない。おれは今もやむことなく続いている言い争いを見ながらそんな馬鹿なことを考えた。自分の記憶からかけ離れたことが起きているため、思考が麻痺でもしているのか、それとも、おれがただ薄情者であっただけか…。自分の推量だが、前者であるはずだ。五郎は諦めたようにじっと事の成り行きを見つめている。おれと目が合うと、

「果色も多分、祐君のおるてまえ、喧嘩はしとぉなかったゆぅて思うが。こうなってしもぉたら、もう手が付けらりゃぁせんから…。」

困ったように笑って小声でそう言ってきた。こいつも変なところで、誰よりも落ち着いていたりする。五郎も五郎で、分からん奴だ。変わって万里に視線を移すと二人を交互に心配そうに見ていた。そういえばこの四人の一番の苦労人はこいつだったけか。たまに小さく、「落ち着いて。」とか「どうしょぉで。」とか言っている。

「止めようとしているのか?あの喧嘩。」

万里に少し声のト-ンを落として聞いた。万里はおれに首だけ向けて「うん。」と頷いた。

「止めに入らんと、いつまでも続くから。」

言い終えないうちに万里はもう喧嘩をしている二人へ視線を戻していた。

大変遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした…っ。見捨てずに待っていてくれた方は本当にありがとうごさいますっ。これからもくじけず書いていきますのでよろしくお願いします!

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