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Very Merry Christmas!

作者: ホロ

時の流れとともに見えてくる、気持ちの変化をみて頂けたらいいです。

【12月25日0時01分】

《メリークリスマス

 ねぇ今日暇。一緒に遊びに行かない。12時に駅前ね》


これが僕の24時間の始まりの着信だった。


僕は大学の1年生。メールの相手は小学校からの幼馴染。大学は別々の大学に行ってしまったが、高校まではずっと一緒だった。それはもうずっとだ。クラスが離れたことはないし、家だって2建挟んで隣だ。だから、一緒に帰ったり、遊んだりも良くした。お互いの家にもよく行っていたし、とにかく仲のいい幼馴染だ。最近は大学に入って、彼女は夢を追いかけるために入った専門学校で毎日頑張っているし、僕は僕でバイトやらサークルを頑張っている。だからだが、ここ最近彼女には会っていない。特別付き合っているわけではないのだけど今まで当たり前だったものがそうでなくなるのはなんとなく違和感というものがあった。だからと言って、約束をしたりして会うこともなく、ちょくちょくメールしたりするだけだった。だから、僕にとって、彼女のこのメールは嬉しかった。ブロックがカチリとはまる感じだった。


《non title

 了解。お互い暇ってちょっと笑っちゃうな。大学生なのに。てか、近くなんだし、駅前で待ち合わせなんかしなくても迎えに行くよ》


《Re.

 いいの。とにかく、駅前に12時ね。遅刻すんなよ》


なかなか、彼女からのメールはたんぱくだった。いつもそんなかわいらしい、女の子って感じのメールをする奴でもないけどなぁ、とか思っていたけど、結局これも彼女らしいなとも思ってしまう。なんだか、急に何もなかったクリスマスにウキウキした気持ちに変わっていた。


【12月25日10時00分】

「さむっ」

ずれている布団から入ってくる隙間風が以上に冷たい。これは耐えられない。モゾモゾと足を使って布団の位置を直す。隙間風のなくなった布団の中は天国だ。間違いない。このままでは、魂も抜けだしてしまいそうだ。そんな、ほげ~っとした気分でいると突然、

ブッッッブッッッブッッッブッッッ

いきなり携帯電話が鳴りだした。ちょうど目が覚めていたこともあって、だいぶ驚いてしまった。枕元の上に置いてある携帯を腕を伸ばして2、3度空振りしながらも探し当て開くとやはりそこには彼女の名前と、メールが1件届いていた。


《おはよう

 二度寝しない。起きろ~~~》


実に彼女らしいメールだった。だてに付き合いが長いわけではない。今までこれにどれだけ助けられてきたか。テスト、日直、朝礼、休校、などいろいろな時に。もちろん、僕も彼女が朝ごはんのパンにかじりつきながら携帯いじっていたのだろうなってこともわかる。そのくらいお互いのことはわかっていた。だから、はいはい、という気持ちのまま恐る恐る布団をひっぺがえし、温かいはずのリビングに向かった。


  【12月25日12時00分】

5分ほど前から到着して彼女の到着を待っている僕だが、携帯電話の表示が1200になっても彼女は現れなかった。そんな僕も几帳面な方ではないけれども、あまり彼女が時間にルーズだったことがないので珍しいなと勝手に思っていた。

しかし、1分もすると、カツカツッっとかかとを鳴らした小走りの足音が聞こえてきた。

「ギリギリセーフ」

到着したのはもちろん彼女だった。家からすごく急いで来たのではなさそうで別に息切れをしている様子もなかった。

「いや、1分アウトだな」

ふざけて僕が言うのに合わせて彼女も、

「女の子は準備に時間がかかるんですー」

っとふざけて返してくる。適当に相槌を打ちつつ彼女をちゃんと見ると、あまり見たことない恰好だった。ただ、そこらへんを歩いている時とはだいぶ違う姿だった。ロングブーツにチェックぽいワンピースに白のファーのついたコートだった。いや、それだけではないんだろうけど、あまり詳しくない僕にはそれが精いっぱいだった。僕も別段変な格好ではなかったし、服は好きだから出かけるときにはそれなりの恰好はするけれど、やはり彼女の姿の方が上を行くな~っとぱっとみで思っていた。

実際彼女は告白もされたことがあるし、彼女のことが好きって話も聞いたことはある。でも、フッたらしい。そう、意外とモテたりもする奴ではある。けど、こうもずっと一緒にいるとあまりそーゆう感じにもならなかったりする訳で、僕と彼女の間に今まで何かあったことはない。

「で、どうすんだ。駅前来たけど、どこか行きたいとこでもあるのか」

思想にばっかりもふけていられない。外は寒いのだ。

「うん。せっかくクリスマスだし都心に出てみようよ」

楽しそうに話している彼女を見ていると、今日が一日楽しくなるだろうなっと思った。


僕たちは久々に会ったことで、会ってない間大学がどうでこうでとか、この漫画が面白いとか、merryの意味を説明してくれたり、高校の話をしたり、メリークリスマスって言われたら言い返せよとか、電車で目的地に着くまで話は絶えなかった。


  【12月25日14時00分】

原宿についた。イルミネーションが有名な表参道を目当てのカップルがたくさんいた。駅前には彼氏・彼女を待つ待ち人もたくさんいて、本当にごったがえしてた。

「うわ~ほんとたくさんいるんだね」

彼女がそういうのも無理はない。僕だってそう思っているし、クリスマスに来るのなんてお互い初めてのはずだし。

「すごいな。まぁクリスマスだし」

なんて言って、どうしよっかな~なんて思っていると、彼女はその人ごみの中に進もうとしている。

「おい、置いてくなって」

そう言いながら、彼女の後ろに付きながら竹下通りの中に僕らは消えていった。


「あれっ」

僕の視界から彼女がいなくなった。もちろんこのごったがえした人ごみの中でだ。これは困った。少し前までは彼女が俺の前にいたのは確かだからそう遠くにはいないだろうと思って、その場で周りを見渡してみるけれども彼女は見つからなった。

「しょうがないっか」

そう言って、ポケットから携帯電話を取り出そうとした。しかし、ポケットに手が入る前にその手を掴まれた。

「えっ」

がしっと捕まえた手はグイッと引っ張られ、そのまま僕はその引っ張られる方に体を持っていかれると、ようやく体勢を低くして僕の手をつかんでいた主が体勢を立て直し、

「ぼぉ~っとしてると迷子になるよ」

笑いながら言って、

「それに、人い過ぎだし、抜けよっか」

そう言ってつかんだ腕をそのままにどんどん進んでいく。そのせいで一向に体勢を立て直せないまま彼女に引っ張られていた。でも、僕の腕を引っ張る彼女の手は、僕の知っている小さい頃の彼女の手ではなく、柔らかく温かいけど、力強くなっていた。僕は初めて、彼女がただの小さかった女の子から、今や女性に変わりつつあるのだと思った。そう、気づいてしまうといくら幼馴染でも腕をずっと掴まれているのに恥ずかしさを感じてしまった。だからと言って振りほどける状況でもなく、そのままズルズルと出口までこっぱずかしさを抱えながらついて言っていた。


それからは、表参道を歩いてみたり、ご飯を食べたり、端から見ればどう見ても「カップルか」って思われるような感じだった。その度に、彼女はやっぱりただの遊びのつもりでいるのだろうかとか考えてしまって、また変に恥ずかしくなる僕がいた。


  【12月25日20時00分】

表参道のイルミネーションを抜けてまた駅まで戻ってこれた。もうこのくらいの時間になるととても寒いし、空は真っ暗だった。しかし、彼女はまだまだ元気で、

「次はね、東京タワーだから」

僕はびくっとした。まだ、行くのか。もはや寒いとか思っていたところだったので、彼女のその流れにうまく乗れなかった。それを見ていた彼女は、

「いーくーの。さぁ~切符買って」

彼女に促されて、目的地までの切符を買って改札を通りぬけた。


  【12月25日22時00分】

「いや~きれいだね。待ったかいがあったよ」

僕は隣にいる彼女に言った。僕らは今、東京タワーの展望台まで登ってきていて、今は都心を一望していた。

「1時間待ちとか焦ったけどね。でも、うん。その価値あるわ」

彼女もまた僕と同じでここからの景色に感激していた。なんたって二人とも田舎だから。

僕らは展望台でいろいろ立ち位置を変えながらあれがきれいとか、あれ何とか、いろいろ話しながら歩いていた。

すると、彼女が立ち止まって、僕とぶつかった。

「おい、どうした」

ぶつかってもじっと外を見ている彼女。それが気になって僕もその先を見てみた。しかし、そっちにはこれといった建物もなく、植林があって真っ暗だった。ちらほら見える街頭くらいしかない場所を彼女はじっと見ていた。すると、唐突に、

「あそこ、見える」

彼女の指の先には・・・闇。

「全くわからん」

「も~目が悪いんだから」

いや、彼女が良すぎるだけだ。これでも僕も1.0はある。けど、彼女は2.0以上はある。なんか不公平だ。

「あそこにベンチがあるでしょ。暗くて見にくいけど、あるのよ。あそこに行こう。それで東京タワーを見よう」

僕には見えないベンチを指さして彼女は言った。

それがまた、楽しそうな彼女で、今まで知っていた彼女と、初めて見る彼女と二人いた。一緒にいて落ち着く彼女なのに、たまにどうしていいかわからなくさせる彼女。

気がつくと今日はずっと彼女を見ていた。具体的じゃないけど、この感じ、この気持ちはきっと・・・

   好きなんだな

っと思う。一度心の中で思うと、その気持ちはどんどん膨らんできた。今、ここに好きなこと一緒にいる。そう思うだけで楽しかった。振り返るとそこにいるのがうれしかった。だから、

「いこっか」

彼女が言うところへ一緒にまだ行きたいと思った。


  【12月25日23時00分】

東京タワーから離れ5分ほど歩いたところに本当にベンチがあった。そこは大きな芝公園になっていて、森の中にぽっかりと穴があいているような感じの所だった。

自分の気持ちに気付いたけれども、僕は変わらずに一緒にいられた。この気持ちはきっとずっとずっっっっっと前から持っていたものだと思ったから。

僕らは公園からまっすぐにある奥のベンチに座ることにした。


「こっちもきれい」

彼女は東京タワーを見上げながら言った。確かにきれいだった。今までは知らなかったけれど、こんなにも東京タワーは輝いているのだと思った。その有様がとても印象的だった。

「来てよかった」

僕が独り言のように言ってみると、

「でしょ」

東京タワーから目を外して、僕の方を見て言った。

「今日はここに来たかったんだ。この辺に公園があるとも聞いてたし、探したんだよね」

満足そうな顔をしていたから、期待に応えたくなって、

「すっげ~よかった」

応えるどころか、ただの本音でしかなかった。それでも、

「ほんと?」

聞いてくる彼女はいつもよりもかわいかった。こんな風に見ることもあまりなかったけれど、今は漠然とそう思うようになった。

「ほんとだって」

「よかった」

それから、僕らは何もしゃべらないまま光る東京タワーを見上げていた。


【12月25日23時55分】

「そろそろいこっか」

彼女はそう言って立ち上がって公園の出口の方に歩きだした。僕も後を追うようにして立ち上がろうとして、彼女の背中を見た瞬間に何かが駆け巡った。

このままでいいのだろうか。いや、良くない。まだ、やり残していることがある。きっと、今伝えなきゃならない。でも、どうやって。

僕のポケットには、財布と携帯電話くらいしか。くらい?携帯電話がある。これなら。

その時、彼女に言われたことがよみがえった。

うん、ならこれにしよう。

先に行く彼女を追いかけずに僕は携帯電話で東京タワーを撮影した。そのままメールに貼り付けてた。

【57分】

間に合え。かじかむ手で、僕はボタンを押して、メールを作成し始めた。

  【58分】

まだ、できていなかった。なかなか言うことを聞いてくれない手を無理やり動かした。

  【59分】

遠くで彼女が叫んでいる声が聞こえるが、返事をしている余裕はなかった。



できた。



送信。



送信と同時に東京タワーの電気が落ちて真っ暗になった。

彼女が携帯電話を開く様子が見える。その姿がやけに静かで恐かった。


なぜなら、僕の携帯電話には

【12月26日0時00分】

送信履歴だ。間に合わなかった。

僕はすぐに彼女の方へ走っていくこともできず、また遅れてしまったとやりきれなさをぬぐえなった。

 すると、彼女は携帯電話を閉じると僕の方へ走ってきた。その彼女に僕はなんて声を掛けたらいいのかわからないけど、とにかく謝るしかできなかった。

「ごめん」

近づいてくる彼女に聞こえるように言った。でも、彼女は止まらなかった。立ちあがって一歩出た僕にそのまま抱きついてきた。

僕はどうしてかわからずに、硬直した。彼女は僕に抱きついたまま、

「ちゃんと届いてるよ」

そう言ってくれた。

僕から離れた彼女は携帯電話を開いて見せてくれた。そこには、


  【12月25日23時59分】

《Very Merry Christmas!

 ありがとう》

(とっても、幸せなクリスマス!ありがとう)


そう書かれていた。


「でも、なんで」

確かに僕の携帯電話では間に合っていなかったはず。

「私の携帯一分遅れてるから」

たった一分だけど、大事な1分だった。僕がほっとするのを見て彼女は、

「ねぇ、言うこと・・・ないの」

っと言ってきた。彼女の顔は自信満々に笑っていた。ちょっと悔しいけど、僕も言わずにはいられなかった。

「大好きだ」

かっと顔が熱くなるのがわかった。彼女の顔が見れなかった。

「私もずっと好きだった」

彼女の言った言葉に今までで感じたこと無い気持ちの高ぶりを感じた。体中が満たされていく感じだった。

僕は彼女を見ると、彼女も僕を見ていた、

「ねぇ・・・」

今度は呼びかけるだけで、そこには目を閉じた彼女がいた。

だから、僕はそっと・・・。

                                  完。


時間を少しづつずらしたり、彼女の言い訳がちゃんと意味があるものだったり、少しづつネタを振っておいたので気がついてもらえたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] えぇ・・・ めっちゃえぇ話やん!! 彼女がめっちゃ優しいなんて、主人公はんは幸せもんやな!
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