↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
88/101

マハー・カーリン。

遂に復活します。

【フィルモア城・城前広場】


「わぁ~悪魔の羽が生えたお人形さんだわ~」


 慌てて装備を整え、城外へ飛び出した華奈たちの前に、一人の少女が立っていた。


 ピクスドールのような愛らしい容姿。

 だが、その背には漆黒の翼が揺れ、纏う神気は世界そのものを震わせる。


 ――その少女の名は破壊女神マハー・カーリン。


「匠殿、あれは何なんでしょうか……」

「まぁ間違いなく、近衛では勝負にならない程の強者ですね」


 近衛騎士も異変を感じバラバラと集まり始める。

 それを待っていたのか、悪魔人形はニヤリと口角を上げ、大剣を大空へと掲げた。


「我は戦う女神マハー・カーリンである。さあ、戦闘狂と勝負を望む!」


 艶やかな格好と、威勢よく振り回す大剣とのアンバランスさ、そしてなにより、脳筋的発言を聞いた瞬間――。

 匠と華奈は思わず苦笑いをしてしまう。


「ここは私が対応します」


 ウィラードが前に躍り出ながら、力強く言い放つ。

 この城の守護者である彼が先鋒を務めるのは当然だ。


「相当強いので、気をつけてください」


 直感が警鐘を鳴らしていた匠は、ウィラードに注意を促す。

 眼前に佇むマハー・カーリンから発する圧力は、魔王にも引けを取らないのだ。


 轟――!


 気合一閃、抜剣したウィラードは一瞬の迷いもなく踏み込み、同時に怒涛の突撃を繰り出した。


 バキャーン!


 疾風のごとき剣閃がマハー・カーリンを急襲する。

 しかし片手で受け流し、圧倒的な強さを示す。


「中々の腕前と見た。本気で行かせてもらうわ」


「笑止。貴様に本気を出させるために剣を振るっているわけではない」


 ウィラードは間髪入れず、鋭い連撃を繰り出す。

 流れるような剣筋は一切の隙を見せず、絶え間なくマハー・カーリンへ襲い掛かった。


 だが――。


 マハー・カーリンは口元に愉快そうな笑みを浮かべ、大剣を片手で軽々と操る。

 迫り来る斬撃を紙一重でいなし、時に刃で受け、時に柄で弾き返す。

 その余裕は最後まで崩れなかった。


「面白い」


 そう呟くと、彼女は重力など存在しないかのように、ふわりと宙へ舞い上がった。


 ――轟。


 黒翼が羽ばたき、その瞬間空気が爆ぜ、マハー・カーリンの姿が掻き消えた。


 ガギィィン!!


「ぐっ……!」


 咄嗟に大楯で受け止めたものの、凄まじい一撃にウィラードの足元が砕け、大地へ深々とめり込む――。


「強者はそうでなくては」


 空中を自在に駆けるマハー・カーリンは、上空から縦横無尽に襲い掛かる。

 人外の膂力で振り下ろされる大剣を受け止めるたび、衝撃が大地を揺らした。


「くっそ、ワイバーンよりタチが悪い」


 空を支配するカーリンに対し、地上のウィラードは迎撃するだけで精一杯だった。


「ならば足を付けてやろう」


 ザッ――。


 地を蹴ったマハー・カーリンの姿が掻き消えた。

 残像だけをを残し、ウィラードの目の前に現れる。


 ――ガァァンッ!!


「ガハァ!」


 凄まじい衝撃音が響く。

 盾ごと弾き飛ばされたウィラードの巨体が、大地を何度も転がった――。


「中々良い勝負であったぞ」


 斜めに立つマハー・カーリンは、大剣を鞘に仕舞う。

 それ以上追撃する気もないし、殺そうともしない、純粋な戦闘狂だった――。


「そこの剣士、我と剣で語り合おうじゃない」


 そして呆然とする華奈たち一向へと向けられる挑発の言葉――。

 新たな挑戦者を渇望するマハー・カーリンの赤い瞳が、匠を捉えて離さない。



 ※※※※※



【フィルモア城・地下魔法陣】


 祭壇には、かつてガルド村で蘇生された子供たちの息絶えた姿があった。


 それは救済ではなく、ルシファー復活のため、一時的に魂を繋ぎ止められただけの仮初めの命だった――。


「役に立たない虫けらめ、生娘を用意できぬとは――」


 その祭壇の魔法陣から、一人の男が姿を現した。それは――。


 大悪魔――ルシファー。


 深紅の髪と漆黒の瞳が、ゴッドフリーを冷たく見据える。


「ルシファー様、ご容赦を! 必ず生娘を手に入れ――」


 ルシファーは無言のまま、その胸へ手を差し入れた。


 肉体には傷一つ付かない。


 ぎゃあああぁぁぁっ!――


 だが、ゴッドフリーの絶叫だけが地下空間に響き渡る。


「ククク……此奴の汚れた魂は美味だな」


 ドサリ――。


 魂を喰われたゴッドフリーは、ミイラのように干からび、その場へ崩れ落ちた。



 ※※※※※



【フィルモア城・城前広場】


 満身創痍状態のウィラードは、剣を支えにやっと立っている。

 マハー・カーリンは匠はまだかと、苛つきを見せていた。


「匠殿……すまない……後を頼めるか」


「ああ、問題ない。俺が沈めてくるわ」


 そう言い残した匠は、すでに視界から消えていた。


 次の瞬間にはマハー・カーリンの背後に姿を見せる。


「そこまでだ」


 コツン――。


 鞘がカーリンの後頭部を軽く叩いた。


「なっ!?」


 真剣なら勝負は終わっている。だが、殺す理由がないのと、レベル差がありすぎるので完全に遊んでいた。


 「くっそ、 名を名乗れ!」


 振り向き様に抜刀しようと、柄に手を掛けたが、上から抑えられ匠の腕はピクリとも動かない。


「俺の名は匠だ」

「匠と申すのか、強いな貴様。今日から我の伴侶として――」

「駄目神、お前を殺す!」


 ――ピキィィィィン!


 凄まじい音と共に、華奈の容赦ない一撃が炸裂する――。


「殺す!」という殺気の一言から、マハー・カーリンが「戦意喪失」の憂き目に遭うまで、文字通り一瞬の出来事だった。


「あ、あうぅぅ……」


 鳩尾に一撃を喰らい、苦痛に満ち、今にも崩れ落ちそうだ。

 助けを求め匠に手を伸ばすが――。


 コツン!


「ピャ!」


 華奈は鞘で頭をこずく。

 そして破壊女神マハー・カーリンは、完全に戦意を失い、ペタンと地面へ座り込んでしまった。


「ちょっと! なんでいきなり現れて人の男を寝取ろうとしてんのよ!」


 華奈はふんっと鼻を鳴らし、腰に当てて見下ろす。


「いきなり現れたとは失礼な! 私は彷徨っていた魂を、無理やりここで具現化された被害者なのよ~!」


 マハー・カーリンは涙ぐみながら、理不尽だと言わんばかりにジタバタと地団駄を踏む。


「じゃ、また彷徨える魂に戻ればいいじゃない、脳筋マハー・カーリン!!」


「それ酷くない!というか、なによあの男! 《《ア》》《《ン》》《《グ》》より強いなんて反則じゃない! 私の全盛期でもあんな速度の攻撃、見えやしないわよ!」


「はっ? ……今、アングって言ったか?」


 匠が首を傾げながら聞き返す。その名には聞き覚えがあった。


「アングって……あのアングィスのことか?」

「そうよ! アングィスは我の相棒よ! 二千年前、ルシファーを封印する時に、私の実体は霧散しちゃったんだから~」

「…………」

「それなのに、それなのに、目覚めて早々こんな暴力に遭うなんて、ひどすぎるわ……!」


 ぐすぐすと鼻をすするマハー・カーリンを前に、匠と華奈は顔を見合わせた。

 破壊女神という大層な二つ名の割に、どうにも締まらないポンコツ女神の登場に、二人は深い溜め息をこぼすのだった――。


「アングィスの野郎、分かっているくせに黙ってやがったな!」


「それでな、あのね、ルシファーが復活しそうなの、阻止したいから手伝って!」


 ポンコツ戦女神マハー・カーリンは、軽く重要なことを言ってのける。

 華奈と匠は顔を見合わせ、即座に討伐するしかないと無言で、拳を突きつけ合う。


「ポンコツ戦女神ちゃん、その場所に案内しなさい」


「言われなくても、連れてくよ。城の地下だからすぐそこよ!急いで!」


 三人は近衛騎士団と共にフィルモア城へ向かって駆け出した――。

宜しければブクマ評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。