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不合格から始まる聖医の絆 ―踏切を越えた先、異世界で命を繋ぐ―  作者: ねこあし


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第52話 「帰還の準備」

 祝賀会の翌日


 六人は、久しぶりにゆっくり休んだ。


 三つの封印の旅は、厳しかった。


 体も心も、疲れ切っていた。


 一週間は、完全に休息することにした。


 訓練もせず、依頼も受けず。


 ただ、のんびり過ごす。


 学院の庭園を散歩したり、図書館で本を読んだり、友人たちと話したり。


 平和な日々だった。


 三日後


 あかねは、図書館で紋章に関する本を読んでいた。


 三つの封印を強化し、全ての力を手に入れた。


 でも、まだ紋章について分からないことがある。


 なぜ、自分が選ばれたのか。


 紋章の真の目的は何なのか。


 本を読んでいると、一つの記述が目に留まった。


『選ばれし者は、闇の王を倒した後、元の世界に戻ることができる』


 あかねは、息を呑んだ。


 元の世界に、戻れる?


 日本に、帰れる?


 お母さんに、会える?


 でも――


 それは、仲間と別れることを意味する。


 あかねは、複雑な気持ちになった。


 日本に帰りたい。


 でも、仲間と別れたくない。


 どうすればいいんだろう。


「あかね、何読んでるの?」


 後ろから、セリアの声がした。


 振り返ると、セリアが立っていた。


「セリア……」


「難しい顔してるわね。何かあった?」


「実は……」


 あかねが、本の記述を見せた。


 セリアが読む。


 そして、静かに微笑んだ。


「そっか……あかね、日本に帰れるんだ」


「でも、私……」


「いいのよ」


 セリアが、あかねの手を握った。


「闇の王を倒したら、帰りなさい」


「お母さんに、会いなさい」


「それが、あなたの幸せよ」


「でも、みんなと別れたくない……」


「私たちも、あなたと別れたくない」


 セリアが涙を流した。


「でも、あなたには帰る場所がある」


「それを、無理に引き止めることはできないわ」


「セリア……」


 二人は、抱き合った。


 涙が、止まらなかった。


 でも、まだ決めなくていい。


 闇の王を倒してから、考えよう。


 今は、仲間と一緒にいる時間を大切にしよう。


 一週間後


 ある日の朝、エルヴィン院長が六人を呼んだ。


 院長室には、凛と四天王もいた。


 みんな、真剣な表情だった。


「何かあったんですか?」


 セリアが尋ねた。


「ええ。重大な報告があります」


 エルヴィン院長が、地図を広げた。


「昨夜、北の氷結の地で異変がありました」


「異変……?」


「封印の場所で、強いエネルギーの波動が観測されました」


 院長が説明した。


「まるで、何かが封印に挑んでいるかのような」


「でも、封印は強化したばかりです」


「百年間は破られないはずでは?」


 あかねが確認した。


「その通りです」


 院長が頷いた。


「でも、闇の王の力は予想以上に強い」


「封印を強化しても、外から揺さぶることはできるようです」


「つまり、闇の王はもう目覚めようとしている」


 フェンリルが厳しい表情で言った。


「封印を破ることはできなくても、力を取り戻しつつある」


「いつ、復活してもおかしくない」


 六人は、緊張した。


 闇の王の復活が、近い。


「どうすればいいんですか?」


 リーナが尋ねた。


「準備を整えてください」


 エルヴィン院長が答えた。


「闇の王が復活した時、すぐに戦えるように」


「でも、戦う場所は?」


 ダリウスが尋ねた。


「闇の王は、どこで復活するんですか?」


「三つの封印のどれかが破られた場所です」


 凛が説明した。


「おそらく、最も弱い封印から」


「でも、三つとも同じ強度に強化しました」


 エルミナが言った。


「ということは……」


「どこで復活するか、予測できません」


 アリアが厳しい表情で言った。


「常に警戒しなければなりません」


「でも、ずっとここにいるわけにもいかない」


 トムが言った。


「そうですね」


 エルヴィン院長が頷いた。


「だから、提案があります」


「あなたたちは、自由都市連合に戻ってください」


「え?」


 六人は驚いた。


「自由都市連合は、三つの封印の中間に位置しています」


 院長が地図を指差した。


「北の氷結の地、西の炎獄の山、東の嵐の海」


「どこで復活しても、自由都市連合からなら数日で駆けつけられます」


「なるほど……」


 セリアが納得した。


「それに、あなたたちの故郷でもあります」


 凛が微笑んだ。


「最後の戦いの前に、故郷で過ごすのもいいでしょう」


「分かりました」


 六人が頷いた。


「では、準備を整えてください」


 エルヴィン院長が言った。


「一週間後、出発してください」


「はい」


 出発までの一週間


 六人は、学院での最後の日々を過ごした。


 訓練も続けた。


 四天王との最後の稽古。


 フェンリルとの剣術訓練。


 アリアとの弓術訓練。


 ガルムとの体術訓練。


 ルミナとの魔法訓練。


 全てが、最後だった。


「お前たち、本当に強くなったな」


 フェンリルが満足そうに言った。


「もう、教えることはない」


「あとは、自分を信じて戦え」


「ありがとうございました」


 六人が深く頭を下げた。


 また、友人たちとの時間も大切にした。


 ルナとは、毎日一緒に過ごした。


 庭園を散歩したり、お茶を飲んだり、夜空を見上げたり。


 楽しい時間だった。


「あかね、また会えるよね?」


 ルナが不安そうに尋ねた。


「うん、もちろん」


 あかねが微笑んだ。


「闇の王を倒したら、また来るわ」


「約束よ」


「うん……約束」


 ルナが、あかねを抱きしめた。


 出発前夜


 六人は、屋上に集まった。


 最後の夜。


 明日、自由都市連合へ帰る。


「エルデン大陸、楽しかったわね」


 セリアが言った。


「ええ」


 五人が頷いた。


「凛さん、四天王、ルナ、みんなに会えて」


 リーナが続けた。


「たくさん学んだわ」


「強くなったわ」


 エルミナも微笑んだ。


「でも、寂しいな」


 トムが呟いた。


「また来られるさ」


 ダリウスが言った。


「闇の王を倒したら、また来よう」


「うん」


 あかねが頷いた。


 その時、紋章が温かくなった。


 あかねは、左手首を見た。


 紋章が、微かに光っている。


 そして、声が聞こえた。


『汝、よくぞ三つの封印を強化せり』


 紋章の声だ。


『されど、最後の戦いが近づく』


『闇の王、まもなく復活せん』


『備えよ』


『汝の力、仲間の絆、全てを使いて戦え』


『世界の運命、汝の手にあり』


 声が、消えた。


 あかねは、震えた。


 闇の王の復活が、近い。


 本当に、近い。


「あかね、大丈夫?」


 セリアが心配そうに尋ねた。


「うん……紋章が、話しかけてきたの」


 あかねが説明した。


「闇の王の復活が、近いって」


 六人は、緊張した。


 でも、同時に決意した。


「じゃあ、準備を整えないとね」


 セリアが言った。


「自由都市連合に戻って、最終決戦に備えましょう」


「うん」


 五人が頷いた。


 六人は、手を重ねた。


「『銀の絆』、ファイト!」


 全員が、叫んだ。


 声が、夜空に響いた。


 出発の日


 朝、六人と凛は正門に集まった。


 荷物を全て整えた。


 エルデン大陸での数ヶ月分の思い出を、心に刻んだ。


 エルヴィン院長、四天王、ルナ、そして全校生徒が見送りに来た。


「気をつけて」


 エルヴィン院長が言った。


「闇の王が復活したら、すぐに連絡してください」


「私たちも、すぐに駆けつけます」


「ありがとうございます」


 セリアが答えた。


「お前たちなら、必ず勝てる」


 フェンリルが言った。


「信じてるぞ」


「世界を、頼んだ」


 アリアが微笑んだ。


「必ず、成功させてください」


 ガルムとルミナも頷いた。


 ルナが、泣きながらあかねを抱きしめた。


「あかね……行かないで……」


「ルナ……」


 あかねも涙を流した。


「でも、行かなきゃいけないの」


「世界を、救わなきゃいけないの」


「分かってる……分かってるけど……」


「また、会えるわ」


 あかねが、ルナの頭を撫でた。


「必ず、戻ってくるから」


「待っててね」


「うん……待ってる……」


 ルナが、涙を拭いた。


 七人は、馬車に乗った。


 そして、学院を出発した。


 東へ向かって。


 港へ向かって。


 自由都市連合へ向かって。


 馬車が、学院から離れていく。


 六人は、窓から学院を見た。


 美しい建物。


 たくさんの思い出。


 必ず、また来よう。


 そう、心に誓った。


 三日後、オーシャンゲート港


 七人は、港に着いた。


 船が、待っていた。


 来た時と同じ船だ。


 船長が、笑顔で迎えた。


「お帰りなさい」


 船長が言った。


「強くなったようですね」


「オーラが、全然違う」


「ありがとうございます」


 六人が微笑んだ。


 船に乗り込んだ。


 そして、出航した。


 エルデン大陸が、遠ざかっていく。


 六人は、甲板に立って見送った。


 さようなら、エルデン大陸。


 また、会いましょう。


 航海中


 船は、順調に海を進んだ。


 波は穏やか。


 天気も良い。


 六人は、甲板で訓練を続けた。


 最終決戦に備えて。


 あかねは、全ての力を練習した。


 地の力、風の力、光の力。


 統合の力。


 炎の心。


 絆の力。


 全てを、スムーズに使えるようになった。


 他の五人も、新しい技を磨いた。


 セリアの連撃剣。


 リーナの分裂矢。


 エルミナの複合魔法。


 トムの防御技術。


 ダリウスの強化魔力剣。


 全てが、完璧に近づいていた。


 ある日の夜、あかねは凛と話していた。


「凛さん」


「はい?」


「私、考えてるんです」


 あかねが呟いた。


「闇の王を倒した後のこと」


「日本に、帰れるかもしれないって」


「ええ。紋章の力で」


 凛が頷いた。


「でも、帰りたいですか?」


「分からないんです……」


 あかねが困惑した表情で言った。


「日本に帰りたい」


「お母さんに会いたい」


「でも、みんなと別れたくない」


「この世界も、好きになった」


「どうすればいいか……」


「今は、考えなくていいんじゃないですか?」


 凛が優しく言った。


「闇の王を倒してから、ゆっくり考えればいい」


「焦る必要はありません」


「そうですね……」


 あかねが微笑んだ。


「ありがとうございます、凛さん」


「それと、あかねさん」


 凛が真剣な表情で言った。


「私も、かつて同じことを考えました」


「日本に帰るか、この世界に残るか」


「凛さんは、どうしたんですか?」


「残ることを選びました」


 凛が微笑んだ。


「この世界で、大切な人たちに出会ったから」


「ここが、私の居場所になったから」


「でも、時々日本を思い出します」


「お母さん、友達、あの生活」


「両方とも、大切なんです」


「だから、どちらを選んでも間違いじゃない」


「あなたの心が、答えを教えてくれます」


「はい……」


 あかねが頷いた。


 七日後、自由都市連合


 船は、港に着いた。


 王都リベルナの港。


 懐かしい景色。


 六人は、感慨深かった。


 ここから、全てが始まった。


 エルドランドから逃げてきて。


 Eランク冒険者として、スタートして。


 そして今、Sランク相当の実力を持つ冒険者になった。


 長い旅だった。


 でも、まだ終わっていない。


 最後の戦いが、待っている。


 七人は、船を降りた。


 港には、見知った顔があった。


 オルガだ。


「あかね! セリア!」


 オルガが駆け寄ってきた。


「お帰りなさい!」


「ただいま、オルガさん」


 六人が、オルガを抱きしめた。


「元気そうね」


 オルガが満足そうに言った。


「強くなったわね」


「オーラが、全然違うわ」


「ありがとうございます」


「さあ、私の店へいらっしゃい」


 オルガが微笑んだ。


「たくさん話を聞かせて」


 七人は、オルガの薬草店へ向かった。


 王都リベルナ。


 懐かしい街。


 ここで、最後の戦いに備える。


 闇の王が復活するまで。


 そして、世界を救う。


 六人は、決意した。


 パーティ『銀の絆』として。


 仲間と一緒に。


 これが、最後の戦いになる。


 世界の運命が、かかっている。


 でも、大丈夫。


 仲間がいるから。


 絆があるから。


 きっと、勝てる。


 六人は、前を向いて歩いた。


 最終決戦へ向かって。

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