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不合格から始まる聖医の絆 ―踏切を越えた先、異世界で命を繋ぐ―  作者: ねこあし


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第26話 「竜との遭遇」

 翌朝、六人は早くから準備を始めた。


 ドラゴン討伐。


 Sランクの魔物との戦い。


 これまでで、最も危険な依頼だ。


 食料、水、武器、防具、薬。


 全てを、入念に確認した。


「準備は万全?」


 セリアが、みんなに尋ねた。


「うん」


「大丈夫」


「よし。じゃあ、行きましょう」


 街の北門で、マルコスが待っていた。


 そして、彼の隣には三人の仲間がいた。


「おはよう、銀の絆」


 マルコスが手を上げた。


「おはようございます」


「紹介しよう。こちらが、俺のパーティメンバーだ」


 マルコスが、一人目を紹介した。


 女性の戦士。


 三十代くらい。筋肉質の体。短い黒髪。顔には、戦いの傷跡がいくつもある。


 腰には、大きな斧。


「エイダ・ストームだ」


 女性が、低い声で言った。


「Bランクの戦士。よろしく」


「よろしくお願いします」


 セリアが挨拶した。


 エイダは、セリアをじっと見た。


「お前、剣士か」


「はい」


「ふむ。悪くない構えだ」


 エイダが頷いた。


「後で、手合わせしてやる」


「ありがとうございます」


 次に、マルコスが二人目を紹介した。


 老人の魔法使い。


 七十代くらい。長い白髭。魔法使いのローブを着ている。


 手には、古い杖。


「私は、オズワルド・グレイビアード」


 老人が、穏やかな声で言った。


「専門は、雷魔法と風魔法。よろしく頼むよ」


「よろしくお願いします」


 エルミナが挨拶した。


「あなたも魔法使いか」


 オズワルドが、エルミナを見た。


「はい。火と水の魔法を使います」


「ほう。若いのに、二属性か。才能があるな」


「ありがとうございます」


 最後に、マルコスが三人目を紹介した。


 若い男性の弓使い。


 二十代前半。金髪、青い目。爽やかな笑顔。


 背中には、長弓。


「レオン・シルバーアローだ」


 男性が、明るく言った。


「弓が得意。それと、罠の設置も得意だよ。よろしく!」


「よろしくお願いします」


 リーナが挨拶した。


「君も弓使い?」


 レオンが、リーナの弓を見た。


「うん」


「いい弓だね。俺のと似てる」


 レオンが、自分の弓を見せた。


「本当だ」


 二人は、すぐに意気投合した。


「さて、全員揃ったな」


 マルコスが、地図を広げた。


「改めて、依頼の内容を説明する」


 十人が、地図の周りに集まった。


「北の山脈、その頂上付近に、赤龍レドラスが現れた」


 マルコスが、地図上の一点を指差した。


「レドラスは、Sランクのドラゴン。体長は二十メートル以上。炎を吐き、空を飛ぶ」


「この一ヶ月で、既に三つの村を焼いた。被害は甚大だ」


「だから、王国が討伐命令を出した。報酬は、金貨百枚」


「金貨百枚……」


 六人は、驚いた。


 これまでで、最高額の報酬だ。


「ただし」


 マルコスが、真剣な表情で言った。


「危険度も、最高レベルだ。死ぬ覚悟で挑む必要がある」


「今なら、辞退してもいい。誰も、責めない」


 十人は、顔を見合わせた。


 誰も、辞退しなかった。


「よし。じゃあ、出発するぞ」


 マルコスが先頭を歩き始めた。


 十人は、北へ向かった。


 一日目


 朝から夕方まで、ひたすら歩いた。


 平原を抜け、丘を越え、森に入った。


 昼、森の中で休憩を取った。


 十人が、木陰に座って食事をした。


「ねえ、マルコスさん」


 あかねが尋ねた。


「ドラゴンって、どれくらい強いんですか?」


「想像を絶するほど強い」


 マルコスが答えた。


「俺も、昔一度だけドラゴンを見たことがある。でも、戦わなかった」


「なぜ?」


「勝てないと分かったからだ」


 マルコスが、遠い目をした。


「あの時、俺はまだAランクだった。パーティも、五人いた」


「でも、ドラゴンを見た瞬間、全員が悟った。こいつと戦ったら、死ぬって」


「だから、逃げた」


「そんなに……」


「ああ。でも、今回は違う」


 マルコスが、十人を見回した。


「今回は、準備がある。作戦もある。それに、お前たち銀の絆という強力な仲間もいる」


「勝算はある」


「はい」


 夕方、森の中で野営した。


 焚き火を囲みながら、十人は話した。


「ねえ、エイダさん」


 セリアが尋ねた。


「なぜ、冒険者になったんですか?」


「金のためだ」


 エイダが、即答した。


「俺の故郷は貧しい村でな。家族を養うために、冒険者になった」


「今も、稼いだ金は全部、故郷に送ってる」


「そうなんですか……」


「お前は?」


 エイダが、セリアを見た。


「私は……自由のため」


 セリアが答えた。


「貴族の家に生まれて、窮屈な生活が嫌で、家を出た」


「貴族か。贅沢な悩みだな」


 エイダが笑った。


「でも、分かる。自由は、何よりも大事だ」


 その夜、あかねとレオンが見張りの当番だった。


 二人は、焚き火の前に座り、周囲を警戒した。


「なあ、あかね」


 レオンが小声で言った。


「うん?」


「お前、強いな」


「え?」


「歩き方を見れば分かる。体のバランスが良い。訓練を積んでる」


 レオンが説明した。


「それに、目つきも違う。強敵と戦った経験がある」


「そんなこと、分かるの?」


「ああ。俺、観察が得意なんだ」


 レオンが笑った。


「リーナも強い。エルミナも。セリアとトムも」


「お前たちのパーティ、Cランクにしては強すぎる」


「そうかな……」


「ああ。俺の予想だと、お前たちはすぐにBランクに上がれる」


「本当?」


「本当だ。だから、今回のドラゴン討伐も、きっと成功する」


 レオンが、真剣な表情で言った。


「お前たちと一緒なら、勝てる気がする」


「ありがとう」


 あかねは、嬉しくなった。


 二日目


 朝早く出発し、森を抜けた。


 そして、山道に入った。


 道は険しく、急な坂道が続く。


 昼過ぎ、山の中腹で休憩を取った。


 全員、疲れ切っていた。


「きつい……」


 リーナが、水を飲みながら言った。


「まだ、半分も来てないわよ」


 マルコスが地図を確認した。


「頂上まで、あと一日半」


「頑張りましょう」


 休憩を終え、再び歩き始めた。


 午後、オズワルドが立ち止まった。


「待て。何か来る」


 全員が、警戒した。


 遠くから、地響きが聞こえる。


 ドスン、ドスン、ドスン。


 重い足音。


 やがて、巨大な影が現れた。


 トロール。


 身長五メートル。筋肉質の体。手には、大きな棍棒。


「トロール……」


 マルコスが剣を抜いた。


「Aランクの魔物だ」


「戦うぞ」


 十人が、トロールと戦った。


 マルコスとエイダが前衛で引きつける。


 セリアとトムが、側面から攻撃する。


 リーナとレオンが、遠距離から矢を放つ。


 エルミナとオズワルドが、魔法で支援する。


 あかねとダリウスが、隙を突いて攻撃する。


 十人の連携は、素晴らしかった。


 十分後、トロールは倒れた。


「よくやった」


 マルコスが、満足そうに言った。


「お前たちの連携、完璧だな」


「ありがとうございます」


 夕方、山の中腹で野営した。


 この日も、全員疲れ切っていた。


 でも、誰も弱音を吐かなかった。


 明日、ドラゴンと対峙する。


 その緊張感が、全員を支配していた。


 三日目


 朝、早くから出発した。


 山を登り続ける。


 道は、どんどん険しくなっていく。


 そして、空気も薄くなっていく。


 昼過ぎ、ついに山の頂上付近に到着した。


 そこは、広い平原だった。


 岩がゴツゴツしていて、植物はほとんどない。


 そして、平原の中央に――


 巨大な洞窟があった。


「あれが、ドラゴンの巣か」


 マルコスが呟いた。


「気をつけろ。いつ出てくるか分からない」


 十人は、慎重に洞窟に近づいた。


 でも、その時――


 轟音が響いた。


 ゴォォォォ!


 洞窟から、巨大な影が飛び出してきた。


 ドラゴン。


 赤い鱗に覆われた巨体。


 体長は、二十メートル以上。


 巨大な翼、鋭い爪、長い尾。


 そして、口には、無数の鋭い牙。


 圧倒的な存在感。


「来たぞ!」


 マルコスが叫んだ。


 ドラゴンが、空中で咆哮した。


 ガァァァァ!


 その声だけで、地面が震えた。


 あかねは、鑑定能力を使った。


『赤龍レドラス。Sランク魔物。攻撃力:極大。防御力:極大。飛行能力:高。特殊能力:炎のブレス。弱点:心臓(胸の中央)、翼の付け根、目』


 情報が浮かび上がる。


「弱点は、心臓と翼の付け根、それに目!」


 あかねが叫んだ。


「分かった!」


 ドラゴンが、急降下してきた。


 巨大な爪で、地面を引き裂く。


 十人は、散開して避けた。


「散開! 囲め!」


 マルコスが指示した。


 十人が、ドラゴンを囲むように配置した。


 ドラゴンが、炎を吐いた。


 ゴォォォォ!


 灼熱の炎が、地面を焼いた。


 十人は、必死に避けた。


「熱い!」


「魔法で防げ!」


 オズワルドとエルミナが、防御魔法を展開した。


 炎が、少し弱まった。


「今だ! 攻撃しろ!」


 マルコスが、ドラゴンに斬りかかった。


 剣が、ドラゴンの足に命中した。


 でも、鱗が硬く、ほとんどダメージがない。


「硬い!」


 エイダも、斧で攻撃した。


 でも、同じ結果。


「鱗を破れない!」


 リーナとレオンが、矢を放った。


 狙いは、目。


 でも、ドラゴンは首を動かして避けた。


「当たらない!」


 ドラゴンが、尾で攻撃してきた。


 巨大な尾が、地面を薙ぎ払う。


 セリアとトムが、吹き飛ばされた。


「セリア! トム!」


 あかねが駆け寄った。


 二人は、地面に倒れていた。


 でも、まだ意識はある。


「大丈夫……」


 セリアが、立ち上がった。


「まだ、戦える」


 ドラゴンが、再び炎を吐いた。


 十人は、避ける。


 でも、レオンが避けきれなかった。


 炎が、レオンを包んだ。


「レオン!」


 リーナが叫んだ。


 オズワルドが、すぐに水の魔法で炎を消した。


 レオンは、火傷を負っていた。


「くそ……」


 マルコスが、悔しそうに拳を握った。


「このままじゃ、勝てない」


 ドラゴンが、空高く飛び上がった。


 そして、急降下してきた。


 巨大な体で、十人を押し潰そうとしている。


「逃げろ!」


 十人が、それぞれ違う方向に走った。


 ドガァン!


 ドラゴンが、地面に激突した。


 衝撃で、地面が砕けた。


 十人は、地面に倒れた。


 全員、傷だらけだった。


「くそ……強すぎる……」


 マルコスが、悔しそうに呟いた。


 ドラゴンが、十人を見下ろした。


 その目には、余裕があった。


 まるで、虫けらを見るような目。


 ドラゴンが、口を開いた。


 炎を吐こうとしている。


 このままでは、全員焼かれる。


「まずい……」


 その時――


 あかねが前に出た。


「みんな、下がって!」


「あかね!」


 あかねは、両手を前に出した。


 そして、聖魔法を発動した。


 白い光が、あかねの手から放たれた。


 光が、防御壁を作った。


 ドラゴンの炎が、防御壁に当たった。


 ゴォォォォ!


 炎と光が、激しくぶつかり合う。


 あかねは、必死に耐えた。


 でも、ドラゴンの炎は強すぎる。


 防御壁が、徐々に崩れていく。


「くっ……」


 あかねの力が、限界に達しようとしていた。


 その時――


 ダリウスが前に出た。


「あかね、一人で背負うな」


 ダリウスが、剣を構えた。


 そして、剣に魔力を込めた。


 剣が、青白く光った。


「みんな、力を貸せ!」


 ダリウスが叫んだ。


 九人全員が、魔力をダリウスの剣に送った。


 剣の光が、どんどん強くなる。


 そして――


「はぁぁぁ!」


 ダリウスが、剣を振った。


 巨大な光の刃が、ドラゴンに向かって飛んだ。


 光の刃が、ドラゴンの炎を切り裂いた。


 そして、ドラゴンの胸に命中した。


 ガキィン!


 鱗が、砕けた。


 ドラゴンが、悲鳴を上げた。


「やった! 鱗を破った!」


 マルコスが叫んだ。


「今だ! 全員で攻撃しろ!」


 十人が、一斉にドラゴンに襲いかかった。


 でも、ドラゴンは怒り狂っていた。


 尾で、翼で、爪で、無差別に攻撃する。


 十人は、必死に避けながら攻撃した。


 激しい戦い。


 でも、徐々にドラゴンにダメージが蓄積していく。


 そして――


 ドラゴンが、大きく翼を広げた。


 逃げるつもりだ。


「逃がすな!」


 でも、ドラゴンは空高く飛び上がった。


 そして、遠くへ飛んでいった。


 十人は、それを見送ることしかできなかった。


「逃げられた……」


 マルコスが、地面に座り込んだ。


 全員、疲れ切っていた。


 傷だらけだった。


「でも、生き残った」


 エイダが言った。


「それだけでも、奇跡だ」


「ああ」


 十人は、しばらくその場に座り込んでいた。


 やがて、マルコスが立ち上がった。


「今日は、ここまでだ。野営しよう」


「明日、再び挑む」


「はい」


 十人は、近くの洞窟で野営した。


 傷を治療し、食事を取り、休んだ。


 明日、再びドラゴンと戦う。


 今度こそ、倒す。


 十人は、そう心に誓った。

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