表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/91

第18話 ⑯——「氷上の決闘! ボス〝冬の貴婦人〟戦!!」



 ボスの縄張り(テリトリー)の少し手前で()まった〝快優邸(トレビアーナ)〟から降りて、氷湖(ひょうこ)の分厚い氷面に降り立った私たち。

 

 ——うん……大丈夫。『不倒の靴(ステーブル・ブーツ)』の【万地不倒(アンフェイリング)】の能力(アビリティ)のおかげで、ツルツルの氷の上でも、私はまったく(すべ)らずに動ける。

 

 見据える先、正面に泰然と陣取っているのは、この氷湖のボス——〝冬貴婦人(ウィンター・レディ)〟と、その配下たる取り巻きのモンスターたちだ。


 ——あれが、冬の貴婦人(ウィンター・レディ)……見た目は確かに、もはや人外めいて美しい女性だけれど……なんだか、凍てついた美貌とでも呼び表すのが相応(ふさわ)しいと思ってしまうくらいには、とても迫力がある……あれぞまさに、ボスの風格……!


 対する私たちは——私たち(ソラチーム)()()、ヴンオケが同じく七名、御剣(みつるぎ)姉妹が二名で、やっさんが一名の……総勢十六名で挑む。


 ——ヴンオケは、使役獣(テイモン)からは〝騎士鎧(マルス)〟と〝騎士槍(ランスロット)〟の槍騎士(マルスロット)コンビと、お嬢様が乗る一角獣(ユニコーン)の〝乙女号(ヴィルゴー)〟のみが参戦していて、残りの使役獣(テイモン)快優邸(トレビアーナ)で待機している。

 ——それと、ウチのチームからも、ハナちゃんだけが同じく馬車で待機中だ。

 ——最後まで迷いに迷ったのだけれど……やはり、氷属性や氷湖フィールドとはすこぶる相性が悪いハナちゃんに無理させるべきではないとの結論に(いた)ったので、今回ハナちゃんには後方待機してもらうことにした。


 相手もさるものだけれど、こちらも極めて強力な布陣が揃っている……とはいえ、助っ人三チームはあくまでもサポート役であり、主役——というか、主力となるのは私たちなのだから……そのつもりで、気を引き締めておかないと。


「——それでは、激戦必須の大一番……その始まりの号砲は、この(あたくし)が上げさせていただきますわよ。さあ……これにて、〝冬貴婦人(ウィンター・レディ)〟戦の——始まりですわ!」


 馬上よりそう宣言したお嬢様が——バフ効果は発揮させないようにしつつ——天御神楽(ヴァイオリン)を高らかにかき鳴らすと共に、自身の天恵(ギフト)で盛大に伴奏まで加えて、壮大なBGM(ボス戦闘曲)を響かせたところで……


『“天御神楽(あめのみかぐら)——通常演奏(つうじょうえんそう)——豪華絢爛(フルオーケストラ)”』


 配信の目玉となるであろう、強敵(ボス)との激闘が——いよいよ幕を開ける……!



 そして、始まった戦いは……すぐにその趨勢(すうせい)を決するほどに、一方的な展開を見せていた。


 ——つ、強い……! 実力制限付きで、数的不利もあるのに、それでもなお、圧倒してる……!

 ——なるほど……基本的には全員、〝赤魔〟を武器に(まと)わせているみたい。それにしても、鎧袖一触(がいしゅういっしょく)とは、まさにこのことか……


『“魔力感知(マナサーチセンス)”』


 すでにほぼほぼ【魔力感知(まりょくかんち)】を習得できている私は、にゃんたろーと〝接続(リンク)〟していれば、応用編である魔力の色の識別も可能になっていたので——戦うメンバーたちが武器に(まと)わせている、常人には不可視である赤色の魔力(オーラ)を視認することができていた。


 ——それにしても、魔力感知アリで見たら、より一層綺麗なんだなぁ……お嬢様の【豪華絢爛ゴージャス・ラグジュリアス】って。


 ボス相手にも優雅に渡り合うヴンオケの戦いを見て、私は感服させられる。

 乗馬しながらも一切体幹(たいかん)をブレさせることなく大合奏(フルオーケストラ)を演奏し続け、(能力(ギフト)をこちらにも使い)白鳥様を華やかに(いろど)っての強化もしつつ……さらには、後方から適切な指示を飛ばしては、敵を手玉に取っていく——神楽(かぐら)お嬢様。

 そんなお嬢様の指揮に従い、白鳥様がメインで敵の注意を()きつけて戦況をコントロールしていき、それをギラさんが遊撃として動き回りつつサポートして、そこに後詰めのセバス様と槍騎士(マルスロット)が、お嬢様を守護(まも)る盾となりつつも確実に相手を削っていく。

 それはまさに、パーティー戦のお手本として、これ以上ない完成度と安定感を誇る戦い振りだった。


 ——能力を制限していてもなお、数的不利を(くつがえ)して、ここまで圧倒してしまうのだから……すごく参考になるのと同時に、大いに戦慄(せんりつ)させられる。なにせこれこそはまさに、能力頼りや実力(レベル)差のゴリ押しとは真逆と言える、本物の実力の証明なのだから……。


 そんなヴンオケから視線を移せば——こちらもこちらで、ド派手な戦いを繰り広げている御剣(みつるぎ)姉妹の姿が目に入る。


「やるぅ〜、みっちゃん! やっぱそのビカビカ剣、(つえ)ぇ〜!」

「ははっ、そーだろそーだろ〜。今の状態なら、あーちゃんよりアタシの方が目立っちゃうかんねぇ〜!」


 ヴゥンッ、ヴゥン、ヴゥッン——!


 それは——ある意味では、スポットライトを浴びて輝いているはずの白鳥様にも勝るとも劣らない目立ちっぷりだった。

 なにせ、赤い光の刃を伸ばす『魔剣(まけん) 光流(こうりゅう)』を手にして、大立ち回りを演じる光刃(ミツバ)さんの戦い振りは——まさに一騎当千。

 並いる敵を、すべて一刀の元に仕留めていき……次から次に、バッサバッサと斬り倒していく様は、あまりにも爽快で、ひたすらに豪快だった。


 ——あの赤光剣……とにかく威力が凄い。いや、凄いなんてもんじゃない……もはや、ただ触れるだけで敵が(はじ)け飛んでいくのだから、一体どれほどの威力(パワー)が込められているのやら……想像するに恐ろしいほどだ。


 そんな一撃必殺の最強武器を操る使い手が、これまた超一流の達人だというのだから……相手からしたら、たまったものではないだろう。

 そう、強いのは武器だけではない。むしろ本人の力量こそが一番の脅威だ。

 なにせ、敵の攻撃はかすりもさせずに、すべて見切ってしまい……攻めては相手の防御ごとぶった斬り、ならばと数を頼んだ同時攻撃がくれば豪快にまとめて薙ぎ払い、さらには時間差の連携攻撃に襲われようとも、瞬時に優先順位を見抜いて瞬間的に各個撃破していってしまうし……あまつさえ、空を飛んで距離を取って遠くから魔法を撃とうが、(かわ)して(はじ)いて光の剣を投げつけてブーメランのように旋回させて一掃してしまうのだから……つくづく手に負えないとはこのことだった。


 そんな光刃(ミツバ)さんに目を奪われてしまいがちだけれど、一緒に戦っている鳳刃(アゲハ)さんも相当だ。

 ド派手な光刃(ミツバ)さんに比較して、こちらはひたすらに丁寧で、いっそ感嘆してしまうほどに美しい。

 一切の無駄がない、洗礼された動き……そこから繰り出される達人の一撃は、一太刀(ひとたち)で相手の急所を的確に()っていく。

 あまりにも動きが高度に洗礼されすぎていて、(はた)から見ていると、もはや異様というか……なんだかまるで、敵が自分から彼女の刀に(まるで吸い込まれるかのように)斬られにいっているようにすら錯覚してしまうほどであり——

 武の(ことわり)を極めた先には、こんな光景が広がっているのかと……しみじみと感慨深くなるほどの業前(わざまえ)なのだった。


「ふわふわピュッピュッ、ふわピュッピュッ〜♪ 天使は()つよ、愛の矢を〜♪ 射たれた相手は、さあ大変〜♪ 正義の戦士に、早替わり〜♪ あそーれ——〝魅了の矢(チャーム・アロー)〟〜!」


 その声につられて、今度は視線を上に見上げれば……そこには翼を広げて空をフワフワと飛んでいる、可憐(ラブリー)天使(エンジェル)なやっさんが。

 そんな彼女が、可愛らしい声で詠唱ならぬ歌唱を——お嬢様の奏でる大合奏(オーケストラ)に合わせて——披露しながら……弓に(つが)えて()ち放つのは、桃色に光る魔法の矢だ。


『“天使の弓(エンジェル・ボウ)——超技解放オーバーリミットアーツ耐性無視(アンチレジスト)——魅了の矢(チャーム・アロー)”』


 地上で暴れ回る二つのチームに翻弄されているモンスターたちは、頭上の天使にまでは気が回らないようで……やっさんの放つ矢は、防がれることもなく命中していく。

 そして、桃色(ピンク)の矢が命中したモンスターは、そこに込められた効果が遺憾なく発揮されて……たちまちのうちに精神を支配され、(みずか)らの(あるじ)である冬貴婦人(ウィンター・レディ)の統制を外れると、そこからはやっさんの命令に従い、ついさっきまで味方であったはずのモンスターたちへと猛然と襲いかかっていく。


〈ニートの無職ん:アホみたいな歌を口ずさんでいるヤツが、さっきからかなりえげつない戦果を叩き出してて草〉


〈流浪の探索者:うわ、アイスゴーレムも一発で魅了されてるやん……いやぁ、ああいう非生物系のモンスターって、普通は精神系の能力とかほとんど効かないハズなんやけどなぁ……。さすがは夜の字、能力の相性やら相手の耐性なんか全然お構いなしで笑うわw〉


〈探索兵長:普通に倒したんじゃ、再召喚されて復活するリスクもありますからね……。その点、魅了ならば敵の戦力を減らしつつ、同時にこちらの戦力を増やせるので、差し引きで一気に戦力アップですよ。それも、先ほどからやっているように、アイスゴーレムや凍騎士といった強敵を味方につければ、いよいよ効果は大きいというわけで……可愛らしい姿とは裏腹に、相手からすると一番厄介なのは姫の存在なのかもしれませんね〉


 やっさんの活躍に対する同志(オリメン)たちのコメントを傍目に確認しつつ——私はコソコソと隠れながら、自分の役割である〝魔石拾い〟をせっせとこなしていた。


 ——そうそう……ヴンオケや御剣(みつるぎ)姉妹も凄いけど、やっさんも普通に凄いんだよね。それこそ、貴婦人(レディ)の側近にして強敵であるアイスゴーレムや凍騎士は、貴婦人(レディ)のすぐ近くから大きく動かない都合上、早々に倒したとしても、現状では魔石を回収できないから、あまり意味が無いのだけれど……だからこそ、魅了して味方につけるのが、とても効果的に働くんだよね。

 ——そのお陰で……側近が敵に寝返るなんて最悪の事態になって貴婦人(レディ)にも余裕が無いから、魔石を生成して新たな配下を呼び出すのはおろか、回収した魔石から再召喚するのも(とどこお)っている始末だから……お嬢様や姉妹たちの怒涛の活躍もあって、現在進行形で配下は削られていき、順調過ぎるくらいにどんどん減っていっている。

 ——いやほんと、倒すのが早過ぎて、私たちの回収が追いついていないくらいなんだよね……戦闘に巻き込まれないように注意しつつの回収作業とはいえ、先んじて狼たちに()(さら)われるのは阻止したいところなのだけれど、さすがに人手が足りない。


 今の私は、チームメンバーの七名を二分して、それぞれで分担して魔石の回収作業にあたっていた。

 私の方のメンバーが、私とりんちゃんとラマンダで——体が小さいこの二名を、私の『隠密迷彩の外套ステルスカモフラージュ・マント』の下に(かくま)う形で一緒に隠密することで、敵に見つかることなくコソコソと魔石の回収に(いそ)しむことが出来ていた。

 もう一方のメンバーは、にゃんたろー・ウェンディ・ウィルくん・黒套(コクトー)の四名で——彼女たちは、ウィルくんの〝隠密の魔法〟で隠れながら魔石拾いをしてくれている。


 すべてでは無いけれど……倒されたモンスターの魔石(と、ついでに可能ならドロップアイテム)を、私たちが地道に拾って回収し続けていたこともあり——

 さらには、主にやっさんの活躍により、貴婦人(レディ)が新たな配下を呼び出すことがほとんど出来なくなっていたので、取り巻きのモンスターたちはみるみる減っていき……


 最初はあれだけの数がいたことを思えば、それこそ信じられないくらいの迅速さで……

 戦闘開始から然程(さほど)の時間も経たずして、気がついた時には、貴婦人(レディ)の配下はほぼほぼ全滅の()き目に()っており——


 そうしていよいよ、私にとってはここからが本番となる、貴婦人(レディ)との決戦に挑む時がやってきたのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ