第1話 ⑤——「いずれ十八番の必殺技」
私がこれまで配信でやっていた魅せプレイは、実は魅せプレイでは無かった……?
という、衝撃の事実を突きつけられて、私はしばし呆然とする……。
〈ニートの無職ん:なんかショック受けてる風なのワロタ〉
〈アンチ太郎:むしろ今までその考えに至っていなかったという事実にこっちが驚くんだが〉
「そんな……じゃあ、ボクが今までやってきたのは、一体なんだったの……?」
〈ニートの無職ん:ダンジョンを攻略していると言い張る頭のおかしい中二病JKによる、謎の背景と雑音付きの雑談配信だろ?〉
〈ツッコミ番長:めちゃくちゃ言っててワロタ。でもすまん、わしもぶっちゃけ雑談配信として楽しんでるわ〉
〈アンチ太郎:プレイが下手くそな雑談ゲーム実況〉
「……」
〈MS管理人R:ワァ……黙っちゃったァ。。。〉
〈流浪の探索者:ま、まあ、元気出せよ、姫。てか顔上げて、前見て前? ほ、ほら、ヒュドラもさすがに復活し始めてるで〉
「……とりあえずヒュドラは倒すよ。あと、攻略法も……ちゃんと説明するから……っ」
〈ニートの無職ん:お、おう。じゃあ、聞かせてみろよ〉
〈アンチ太郎:まあ、今回の配信はだいぶマシだったぞ〉
〈アンチ二号:別に、そんなに落ち込まなくても、いっそこのまま今日みたいな配信するようにすればいいじゃない〉
——三大アンチリスナーに慰められるとか、もはや相当じゃん……。
なんだか一気にやる気が萎んでしまった私は、あとはもう投げやりにヒュドラを始末していく。
『“黒星引力”』
ヒュドラの近くに浮かせたままだった〝黒星球〟に気持ち多めに魔力を込めれば——ヒュドラでも逃れられない強力な引力が発生し、黒光りする一頭を除いて〝黒星球〟に押し付けられ、身動きを封じられる。
純粋な筋力が高い〝黒光り〟だけは、なんとか引力に抵抗できているけれど、それは狙い通りだからどうでもいい。
次に、黒光り以外を捕らえた〝黒星球〟を手元に引き寄せる。
——元々、〝黒星球〟は私の意思で自在に操れるけれど、さすがにヒュドラを無理やり動かせるほどのパワーはない……のだけれど、手甲に対して引き寄せる場合はその限りではなく、それこそ今も身動きを封じている〝引力〟並の出力が出せるのである。
すると、複数の首がまとめて目の前の地面に横たわるので……そのまま全部ぶった斬ることにする。
『“剛破進撃”』
ここで使う技こそは……〈戦乙女の大斧槍槌〉が宿す能力である、「自在な軌道で強烈な突進攻撃を繰り出せる」という効果の武技だ。
今日のためにわざわざ事前に練習した決め技により——自分ごと回転し、まるで巨大な円形の刃のようになった私は、勢いよく通り抜けるままにヒュドラの首をまとめて斬り落としてしまうのだった。
グルグルグルグルッッッ——ザザザザザンッッッッ!!!!
〈ニートの無職ん:んー、傾き墜落ヘリコプターアタック、かな?〉
——墜落は余計だろ。まあ、ヘリコプターも傾きも余計だから、アタックしか残らないぞ。
〈アンチ太郎:縦回転斬りか〉
——そんまま過ぎんだろ。少しは捻れよ。もはや技名じゃねーんよ、ただの実態描写なのよそれ。……なんて、アン太にいっても無駄か。なんせアンチ太郎だもんね。安直。
〈アンチ二号:トルネードスピンね〉
——悪くはないけど、正直、微妙かも……っていう、一番反応に困るやつね。
〈流浪の探索者:烈風戦塵の舞〉
——んー……70/100点。
〈†漆黒の堕天使†:断罪の輪舞曲〉
——いいぃ……んじゃない? 今までの中では一番いいよ? これにしちゃおうか……? 読みをどっちにするかちょっと迷うけど。
——あーでも、まだアイツが残ってるか。そうだな……さて、どうだ……?
〈もっこり助兵衛:〝夜叉車〟〉
「……はい、ということで、今の技は『夜叉車』ね。それと今後は、こういう縦回転斬りの技はすべて『夜叉車』と呼ぶからね。なんなら、この『夜叉車』をボクのトレードマークと言えるような技として認知されるように、これからもバンバン使っていきたいと思ってるから。よろしくね』
〈ニートの無職ん:「夜叉車」めっちゃ気に入っててワロタww〉
〈アンチ太郎:縦回転斬りは殿堂入りか、ま、妥当だな〉
〈アンチ二号:読みはトルネードスピンでもいい気がするけどね〉
〈流浪の探索者:言われてみれば、これほど夜の字にピッタリな技名も他にないやんけ……く、くやちぃ(最大の賞賛)〉
〈†漆黒の堕天使†:ふっ、さすが……だな。おみそれしたぜ。あんたのセンスにはいつも驚かされる〉
〈ラブ夜叉姫@好き好き大好き♡ズッキュン♡キュン♡:ほんと! 夜ちゃんにピッタリの技名だね!〉
〈もっこり助兵衛:命名料はやっきゅんのパンチラでいいよん♡ なーんてウソウソ、おねーさんのつけた技名を叫ぶやっきゅんを見られるだけで満足よ♡〉
〈キチガイバーサーカー:狂゛乱゛の゛曲゛芸゛刃゛で゛(ク゛レ゛イ゛ジ゛ー゛サ゛ー゛カ゛ス゛)と゛読゛む゛ん゛だ゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!゛!゛!゛!゛〉
〈ツッコミ番長:周回遅れのキ◯ガイがそこそこ良さげなの出しててワロタww〉
「……ん——で、攻略の話に戻るけど、ほら見て、最後に残った〝黒光り〟が〝回復〟の能力に変わったことで黒光りしなくなったでしょ? つまりは、アイツのあの硬さもやっぱり能力だったってこと。だから、アイツは最後に残しておけば——こんな風に、簡単に攻撃が通るから楽に倒せるんだ」
キッチーの渾身の技名も「夜叉車」には及ばないのでスルーして、私は攻略法の続きを話していく。
——その途中で、最後の一頭である元黒光りの首をサクッと斬り飛ばす。
すべての首が斬り落とされたことで、ついにヒュドラは力尽きて消えていく……ことになるのだけれど。
その前に——説明しきれていない攻略法の続きが、まだまだいっぱい残っているので——勝手に消えないようにコレを使う。
『“魔王の瞳——停滞の魔眼”』
「さて、これでヒュドラは倒されたけど、消えないようにちょっと止めとくね。というのも、これからの説明は、ヒュドラのこのボディを実際に見ながらの方が分かりやすいから……でもちょっとグロいから注意してね」
〈ニートの無職ん:おい詠唱はどうした、詠唱がないぞ、やり直し〉
〈アンチ太郎:まったく単純なやつだな。ピッタリの技名をつけてもらってもうご機嫌か〉
〈アンチ二号:ほっときゃ消えてくモンスターの死骸をわざわざそのままにして晒すなんて、ほんと趣味が悪いわね〉
私の調子が戻ったことで、アンチ共もいつも通りになっていたけれど……気にせず私はヒュドラの〝ちゃんとした〟攻略法について、本体を見ながら詳細に解説していった。




