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第1話 ④——「反撃の狼煙、解放する能力!」



「さて、じゃあ、ここからが攻略の本番だからね……いくよ——!」


 そう意気込んで、いよいよヒュドラにこちらから襲いかかろうとする私の行動を——不意に制するように、その時、ピコンと音が鳴る。


【〝MS管理人R〟さんが視聴を開始しました】


 ——おっ、理人(リヒト)きた。


〈MS管理人R:おっすおっす、もう始まってんね。姫ばんわー〉


「こんばんわ、理人(リヒト)。てか遅いぞ、もう始まってるよ〜」


〈MS管理人R:いやいや、いつもなら始まってしばらくはグダグダだべってんじゃん。なんで今日はもうすでにあんなんと戦ってんのよ? てか何あれ? やたら頭多くねw?〉


「今日は特別なんだよ。いつもの魅せプレイ配信じゃなくて、攻略配信だからね。まあ、詳しくは他のみんなに聞いて。今ボク忙しいから——」


『“舌槍刺突(ピアシング・タング)”』


 言いながら私は、超速で伸びて突き刺そうと迫る舌攻撃に対して、素早く反応し真っ向から大斧(ハルバード)の刃をピッタリと構えて受け止めることで、突き込まれる勢いのままに舌を縦に真っ二つに引き裂いていく。


 ギュアアアァァァッッッ!!


 痛みに(うめ)く〝舌ペロ〟の一頭が、思わず舌の制御を失ったところを私は見逃さず、二つに裂けてダラリと垂れ下がるだけのそれを横一文字に斬り飛ばす。


 シャアァァッッ!!


 さらなる痛みにのけぞる〝舌ペロ〟の奥から、今度は〝吸い込み〟が顔を覗かせる。


『“真空吸引(エアロバキューム)”』


 ぬっ——!


『“黒星重力(ブラックグラヴ)——重力増加(グラビアップ)”』


 吸い上げられないよう、私は足装備の能力(アビリティ)を発動し、自身の重さを増加して耐える。

 同時に、吸い込みの勢いすら利用する反撃として、ハルバードを投げつけるッ——が……


 ガキンッ——!!


 私が投げたハルバードは、〝吸い込み〟に到達する前に、その身を(てい)して割り込んできた〝黒光り〟に(はば)まれてしまった。

 むっ……やっぱあの〝黒光り〟だけは、普通に攻撃したんじゃ効かないか。


 (はじ)かれて宙を舞うハルバードを回収するために右手を向けたところで、しかし別の一頭が攻撃の予兆を見せてきたので、急遽そちらにも左手を向ける。


『“燃性粘液(バーンミューカス)”』

『“黒星球体(ブラックスター)——黒星引力(グラビテーション)”』


 そして、腕装備の能力(アビリティ)を使い、手のひらサイズの黒い球体——〝黒星球(ブラックスター)〟を生み出して飛ばすと、その球を起点にして強力な引力を発生させる。

 するとたちまち、〝ネバネバ〟の一頭がこちらに飛ばしてきた複数の白い粘液弾は、その(ことごと)くが〝黒星球〟に引きつけられて張り付いてしまい、一つもこちらに届かせることなく完全に防ぐことに成功する。

 それと同時に、右手は右手で(あらかじめ小さな〝黒星球〟をつけていた)ハルバードを私の元まで引き寄せることで回収しておく。


『“死首再生(リビングヘッド)”』


 む、〝回復〟の首が動き出したか……。

 まだ生き残っている六つの頭のうちの一つ、元々は〝毒針〟だった頭は、他の頭がやられたことに呼応して、すでに〝回復〟の首へと変貌していた。

 〝回復〟は文字通り、切り落とされた頭を復活させる能力なので、コイツを放っておくと、いずれは落とした頭まで復活してくる。

 だから、なるべく早くにコイツも潰しておかないとなんだけれど……


 ——その前に、まずはこっちか。


 〝炎ブレス〟と〝吸い込み〟……さっきからこの二頭が不穏な動きをしており、もはや絡み合うように——やけにお互いに近くに寄っている。

 ——もしや、アレをやるつもりか?

 いやいや……そりゃ悪手だろ、蛇ニョロ。


 そんな私の(あき)れた反応にも気づいていないのであろう二頭は、どことなくやる気満々といった様子で、こちらに向かって合体ブレスを放ってこようとする。


『“豪炎息吹(ギガファイアーブレス)——”』

『“暴風息吹(ギガストームブレス)——”』


 しかし私は、そうくると予想していたので、その合体ブレスに合わせて()()〝黒星球〟を二頭の口元に飛ばす。


『“合体奥義(ユニゾンアタック)——豪炎暴風息吹ギガントフレアストリーム”』


 しかし、それを放つ二頭の目の前には、すでに〝ネバネバ黒星球〟が!

 なので——


 カッッッ——バァァァァアアアアアンッッッッ!!!!


 いつかの焼き回しのような大爆発が、今度は地上よりかなり上の方で炸裂した。

 爆発に合わせて後方に飛び退きつつ、全身を縮こまらせながらハルバードで(かば)ったので、やはり私は無傷。

 しかし、至近距離で大爆発を起こした(くだん)の二頭は、周囲も巻き込んで壊滅的な被害を受けていた。


〈ニートの無職ん:当たる面積を最小にして波紋ならぬハルバード防御! これで爆発でも問題ないな!〉


〈ツッコミ番長:なお本当にノーダメージのもようw〉


〈MS管理人R:見始めてすぐからめっちゃ盛り上がってて草w いや今回どうしたどうした〉


〈アンチ太郎:いつもはもっとグダってるからな〉


〈浮世の社畜ん:久々のスタートからリアタイで、まさかこんな当たり回を引くなんて、今宵の運の良さはなんだ? なんか後で反動がきそうで怖いくらいなんだが笑〉


 大打撃を受けて盛大に怯むヒュドラを尻目に、ふとコメント欄に視線を向けると、こちらもなかなか盛り上がっている様子。

 ——まあ、一部余計なことを言っているヤツもいるけど。

 とはいえこれについては、私もちょっと予想外だった。


 んー、なんでなんだろ。なんでみんな普段より盛り上がってんのかな? 普段の方がもっと強い敵と戦ってるし、私の装備も今よりかなり強いし、こんなに時間かけずに相手を華麗に瞬殺してるのに。

 普段と違う感じでやってるのは確かなんだけれど……やっぱりそのせい——というか、そのお陰なの……?


「なんかみんな盛り上がってるね。そんなに今日の攻略配信ってコンセプトが良かった? 普段の魅せプレイ配信じゃなくて」


〈ニートの無職ん:いや攻略どうこうじゃなくて……てかそもそも、普段の魅せプレイ()はただの虐殺瞬殺劇だから、盛り上がりどころなんて何もないんだよって——スマン、思わずネタにマジレスしてもうたわ〉


〈アンチ二号:コメント見ながら呑気にお喋りしつつの虐殺だから、なおキショい〉


〈アンチ太郎:魅せプレイとか言いつつ、普段は自分の動き方しか意識してないから、片手落ちなんだよな。言ってる意味分かるか? 敵の強さも引き出して、だけどそれを華麗に切り抜けるのが魅せプレイなんだよエアプが〉


〈MS管理人R:ははっ、なんかみんな、ここぞとばかり普段は思ってても言ってないことを書いてんなー。いやまあ、俺も同じようなことは思ってたけどな。でも俺は、ぶっちゃけダンジョン攻略よりも姫とのダベりが好きで配信見てるフシあるから、その辺は別に(文字数)〉


「えっ、えっ、何それ……普段の配信は全然ダメだったってこと? むしろ、今日みたいな配信の方がいいの?」


〈流浪の探索者:それについては、ワイもぶっちゃけ今日の配信のがいいわ。なんせ普段の配信は、敵の動きが速すぎたりして、それこそ魔眼使って相手遅くしてる時くらいしか何が起きてんのか分からんし。ワイでもほぼ分からんのやから、みんなは……みんなは普段何を観てるんや?〉


〈ラブ夜叉姫@好き好き大好き♡ズッキュン♡キュン♡:それはもちろん、ノリノリで魔眼を使うキャワワな夜ちゃんだよ!〉


〈ねっこ寝子(ねこ):やっしゃんの姿を観て、やっしゃんの声を聴いてる〉


〈探索兵長:モンスターとの戦いは正直ほとんど見てないですね。確かによく分からないので。どちらかというと、ダンジョンの様子なんかの方がよく観ていますね。もちろん、一番観ているのは姫の姿ですが。後はコメント欄くらいですかね、見るのは〉


 ウソ、でしょ……?

 今明かされる、衝撃の事実……


 ボク——じゃなくて……私の普段の配信って、一番メインの魅せプレイの部分が一番要らない子扱いされてた……!?


 

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― 新着の感想 ―
こんばんは。 >魅せプレイ(自称)が要らない子…!? 多分今までの配信は、北斗○拳で例えるなら『ラオ○がひたすら一般通過モヒカンをワンパンで蹂躙していくだけ』みたいな感じだったんでしょうなぁ…そりゃ…
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