表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/92

第5話 【再戦!】パイオニーアvsヒュドラ【リベンジ】



 もう何度も……それこそ、夢に出るまで見た、忌々(いまいま)しいボス部屋へ繋がる大扉の前にて。


 名前の通りに、ダンジョン探索配信の世界最先端を進んでいると自負している——いや、〝いた〟というべきかもしれない——オレたちのチーム、『聖戦の先駆者パラディン・パイオニーア』は今、再びこの扉の先のファッキンなボスに挑もうとしていた。

 

「いよいよだな……アレックス。お前の〝予感〟はどうだ? 俺たちは今回でヤツを突破できそうか?」

「それは……例の〝攻略法〟次第だな。あれが本当なら、きっと突破できる」

「ちょっとちょっと、今回はその〝攻略法〟とやらが本当なのかを確かめるための一戦でしょう? それともまさか、そのまま突破してしまうつもりなの?」

「もちろん……出来るなら、そのつもりさ」

「いいねぇ、そうこなくっちゃ。なんせこちとら、あのクソ蛇野郎のクソ多すぎるツラを拝むのも、いい加減クソ飽き飽きしてんだからよ! もうこれで終わりにしようぜ!」

「む、無茶はダメですよ! 安全重視でお願いしますね!」

「それは当然の心得でござるよ。とはいえ挑む以上は、常に勝つつもりでやるべきであると拙者も思うでござるが」

「そうだな。さて……今回は〝攻略法〟のことがあるから、普段とちょっと勝手が違う。くどいようだが、改めて確認しておこう」


 そういってオレは、リーダーとしてチームメンバーと最後の確認をしつつも、自分でも事の経緯を振り返ってみる。



 きっかけは、オレたちパイオニーアが深層ボスの動画を世界で初めて公開したことだった。

 当然のように、その動画は世界中に大きな反響を呼んだ。


 本来、探索者は——それも、未知の領域である最前線を攻略しているトップレベルの探索者は、自分の攻略情報を秘匿する。

 パイオニーアは前から配信活動もやってるし、最前線組としては異例なくらいにオープンな方のチームだが、それでも——国や探索者協会の意向もあり——肝心の深層の情報は、これまではちゃんと秘匿していた。

 しかし、深層で初めて挑むことになったエリアボスである多頭大蛇——いや、()()が言うところの——〝ヒュドラ〟の強さと厄介さはまさに別格であり、オレたちは何度も挑んでは、その(たび)に返り討ちにあって無様に敗走していた。


 正直、このまま挑み続けても、いずれは勝てるというヴィジョンがまったく浮かばなかった。

 だからこそ、今回は暗黙の慣習なんぞクソ食らえとばかりに、思い切ってヒュドラと戦う映像を公開したのだ。

 その理由は、ひとえに外からの新しい風を呼び込むためだった。


 もはや、ヒュドラを倒すために必要なのは——新たな力でも、自力で攻略するという意地でも、行き過ぎた秘密主義でもなく……そのための方法を見つけることなのだと分かっていたから。

 パイオニーアにはすでに、ヒュドラを倒すための力は足りている。

 足りないのは、ただ一つ……情報だ。


 そうはいっても、まさかオレたちが動画を公開した直後に、まさに必要な情報が速攻で(なんなら、オレたちよりも早く)公開されることになるとは思ってもみなかったが。

 チームの後援(バックアップ)である広報担当が——ウチの公式フォームに送られてきていたという——その動画を観せてきた時には、これ以上ないほど驚くことになった。


 一目で分かった。この映像は偽物(フェイク)ではなく本物だと。

 パイオニーアのリーダーとして、ヒュドラと実際に何度も直接対決をしてきた、この〝慧眼〟の(アレックス・ザ)アレックス(〝フォーサイト〟)の目は誤魔化されない。

 あれは間違いなくヒュドラであり、それと戦うあの少女は、尋常ではない強者である……と。


 問題は、その動画で紹介されていた〝攻略法〟までもが本当なのかどうかだった。

 これが本当ならば、戦略を立てることが出来る。そうすれば、オレたちなら勝てる。


 ヒュドラの一番厄介なところは、九つの頭が同時に九つもの能力を使ってくること——ではない。

 もちろん、それだけでも十分以上に厄介だったが……しかしそれだけなら、回数を積めばいずれは慣れるし、いつかは活路を見出(みいだ)せる。

 だから、本当に問題なのは……どの頭がどの能力なのか、そして、どの頭を倒せば、どの頭が〝回復〟に変わるのか——その予測がつかないことだった。

 予測がつかない限り、対策も戦略も立てようがない。

 自分(人間)よりも圧倒的に強大な怪物に打ち勝つためには、絶対にそれが必要なんだ。


 ずっと、何かしらの法則があるような気がしていた。

 しかしずっと、それを解き明かすことが出来なかった。

 もはや自力で見つけ出すのは不可能だと思い、外に助けを求めたら……途端に〝答え〟が向こうからやってきた。


 あまりにも出来すぎている。

 何かの詐欺にでも引っかかっているのかと、自分を疑いたくもなった。

 しかしオレの直感は、ただただそれが真実だと告げていた。


 ならば後は、自分で確かめてやるだけだ。

 真っ先にそれを成すのは、他でもない——この『先駆者(パイオニーア)』だ。


 すぐにあの動画は——そして、それを公開した配信者は——オレたちなんぞ比じゃないレベルの注目を集めることになる。

 ならばせめて、その始まりの号砲を上げるのは、オレたちがやってやろうじゃねぇか。

 すでに先駆者の名折れになってしまっているのだとしても、それがせめてもの意地ってやつなのさ。



「————よし、確認は終わりだ。やるとしよう。開幕の合図は……いつも通りにレイチェル、お前に任せるぞ」

「……ええ、派手に一発、盛大なのをブチかましてあげるわ」

「よぉし、行くぞぉ! 今日という今日こそやってやろうぜ!」

「ニン! 推して参る!」

「やりましょう!」

「おうっ!」


 そうと決まるや、前衛アタッカーのオレと盾役(タンク)のケビンが大扉の両端につき、突入前に精神を集中させていく。


『“定点転移(マーカーテレポート)”』


 後衛サポーターのマイケルが、自分の天恵(ギフト)である『探索者(シーカー)』の能力を使い——ひとたび中に入れば、通常手段では退却できないボスエリアから敗走する場合に備えて——撤退の際に使う転移能力を、あらかじめ準備しておく。


『“魔法陣(マジックサークル)”』


 後衛の魔法役(メイジ)であるレイチェルが、最大威力で遠距離魔法をぶっ放すために、自前の固有能力(ギフト)を使い、空中に魔法陣を幾重にも展開していく。


「アレックスさん」

「ああ」

「はい、ケビン」

「イェア」


『“同調接続(コネクトリンク)”』


 後衛で回復役(ヒーラー)のニコラが、ある意味このチームの(かなめ)となる能力(ギフト)を使い、メンバー全員に一人一人触れて能力を行使することで、チームの〝繋がり〟を飛躍的に高めていく……。


「最後に、サトー」

「かたじけのうござる」


 これにより、中衛でなんでもこなす器用万能なサトーの『NINJA(ニンジャ)』のギフトによる【忍術(シノビ・ジツ)】や【忍体術(ニンタイ・ジツ)】を、オレも大いに活用させてもらえるようになった。


「準備は……出来たな?」

「ええ、バッチリよ」

「ああ、待たせたな」

「よし、では——っと、そうだな……今回はマイケル、お前が指揮を取るんだから、突入の号令もお前にするか」

「ん、そうか、分かった。それじゃあ、いくぞ……(スリー)カウントだ。……3、2、1——突入ッ!!」


 バンッ——!

 

 マイケルの号令に合わせて、オレとケビンが大扉を一気に押し開き、間髪入れずに闘技場の広間(アリーナ)に突入していく。

 するとすぐに——鋭く見据える視界の先、広間を挟んだ向かい側に、ヒュドラの巨体がデカデカと現れる。

 同時に——例の〝攻略法〟を元に、事前に組んでおいたプログラムによって——ヒュドラの九つの頭が照会されると共に、順番に振られていく1から9までの通し番号に合わせて、それぞれの持つ能力を表す簡易的な記号(マーク)が、〝照面鏡(ホロスク)〟によってヒュドラに重なるように空中に拡張表示されていく。


「レイチェル、七番だッ!」

「分かってるっ!」


『“雷光の穿孔杭ライトニング・ドリルバンカー”』


 そして、レイチェルの雷属性の攻撃魔術が——彼女の前方に多重展開している〝魔法陣〟を通り抜けるたびに、威力や速度を大幅に強化されながら——空中を一条の閃光となって駆け抜けると、狙い(あやま)たずに目標の〝結界(7番)〟に命中し、その頭部を吹き飛ばした。


 そうして戦闘は始まった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ