SCENE091 廃鉱山ダンジョンの恩恵
私は増えたポイントというのが気になって、オーラムにダンジョンポイントを見せてもらうことにした。
最初は驚かれたものだが、瞬のダンジョンで一度見ているからと話すと、納得して見せてもらえた。
だが、私が見てみても、どのくらい増えたのか分からない。そもそものこのダンジョンのポイントを知らないのだから、分かるわけがないというものだ。
「う~ん、ダンジョンマスター側ではないので、システムがよく分からないな」
「ははっ、それはそうでしょう。探索者は基本的にこの画面を見ることなどありませんからね。しかし、ラティナがお世話になっているダンジョンのマスターはなかなか心の広い方のようですな」
「瞬はもともとこっちの人間だからな。それに、瞬のやつは誰にも優しいやつだ。だからこそ、受け入れることができたんだろう」
「なるほどですな。それにしても別世界の生物をダンジョンマスターとして取り込むとは……、本当にダンジョンは分からないことばかりですね」
「まったくだよ」
オーラムは私と話をしながら、ダンジョンコアの上に表示されているホログラムのような画面をいじっている。
これもこれで、異界の超技術を見せつけられているという現状だ。
「おっ、ありましたな。これですよ」
「うん? どれどれ……」
オーラムの声に反応して、私は画面を覗き込む。
だが、画面の文字がまったく読めない。雰囲気でかろうじて数字が分かる程度だった。
「……これは4000とか書いてあるのか?」
「はい。この画面にはポイントの増減が記録されておりましてな、二日前に4000ポイントが増えたという感じに書いてあるのです」
「二日前か……。オーラム氏は何かされましたかな?」
「いえ、何もしておりませんよ」
「ふむ……」
話を聞いて、私はオーラムに確認するが、本人に心当たりはないみたいだった。
そうなると、原因は他にあるというわけか。
「この日は、瞬のダンジョンで体験会が行われていた日だな。その日にポイントが動く要因があるとすれば……、ラティナだな」
「ラティナ、ですか……?」
オーラムは意外だというような顔をして、私の方をじっと見ている。
だが、私としてはそれしか思い浮かばない。
「オーラム氏、その数字には何か備考はついているか?」
「備考?」
「ああ、注意書きとか理由とかそういう項目だ」
「ちょっとお待ち下さい」
私に質問されて、オーラムは慌てたようにダンジョンポイントの参照画面をじっと見つめている。
「えっと、ファン獲得とか書いてありますね」
「ファン……、つまり瞬たちの使う魅了効果のようなものか。じゃあ、原因は間違いなくラティナだ」
「ど、どういうことですか?」
オーラムは私の話を理解できないようだ。
なので、私は理由を詳しく教えてあげることにした。
該当する日は、瞬のダンジョンで体験会が行われており、その際に配信が行われていた。そこで、ラティナも配信に映っていたのだ。
全身岩だらけというロックゴーレムであるラティナだが、さっきも言ったとおり、とても表情が豊かで所作もきれいだ。そうなると、一部のファンからの支持が間違いなく集まるわけで、それがダンジョンポイントとして反映されたということだろう。
配信場所は瞬のダンジョンだが、ラティナはこっちの廃鉱山ダンジョンに飛ばされてきたので、ラティナが稼いだ分はオーラムの手柄となったということなんだろうな。
「そういうことですか……。それは、その瞬という方に悪いことをした気になりますな」
「理解した時、私も頭には来たさ。でも、そっちの世界は基本的に弱肉強食だろ? なら、そういうのもありなんじゃないのかな」
「それはそうでございますが……、さすがに悪うございます」
このオーラムというゴーレム、本当に争いごとの類が嫌いのようだな。よくこの性格で、異界の競争で生き残ってこれたものだ。
異界の金属や宝石の類をほとんど一手に掌握しているから、無事に済んでいたのかもしれないな。世の中不思議なことばかりがあるものだな。
「まぁしょうがない。この提案をしたのは私だしな、責任を取るというのなら、それは私の役目だろう。オーラム氏は気にしなくてもいいというものだ」
「……分かりました。私は気にしないでおきます」
オーラムは渋々承諾したようだった。
まったくもう、モンスターという呼称からは想像のできないくらいに優しい人だな。これではこのダンジョンの方が心配になってきてしまうぞ。
話を終えた私は、やれやれと思いつつも廃鉱山ダンジョンの中を入口に向けて戻っていく。
このダンジョンはこちらの世界のダンジョン管理局によって、保護ダンジョンという扱いになっている。この状況であるなら、オーラムが危険な目に遭う可能性は低いだろう。
それに、瞬のダンジョンでラティナがポイントを獲得し続ければ、廃鉱山ダンジョンでは鉱石や宝石の類が採り放題になる。いろんな方向でWINWINの関係になるから、このまま維持できれば好都合というものだ。
ダンジョンの入口で管理局の職員たちと挨拶を終えた私は、百鬼夜行のギルド事務所へと向けて車を颯爽と走らせたのだった。




