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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE080 久しぶりのウィンクスダンジョン

 それから一週間後のことだった。

 第二回のダンジョン体験を前に、私は瞬のダンジョンを訪れた。


「あれ、衣織お姉さん。まだダンジョン体験の日じゃないですよ」


 瞬は私を見るなり、そんなことを言ってきた。相変わらずお堅いものだな。


「なんですかな、その妙な袋は」


 瞬の隣にいる執事の姿をした蛇人間、バトラーが私の荷物を見ている。

 まあ、これだけ大きな袋を担いでいれば、そりゃ目立つだろうな。

 私は平然と担いでいるように見えるが、実はこの中身はかなり重い。ちょっと限界が来そうだな。


「悪いな、この袋を置かせてもらうぞ」


「ええ、構いませんよ。荷物を持ったまま話もできませんでしょうからな」


 私はゆっくりと袋を地面に降ろす。


「衣織お姉さん、その袋の中身を見せてもらってもいい?」


「ああ、いいぞ。だが、ちょっと話を聞いてもらわねばならなくなるがいいかな?」


 私が返すと、瞬は首を捻っていた。どういうことが状況がいまいち理解できていないようだな。

 だが、これは言葉で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いというものだ。私は、降ろした袋を開けて、中身を取り出した。


「何それ、岩の塊?」


 瞬はやっぱり変な反応をしてくれるな。見たらただの岩の塊にしか見えないのは確かなんだが、予想すぎて笑うしかない。


「おや、これはゴーレムですな。よく、こんなきれいな形のものを手に入れられましたな」


「ゴーレムって、木とか岩とかに命を宿らせたモンスターだっけ?」


「その通りですぞ、プリンセス。しかし、これはちょっと小さいですな」


 バトラーに褒められて瞬は照れている。まったく相変わらず可愛い奴だな。

 一方でバトラーの方は、ゴーレムの違和感をしっかりと感じ取っていたようだな。

 そこで私は、かばんの中から宝石を取り出すことにした。これを見せれば、バトラーはきっと何か分かるはずだ。


「ちょっと待って下され。その宝石、まさか……」


「心配はいらない。本人から了承を得ているからな」


「やはり……」


 バトラーは何かを察したようだな。さすがは異界の出身というところだ。

 私が手に持っている宝石をゴーレムにあるくぼみに入れると、ゴーレムは動き出した。


「ふわぁ~、よく寝ました。えっと、もう着いたのですか?」


 ゴーレムはいきなり背伸びをしながらあくびをしていた。こんなに簡単に動くものなんだな。

 瞬は驚いて口をパクパクとしている。くそっ、なぜこういう時に携帯電話が手元にないのだ!

 ……一生の不覚だ。


「おお、やはり。ロックウェル伯爵令嬢ではありませんか」


「あら、この声はバトラーですね。お久しぶりです」


 立ち上がったラティナは、岩の体を動かして、ぺこりと頭を下げている。

 バトラーとも知り合いだったとはな。しかし、モンスターでありながら伯爵とか爵位があるのだな。これはびっくりだぞ。


「えっと、バトラー。この人を知っているの?」


「はい。さすがにセイレーン様に比べれば格は落ちますが、モンスターたちの間では格式のある家柄ですぞ。なにせ、異界における金属など鉱石類は、ほぼすべてロックウェル伯爵家が押さえているのですからな」


「へえ、すごく人なんだね」


 瞬の反応はだいぶ薄いな。驚きすぎて、心ここにあらずといった感じっぽいな。


「ラティナ・ロックウェルです。えっと、ウィンク様でいらっしゃいますよね。こちらの衣織様から、お話は伺っております」


「あっ。僕はウィンクです、よろしくお願いします」


 瞬がものすごく照れているな。さすが女の子相手だと、恥ずかしいといったところか。そういうところは、しっかりまだ男だぞ、瞬。


「いやいや、そんなことより、ラティナ様。どうしてこちらに来ることができたのですか。我々モンスターは、ダンジョンの外へは出られないといいますのに」


 バトラーが本質的なことを聞いていた。

 確かに、モンスターはダンジョンブレイクでもしない限り、ダンジョンの外に出ることはできない。実際、瞬はダンジョンの入口で、見えない壁に弾き返されていたからな。

 ならばなぜ、このラティナがダンジョンの外に出られたのか。

 それは、このゴーレム族ならではの身体的特徴が挙げられる。


「たまたまなのですが、命ともいえるこの宝石を取り外すことで、私は一時的にただの物となったのです。そのことによって、モンスターの定義から外れて、ダンジョンを移動できたというわけです。宝石を戻せばこの通り動けますからね」


「なんとっ!?」


 おお、博識で偉そうなバトラーが驚いている。ふふふっ、これは私がアドバンテージを取ったな。

 いつもやられてばかりなせいで、ちょっとした仕返しができたみたいで、つい笑みがこぼれてしまうというものだ。


「しかし、だからといって、なぜラティナ様がこんなところまで……」


「それは……、ちょっと話すと長くなってしまいますね。よろしいのでしょうか」


「構わないよ。どうせここは初級ダンジョンで、人なんてほとんど来ないから。時間だけはたっぷりあるから、遠慮なく話して下さい」


「そうですか。それでは……お話しましょう」


 ラティナは、瞬とバトラーにここまでの経緯を話すつもりらしい。

 私はラティナの後ろでようやく携帯電話を取り出すと、瞬の様子に注意しながら周囲の警戒にあたることにした。

 さあ、いろんな表情を見せておくれよ、瞬。

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