SCENE075 ギルドメンバーとして
ふぅ、瞬の可愛い姿をたくさん撮れて満足だ。これならば、どんなダンジョンでも攻略できそうな気がするな。
私は携帯電話に記録された瞬の姿を写した画像を見ながら、満足げに微笑んでしまう。小さい頃の瞬も可愛かったが、今もまったく変わらぬ可愛さだ。
ひとまず、百鬼夜行のギルドに戻ることとしようか。次なるダンジョン攻略の計画があるかもしれないからな。
私は車を運転して、横浜ダンジョン近くの百鬼夜行のギルドへと戻っていった。
「戻ったぞ」
「おお、衣織。どこに行っていたんだ」
ギルドに戻ると、剛力さんが出迎えてくれる。言葉からすると、どうやら私を探していたようだ。
「瞬のダンジョンに行っていたんだ。管理局の人から次回のダンジョン体験の話を持ちかけられていたからな。色のやつから聞いていないのか?」
「色のやつ、黙っていたのか。まったく、こういうのは重要なことだから伝えろと言っているのにな」
私が答えると、剛力さんは色からの報告がなかったことに対して文句を言っているようだ。
だが、その肝心の色のやつが見当たらないが、またダンジョンに潜っているのか?
「色ならまた横浜ダンジョンだ。あそこなら安全に安定収入が見込めるからな」
「まったく、チキンなやつだ。配信をしているのなら、もっとド派手に行けというものだぞ」
「まっ、それは個人のスタイルだからなんとも言えないな。それより、衣織、時間はいいか?」
「構わない。話でもあるんですかね、剛力さん」
「ああ、次のギルドの攻略目標についてだ」
どうやら、私に用事があったというのはダンジョン攻略についてのようだ。やっぱりあったんだな。
「ああ、剛力さん」
「なんだ?」
「再来週くらいの土日に、瞬のダンジョンで体験学習がある。それまでに終わらせられるだろうかな」
「衣織なら大丈夫だろう。そんなに遠くじゃないしな」
「分かった。話を聞きましょう」
いろいろと気持ちが落ち着かないのか、言葉遣いが安定していない。私にしては、なんとも珍しい話だ。
とりあえず、会議室へと向かう。さて、何人くらい集まっているだろうかな。
会議室にやってきたが、思った以上に人がいない。出払っているのだろうかな。
「思ったより少ないですね」
「ああ、大部分は先に話しちまったからな。今頃準備をしているさ」
「そうですか」
私以外にいるのは八人だ。百人を超えるメンバーがいるので、本当にちょこっとといった感じだ。
ちなみに百人を超えたところで止めたのは、剛力さんの方針だ。百鬼なので、百人で止めたかったそうだ。こだわりだな。
「では、次のダンジョン攻略についての話をしよう」
集まったメンバーを前に、剛力さんが説明を始める。
それによれば、次のダンジョン攻略は関東近郊にあるダンジョンで行うらしい。
ちなみに瞬のダンジョンもこの関東一帯のダンジョンだ。ただ、それだけ便利な場所でも交通網から漏れる場所はある。だから、公共交通機関を乗り継いでも瞬のダンジョンは、横浜から三時間もかかってしまうんだよな。乗り換えアプリで調べてびっくりしたもんだよ。まあ、私は車があるから関係ないけれどね。
それはさておき、次に攻略するダンジョンはどこなんだろうかな。わくわくが止まらないというものだ。
「衣織の予定もあるんでな、今回は近い場所を選ばせてもらった」
剛力さんがついにダンジョンの名前を出そうとしている。さあ、どこでもいいからさっさと言ってくれないかな。
「今回のクリアを目指すダンジョンはここだ」
剛力さんが地図を指し示す。
指し示された場所はずいぶんと山の中だった。それでも、確かに関東圏には変わりはない。
「また、変なところを選びましたね」
「ああ、単なるダンジョンならいいんだが、最近ちょっと問題が起きてな」
「どんな問題ですかね」
「水質汚濁だ。ダンジョンの中の環境が、周辺に漏れ出しているらしい」
「うへぇ。それはやべえ」
ダンジョンの中の環境は、基本的に外に漏れることはない。それが周辺に影響を与え始めているということは、ダンジョンブレイクが起きる可能性が高まっているというわけだ。なるほど、それで乗り出す気になっているわけだな。
「一応、地元自治体からの要請も来ているんでな。百鬼夜行がこれまでの実績を引っ提げて、問題解決に乗り出そうというわけだ」
面白い。最近は瞬のダンジョンで、バトラーとかいう執事型のモンスターに負けてばかりでうっぷんが溜まっている。その憂さを晴らすにはちょうどいいというものだ。
後輩の指導をするにも、気分はよくしておいた方がいいだろうからな。私はこの依頼にかなり燃えてきてしまった。
「それで、いつ出発して、何日くらいの予定なんですかね」
「参加希望者全員の準備を明日までに整えて、明日出発だな。鉱山系ダンジョンだが、そんなに複雑なダンジョンじゃないから、三日もあれば攻略できると思う」
「なるほど。分かりました、私たちの百鬼夜行の力を、異界のやつらに見せつけてやりましょうよ」
「衣織、ずいぶんと燃えているな」
「ええ、それはもちろん」
剛力さんの言葉に、私はにやつきながら頷いておく。燃えているのは実際だからね。
久々の本格的なダンジョン攻略だ。モンスターども全部、私のたちの錆にしてやろうじゃないか。
私は過去最高にやる気になったのだった。




