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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE071 一線を越える前に

 瞳と話をしてから三日後のことだった。


「どうしたんだ、瞬。私を呼び出すとは」


 僕のダンジョンに衣織お姉さんがやってきた。

 なんだろう、今日の衣織お姉さんはちょっと弱っているように見えるんだけど、気のせいかな。


「おや、衣織殿、デバフを受けていますな」


「えっ、デバフ?」


 僕の違和感は間違っていなかったようだ。衣織お姉さんはどうやらデバフを受けているらしい。

 ということは、おそらくは横浜ダンジョンに行ってきたのだろう。ダンジョン管理局たちの人たちの情報も含めて、デバフが入ったままになるようなダンジョンは、横浜ダンジョンの復活だけだもん。

 僕の聞いたところによると、横浜ダンジョンのデバフはまるっと一日継続。つまり、衣織お姉さんは昨日は横浜ダンジョンに潜っていたっていうことになる。


「衣織お姉さん、横浜ダンジョンですか?」


「ああ、また七階層に到達したのはいいんだが、あそこは敵は弱いんだが罠がいやらしくてな……。不意打ちを食らってこのざまだよ。まったく、情けない……」


 衣織お姉さんは、僕の質問に答えながらものすごく悔しそうな顔をしている。よっぽど酷いやられ方をしたみたいだ。

 ……ちょっとセイレーンさんのこと、評価を変えた方がいいかもしれないね、これは。


「衣織お姉さんでも難しいんですね」


「ああ。だが、あのダンジョンは三から六階層をうろちょろしているだけでもかなり実入りがいいからな。だから、みんなはなかなか潜っていかない。せっかく死に戻りっていう便利な機能もあるのに、誰も挑戦しないから情報がなさすぎるんだ」


「なるほどね」


 衣織お姉さんでも突破できない事情というのは理解できた。

 でも、僕たちダンジョンマスターからすると、手の内はあまり見せない方がいいもんね。セイレーンさんの配信も、十階層の景色ばかりだし。

 っと、今日の用事はそれじゃなかった。

 僕は衣織お姉さんに声をかけてみる。


「ねえ、衣織お姉さん」


「なんだい、瞬」


「今日はお茶があるんだけど、飲んでみないかな」


 僕が声をかけると、衣織お姉さんの表情がなぜか険しくなった。魅了にかかっているのなら、こういうことにはならないと思うんだけど。もしかしてこれって、探索者としての直感なのかな?

 衣織お姉さんの表情の厳しさに、僕はずいぶんと動揺してしまう。


「どうかしたのか、瞬」


「いや、衣織お姉さんの顔がちょっと怖くて……。どうしたのかなってね」


「ああ、なんだか分からないんだが、嫌な予感がしたんだ。すまない、瞬が相手だというのに怖がらせてしまって」


「そっか。だったら、正直に話した方がいいかな?」


「うん、何をだ?」


 ここまではっきりと悟られてしまっているのなら、僕は隠しておく方がよくない気がした。

 うん、衣織お姉さんをだまし討ちにはできないな。


「衣織お姉さん、実はね……」


 僕は正直に話をすることにした。


「このお茶、薬草が入っているんだ」


「薬草? 私はどこも悪くないぞ。強いて言えば、横浜ダンジョンのデスペナが入っているくらいだが?」


 衣織お姉さんの表情が再び険しくなった。薬草と聞いて、病人扱いにでもする気かといったところだろう。

 でも、僕の魅了スキルが入っているのなら、病人と大差ないと思うんだ。


「衣織お姉さんは、多分僕の魅了スキルを深く受けていると思うんだ。だから、それを解除しようと思ってね」


「どういうことだ?」


「だって、僕のこととなると、衣織お姉さんってばものすごく攻撃的になるんだもん。ダンジョンの運営的に、あの、その……迷惑になるから……」


「私が……邪魔だと……言うのか?」


 僕が正直に事情を話すと、衣織お姉さんはものすごくショックを受けているようだった。

 うん、分かるよ。衣織お姉さんからすれば、僕を守っているだけだろうからさ。でも、周りから見たらはっきり言って異常な攻撃性を持った、過剰な反応に見えるんだ。

 このままだとダンジョン管理局との関係も悪くなるだろうし、配信も止められかねない。それに、衣織お姉さんの信用問題にもなってくる。だから、一刻も早く解除したいんだ。


「邪魔というか、このままじゃいけないと思うんだ。だから、頼むから優しい衣織お姉さんに戻って。バトラー!」


「お任せあれ。デバフも入っているので、これ以上好都合なことはありませんぞ」


「おい、やめろ。何をする!」


 バトラーは蛇の状態になって、衣織お姉さんをがっちりと締め上げる。手も足も動かせないように固めておかないと、このお茶を飲ませることはできないだろうからね。

 衣織お姉さんは必死に抵抗しているけれど、元々バトラーに及ばない上に、デバフで能力が複数大幅に減少している状態では、さすがにバトラーの拘束を解くことは叶わなかった。

 抵抗むなしく、僕が淹れた特製のお茶を口から流し込まれてしまう。


「あ、う……」


 お茶を飲み込んだ衣織お姉さんは、急に苦しみ出した。これ、毒じゃないよね?


「良薬、口に苦しですぞ。しばらくは薬とデバフとが激しくぶつかり合って苦しみますが、まあ、10分もあれば回復するでしょう。しばらくは横にしておけばよいのです」


「う、うん。このまま様子を見させてもらうね」


 バトラーが布団を持ってきたので、僕はその上に衣織お姉さんを寝かせる。

 表情がとても苦しそうなので、僕は心配そうな表情で、衣織お姉さんの手を握って様子を見守っている。

 小さい頃のような、優しい衣織お姉さんに戻って。

 僕は祈るような気持ちで衣織お姉さんの顔をじっと見つめ続けていた。

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