SCENE067 闇以外も頑張ろう
他人に頼ってばかりじゃ、ダンジョンマスターとしてどうなのかと思うので、僕は魔法の特訓をすることにした。
闇魔法ばかりを使っていたので、今回はいよいよ水魔法の特訓に入ることにする。
「ほう、プリンセス。水魔法に取り掛かるのですか」
「うん。ところで、バトラー。水魔法ってどういう魔法が多いのかな。イメージはある程度できるんだけど、どういう効果のものがあるのか事前に知っておきたいな」
僕は特訓を前に、バトラーにモンスターたちの水魔法のイメージを聞いておくことにした。
僕たちの持つイメージとどのくらい違うのかな。
「水魔法は攻撃魔法としてはそれほど種類が多くありませんな。どちらかといえば、補助的な役割が多いです。セイレーンのような特化した存在ならまだしも、プリンセスではさほど多くの魔法が扱えないでしょうな」
「ああ、やっぱりそういう感じになるの?」
バトラーはなんとも苦い表情をしていたけれど、僕としてみればあんまりイメージから外れたものじゃない。
水と氷が別の属性に分類されるなら、水属性の攻撃魔法が減るのは仕方がないからね。
「セイレーンが使う水魔法で最高威力を持つのは、フラッシュフラッドですな。大きな渦の壁を作って、相手を一気に押し流す魔法です」
「あー、津波かぁ。地震の多い日本だと、比較的目にする災害だよ」
「ふむ、そうなのですな。ですが、プリンセスには使えませんぞ。この魔法は水属性を持つモンスターでなければ扱えませんからな」
バトラーから僕は使えないと聞かされると、なぜか僕は安心してしまった。
やっぱり、日本という地震の多い国に住んでいるからか、津波って悲惨なものとしか思えないからね。こういうのはやっぱり地域性が出ると思う。
「プリンセス、なぜそのような表情をなさっているのですかな?」
バトラーは僕の表情に疑問を感じたらしい。これは人間とモンスターの違いのせいかな。
「うん、バトラーには分からないことだよ。僕たち、この世界の人間じゃないとね」
「なるほど……。確かにそれはそうですな。ですが、それはプリンセスにも言えること。世界が違えば、互いの理解は難しいのでございます」
なんかいいようにバトラーにまとめられちゃったな。まあいいけど。
それよりも、僕は水魔法の特訓だな。大体のイメージはできたから、あとは僕次第だ。
「ウォーターボール!」
僕は基本的な水魔法を使ってみる。
叫んだ言葉の通り、水の球体を作り出す魔法だ。これがあるから、僕はこのダンジョンの中でも水分補給ができる。バトラーが淹れてくれるお茶だって、この魔法のおかげで飲める。
僕のレベルはまだ一桁ではあるけれど、さすがにイメージのしやすいものは低レベルでもしっかりと使いこなせるみたいだ。
「ふぅ、こんなものかな」
「ずいぶんと水の球体が大きくなりましたな。さすがはプリンセスでございますぞ」
「へへっ、ありがとう」
バトラーに褒められれば、僕は素直に喜んでおく。
「そういえば、バトラー」
「なんでしょうか」
「こっちの世界のゲームなんかだと、水魔法に回復魔法が割り当てられることが多いんだけど、そういうのはどうなんだろう」
「ふむ……」
僕の言葉に、バトラーはちょっと首を傾げているようだ。
「回復魔法自体は回復の種類にもよりますが、基本的には全属性に存在しておりますぞ。属性の相性というものがございますのでね」
「なるほど。闇属性だと光や聖属性の魔法が逆に効かないってことになるの?」
「その通りでございます。回復という目的を果たせずに、ダメージとなる場合がございます。ラミア族では効果がかなり弱くなりますが、ダメージとはなりません」
「うわぁ、そんな感じなんだ」
「はい」
どうやら、バトラーのいた異界の属性相性っていうのは、思っていた以上にシビアっぽい。回復魔法にまで細かく属性が適応されるっていうのは、なかなかないんじゃないかな。
「まぁ、どの相手でも使えるようにするとなれば、無属性魔法でしょうな。試しに『ヒール』と叫んで使ってみてくださいませ」
「ん、分かったよ」
僕はバトラーに言われた通りに、無属性のヒールを使ってみることにする。
「ヒール!」
うん、何も起きない。
ケガをしていないからダメなのかな?」
「プリンセスには無属性の才能はないようですな。回復の目的が果たせなくても、使えば何かしらの使用効果が出ますからな」
「え、ええ……」
無属性の才能なしって言われちゃったよ。ねえ、凹んでいい?
「ですので、その分、水と闇の回復を極めればよいと思います。対極になるのは火と光ですが、両方持っている方というのはそう存在してはおりませんからな」
「うん、わかったよ。無難に得意属性を極めていくことにするよ」
バトラーの説明に衝撃を受けて僕だったけど、どうにか気を取り直して、今日のところは水属性の魔法の練習を重ねていく。
そのかいあってか、あくびが出るようになる頃にはだいぶ魔法を使いこなせるようになった気がする。
「どう、バトラー」
「ええ、いい感じでございます。さすがはプリンセス、普通ならばかなり時間がかかるところを、だいぶ短縮して習得されていってますな。この分であれば、ラミア族が習得できる魔法は、近いうちに全部取得できるでしょう」
「えっ、そんなに種類がないの?」
「攻撃魔法は少ないと申しましたでしょう。そもそもラミア族の本分は、闇属性ですからな」
「そっかぁ。それは残念」
あんまり種類が多くないと聞かされて、僕は残念に感じていた。
でも、僕だってダンジョンマスターなので、できる限りの手は持っておきたい。少ないと言われたのはショックだけど、やれるだけのことはやってみようと思う。
だけど、さすがに眠くなってきちゃったから、今日のところはこれでおしまい。
うん、また明日にしよう。




