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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE062 セイレーンの提案

 俺は朝早くから横浜ダンジョンのセイレーンさんのところに呼ばれ、その日の午後にはダンジョン管理局へとやって来ていた。


「あたたた……、死に戻りって痛すぎるよ……」


 何気に初めて、俺は死に戻りというものを体験していた。まったく、シードラゴンさんは手加減がなかった。今もその時の感触が残っていて気持ち悪い。

 他の探索者から聞いたけど、横浜ダンジョンの死に戻りは、全部というわけではないけれどランダムにステータスの大幅低下が発生するらしい。運が悪いと全部が下がる。

 俺のステータスは力と防御にマイナス九十パーセントの補正がかかっていた。


「これは酷いなぁ。元々装甲が弱いのに、紙っぺらじゃないか」


 このデスペナルティは一日継続するらしいので、俺は明日の午後までダンジョンには潜れないみたいだ。

 とりあえず今日のところは、ダンジョン管理局でセイレーンさんから頼まれた用事を済ませるだけだ。

 俺はダンジョン管理局へと入っていくけれど、誰からもまったく気付いてもらえない。さすが隠密のレベルが高いだけのことはある。

 受付番号の札を取って、俺はしばらく呼ばれるのを待つ。


『受付番号0294の方、お待たせしました』


 ようやく俺の出番が来たみたいだ。

 受付の前に座ると、俺は隠密スキルを解除する。


「ああ、君ですか。本日のご用件はなんでしょうか」


 セイレーンさんのうろこを持ってきた実績があるせいか、俺のことはすっかり覚えられてしまっていたようだ。


「すみません、責任者の方に会わせていただけませんでしょうか」


 俺はおそるおそる受付の人にお願いしてみる。


「もしかして、何かあのダンジョンであったのかな?」


 察しがいいのか、受付の人が食いついてきていた。俺はこくりと頷く。

 そうすると、受付の人は電話を取ってどこかに連絡を始めたようだった。

 しばらくして電話が終わると、俺の方を持ってみてくる。


「副支部長がお会いして下さるようです。すぐに案内しますので、あちらへどうぞ」


 俺は、どうやらまた管理局の上階へと案内されるみたいだった。


 そうしてやって来たのは、ダンジョン管理局の副支部長の部屋だった。

 まさかこんなお偉さんと顔を合わせることになるとは思ってなかったので、俺は緊張のあまり膝が震えてしまっている。


「福祉部長、お連れしました」


「うむ、入ってくれ」


 返事があったので、俺は受付の人と一緒に部屋に入っていく。

 それと同時に、俺のスマホがいきなり音を流し始めた。どうやら着信があったらしい。


「す、すみません。ちょっと失礼します」


 俺がスマホを取り出すと、そこに書かれていたのはセイレーンの文字。この電話、セイレーンさんからのものだった。


「はい、セイレーンさん。なんですかいきなり」


『なんですかではありませんわ、下僕。目的地には到着しましたの?』


「はい、今ちょうど到着したところです」


『そう、よろしいですわ。スピーカーモードとやらにして、あたしの声を聞こえるようにして下さいませんこと?』


「すぐしますね」


 俺はスマホを操作して、スピーカーモードに切り替える。


『周りに誰かいらっしゃるのかしら。聞こえているのなら反応くださいませ』


「な、なんだ、この声は!?」


「この声、配信で聞いたことがあります。横浜ダンジョンのダンジョンマスターのセイレーンですよ」


「なんだと?!」


 さすがセイレーンさん。配信のことが知られちゃっている。反応が早くて助かるというものだ。


『おーっほっほっほっほ! もう知られているとは、さすがはあたしですわ。そこな人々、ちょっとお話はよろしいかしら』


 セイレーンさんはスマホ越しに副支部長さんたちに問いかけている。


「ダンジョンマスターがどうやって連絡を入れているのかは知らんが、話くらいなら聞いてやろう」


『ふん、雑魚のくせに言ってくれますわね。とはいえ、ビジネスパートナーになるのですから、そのくらいの方がいいのかしらね』


「ビジネスパートナー?」


 セイレーンさんの話す内容に、副支部長さんが反応している。


『ええ。最近、どこかのダンジョンで探索者の養成を始めたそうですわね。それに関連しまして、ひとつ提案がございますの』


「それは何なのかな?」


『あたしのダンジョンも開放してあげようというのですわよ』


「なんだと?!」


 副支部長さんはびっくりしている。そりゃ、世界最大級の高難易度ダンジョンの横浜ダンジョンの開放だもの、反応しない方がおかしいというものだ。


『あたしのダンジョンは、あたしの優しさからダンジョン入口で復活できるようになっていますでしょ? それを利用すれば、ダンジョンの厳しさというものをたっぷり教え込めると思うのですわ。あたしのダンジョン以外、そのような設備はないのでしょう?』


「うむむむ……、それは確かにそうだな」


『さすがに、あたしのいる部屋まで招き入れることはできませんけれど、入口付近に部屋を追加して、そこであたしの忠実なる執事であるシードラゴンと話をさせますわ。いかがかしら。素敵な提案だと思いませんこと?』


 完全に主導権をセイレーンさんが握ってしまっている。

 さすがは高難易度ダンジョンのマスター。言葉にしっかりとした説得力があると思う。


『お受けになるのでしたら、そこにいるあたしの下僕を通じてお返事くださいませ。あたしはいつでもダンジョンにおりますから、お返事はいつでもよろしいですわよ』


 セイレーンはそうとだけ言いきると、通話を終わらせてしまっていた。

 部屋の中には沈黙が漂っている。

 ……どうしよう、俺の胃に大きな穴が開きそうだよ。

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