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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE044 内装は変えられるんです

 セイレーンさんが配信たその日の夜のことだった。

 谷地さんと日下さんが、どういうわけか僕のところまで慌てた様子でやってきた。


「なんなんですか、あの配信は」


「えっ?」


 谷地さんから告げられた言葉に、僕は目を点にしてしまう。


「あの配信って何のことですか?」


 急に言われても僕に何のことか分からないよ。落ち着いて話をしてもらいたいと思うのは当然だと思う。


「セイレーンとかいうモンスターが行っていた配信です。なぜ、モンスターが配信しているんですか」


「いや、僕が配信しているんだから、そんなことがあっても……」


「はい、そうですかっていうわけないでしょうに!」


 僕がごまかそうとしても通じなかった。

 仕方がないので、僕が知っている事情を話すことにする。


「……というわけなんです。これでいいでしょうか」


 僕が話を終えると、二人は頭を押さえて大きなため息をついていた。

 僕ってば、何か変なことを言いましたかね?


「プリンセスは悪くありませんぞ。セイレーンもちゃんとした手順で配信をしておりますから、問題にはならぬはずです」


「あ、ああ。それはそうだが……」


「あの横浜ダンジョンの最下層にたどり着いた人物がいるというのが、大事件だわね」


 谷地さんと日下さんは、なんだか立ち直れそうにないようだ。

 僕はあまり管理局とまだ親しくはないから、どういう事情があるのかは詳しくは分からない。なんと声をかけたらいいんだろうか。


「そちらの事情は我らにはよく分かり魔ぬゆえ、なんとも言い難いですな」


 バトラーが代わりに谷地さんたちに話しかけている。


「ですが、よろしかったではないですか。前人未到の横浜ダンジョンの内部を知れるのですぞ。いっそのこと、利用してみてはいかがですかな?」


 バトラーは谷地さんと日下さんに声をかけている。さすがはバトラー、頼りになるなぁ。


「た、確かにそうですけれど、とんでもない情報を出されて、こちらはてんてこ舞いですよ」


「第一、なんなんですか、あの海と空は」


 あー、まぁ……。うん、そうなるよね。

 ダンジョンは基本的に地中にあるから、あんなだだっ広い空間なんて想像できないよね。

 でも、ダンジョンマスターとなった僕は、この空間のことを知っている。

 なので、僕はバトラーにちらっと視線を向ける。

 バトラーは僕の視線に気が付いたのか、こくりと頷いていた。


「谷地さん、日下さん。ちょっといいでしょうか」


「なんですか、ウィンクさん」


 僕に呼び掛けられて、二人はきょとんとした顔で僕を見ている。

 僕は二人の目の前でダンジョンコアを出現させる。そして、すぐさま説明を始める。


「セイレーンさんのあの部屋なんですけれど、この機能を使っているんですよ」


「どれどれ……」


 二人がじっと僕の表示させているダンジョン管理のメニュー画面を覗き込んでくる。


「この設備購入っていう項目なんですけれど、ここで購入したものだと思うんです」


「ほうほう」


 僕が操作する様子を、二人は食い入るように見ている。なんだか緊張しちゃうな。

 設備購入を選択して、表示された項目をひとつひとつ見ていく。


「これですね。『風景:青空』や『風景:海原』、これらを選択して部屋の中に展開したんだと思います。セイレーンさんって海のモンスターですから」


「ふむふむ、なるほど……」


 谷地さんはすぐさま理解したみたいだ。


「それにしても、ずいぶんとポイント高くありませんかね。文字は読めませんが、数字は一緒なのでよく分かります」


 あっ、そっか。このメニューに表示されている言語は異界のものだもんね。こっちの人間には読めないんだっけか。あれ、この間の説明はすんなり進んでいたと思ったんだけど、勘違いだったかな?

 僕の表情に気が付いたのか、バトラーが声をかけてくる。


「この方たちにはこの文字は読めませんよ。それをうまく説明でごまかしていたのです。プリンセスはどこか抜けておりますな」


「ちょっと、バトラー。そこまではっきり言ってくれるわけ?」


 さすがに僕でもそれはスルーしないよ。笑ってごまかさないでくれないかな、バトラー。


「まぁ、見ても分かる通り、最低でも5万ポイントを消費します。並大抵のダンジョンマスターでは、稼ぐのに苦労いたしますな」


 あっ、スルーしてくれてる。ひどいや。


「なるほど」


「さすがは最大級のダンジョンを運営しているだけあるというわけですね」


「その通りですな。セイレーンは異界の王家に連なる身ですからな。潤沢な資金力があるからこその、初期投資の多さなのでしょう」


「ふむふむ。というか、ダンジョンマスターにはそんな高貴な血筋の者でも選ばれることがあるのか」


「まあ、そうですな。ダンジョンというシステム自体、身分に関係しない平等で血も涙もないものですからな」


 笑いながらバトラーは話しているけど、なんとも重ったらしい話だと思うよ。

 ダンジョンマスターになると、ダンジョンから外に出られなくなるみたいだし、たとえ名誉なものだとしても、やっぱりなんだか嫌な話だな。


「プリンセスがどう思ってられるか、よく分かりますな。セイレーンが自分の住むフロアをそのように改装したのも、おそらくは寂しさの裏返しでしょう。セイレーンもまだまだ若いですからな」


 やっぱりそうだったんだ。

 なんだかいろいろと話が横道にそれちゃったけど、意図的にダンジョン内の風景を変えられることは、管理局の人たちに伝えることができた。

 ずいぶんと谷地さんたちは考え込んでいたようだけど、最終的には理解だけして、入り口横にある部屋まで戻っていったみたいだ。


 ……僕のダンジョン、いいように利用されないよね?

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