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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE031 追加したらつい自慢しちゃう

「こんにちは、ダンジョンマスターのウィンクです」


 配信できる内容ができたので、日を改めることにはなったけど、僕は配信を行うことにする。


『こんらみあ~』


 視聴者さんたちからは、もうすっかり定番となってしまった挨拶が返ってくる。僕はオーケーしたつもりはないんだけど、完全に視聴者さんたちの間では定着してしまっていた。なんだか恥ずかしいなぁ。


「本日は、ダンジョン内に新しい設備を導入したために配信させていただいております。入口で管理局の方たちの許可と取っていただけますと、一番奥まで案内していただけますよ」


『おお、そうなんだ』


『どんな設備なんだろ』


 視聴者さんたちは、かなり興味を持ってくれているみたいだ。

 もったいぶって発表を遅らせていると、バトラーが急に割り込んでくる。


「プリンセス。こういうものはさっさと見せるべきなのですぞ。さあ、とくとご覧くださいませ」


「わわっ、バトラー?! しょ、しょうがないなあ。では、ドローンは向こうの壁を映して下さい」


 僕が命令すると、僕を映していたドローンがカメラの向きを変え始める。

 カメラが映す壁の前には、なにやら白い物体がふたつ見えている。


『なんだ、あの白いの』


『人形のように見えるな』


 さすが視聴者さんたちは鋭い。ちょっと遠くに見える白い物体を見て、すぐに人形だと分かったみたいだ。


「ズームしてもらっていい?」


 僕がドローンに声をかけると、配信画面がずずっと壁に寄っていく。そうすると、はっきりと白い人形が見て分かるようになる。


『うん、人形だな』


『こんなの、いつ持ち込まれたんだ?』


 視聴者さんたちはいろいろと考えを巡らせているようだよ。


「ふふふっ、どうやって運び込んだのは内緒ですぞ。我々はモンスターなのですから、多少不可解なことが起きても、なんら不思議ではないのです」


『あっ、確かにそうだな』


『バトラーさんが言うと、説得力がありすぎる件』


『そもそも、モンスターが発生する仕組みすら謎だからな。急に物が増えてても不思議じゃないな』


 視聴者さんたちはバトラーの言葉に、ものすごく納得しているようだった。それでいいのかとは思うけれど、それで納得してもらえるのなら楽でいいかな。

 ドローンの画面を元の状態に戻して、僕を映してもらう。


「あの人形はデコイといいまして、破壊できるオブジェクトですね。バトラーが言うには状態保存の魔法がかかっているらしくって、壊してもダンジョン内のマナを使って元通りになるそうです」


『ほえー、それは便利そう』


『つまり、スキルの試し撃ちなんかにいいってこと?』


『俺たちも欲しいな、そんな便利なやつ』


 僕の説明を聞いて、視聴者さんたちが欲しがっているみたいだ。


「それは無理ですな。あのデコイはモンスター扱いでございます。素材になれば持ち出せますが、完全復活する以上、実質持ち出し不可という扱いになりますぞ」


『残念』


 視聴者さんたちは、とても落ち込んでいるようだった。


「無理に持ち出せば、ダンジョン内のモンスターが外にあふれ出すダンジョンブレイクの原因ともなります。危険にさらされたくなければ、妙なことを考えないことをお勧めしますぞ」


『了解』


『バトラーさんの忠告は聞くべし』


 ダンジョンブレイクかぁ。

 僕でもちょっとだけ聞いたことがある話だね。

 ダンジョンが発生したての頃に、研究用にダンジョン内のモンスターを無理やり連れ出そうとしたことで発生しかけたらしい。その時は連れ出したモンスターをダンジョンに戻すことで収まったらしいけど、危うく大災害になるところだったとか。

 外国では街がひとつ滅んだという話もあるらしい。


「では、このデコイの素晴らしさを、とくとご覧に入れましょう」


『ワクワク』


 バトラーはそう言うと、デコイの前に立って技を放つ。この間の侵入者たちにも見せた、腕を蛇にしてかみつかせるというものだった。

 もちろん、デコイは粉々までとはいかなかったけど、あっさり破壊されていた。


『ひゅ~、バトラーさんはパワータイプですな』


「パイソニアは格闘型と魔法型、両方存在しております。我はプリンセスを守る護衛として、体術に特化したタイプとなっております」


『そうなんだ』


「ですが、遠距離から楽に仕留められるとは思わぬことですな。プリンセスを守るのは当然ですが、自身も守れぬようでは護衛は務まりませんからな」


 バトラーの目がきらりと光ると、視聴者さんたちは震え上がっているようだった。

 ものすごく物腰は柔らかいんだけど、僕のこととなると本当に怖いんだよな、バトラーって。


「ささっ、プリンセス。プリンセスも一つくらい特技を披露してはいかがですかな?」


「えっ、僕?」


 急にバトラーに話を振られて、ついびっくりしてしまう。

 だけど、そもそもそのつもりでこの配信を始めたんだった。僕は気合いを入れる。


『ウィンクちゃん、可愛いな』


『わざわざ気合いを入れているなんて、本当に可愛すぎる』


 今の僕が女の子なせいか、やたらとみんな可愛いって言ってくる。ちょっと不満だけど、不思議と悪い気はしないかな。

 とりあえず、僕はデコイへと視線を向ける。


「ダンジョンマスターとして、僕だってやれるところを見せますよ。シャドウランス!」


 僕はようやく身に付けた魔法を初披露する。

 僕が放った闇の槍は、デコイに突き刺さってその形をボロボロと崩していっていた。


『おお、魔法だ』


『ウィンクちゃん、闇属性の魔法を使うのか』


『なんかかっこいいな』


 褒められるとなんだかいい気分になってくる。頑張って身に付けたかいがあるよ。


「えへへへ」


『はい、可愛い』


『スクショせねば』


 僕が照れていると、バトラーが再び割り込んでくる。


「プリンセスの可愛さに見とれるのは構いませんが、ほれ、見て下され」


 バトラーがドローンを無理やりデコイの方へと向けると、さっき壊れたはずのデコイが、みるみる元の形へと修復され始めていた。何度か見たけど、なんとも気持ち悪い。


『マジだ。直っていっている』


『破壊不可オブジェクトじゃん』


『くうう、許されるならうちのギルドにも設置したいぜ』


「僕のところまで来てもらえれば、いつでも使いたい放題ですよ。ぜひともいらして下さいね」


『くうう、遠いのがネックだ』


『必ず行かせてもらうぞ』


『なんで俺は、探索者じゃないだ……!』


 視聴者さんたちのいろんな反応が見えてくる。


 この日はデコイと僕の魔法を披露して、配信を終了する。

 翌日、配信のことを知ってやってきた谷地さんたちに叱られたのは内緒だよ。

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