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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE001 大変身

「う……ん……」


 僕は意識を取り戻す。


「あれ、ここは……?」


 目を覚ましたら、真っ暗な空間の中にいた。

 一体何が起きているのだろうか。僕の頭の中はものすごく混乱している。

 どうしてこうなっているのかを必死に思い出そうとするけれど、そうするほど頭が痛くなってくる。

 僕は思い出すことを諦めて、ひとまずこの空間から脱出することにした。


「えーい!」


 周りを確認すると、壁のようなものに手が当たる。なので、僕は打ち破ろうとして体当たりをすることにした。

 この時、下半身に違和感を感じた気がするけれど、真っ暗の恐怖の方が強くて気にならなかった。

 何度か体当たりをしていると、暗闇にひびが入り、光が差し込んでくる。


(もう少しだ)


 僕は思い切って体当たりを繰り出す。

 勢い余ってそのまま外に飛び出してしまい、地面にばたりと倒れてしまう。


「痛っ!」


 思い切り地面に当たったせいで、思わず声が出てしまう。


「おお、プリンセス。目が覚めましたかな?」


 倒れ込んだ僕に対して、誰かが声をかけてくる。

 ゆっくりと顔を上げると、そこに立っていたのは蛇のような頭を持った、二足歩行の人だった。


「ひゃあああっ! ももも、モンスターっ?!」


 僕は飛び上がって後ろに下がろうとする。だけど、なんだか体の感じがおかしい。

 倒れそうになる僕を、目の前にいたモンスターが後ろに回って、そっと体を支える。


「これは申し訳ありません、プリンセス。我も目覚めたばかりで、変化がうまくいかないようですな」


「え、えっ。ちょっと待って、プリンセスって誰のこと?」


 蛇の頭を持った人の言葉で、僕はそこがとにかく引っかかった。


「プリンセスは、プリンセスです。あなたのことでございますよ、プリンセス」


「えっ、僕は男だよ?」


 目の前の人は同じことを繰り返すので、はっきりと僕は言った。


「ふむむむ……。そうは申されても、今のあなたはこの通りの姿なのですよ」


 蛇の頭の人が指をパチンと鳴らすと、目の前には全身を映す鏡が現れた。

 そこに移った姿に、僕はびっくりしてしまう。


「え……、なにこれ、これが僕の姿なの? って、なんで裸?!」


 僕は自分の姿に驚いた。

 黒くて短かった髪の毛は、青みがかった銀髪で、軽く波打っている。長さも腰あたりまである。

 さらに問題なのは、へそから下の部分。なんと僕の下半身は、蛇の体になってしまっていた。

 そう、さっきバランスを崩したのはこのせい。二本足みたいに後ろに下がれなかったので、そのまま倒れそうになってしまったみたい。


「ああ、プリンセスの荷物でしたら、そちらの卵の中でございます」


 蛇の頭の人はそう言うと、僕の前で膝をついた。


「せっかく来て下さったプリンセスに対して、手荒な出迎えをしてしまったことをお許しください。ああでもしないと、余計なものまで連れてくる危険性がございましたのでね」


「えっと……?」


 蛇の頭の人の言うことがいまいち理解できない。腕を組んで考え込んでしまう。

 しばらく考えた僕は、目の前の人が言うことをようやく理解できた。


「ああっ! もしかして、ダンジョンに入った僕たちに襲い掛かってきた巨大な蛇って、あなたなんですか?」


「はい、その通りでございます。我はここで、ダンジョンマスターの素質のある方をずっと待っておりました。そして、ようやく、その素質を持った方が現れたのです。それこそがプリンセス、あなたなのです!」


「え?」


 僕は思わず固まってしまう。


「ああ、こちらの世界に来てから早十五年。この瞬間をどれほど待ち望んだことでしょうか」


 蛇の頭の人は、自分で自分を抱きしめながら、体を震わせながら何かを言い始めた。


「ただ、あの者たちは許せませんですな。結果としてプリンセスだけを連れてくることに成功はしましたが、我がプリンセスにあの狼藉、今度来たら我が糧としてくれましょうぞ」


 喜びの一方、僕を裏切った友人たちにはものすごく怒っているらしい。

 だけど、すぐに僕の顔を見て涙を流し始める。


「改めて申しますが、あなたが男だとか関係ないのです。なぜなら、あなたはこのダンジョンのマスターである、ラミアプリンセスなのですから!」


「えっ、えええええっ!?」


 目の前の人の言葉に、僕は思いっきり叫んでしまう。

 平凡な中学三年生だと思っていた僕が、まさか人類と敵対するダンジョンマスターだなんて、誰が想像したっていうんだろう。


「申し遅れました。我はプリンセスの補佐を行うパイソニアのバトラーと申します。何か分からないことなどございましたら、お気軽にお申し付けください」


「僕は三枝瞬。普通の中学生です」


「ほほう、瞬様と仰られるのですか」


 自己紹介をされたので、僕は自己紹介をして返す。

 だけど、バトラーはなんだか浮かない顔をしているように見える。


「ですが、プリンセスとなられたからには、その名は変えた方がいいですな。プリンセスを見て、誰が元人間など思いましょうぞ」


 確かにその通りだと思う。僕の今の姿は、誰がどう見てもモンスターだ。だったら、姿が変わったついでに、名前も変えてしまった方がいいかもしれない。


「まだ猶予はございます。ダンジョンマスターとして登録される名前、じっくりとお考え下さい」


「分かりました。とりあえず、このままじゃ恥ずかしいので、荷物から服を出してもいいかな?」


「承知致しました。では、我が取り出しましょう」


 どうやら僕は、蛇に丸のみにされたことで、ダンジョンマスターと呼ばれる特殊なモンスターになってしまったらしい。

 しかも、種族はラミアプリンセス。性別も男から女に変わってしまっていた。

 まだ信じられないけれど、どうも現実らしい。

 ダンジョンに潜った時に着ていた服をひとまず着た僕は、ダンジョンマスターとして登録する名前を真剣に考えることにしたのだった。

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