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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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174/200

SCENE173 年末配信、最終チェック

 いよいよ大晦日だ。

 時間は夜の八時を過ぎている。配信は九時からの予定なので、もうそろそろだ。

 だけど、この時間だと、普通の人ならテレビでも見てるんじゃないかなって思うんだけど、大丈夫かな。ちょっとだけ心配になってくる。


 そうそう、配信を前に、僕のダンジョンには一人知らない人が来ている。いや、この間来たから知っている人になるのかな。


「なんで俺が、こんなことしなきゃなんないんですかね」


「すみません。僕がよく分からないだけに来ていただいて」


 僕は衣織お姉さんが「色」と呼ぶ人に頭を下げている。

 実は、合同配信の仕方が分からなかったので、詳しい人に来てもらうことにしたんだ。それが、衣織お姉さんのギルドの色という人だったんだ。


「いやいいよ。君に協力しないと、衣織さんに何を言われるか分かったものじゃないからね。本当に、衣織さんは君のことを大事にしすぎているよ」


「あはは、本当に衣織お姉さんがすみません……」


 文句を言われつつも、僕も共感できてしまう。衣織お姉さんは、魅了を抜きにしてもそもそも過保護気味だからね。僕に対しても、瞳に対しても。

 話もほどほどに、僕は色さんに配信のことを教えてもらうことにする。


「それじゃ、配信用の画面を出してくれ。間違っても『配信』のボタンは押すんじゃないぞ」


「はい」


 僕は配信用ドローンを取り出して、画面を表示させる。目の前にはドローンが捉えている映像が出ている。


「おっ、君はこうやって配信しているのか。普通はこんな画面は出さないぞ。視界を遮って危険だからな」


「あっ、そうですね。前が見えないですもんね」


 今さらながらに当たり前なことを指摘されて、僕はつい苦笑いをしてしまう。

 色さんはその僕を見ながらちょっと困ったような顔を見せていた。


「まっ、まだ十五歳ならしょうがないか。とりあえず、配信の画面共有の仕方を教えるぞ」


「はい、お願いします」


 改めて頭を下げて、僕は色さんに合同配信のやり方を教えてもらう。


「ここに、招待って文字があるだろ」


「ありますね」


「ここを押して、招待したい配信者のIDを打ち込むんだ。そしたら、相手方に通知が行く。それで向こうが了承すれば、画面が半分ずつになって離れた場所同士での同時配信が可能になるんだ」


「分かりました。やってみ……セイレーンさんのIDってどんなだっけ?」


 ここに来てまた詰まってしまった。

 そう、セイレーンさんの配信IDが分からなかったんだ。確か、高志さんの配信のをそのまま使ってるって話だったよね。

 僕は困ったぞと腕を組んで唸り始めてしまった。


「ダンジョン配信なら、ダンジョン管理局への登録が必須だし、名前が分かっていれば検索をかければすぐに出るよ。ちょっと試したらどうだろうか」


「えっと、名前から出ますかね」


「うん? じゃ、俺が調べようか。探索者の名前は?」


「水瀬高志さんです」


「オッケー、ちょっと待っててくれ」


 色さんはすぐに調べてくれた。そしたら、本当にすぐに出てきたみたいだ。

 僕は早速試してみることにする。

 招待を押してIDを打ち込んで送信すると、『招待を送信しました』とポップアップが出た。初めて見た表示なので、なんとも新鮮な感じだった。

 しばらくすると、僕の目の前に表示されている画面の半分が別の画像に切り替わった。


「あら、ウィンク様。まだ配信が始まる前ですわよ」


「あっ、セイレーンさん、こんばんは」


 セイレーンさんの声が聞こえてくる。配信前でも通信はできるんだ。あれっ、これじゃ携帯電話よりもよくない? もうテレビ電話だよ、これ。


「顔を見ながら話をできるのはいいですわね。というか、これって配信状態でなくても使えましたのね」


「みたいだね。僕も初めてだから驚いているよ」


 思わぬ新発見に、僕とセイレーンさんはつい笑ってしまう。


「それでは、時間になりましたらまたお呼びくださいませ」


「あっ、うん」


 ちょこっと話をすると、セイレーンさんは画面から消えてしまった。多分、招待後に出現した『脱退』っていうボタンを押したんだと思う。

 とりあえず、また僕だけになった画面はそのままにして、時間を待つこととしよう。


「いよいよですね、ウィンク様」


「ああ、セイレーン様とご一緒にことをなせるなんて、あたくしも俄然やる気が出てまいりましたわ」


 僕が視線を向けると、ラティナさんとアルカナさんはやる気十分のようだった。やっぱり、セイレーンさんって慕われている人なんだなって思わされるね。


「私も頑張らせてもらうわ」


 モンスターである僕たちに負けたくないと、スピアさんまでものすごく気合いを入れている。

 スピアさんの場合は、僕を殺そうとしたマイナスイメージがあるから、それを払しょくしようと特に躍起になっているみたいだよ。僕はもう許しているけど、世間的にはスピアさんの反省を知らないものね。しょうがないか。


「とりあえず、これで配信の問題は大丈夫かな。衣織さんに頼まれているから最後までつき合わせてもらうよ」


「はい、お願いします。僕たちには分からないことばかりなので」


「任せておいてくれ」


 色さんという心強い協力者がいるので、僕たちは安心して配信が行えそうだ。

 いよいよ時間も迫ってきた。


「みなさん、いよいよ配信開始なので、頑張りましょう」


「はい!」


 僕の呼び声に、ラティナさんたちが元気よく返事をしている。

 さあ、今年最後の配信だ。僕は軽く自分の両頬を叩いて気を引き締めた。

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