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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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142/161

SCENE141 瞬のためならば即行動

 瞬からの頼みを聞いた私は、早速、横浜の家から車を走らせる。


「まったく、こんなことを思いつくとは、瞬もずいぶんと気にしているみたいだな」


 おととい、瞬の配信が終わった後で持ちかけられた内容に、私はつい笑みが止まらない。

 ただの頼みであればすぐにでも向かったのだが、用意するものが多かったので、まる一日かけてしまっていた。おかげで車のトランクはパンク寸前だ。


「これだけのものを移動させるとなると、管理局にも一応報告しておかないといけないからな。とりあえず、このあとをどうするかは向こうに着いてから考えるとしよう」


 いろいろと考えることもあったが、今は高速道路を走っている。あんまり考えごとをしながら走るような状況じゃないので、運転に集中することにした。


 高速道路を使ったのでちょっと遠回りになったものの、思ったよりも早く目的地に到着できた。

 私がやって来た目的地というのは、もう分っているとは思うが瞬の家だ。

 瞬から受けた頼みごとというのは、瞬の妹である瞳に関することなんだよ。

 家の前に車を止めた私は、呼び鈴を鳴らして反応を待つ。


『はい、どちら様で?』


 呼び鈴を鳴らして反応があった。この声は瞬の母親だな。


「おばさん、衣織ですよ」


『あら、衣織ちゃん? ちょっと待って、すぐに出るわ』


 受話器を置くような音が聞こえて、インターホンが切れる。

 少し待つと、扉が開いて中からおばさんが姿を見せた。


「まあ、衣織ちゃん。どうしたのよ、わざわざうちに来るだなんて」


 おばさんはずいぶんと呼吸が荒いようだった。多分、家事をしていたんだろう。これは悪いことをしたかな。

 とはいえ、対応してもらったのだから手短に話をするとしよう。


「いえ、瞳に用事があって来たんですよ」


「あら、瞳なら今は学校よ。まだ一時間はしないと帰ってこないわ」


「おや、ちょっと早かったか。しかし、ここで待つのも困ったものだな。駐車場を探して止めてこないと、通行の邪魔になってしまう」


 どうやら瞳はまだ不在だったようだ。


「それだったら、帰ってきたらこっちから連絡するでいいかしら。瞳は確か番号を知っているはずだから」


「ええ、そうしましょうか。では、私は先に別の用事を済ませてきます」


 そんなわけで、私は瞳が学校から帰ってくるまでの間に、もうひとつの訪問先へと向かうことにした。

 そういえばそうだった。瞳はまだ中学一年生だしな。冬休みまでもまだ日数があるから、まだ普通に授業をしているんだった。私としたことがしくったな。

 気を取り直して、私は別の場所へと足を運ぶ。それは、瞬のダンジョンを管轄しているダンジョン管理局の出張所だ。ダンジョン管理局の出張所とはいえ、権限は本家ともあまり差はない。


「おや、これは衣織さんではないですか。どうなさったんですか?」


 管理局の出張所に入ると、受付の人の反応が早い。


「悪いけれど、瞬のダンジョンの担当者でいいから出してもらえないかな?」


「谷地か日下ですか? 少々お待ち下さい」


 長々とした説明もなくて通じるのでやりやすいというものだ。

 このやり取りからほんのわずかの時間で谷地さんが出てきた。


「これは衣織さん、どうなさったのですか」


「すまないが、これの許可を取りたいんだ。詳細は同時に説明する」


「……分かりました。では、どちらに」


「私の車だ」


 谷地さんはよく分からないといった感じだが、私の話にすぐに応じてくれた。

 車のトランクを開けると、そこにあったものにびっくりしていた。


「これは、素材ですか」


「ああ、これで瞬の作る迷路の目玉にしようと思ってな」


「えっ、これをですか?」


「ああ、そのための協力者を一人連れてきたいんだ。作業するのにちょうどいい場所はないかな。ダンジョンに入れない人物なんでね」


「うーん、ちょっと考えさせてください」


 私が話を持ち掛けると、谷地さんはかなり悩んでいるようだった。どうやら、彼ではどうにもならない話といったところなんだろうな。

 結論が出ない状況の中、私の携帯電話が鳴る。電話をかけてきた相手は、目的の人物、瞳だった。


「やあ、瞳」


『衣織お姉ちゃん、私に用事って何?』


「今から迎えに行く。詳しい話はその時にでも話をするよ」


『あ、ちょっと……』


 私はさっさと電話を切り、瞳を迎えに行くことにする。


「そういうわけなんだ。とりあえず、使える場所を用意しておいてくれ」


「え、こ、困りますよ……」


「瞬のためなんだ、どうにかしてくれ」


 私は無理を言うと、トランクを閉めて車を走らせる。谷地さんはどうしたらいいんだという感じの表情で立ったままになっていた。

 瞬の家へと舞い戻った私は、状況の把握できない瞳を助手席に乗せて、再び管理局を目指して走り出す。

 当然ながら、半ば拉致で連れてこられた瞳は、目を白黒とさせて驚いた表情のまま固まっていた。


「瞳、頼みがある」


 私は車を運転しながら瞳に話しかける。


「瞬のためにモンスター素材で服を作ってくれ」


「えっ?」


「とはいっても、瞬の着る服じゃない。瞬が作ろうとしている迷路の目玉景品として、瞳が作った服を提供しようってわけなんだよ」


「えっ、ええ~~っ!?」


 車を走らせながら端的に理由を話すと、車の中にはうるさいまでの瞳の叫びが響き渡ったのだった。

 そう、瞬が私に頼んできたのは、瞳に迷路の目玉となる景品を用意することだったのだ。

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