SCENE140 迷路は迷走中
結果として、今回の配信はほとんど衣織お姉さんに乗っ取られてしまった感じだよ。
でも、さすがラティナさんの護石の威力を目の前で見たこともあってか、説明に納得しかないというもの。僕も実際体験しているしね。
『ほえー、あの鬼崎の攻撃すら跳ね返したんかぁ・・・』
『となると、相当な致死ダメージすらも回避できそうってこと?』
『だけど、見た目はただの石ころなんだよな?』
視聴者さんたちはこんな反応を示している。そうなっちゃうのは分かるよね。
目の前でラティナさんに護石を作り出してもらったんだけど、見た感じは本当にただの石ころなんだもん。
ただ、マナを感じ取れる人ならただの石でないことはよく分かるということらしい。僕もダンジョンマスターとなったことでマナを感じ取れるから、納得のいく話ではあるよ。
そして、その大きさも手のひらにすっぽりとおさまってしまう大きさだから、なおのことただの石ころという印象に拍車をかけている。
『へー、その大きさであのゴリラみたいな鬼崎の攻撃を跳ね返すとはな・・・』
『あれっ?ってことは、この間のウィンクちゃんが襲撃された時のあれも?』
「そうですね。あの時、僕はたまたまラティナさんから護石をもらっていましたので、それによって襲撃者の攻撃を受け止められたんですね」
『ほえー、そうなんや』
視聴者さんが思い出したのは、パラダイスのマスターである鬼崎っていう人の部下が僕たちのダンジョンにやって来た時のことだよ。
あの時はバトラーが相手をしていたんだけど、さすがに三対一では捌ききれずに、一人が僕に襲い掛かってきた。その攻撃は僕に届くことなく防がれ、僕のゼロ距離からの魔法がさく裂したんだ。
いやぁ、あの時は正直焦ったよね。
ラティナさんの護石がなければ、僕は多分死んでいたなぁ……。だから、感謝してもしきれないって感じだよ。
『そういうわけだ。ラティナの護石はお守りとして最高だぞ。だが、頼りすぎるなよ?』
『合点承知』
『実体験をした人がいうんだ、強い』
衣織お姉さんの言葉に、視聴者さんたちは強く反応をしている。さすがトップランカーの探索者の言葉は強いなぁ。
「そんなわけです。迷路ができたら配置しておきますから、宝箱を見つけたらラッキーと思って下さいね」
『おう』
『りょ!』
視聴者さんたちは力強く返事をしている。本当に言い人たちだなぁ。
だけど、その直後に視聴者さんが指摘を入れてくる。
『でも、あんまり外に流通させすぎると悪い連中の手にも渡らないか?』
「あー、確かにそうですね」
言われてみればそうだなと思う話だよね。
僕の配信の視聴者さんたちはいい人ばかりだから、すっかりその点が抜け落ちていたよ。現実を見てくれている視聴者さんがいて、僕はとてもありがたく思う。
「それは大丈夫だと思いますよ」
「ラティナさん、それってどういうことですか?」
そこにラティナさんが口を挟んできた。発言の意図を僕は聞いてみることにする。
「基本的にはマナがないと効果を発揮できませんからね。それこそ、本来の持ち主であるわたくしたちの想いひとつで効果を変えられます」
『へぇ、そうなんだ』
『さすがはモンスターのドロップ品だなぁ』
ラティナさんの話を聞いて、視聴者さんたちが納得しているようだった。
なるほどなぁと僕もつい感心してしまう。僕たちのドロップ品だからこそ、僕たちの石でご都合主義にできるってわけかぁ。面白いな。
だけど、だいぶ話が長くなってきてしまったので、そろそろ配信を終わらせてしまった方がいいかな。
迷路に関しては、まだまだ建設中の段階だしね。頑張らなきゃね。
「では、そろそろ配信を終わろうと思います」
『ええー』
『ああ、そういえばずいぶんと長くなっちゃってるもんなぁ』
『ウィンクちゃんは気遣いできるいい子だもんね』
僕が配信を終了させるといっただけで、かなりの悲鳴が聞こえてきた。でも、理解してくれる視聴者もいるので、僕としては結構やりやすい。
「はい。迷路に関してはまた続報が出せそうなら配信させていただきます。ダンジョン管理局とも相談をして最終的な判断をさせてもらいますので、もうしばらくお待ち下さいね」
『楽しみにしてるぜ』
『わくわく』
視聴者さんたちの期待が高まっているみたいだ。これは、僕もいい加減な運営ができないね。
なんとしてもダンジョンポイントを稼がないといけないから、しっかりと身を入れて考えていかなきゃ。
そうして、配信を終えた僕は、疲れからか大きく息を吐いてしまう。
『お疲れ、瞬』
「あっ、衣織お姉さん。そういえば、まだ通話中でしたっけ」
『ああ、そうだぞ。それで、瞬から私に頼みとかはあるか?』
「うーん、そうだなぁ……」
衣織お姉さんが話を振ってきたので、僕はいろいろと考えてみることにした。
そこで、ピンと来たことがあったので、衣織お姉さんに伝えてみることにした。
『ほう、それは面白いな。分かった、伝えておくから楽しみにしておいてくれよ』
「うん、衣織お姉さん、頼んだよ」
『ああ、任せておけ』
そういって、衣織お姉さんとの通話もようやく終わる。
気の抜けた僕は、座り込んだ状態のまま、バトラーが持ってきてくれたおやつを食べて回復することにしたのだった。




