SCENE138 迷路作りも大詰めだ
久しぶりに瞳と話をした二日後のこと、僕はダンジョン管理局の谷地さんたちと話をしていた。
時折、僕たちの様子をチェックするために、谷地さんたちはダンジョンに足を運んでくれているのである。
「どうですか、ウィンクさん。最近の調子は」
「ええ、悪くないですよ。モンスターになってからというもの、病気らしい病気はないですからね」
状態を聞かれた僕は、体を動かしながら笑顔で自信たっぷりに答えている。
冬に差し掛かった頃には時々体調を崩すこともあったので、今の健康っぷりには僕は大満足だよ。
「ふふっ、それはよかったです」
谷地さんと日下さんも笑っているみたいだ。
「それで、どうですか、ダンジョン内の改造のほどは」
谷地さんたちはそれがメインの目的のようで、僕に真剣な表情を向けてきていた。
ダンジョンに本格的に参加できるようになる前の中学三年生たちの人たちや、ダンジョン初心者のための場所だからね、僕のダンジョンは。だから、ダンジョンの改造となると管理局の意見も取り入れざるを得ないんだ。
だから、谷地さんはこのようにチェックを入れてくるというわけなんだよね。
自分のダンジョンだから好き勝手させてといいたいところだけど、そういう約束を交わしちゃったし、しょうがない話なんだよなぁ。
「今はダンジョン内に迷路を作っているところですね。ちょっとしたお宝を手に入れて帰れるようにって感じです」
「ほうほう。それは面白そうですね」
谷地さんは意外と食いついてきていた。
そこで、僕は迷路の設計図を描いたノートを谷地さんたちに見せていた。
「こんな感じで迷路にしておいて、あちこちに宝箱を置くという感じです。ただ、僕もダンジョンを運営するためにはダンジョンポイントを稼がないといけないで、そのための罠も設置させてもらってますよ」
「ほう……。これはなかなか大変そうな迷路ですね」
谷地さんは僕の設計図を見ながら、何度も頷いているみたいだ。
「これは、脱出できないということはないですかね」
「大丈夫ですよ。罠としては三階層に放り出される落とし穴と、瞬間移動でダンジョンの出入り口まで戻されるモンスターを配置する予定なので。脱出するための罠がある以上、延々と迷路の中で迷い続けることができたら、逆にすごいと思いますよ」
「ははっ、それはそうかも知れないね」
僕が自信たっぷりに答えると、谷地さんはどういうわけか苦笑いをしているようだった。どういうことなんだろ。
「何か問題でもあるのでしょうか」
谷地さんたちの反応が気になったのか、ラティナさんが谷地さんたちに声をかけていた。
「いえ、アイディアは素晴らしいと思いますよ。ただ、探索者というのはいろいろと能力を持っていますので、場所によっては出られなくなりかねないかなと感じましてね」
「えっと、それは高志さんのような直感スキルの話ですかね」
「そう、それですね。罠だと分かると、それ以上進まなくなる可能性があります。そのような場所に挟まれると、通路を行ったり来たりを繰り返すことになりますからね」
谷地さんが懸念したのはそういうことらしい。
直感スキルがあると、危険を察知して引き返すということがあるようだ。そのような場所に囲まれた場合、脱出が不可能になるのではないかと、そう言いたいみたいだ。
「まあ、そういう時は僕がチェックを入れておきましょう。ダンジョンマスター特権で探索者の位置は確認できますから」
「ああ、そういうことなら安心でしょうかね。では、そこはお任せします」
「任せて下さい」
谷地さんも日下さんも納得してくれたようなので、僕の企画はそのまま進めることができるようになった。
だけど、日下さんから別の質問が飛んでくる。
「お宝ということですけれど、具体的にはどのようなものを仕込むのですか?」
ああ、やっぱり気になるかなぁ。でも、お宝である以上、事前情報を与えるのもあんまりよくないよね。
僕は真剣に考えた。
「ウィンク様、お二人でしたら別にお教えしてもよろしいかと思いますよ」
「ラティナさんがそういうのなら、まあそうしようかな」
そういうわけで、僕は谷地さんと日下さんに、お宝の内容を少しだけ教えることにした。
まあ、見ただけじゃお宝とは思えないとは思うんだけどね。
「僕とラティナさんのドロップ品ですね。簡単に言いますと」
「お二人のですか?」
「はい。僕のうろこと、ラティナさんの石です。僕のうろこは魔法と状態異常に対して強くなって、ラティナさんの石はある程度のダメージを肩代わりしてくれるんです。危険と隣り合わせですからね、探索者っていうのは」
「それはいいですね」
僕が説明をすると、お二人ともずいぶんといい反応をしてくれている。
だけど、それとは別な問題があるんだよね。
「ただ、見た目がこんなのですから、絶対ごみと勘違いする人がいると思うんですよ」
僕は実物を谷地さんと日下さんに見せる。その瞬間、二人揃って表情を引きつらせていた。
だって、見た目はプラスチックの破片とただの石ころなんだもん。これが僕たちのドロップ品だなんて、誰が思うのだろうかと思うんだよね。
「迷路に参加される方には、鑑定ルーペでもお貸ししておきましょう。そうすれば、きっと捨てられることはありませんよ」
「そうだといいですね」
谷地さんはそういうものの、僕としてはやっぱり不安の方が大きい感じだった。
でも、今の僕たちからしたらそういうものしか提供できないから、もうこれでいくしかないんだよ。
とはいえ、今回の話で迷路のことは管理局の承認も得られることができた。
さあ、いよいよ実行に移せそうだから、もうひと踏ん張りするかな。




