SCENE137 悩ましい妹
私は三枝瞳。ダンジョンマスターになっちゃった兄を持つ中学一年生です。
お兄ちゃんのことはびっくりしたけれど、私はなんとか普通の生活を送っています。
だけど、お兄ちゃんがダンジョンマスターになってしまったことで、私にもその素質があるんじゃないかとダンジョン管理局から疑いをかけられてしまって、私はしばらくそのための検査に付き合わされていました。
ああ、お兄ちゃんとの連絡も最小限にされちゃったし、配信も見れなくて寂しいよう。
そんな長かった検査も終わり、私は改めて結果を聞くためにダンジョン管理局に呼ばれていました。
「三枝瞳さん」
「はい」
「検査の結果、ダンジョンマスターへの適性はないみたいです。なので、無人ダンジョンに入っても問題はないでしょう」
「そうです。よかったぁ……」
結果を聞かされた私は、ほっと胸を撫で下ろしていた。
だって、お兄ちゃんがダンジョンマスターになってからというもの、やっぱり家の中がちょっと沈んだ気がしていたもの。そこで私までそんなことになっちゃったとしたら、お父さんとお母さんがどうなっちゃうのか……。ものすごく心配でした。
とりあえず、ダンジョンマスターになって討伐される側に回る危険性はないということで、それはそれでとても安心しました。
その結果をお母さんに報告したところ、お母さんは胸のつかえが取れたような表情をしていました。
そんなわけで、久しぶりにお兄ちゃんと話をしようとして、携帯電話を手に取ります。
だけど、お兄ちゃんってば全然連絡入れてきてくれないよね。忘れちゃってるのかな。
そういうところはお兄ちゃんらしいので、私はあんまり責めませんけどね。
私は電話帳からお兄ちゃんの携帯番号を選んで電話をかけます。
しばらくコールすると、ようやく電話に出ました。
『もしもし、瞳?』
ああ、お兄ちゃんの声だ。よかった元気そうだわ。
私が安心していると、誰か別の声が聞こえてきます。声の感じからして女性の声。
おかしいなぁ。お兄ちゃんのダンジョンは確かバトラーさんっていう蛇の男性しかいなかったはずなんだけど。衣織お姉ちゃんとも違うし、一体誰なんだろう。
『ラティナ・ロックウェルと申します』
電話口から聞こえてきたのは、ものすごくとても物腰柔らかそうな女性の声でした。なんだろう。大人の女性といえるくらいの、それは落ち着きのある感じでした。
お兄ちゃんはとっとと退散していってしまったけれど、私はそのラティナさんという方にとても興味を覚えました。
このような落ち着いた女性というのはどのような方なのでしょうか。同じ女性としてとても気になります。
ラティナさんとお話をしていて気になったのは、ラティナさんは本来別のダンジョンにいたというお話です。どうやって別のダンジョンへと移ってきたのでしょうか。ものすごく気になります。
本人が仰るにはゴーレムであり、命ともいえる宝石を外すことで物質化して動くことができたそうなのです。なんとも不思議な話です。
第一、ゴーレムというのは硬い印象のあるモンスターの代表格です。そのモンスターである方がこのような対応をしているというのはとても不思議に感じました。貴族というのも頷けます。
通話を終えた私は、お兄ちゃんに言われた通り、配信のアーカイブを見ることにしました。
検査が始まってからというもの、見ることを制限されてましたからね。本当にどのくらい振りでしょうか。
アーカイブを見始めて少しすると、話に出てきたラティナさんが映し出されました。
「うわぁ、本当にゴーレムだよう……」
そこで見た姿は、全身が岩だらけのモンスターでした。お兄ちゃんと一緒に映っているので、ラティナさんで間違いないですね。
でも、岩だらけのゴツゴツとした姿だというのに、ラティナさんは不思議と引き込まれる不思議な魅力を持っているようでした。
まず第一に、岩だらけの体でありながらもスムーズに動いている点。ゴーレムといえば動きが鈍いイメージなんだけど、ラティナさんはその常識をいとも簡単に打ち砕いてくれていました。
顔自体は基本的には目しかないのですが、それでいてものすごく表情豊かです。
「ゴーレムなのに、すごっく可愛い。姿もすごくほっそりしているし、従来のゴーレムのイメージを壊しに来ている感じがあるわ」
同じ女性として、私はなんともいえないやきもちを妬いてしまっていました。
なんといっても、お兄ちゃんとずっと一緒にいるわけだもの。
はあ、私も早くダンジョンに入れるようになりたいですね。
でも、中学三年生になるまでダンジョンに入ることはできません。まだ一年と四か月もあるかと思うと、とてもじゃないですが待ってられませんよ。
「はあ、早く大きくなりたいなぁ……」
配信のアーカイブの視聴が終わった私は、そのまま机に突っ伏してしまいます。
だけど、どんなに願っても、時間の流れの速さは変えられないですからね。
なんとも悶々とした気持ちを抱えながら、私はお兄ちゃんのことを気にかけ続けました。
「瞳ー、ご飯よー」
「あっ、お母さん。今行く」
母親に呼ばれた私は、ひとまず気持ちを切り替えて部屋を出ていったのでした。
いずれ、ダンジョンに入れるようになったら、絶対お兄ちゃんのダンジョンに最初に行くんだから。




