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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE136 妹からの電話

 その日の夕方のことだった。


「ウィンク様、携帯電話が鳴っていますよ?」


 ラティナさんが僕の携帯電話を見て騒いでいる。


「えっ?」


 僕もさすがに反応して携帯電話を見てみると、確かにぶるぶると震えていた。迷惑にならないようにマナーモードにしているから、こんな感じになってるんだよね。

 とりあえず、僕は携帯電話を確認してみる。


「あっ、瞳からだ」


「えっと、どちら様なのでしょうか」


 僕が名前をつぶやくと、ラティナさんが首を傾げている。

 そういえばそうだった。ラティナさんにはまだ僕の妹のことを話していなかったっけな。

 でも、説明をするよりも先に電話に出た方がいいね。そう思った僕は、ひとまず通話のボタンを押す。


「もしもし、瞳?」


『あっ、お兄ちゃん?』


 うん、電話の向こうは確かに瞳だった。こうやって話すのも久しぶりだなぁ。


「電話してくるの、すっごく久しぶりだね。忙しかったのかな」


『うん、まあね。ほら、お兄ちゃんがダンジョンマスターになっちゃったでしょ。だから、私もその適性があるんじゃないかって色々調べられちゃってね。やっと終わったとこなのよ』


「ありゃ、それはなんかごめん……」


 瞳から聞かされた内容に、なんだか申し訳なくなってきちゃったな。

 そっかぁ、僕の妹ってだけでいろいろ疑いをかけられちゃったのかぁ。本当に悪かったなぁって思うよ。


「それで、どうだったの結果は」


『うん、適性なしだって。だから、私は普通に探索者になれるみたいだよ』


「そっか。それはよかった……」


 瞳にダンジョンマスターの適性がないと分かって、僕は思わずほっと胸を撫で下ろしてしまった。

 だって、僕と同じようになっちゃったら、瞳もそうだし、両親も大変なことになっちゃうからね。僕みたいになれればまだいいけれど、モンスターになっちゃうとダンジョンから出られなくなってしまう。それが回避できただけでもよしとしなくちゃ。


『お兄ちゃんは、私に会えなくて寂しくない?』


 僕が少し黙っていたせいか、瞳が心配をしてきた。


「もちろん、寂しいよ。ある日突然、家族と引き離されちゃったんだからね」


 瞳の質問に、僕は正直に答えている。

 ただ、ラミアプリンセスになった直後は、僕の姿の変化やバトラーの存在に驚いていてそれどころじゃなかったところはあるかなぁ。


『そっかぁ。お兄ちゃんが変わってなくて安心したわ』


 僕の答えを聞いて、瞳はとても嬉しそうな声で反応している。


「まあ、ウィンク様の妹さんなのでしたのね」


『お兄ちゃん、誰の声?』


 僕たちの通話を聞いていたラティナさんが反応すると、瞳もすかさず反応していた。いくらなんでも早くない?


「初めまして。わたくしはラティナ・ロックウェルと申します。異界のモンスターでして、ロックウェル伯爵家の令嬢でございます」


『ふえっ!? モンスターに貴族っているの?』


 ラティナさんの自己紹介を受けて、瞳は驚いているようだった。

 ここまで知らないとなると、最近の配信はまったく見てないみたいだね。


「瞳、ラティナさんは僕の配信に何度も出てるから、最近の配信を見直しておいて。でも、きっと姿には驚くと思うよ」


『あ、うん、分かったわ。あとでアーカイブ見させてもらうね』


「お願いだよ」


 瞳がアーカイブの視聴をしてくれることを約束してくれたので、僕はとにかく念を押しておいた。


『お兄ちゃんが無事に楽しくしているだけでも、私は安心できるわね。ラティナさん、お兄ちゃんのことをよろしく頼みますね』


「はい、わたくしにお任せ下さい。年齢的にはわたくしの方が上ですし、しっかり面倒を見させて頂きます」


『いい人そうで安心できます』


 瞳は、ラティナさん相手だと敬語になってる。


「ラティナさん、僕はちょっと迷路の手直しをするので、よければ瞳と話をしていて下さい」


「えっ、でも……」


「いいんですよ。それじゃ、瞳。ラティナさんと話していてね」


『ちょっと、お兄ちゃん?!』


 瞳は僕を呼び止めようとするけれど、僕は席を外して迷路の図案を描いたノートを引っ張り出して見つめている。

 心配はしたけれど、聞こえてくる声を聞いている限りは、瞳とラティナさんはうまくやってるような感じだ。

 人間とモンスターの違いはあるとはいえ、女の子同士だもんね。それに、僕という共通の話題もあるから、思ったよりは話が盛り上がっているみたい。

 二人が思ったよりも仲良くなれそうで、僕はなんだか笑顔になってきちゃう。

 そうして、僕は迷路の設計にとにかく夢中になっていると、ラティナさんがやってきた。


「ウィンク様、お電話ありがとうございました」


「あ、うん。ラティナさん、瞳とはどうでしたか」


「はい、とてもいい方のようで、つい盛り上がってしまいました。よかったですよ、人間だった頃のウィンク様のお話もお聞きできましたし」


「あ……。瞳、変なこと言ってませんでしたかね」


「いえいえ。特には何も仰られませんでしたよ」


「あ、そっか……」


 ラティナさんの笑顔が気になるけれど、ひとまず僕はその言葉を信じることにした。


「ウィンク様は、迷路の案は固まりましたでしょうか」


「うん、だいたいね。あとでバトラーにチェックを入れてもらうくらいかな」


「そうですか。完成が楽しみですね」


 もうちょっとだと聞いて、ラティナさんはにこりと笑っていた。

 本当に、ゴーレムなのに笑顔が癒しになるってすごいよね。


「あっ、そうです、ウィンク様」


「なに?」


「瞳様が、もっとウィンク様とお話がしたいと仰られていましたので、時折ご連絡を入れられた方がいいと思います」


「あ、そうだね。うん、そうさせてもらうよ」


 ラティナさんから聞かされた伝言に、僕はただ頷くことしかできなかった。

 そうだね。今度瞳とゆっくり話すことにしよう、うん。

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