SCENE133 育成空間配信・その2
探索者育成のために用意しました部分ですけれど、一階層の半分ほどを紹介させていただきましたわ。
「いや、もう……なんていうか……」
「デバフの影響もあって、マジできっつい……」
配信に参加させた探索者の殿方二人はすっかり参ってしまっていますわね。
そういえばそうでした。あたしに襲い掛かろうとしてシードラゴンに返り討ちにされたんでしたわね。
死に戻りによるデバフは一日間消えませんので、こうなるのも仕方ありませんか。
『なっさけないなぁ』
『いや、デバフって言ってるから、こいつら死に戻りを経験してるぞ』
『一階層で死に戻りって、一体何をしたんや・・・』
探索者たちの言葉を聞いて、観客たちが騒いでいますわね。
でしたら、正直に話して差し上げましょうかしら。
「実はですわね、この方たち、あたしたちを見て襲い掛かってきましたのよ」
『ああ、そういうことかぁ・・・』
話をしましたら、観客たちはあっさりと理解をしてしまっていましたわね。
『セイレーンさんを知らなきゃ、そこらのモンスターと勘違いするだろうな』
『だが、こんな美人に普通襲い掛かるか?』
『で、鉄拳制裁を食らってデバフがついたわけか』
『同情の余地なす』
観客たちからは容赦のない言葉が浴びせられていますわね。それだけ、観客のみなさまはあたしに夢中ということでしょうね。
嬉しいですけれど、ちょっとこの人たちが可哀想かもしれませんわね。まあ、自業自得ですけれどね。
「しかし、初心者にデバフありとはいえ、ちょっと厳しくなってしまったのは考えものですかしらね」
あたしはちょっと考えてしまいますわ。
『いやぁ、誰も初心者がデバフを食らってそこにやってくると思わんて』
『うんうん、今回のことで調節を入れる必要はないと思うよ』
「そうですのね。それを聞いて安心いたしましたわ」
観客のみなさまは、必要ないと仰って下さっていらっしゃいますので、あたしは育成スペースの難易度をひとまずそのままにしておくことにしましたわ。
やはり、客観的な意見というものは大切ですわね。
『それにしても、結構本格的な感じですごかったな』
『これなら、ある程度経験を積んだ探索者で挑んでも勉強になりそうだ』
『三階層まであるっていうしな、いろいろ楽しみになってきた』
ふふふっ、観客のみなさまの反応はばっちりのようですわ。
とりあえず、探索者育成空間のお披露目は成功と見てよろしいですかしらね。
あたしは、ちょっと満足そうに微笑みながら観客の反応を眺めていた。
「それでは、今日のところはここまでにしておきましょうか。管理局の方との話で、あまり大っぴらにしないで欲しいと言われておりますのでね」
『おう、それは残念・・・』
『しょうがないかな』
『でも、横浜ダンジョンなら行きやすいから、気が向いたら行こうぜ』
『そうだな』
観客の方々からはいろいろと反応がありますわね。
ふふっ、こういう時はウィンクさんのダンジョンとは違い、交通の便がいいというのはいいですわね。
「それではみなさま、また次回にお会いいたしましょう」
『おつかれさま~』
あたしは配信を終了させる。
無事に配信を終わらせますと、今回捕まえた探索者の二人をじっと見つめている。
「まったく、貧弱ですわね」
「うぐ……」
あたしがストレートに物申すと、二人は黙ってしまいましたわ。
「あなた方、探索者として活動しまして、どのくらいなのかしら」
「えっ……と」
「半年くらい、かな」
「あら、意外と短いですわね」
二人の活動期間を聞いて、あたしはちょっと驚かされてしまいましたわ。
聞けば、ダンジョン探索ができる十六歳からではなく、高校とやらを出てから活動を始めたらしいですわ。
なるほど、それでここまで未熟なのですのわね。
「分かりましたわ。ここでしたら死んでも復活できますから、しばらくここを使うとよろしいですわよ。実力をしっかり身につけ、身の丈にあったダンジョンに挑戦するといいです」
「は、はい。そうさせていただきます」
あたしの言葉に、素直に返事をしてくれますわね。ふふっ。
「セイレーンさんって、普通のモンスターとはずいぶんと違いますね」
「それはもちろん。あたしは海を束ねるモンスターの一族ですからね。異界での立場は公爵家。ゆえに、その立場に見合った気品と強さというものをしっかりと身につけてきましたもの」
「こ、公爵令嬢……。まさか、ラノベ以外でその言葉を耳にするなんて思いませんでした」
「あら、こちらの世界は貴族爵位というものは、もう存在していませんのかしら」
「まあ、普通はあんまり聞きませんね」
あらあら、なんとも意外な話ですわね。
これはがぜん、この世界に興味が出てきましたわね。
ですが、今日のところはここでお帰り頂きませんとね。
「さて、あたしはこのダンジョンのマスターですので、部屋に戻らさせていただきますわ。まだ用事があるようでしたら、ボス部屋まで来ることですわね」
「ひぃっ! さすがにそれはご勘弁ください」
あたしはそのように言い残すと、短絡路となる扉のある場所までさっさと歩いていってしまう。残りはシードラゴンに任せておけばどうとでもなるのですわ。
部屋へと戻ったあたしは、ああは言いましたが、ダンジョンの中を少しいじることにしましたわ。
「シードラゴン、戻りましたか」
「はい」
「あの二人はどうしたのかしら」
「怖くなったようで、さっさと帰っていきました」
「そう」
シードラゴンの報告を、あたしは淡々と聞いていた。
所詮、あの二人はダンジョンにとっての肥やし。下僕ほどの利用価値はないでしょうね。
まあ、またいらしたら遊んで差し上げましょう。
その後は、シードラゴンと相談しながら、改めて育成空間の調整を行いましたわ。
ふふっ、次の来客が楽しみですわよ




