SCENE131 さあ、お披露目配信ですわ
「みなさま、こんにちは。横浜ダンジョンのダンジョンマスターであるセイレーンですわ」
あたしは配信どろーんを起動させて配信を始める。下僕はいませんけれど、貢いでもらいました携帯電話を確認することで配信ができるようになっているのですわ。まったく、この世界の技術とやらは素晴らしいものですわね。
配信を始めている中、シードラゴンが周りに気を配っておりますわ。なにせここは第一階層ですもの。しかも入ってからそんなに遠くない場所ですから、ダンジョンマスターを倒そうとする輩はいらっしゃるでしょうからね。
『セイレーン様だぁっ!』
『おお、今日も麗しい・・・』
『さすがは最難関の横浜ダンジョンのボス、素晴らしい風格だ・・・』
ふふっ、配信を見ていらっしゃる方々から様々な反応が来ますわね。
この配信のを見ていらっしゃる方々の一部は、ウィンクさんの配信を見ているらしいですわね。そういう意味では、ウィンクさんにも感謝致しますわ。
『今日の配信は一体何を見せてくれるのだろうかな』
おやおや、観客のお一人が気になさってらっしゃるようですわね。
それでは、盛大に本日の配信内容をお知らせいたしましょうか。
「本日は、横浜ダンジョンの一階層に建設を進めておりました、探索者育成空間のお披露目ですわよ」
『おおっ!』
『遂に完成したのか』
『管理局からも間もなくという情報があったからな』
『死んで強くなるダンジョンキター(゜∀゜)ーー!』
観客たちのテンションが高いですわね。それほどまでに楽しみにしておりましたのね。
「ダンジョン管理局の方からは、情報の一部を出してもよいとは連絡を受けておりますので、遠慮なく情報をお出ししますわ」
『楽しみ』
『ドキドキ・・・、どんな構造になっているんだろ』
あたしの言葉を聞いて、観客たちが興奮しているのがよく分かりますわ。
では、情報をお出ししましょうかしら。
「この育成空間の階層は、この横浜ダンジョンの三割程度ですわ。つまり、全部で三階層から成り立っていますの」
『ほうほう、初心者向けっぽい階層数だ』
『でも、全ダンジョン中最高レベルともいえるダンジョンの中やぞ?』
『管理局と相談もしていたんだし、そこまで難易度はないんじゃね?』
ふふっ。あたしの説明にいちいち反応してきますわね。ああ、こういうやり取りもたまにはよろしいですわね。
なんといっても、あたしのダンジョンはボス部屋にたどり着くのが下僕しかおりませんもの。シードラゴンとの会話も飽きてきてしまいますわ。
そういう状況を打破するには、こういったやり取りは重要ですわね。異界にいた頃は、ラティナ様を含めた令嬢たちとよく交流をしておりましたもの。
こういった大勢とのやり取りができるというのは、実に楽しくてたまりませんわね。相手の顔も声も分かりませんが、反応があるというのはとても嬉しいものですわ。
「三階層の一番奥には、ダンジョンの設定をいじりまして仮のボスを配置しておりますわ。指定したモンスターをダンジョンのサブボスにするシステムですが、あたしが生きている限りは倒されてもダンジョンには影響しませんわ」
『ほうほう』
「その代わり、倒すと一定時間後にダンジョンから追い出されるようになっておりますの。何度でも挑めるボスという形になりますわ」
『おお、それはやりがいがありそうだ』
観客たちはいろいろと反応をしてくれますので、本当に楽しく喋れますわね。
「ですが、忘れてはならないのはここが探索者育成ダンジョンであるということですわ。そして、死んでもやり直しができるというのは、この横浜ダンジョンの大きな特徴。その感覚で他のダンジョンで行かれては困りますわ。他のダンジョンは死ねばそこで終わりなのですからね」
『あっ、そうだった』
『横浜ダンジョンは、その死に戻りのおかげで稼げるんだよね』
『探索者たちにとってはありがたい存在よな』
『至れり尽くせりとはまさにこのこと』
『セイレーン様、最高!』
大事なことですから、しっかりみなさんにはお伝えしておきませんとね。
あたしはまがりなりにも公爵令嬢。みなさまを導く存在でなければならないのですから。
ですので、このようにしっかりと釘を刺しておくのです。
「分かっていただけて、あたしは嬉しいですわね」
すました顔をして、咳払いを一度しておきます。ここからが本題ですから、気を引き締めませんと。
「それでは、ダンジョンの探索者育成空間の紹介に入りますわよ。とはいいまして、本日お見せできるのは、そのうちの一階層だけですけれど」
『一階層だけでも楽しみだな』
『モンスターって怖いってイメージだったけど、セイレーンさんのおかげでイメージ変わった』
『うんうん』
あらあら、それはちょっと困りましたわね。
ダンジョンの中は怖いものだと思っていただきませんと。戦いに来ましたら、遠慮なくぶっ倒しますのにね。
あたしは観客の感想に、なんとも複雑な気持ちを抱いてしまいましたわ。
さて、いよいよこれからがこの配信の本番。
あたしは、先程入口で捕まえた探索者たちの方へと視線を向ける。
「それでは、本日は運よく探索者の人と出会いましたので、彼らに体験をして頂きますわ」
さあ、待ちに待ったお披露目といきましょうか。
あたしは、ついつい笑みを浮かべてしまいましたわ。




