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ラミアプリンセスは配信者  作者: 未羊


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SCENE123 作戦完了

「い、一体何が起きたんだ……」


 私の目の前で、ガルムは暗黒の刃に貫かれて息絶えていた。

 最初こそ呆然としていたものの、私はその暗黒の刃に近付いてはっとした。


「これは……、瞬の魔法か」


 刃から感じ取った魔力に、私はすぐに分かってしまった。

 私の知る範囲でこの魔法を使えるのは瞬だけだし、そう考えて間違いないだろう。

 ただ、よく分からないのは、瞬の住んでいるダンジョンからこのシャボテンダンジョンまでは、直線距離にしても百キロメートル以上あるということだ。

 その距離を魔法が飛んで放たれるということは聞いたことがない。


「ははっ。まったく、瞬のやつはすごいやつだな……」


 あまりにも衝撃的な出来事に、私は笑うことしかできなかった。


「衣織さん!」


 配信をしていた色と、隠密で隠れていた下僕くんが同時に私に駆け寄ってくる。


「いやぁ、びっくりししましたよ。衣織さんがやられたんじゃないかって、ひやひやしてみてました」


「ああ、私はこの通り元気だ。やつの雷のせいでちょっとしびれてはいるがな」


 色が心配してくれるもんだから、私は力こぶを作って安心させていた。その私の姿を見て、色はほっと胸を撫で下ろしていたようだな。


「まさかこんな化け物が出てくるなんて。よく倒せましたね、衣織さん」


「いや、とどめを刺したのは私じゃない。しびれて動けなかったんだからな」


 下僕くんの目は節穴かな。私が動けなかったのは見ていたはずなんだが。

 まったく、こんなだからダンジョンマスターの下僕にされてしまうんだよ。ポンコツだぞ、下僕くん。


「そういえば、なんか妙な黒い光のようなものが見えましたね」


「ああ、どこからともなく魔法が飛んできたんだ。それがガルムを貫いてとどめを刺したんだ。まったく、どこの誰なんだろうかな、ふふふふ……」


 色があごを触りながら疑問を呈していたので、私は状況を説明しながらも、どことなくはぐらかしていた。

 だが、今はそういう状況じゃないな。


「さっ、早くこのガルムを抱えて地上に戻ろう。こんなモンスターが出てきたってことは、この奥はもっと危険な可能性がある。一刻も早く離脱するんだ」


「分かりました。それじゃ、俺たちが抱えて運びますね」


「ちょっと待って下さい。それって俺も手伝うってことですか?」


「そうするしかねえだろ。今ここにいるのは俺たち三人だけだぞ」


「わ、分かりましたようっ!」


 誰がどうやって運ぶかをめぐって、下僕くんは悲痛な叫び声をあげていた。この分だと、あんまり力はないような感じだな。

 一方で、色の方はしょっちゅうダンジョンに潜っては素材を持ち帰っている。だから、力仕事には慣れているんだ。その色でも、さすがにこのでかさを一人というのは無理だったというわけだ。


「それじゃ、地上に戻るまで配信を続けてくれ。こんなモンスターをぶちのめしたんだ。過去最高の取れ高になるだろうよ?」


「衣織さん。そういうことを言わないで下さいよ。下手な発言すると、アカウントをバンされてしまいますからね」


「まったく、探索者はグロ画像を生み出すというのに、発言には厳しいとは……。なんとも矛盾した運営だな」


 私の声かけに反論する色の主張を聞いて、私はついおかしくて笑ってしまっていた。


「それじゃ、さっさとダンジョンを出るぞ。他にもガルムがいるとも限らないからな」


「はい。それじゃさっさとここから出るぞ」


「分かりました」


 色がどこから出したか分からないシートの上にガルムの死体を乗せ、二人でがっちりとシートに固定する。それを色と下僕くんの二人で引っ張っていく。

 私はまだしびれが消えないが、戻る最中にモンスターに襲われる可能性があるので太刀を持って警戒にあたっている。

 これだけ大きな荷物だ。周囲から見ても目立つし、動きもかなり制限される。それゆえ、モンスターと遭遇したら戦う一択になるというわけだ。

 何度となく浅い階層のモンスターに襲撃されながらも、私の一撃でどうにか道を切り開き、地上まで戻ってきた。

 もう少しというところで、ダンジョン管理局の人と合流し、大きな荷物であるガルムを引き渡した。

 ちゃんと討伐できている証拠に、ダンジョン管理局の手に渡ったガルムは、何の問題もなくダンジョンの外へと運ばれて行った。ダンジョン内から外に出せるかどうかというのが、モンスターの生死を判断する一番の材料だからな。


「いやまぁ、今回はなかなかな大捕物だったな」


「まったくですよ。まさかギルド『パラダイス』との全面戦争をおっ始めるとは思ってもみなかったですからね」


「まあ、仕方ないさ。瞬のファンを危険な目に遭わせるわけにはいかないからな」


「衣織さんって、本当に行動基準がウィンクさんですね」


「うむ。なんといっても可愛い弟のようなやつだからな。姉貴分として守ってやらねばならんのだ。はっはっはっはっはっ!」


 無事にやることをやり遂げた私は、両手を腰に当てて大笑いをしていた。

 なんだ、色と下僕くん。なんでそんな顔をしている。


「まっ、こういうところが衣織さんらしいですけどね」


「こういう人が身近にいるウィンクさんが、なんとなくうらやましくなりますよ」


「まったく、お前たちときたら私をバカにしているのか?」


「んなわけないでしょうに。どういう風に受け取ったらそうなるんですか!」


 私がひと睨みしてやると、色のやつは大慌てで言い訳を言い放っていた。

 まったく、失敬なやつだ。


「よし、それじゃ、ダンジョン管理局の支所に向かうとしようか」


「そうですね」


「分かりましたよ」


 ダンジョンでの行動は終わったものの、これから管理局からの事情聴取がある。

 今回の作戦の締めとなる事情聴取だ。ちゃんと終わらせて気分よく帰るとしよう。

 私は二人を自分の車に乗せて、ダンジョン管理局へと向かったのだった。

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