SCENE116 作戦決行の日
さあ、いよいよ作戦の決行日だな。
その日の俺は、とても気分の悪い目覚めを迎えていた。
なんでも今日は、パラダイスというギルドの悪行を暴くという重大な一日だからだ。
俺は、現地でパラダイスの人たちと合流することになっている。
俺は高校生なので、車の免許とかはない。なので、目的地であるダンジョンの近くのホテルに前日にやって来て泊まっていた。費用はダンジョン管理局持ちなので助かるよ。
「よう、よく眠れたかな?」
「あっ、衣織さん、それと色さんも」
ホテルの一階にやってくると、ロビーで今回の作戦に同行するギルド『百鬼夜行』の衣織さんと色さんとばったり出会う。
せっかくなので、俺は二人と一緒に朝食を食べて今日の作戦について確認をする。
衣織さんはパラダイスの人たちを制圧する役割を、色さんは悪行を配信する役割を担っている。ただ、この配信を一般公開すると、作戦が相手に知られてしまう。なので、百鬼夜行の人たちだけが見れるように設定しておくらしい。
その配信を、ダンジョン管理局の人が一緒に見ることによって、パラダイスにとって言い訳のできない状況を作るのだそうだ。
二人の話では、副支部長の浮島さんと東京のダンジョン管理局の人が来ているらしい。なんで東京かっていうと、ギルド『パラダイス』が所属しているのが東京だからだ。
「下僕くん、ちゃんと例のものは持っているかしら」
「はい。ラティナさんの護石ですよね。肌身離さず持っていますよ。俺だってここで死ぬわけにはいきませんからね」
衣織さんから確認をされた俺は、しっかりとラティナさんからもらった護石を見せている。
全身岩のゴーレムなんだけど、あの可愛いラティナさんからもらった重要なものなんだ。俺は絶対に無くすわけいかないと思っている。だから、落とすなんてことはありえないんだ。
俺が気が付くと、ラティナさんからもらった護石をぎゅっと強く握りしめていた。
「分かった。よっぽど大事に思っているみたいだから、心配はしない。とにかく、お前がこの作戦の要なんだ。うまくパラダイスの連中を誘いだしてくれよ?」
「分かっています。そちらこそ、俺たちを見失わないで下さいよ」
「ああ、任せておけ」
しっかりと作戦を確認した俺たちは、朝食を食べ終えるとそれぞれの部屋に戻っていった。
お昼を過ぎた頃だった。
俺はシャボテンダンジョンに立ち、パラダイスの連中が来るのを待ちわびていた。
しばらくすると、駐車場にうるさい音を響かせながら車が入ってきた。いわゆる改造車ってやつだろうね。耳が痛くなる。
車のドアが開き、実にガラの悪い連中が降りてきた。こいつらがパラダイスの連中か。
「よう、待たせたな。今回、ダンジョン管理局の依頼で同行することになったって探索者はてめえか?」
「はい、その通りです」
がに股でズボンのポケットに手を突っ込みながら、にやついた顔で俺を見下ろしてくる。いや、見下してくるといった方が正解かな、これは。
とにかく、なんともいえないくらいに印象が悪い。だけど、俺はこいつらに従わなきゃいけない。作戦のためには我慢しないとな。
「けっ、このしけたダンジョンを攻略たぁ、まったく管理局もろくでもねえ依頼を出しやがるな」
「そうですね」
「でも、兄貴の腕前なら楽勝でしょうよ。とっととやっちまいましょう」
「おう、そうだな。そんじゃ、ガキ、先導頼むぜ」
「わ、分かりました」
睨みつけるような表情をしながら、おそらくリーダーと思われる男は俺に指示、いや命令を下してきた。
正直嫌な気分しかしないんだけど、今はとにかく我慢だ。
俺が先頭となって、シャボテンダンジョンへと向かっていく。
入口で手続きをして、ダンジョンへと入っていく。
このダンジョンがシャボテンダンジョンと呼ばれるのには理由がある。
ひとつは場所。もうひとつは出現するモンスターによる。
国民的RPGのモンスターのような感じのサボテンが、ダンジョンの中を徘徊しているんだ。とはいっても、一階層だけだけどね。
だけど、そのインパクトは絶大で、そのことからシャボテンダンジョンと名付けられたんだよね。
ちなみにこのサボテンだけど、その果肉は美味らしい。美容にもいいと女性には人気もあるとか。そのこともあって、このダンジョンは攻略されずに残っているんだとか。
かつては攻略されたというような情報もあったけど、ダンジョンが残っているんだから未踏破ってことでいいんだろうな。
「おい、ちんたら歩いてるんじゃねえぞ」
「せっかく俺たちが来てるんだ。ちゃんと接待しろや、このノロマ!」
考えごとをしながら進んでいると、俺の後ろから罵倒の声が飛んでくる。
こんな感じなら引き受けない方がよかったかなと思えてくるよ。だけど、この様子は閲覧限定の状態でずっと配信されている。
俺の直感スキルには、衣織さんと色さんの反応がずっとあるから間違いない。
とはいえ、こんな感じの悪い連中としばらく同行しているのかと思うと、胃に穴が開きそうだ。
ああ、早く終わってくれ。俺は本気で願ってしまう。
俺は苦行のようなこの罵倒に耐えながら、シャボテンダンジョンの中を奥へ奥へと向かっていった。




