SCENE112 特殊な立ち位置
しばらくして、配信を見ていた管理局の人たちがやって来た。
矢羽っていう人たち三人たちは、管理局の人たちに拘束されて、ダンジョンの外へと連れ出されて行っていた。
最後に残っていたのは、谷地さんと日下さんの二人だった。
「よかった。よく無事でしたね、ウィンクさん」
「いやぁ、バトラーとラティナさんのおかげですよ」
「ラティナさんの?」
「はい」
僕が説明に入ろうとするのだけど、谷地さんは僕の言葉を遮てきた。
「配信をしているのでしたら、ここで終わりにした方がいいです。パラダイスの悪行を知らしめることができたのであれば、それで十分でしょうからね」
「あ、分かりました。それではみなさん、また次回をお楽しみにしていて下さい」
『おつらみあ~』
視聴者さんのいつもの挨拶がちらりと見えたところで、僕は配信を終了した。
無事に配信が終わったことを確認して、谷地さんはほっとした表情を見せていた。
「まったく、申し訳ありませんでしたね。怖い思いをさせてしまって」
「いえ、谷地さんたちのせいじゃありませんよ。ここまでやって来たあの人たちが悪いんですから」
「ありがとうございます」
僕は谷地さんにお礼を言われてしまった。
「ギルド『パラダイス』のことは、しばらく前からいろいろと議題に上がっていたのです。探索者たちから素行の悪さを指摘する報告が相次いでいましてね」
「酷いものでは、他の探索者をおとりにしてダンジョン攻略をしているのではないかというものまでありました。事実だとすれば、ダンジョン管理法に抵触する内容です」
「ただ、ダンジョン内のことは配信でもしていない限りは証拠が残ることは稀ですから、私どもとしても処罰をすることができずにいたのですよね」
「そ、そんなにやばいギルドなんですか、パラダイスって」
谷地さんと日下さんの話を聞いて、僕は思わず青ざめてしまう。予想以上にパラダイスってギルドは酷いところだったようだ。あの三人も書類上では脱退できてよかったと思うなぁ。
「まったく、プリンセスを見て襲い掛かってくるやつらなど、万死に値しますぞ。虫けらなど、この我が徹底的に叩き潰してやりましょうぞ」
「ば、バトラー、頼りにしているからね」
「お任せ下さい。このバトラー、しっかりとプリンセスをお守りいたします」
僕が泣きつくように声をかけると、バトラーはしっかりと答えてくれていた。
「しかし、我もまだまだですな。あの程度の者に攻撃の隙を与えてしまうなど。ラティナ様の護石がなければ、危なかったですな」
「ああ、護石ってこれか。直前にラティナさんから渡してもらったこれだよね」
「そうでございます」
僕はワンピースのポケットに入れていた石を取り出している。ラティナさんの力のこもった茶色い石なんだけど、よく見ると少しひびが入っている。
「ああ、割れちゃってるね」
「はい。相手の攻撃に対してその威力の分だけ、持ち主の代わりに傷を負うという。それが、私の家、ロックウェル伯爵家に伝わる秘術で作られる護石というものなのです」
「なるほど。あの男の攻撃を受けても僕が無傷だったのは、この石の効果なんだね」
「はい、その通りです」
僕が確認するように話しかけると、ラティナさんはこくりと頷きながら答えていた。すごいな、ラティナさんの力。
「この力は、ロックウェル伯爵家の一族でしたら、どなたでも使えます。ただし、ゴーレムであるということが条件ですが」
「ラティナさんはゴーレムだから使えたってわけなんですね」
「はい。お役に立てて、本当に嬉しく思います」
ラティナさんはとても嬉しそうに笑っていた。本当に全身が岩だっていうのに、とても可愛く思えるから不思議だなぁ。
僕たちの様子を見ていて、谷地さんたちがどうにも話に入りづらそうにしている。
「あっ、ごめんなさい。谷地さんたち、どうぞ」
「はい、お話を再開させていただきます」
僕が話を振ると、谷地さんは咳払いをして再び話を始めた。
「パラダイスなのですが、今回の一件で調査のメスを入れることができると思います」
「そうですね。なにせ管理局の管理下にあるダンジョンで問題行動を起こしたのですから、ダンジョン管理法にある規定に沿って家宅捜索を行うことができます」
「ほう、そのようなものがあるのですか」
「はい。本来はダンジョン入口のことだけなのですが、このダンジョンは特殊で、全体が管理局の管轄に入っています。管理局内での問題行動ということで、ギルドにペナルティを科すことができると考えております」
どうやら、僕のダンジョンは他のダンジョンとは違う特殊な立ち位置にあるみたいだ。
つまり、ダンジョンでありながら、ダンジョン管理局の建物内という位置づけらしい。
僕も聞いたことはある。ダンジョン管理局内では暴力行為などが基本的禁止されているっていう法律だ。
この解釈から僕のダンジョンは全体がダンジョン管理局と同一視されるので、僕たちもモンスターでありながら、ダンジョン管理局の職員という立ち位置にもなるらしい。そのことを利用して、処罰を加えるとのことみたいだ。
あの人たち、本当に怖かったもんなぁ。
話を聞いた僕は、適切に処罰されてくれることをただ祈るだけだった。




