SCENE104 優しさと怪しさと
僕のダンジョンにやって来た視聴者さんたちは、同じ学校の同級生だったらしい。今は衣織お姉さんと同じで大学生なのだという。
今日ここにやって来たのは、僕のダンジョンに追加されたという採掘場を見てみようということらしい。ちなみに、三人ともドローンは持っているけれど、今日のことはオフレコにするみたいだ。
「いやぁ、抜け駆けしたことを知らせてもいいんだけど、なんか気が引けるんだよな」
「ですね。ウィンクちゃんの視聴者さんたちは仲がいいですから、変に自慢して雰囲気を壊したくないんですよ」
「そうそう。不思議と躊躇しちゃうのよね」
「そうなんですね。みなさん、思ったよりも協調性があるんですね」
なるほど、一人くらいはいそうな荒らしのような視聴者さんもまったく見たことないから、いろいろと不思議に思ってたんだよね。こうやってみんなが気をつけ合っているんだなぁ。
「まあ、プリンセスの持つ魅了の力の影響でしょうな」
「うわぁ、バトラー。それ言っちゃうの?」
僕が話を聞いて考え込んでいると、バトラーが思いっきり種族特性である魅了のことを口走っていた。
あまりにもあっさり話すものだから、僕はものすごく驚いちゃったよ。
「ああ、やっぱりそうなんですかね。ラミア系のモンスターって、テレビゲームとかでも魅了持ちってことで有名ですからね」
「ええ、そうですとも。ただ、プリンセスはご覧の通りお優しい方ですから、なんとなく気を遣わなくちゃくらいの感覚で済んでいるのでしょう。ラミア族が本気を出せば、相手を意のままに操るなんてこともできますからな」
「うへぇ、おっかねえな……」
「ウィンクちゃんならではって感じなのね」
バトラーの説明を聞いている視聴者さんたちは、怒るどころか納得していたよ。どうしてそういう反応になるのかなぁ。
こういうのをなんていうんだろ。訓練された視聴者っていうのかな?
僕にとっては不思議な世界そのものだよ。
「プリンセス、差し出がましいかもしれませんが、やはりこの光景は配信なさった方がよいかと思います」
「バトラー? みなさんが遠慮してるのに、僕たちがあえて配信するの?」
僕は思わず首を傾げてしまう。
「私もその方がよいかと思います。こちらのお三方から配信するような形ですと、おそらく他の方は自慢のように受け取ると思われます。ですが、ウィンク様が配信をなさることで、その懸念は小さくなると思われるのです」
「うーん……」
言いたいことは分かるのだけど、僕はいまいち納得できなかった。
「ラティナ様の仰る通りですぞ。プリンセスが配信をなさると、魅了が同時に発動しますからな。そうすることで、余計な心配を減らせるというものです」
「ああ、そういうことかぁ。確かに、それなら平和的かもね」
納得ができた僕は、三人に一応確認を取ってみる。そろいもそろって即答で許可をしてきてくれた。本当によく訓練されてる視聴者だよ。
そんなわけで、僕は配信を始めることにする。
「みなさん、こんにちは。ダンジョンマスターのウィンクです」
『こんらみあ~』
配信を始めると、やっぱりすぐに挨拶が飛んでくる。
始まると通知がいくっていうのは本当だね。だって、やってきてる三人の携帯電話から、通知音が響き渡ったんだもん。
だけど、配信中なのでそれは気にしないことにする。
「本日は、なんと! 普段僕の配信を見て下さっている視聴者さんが、三名もダンジョンを訪問してくれました。ついに普通にやってくる探索者が現れたんですよ。こんなに嬉しいことはないですよ」
『おおお、おめおめ!』
『まさかついに探索者が普通にくるとは・・・』
普通に祝福されてるのはびっくりだなぁ。
そこで、僕は問題の視聴者さんたちへとドローンを向けさせる。
その時の視聴者さんたちの反応は、意外だった。
『げげっ、ギルド「パラダイス」の連中じゃないか』
『パラダイスの連中もウィンクちゃんの配信見てるんだな、意外だな』
「うん? パラダイスってそんな反応をしちゃうようなギルドなんですか?」
視聴者さんたちの反応が、とても気になってしまう。
ちらりと三人に視線を向けると、どうにも様子がおかしい。ということは、三人の所属ギルドっていうのはあんまり評判がよろしくないってことなんだね。
『まあ、狡い連中さ』
『全員が全員じゃないけど、ギルマスあたりは特に評判がよろしくない』
なんかめちゃくちゃ言われてるね。三人もさっきから様子がおかしいし。とするなら、それは事実なんだろうな。
「なるほどなるほど……。それは気になるところですが、今回は大切なお客様ですので、丁重に対応します。バトラーもいますし、変なことはできないでしょう」
『まあ、そうやね』
『同じウィンクちゃんを見守る者として、お前たちの良心を信じてるぞ』
視聴者さんたちの反応に、三人とも完全に黙っちゃったよ。
「とりあえず、新しく追加した採掘場に入りたいとのことでしたね。それでは参りましょうか」
「は、はい」
いろいろ言われたせいか、さっきまでの元気がすっかりなくなっている。みんな気にしているのかもしれないね。
なんともいえない雰囲気にはなっちゃったけど、僕たちはボス部屋のすぐ近くの採掘場へとやってくる。
さて、どのくらい発掘できるんだろうな。
「お三方はとにかく気にしないで採掘して下さい。僕は信じていますから」
「う、ウィンクちゃん……」
僕がダンジョンポイントで出したピッケルを渡すと、どことなく泣きそうな顔をしながら受け取っていた。
こうして、採掘光景の初配信が、波乱の中始まったのだった。




