SCENE103 視聴者さんがやって来た
僕だダンジョン内に迷路を作る計画を立てて二日が経った。
「おやっ?」
僕はちょっとダンジョンに違和感を感じた。
「あら、どなたかいらっしゃったのですかね」
僕が感じたと同じように、ラティナさんも何かを感じたようだ。
これってモンスター特性なのかな。
「プリンセス、我が確認をして参ります」
「うん、バトラー、お願い」
違和感の正体を探るために、バトラーがダンジョンの入口に向かっていく。
それからしばらくすると、なにやら話し声が聞こえてくる。
「いやぁ、実物にお会いできるとは思ってもみませんでした」
「配信で見るのとは、風格が違いますね」
「蛇の姿だから怖いかと思ったけれど、とても紳士で安心しました」
話の内容からすると、どうやら僕の配信を見てくれている視聴者さんたちみたいだ。
いよいよ僕のダンジョンに、衣織お姉さん以外の視聴者である探索者がやってきてくれたんだ。
「到着いたしましたぞ。くれぐれもプリンセスたちに失礼のないようにお願いしますぞ」
「はい、心得ております」
ボス部屋の入口に、男性二人と女性一人の姿が見える。服装を見る限り、どうも僕が用意した採掘場狙いっぽい。
「ただいま戻りましたぞ、プリンセス。どうやら、プリンセスの配信を見て下さっている視聴者たちのようでございます」
「みたいだね。話が少し聞こえたよ」
バトラーが戻ってきて報告をするので、少し聞こえていたことを話す。
「おおっ!」
「ウィンクちゃんの実物ですね」
「やだっ、本当に可愛いわ」
好意的な視聴者さんたちのようだ。僕を見るなり、とても興奮している。
「いやはや、配信をいつも楽しみにしております」
「モンスターとこのように交流ができるとは思ってもみませんでしたよ」
「ははは、ありがとう……ございます」
素直な気持ちをぶつけられて、僕はちょっと反応に困っている。
「ああ、実物を見ているとなんだか創作意欲が刺激されるわ。今着ている服装も可愛いんだけど、なんかこう、もっと魅力を引き立たせる服装があると思うのよね」
「この服、よくないですか?」
僕は女性の探索者の言葉を聞いて、思わず尋ねてしまう。
「ううん、そんなことはないわよ」
「よかった。今着ている服、僕の妹が作ってくれたものなので。聞いたらきっと喜びますよ」
「まあ、妹さんがいたのね。これは……才能があるわ。でも、今十五歳の子の妹さんだから、ダンジョンに入れないのね……。ああ、残念だわ、いろいろお話しできそうなのに」
女性の探索者さんが、ものすごく大きなため息をついていた。
「だ、大丈夫ですよ。衣織お姉さんに声をかけていただいた上で先程のお話をすれば、会わせてくれますよ」
「鬼百合の衣織かぁ……。怖くて苦手なのよね」
「そ、そうですか。僕たちに対してちょっと熱くなるくらいで、話せば分かってくれる人ですから、安心して下さい」
「ウィンクちゃんの言うことだから、信じてみるわ」
僕が必死に説得すると、女性の探索者さんは分かってくれたみたいだ。衣織お姉さん、本当に過保護だからな。僕たちも迷惑に感じるくらいだもん。
話せば分かるはずだから、きっと大丈夫、うん。
「それで、こっちの子がラティナちゃんね。本当に全身岩なのね」
「は、初めまして。ラティナ・ロックウェルと申します」
女性の探索者がラティナさんに顔を向けて、その姿をじっと見つめている。
あまりにじろじろと見られているので、ラティナさんはちょっと怖がりながらも挨拶をしている。そんな状態なのに、本当に動きがきれいだよね。
「きれいなカーテシーね。いいところのお嬢様って感じがするわ」
「はい。私の家は伯爵家ですので、幼少の頃からマナーなどを叩き込まれて育ってきました。お父様やお母様からはどこに出しても恥ずかしくないと言われております」
「動きがとてもきれいだし、言葉遣いも丁寧。確かに、その感想は分かるわ」
女性の探索者も納得の様子だ。
「おーい、島谷」
「ずるいぞ、島谷さん。ウィンクさんたちと一人で話をしないで下さいよ」
「バトラーさんと話をしすぎているからでしょう。粕谷も保谷も!」
女性の探索者は島谷さんっていうのか。というか、三人とも『谷』の字がついてる名字じゃないか。そういうことってあるんだ。
それにしても、初めての視聴者さんの訪問だけど、ずいぶんと賑やかになっちゃってるなぁ。様子を見ている限り、幼馴染みっぽい感じがするんだよね。でなきゃ、こんなところまでこうやって示し合わせてやってこれないと思うんだ。
「はっはっはっ。まあ、大声を出すのはそのくらいにして、お茶にでもしませんか」
「そうですね。それでは、ごちそうになります、バトラーさん」
「せっかく来られたのですから、ゆっくりなさっていって下さい」
すっかりもてなす準備ができてる。
バトラーって、さっきまで粕谷さんと保谷さんと話してなかったっけ?
あまりにも早い動きに、僕もびっくりだよ。
「ささっ、プリンセスもどうぞ」
「う、うん。それじゃ、ゆっくりお話をしましょうか」
「はい、ぜひともよろしくお願いします」
そんなわけで、僕たちは配信を見てくれている視聴者さんと、直に会って初のお茶会となったのだった。
うう、なんだか緊張してきたよ。




