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VirtualGT(改)  作者: ラドロ
シーズン1
8/11

第8話 シーズンスタート! 開幕戦 岡山・予選

岡山、富士での公式練習から1ヶ月後。再びVR世界に訪れた俺たちは岡山のサーキットに降り立った。今回は練習ではなく本番。その記念すべき初戦は公式練習の舞台にもなった岡山国際サーキット。最初は10分ずつ予選Q1、クールタイム、予選Q2とスケジュールが組み込まれておりQ2のあとVR世界から15分離脱して休憩した後決勝が行われる。正宏によるとQ1でタイムの早い順に8台のみがQ2に進出できQ2で1位、ポールポジションを獲得するとドライバーズポイントを1ポイント獲得できる、とのこと。

予選の知識をおさらいすると俺は体を後ろに向け、ガレージの方へ目を向けた。全プレイヤーのVR空間へのログインの5分後にはじまるというQ1に向け大祐はすでにマシンに乗り込み、正宏は公式練習のときに操作しまくった壁についたパネルを操作しマシンの状態を確認している。俺の出番はQ2からだがすでに緊張でこわばった顔を俺は上へ向けた。



『さあ。シグナルがグリーンになりました!予選Q1開始です』

実況の声にぼうっとしていた意識は引き戻され宙に向けていた視線を私ーー高田望美ーーはマシンに戻す。数少ない女性ドライバーのみのチーム、クイーンはZを疾駆させる。公式練習ではあまり上位に食い込むことはできなかったがどちらもある程度の速さは保証できたのであとは腕前次第だ、とチームメイトの高島由衣は以前言ってくれた。

Q1は私の担当だが始まってから3分したところで走り出す予定なのでレーシングスーツに身を包みヘルメットを被っているがまだマシンには乗らなくていい。他チームの動向をみたい。といっても結局は他チームがアタックを始める前に乗り込むのだろうが。真っ先に出たのはここでの公式練習で2番手のタイムを叩き出したKONだ。はっきり言って少なくとも予選では勝てる見込みはない。けど

(同じ日産勢として負けられない…!)

そう気合を入れるとガレージへと足を運んだ。



『さあ、予選が残り3分を切りました。全マシン本気でサーキットを駆け抜けます!。現在トップはVRレーシングで1分22秒1!それにコンマ3遅れてモジューロ!』

そんな実況の声をよそに俺はパネルの映し出す映像を食い入るように見つめている。この予選で8番手より上に入らねば俺の出番はないし、決勝でも表彰台の希望が薄くなる。ここで良いタイムが欲しいが…と思っていると

『203番のKONGT-Rが非常に速いスピードで来ている!岡田大祐がセクター2で全体ベストを叩き出し、いま最終コーナー!ストレートを通過してどうだ!…1分23秒5!4番手のタイムです!』

そしてそんなこんなであっという間に3分が経過した。俺たちKONは

「4番手だね。まあまあいいよ」

俺ーーおそらく大祐もーーはほっと息をつく。すると終了から先程まで静かだった実況が再び声を上げる

『残念ながらQ1敗退してしまった者たちはこの順位でスタートになります。まず9番手がブルーホークLC500、10番手がファースタースープラ、11番手が楽天LC500です。12番手にザ・ファウストZが続き、13番手はチーム無双、14番手にマザー空力、15番手にイン・ウィダーとNSX-typeSがワースト3を占めるという結果になりました』


そして10分間の休憩。特に何もなく過ぎ去るだろうと思ったが甘かった。来客があったのだ。

「…あなた達がKONですか?」

びっくりして振り向くとそこに立っていたのは女性だ。レーシングスーツに身を包んでいる。俺はQ2に向けて何やら話し込んでいる大祐に代わって受け答えする。

「そうですが…そちらは?」

「私、クイーンでQ1を担当した高田望美です」

「クイーンって5番手のタイムだった?」

「ええ、そうです」

彼女は微笑む。

「…っそうですか。ちなみに何のご要件でしょうか…あ、大祐がなんかしましたか?」

してねえ!と叫び声が聞こえたような気もするがスルーする。

「いえいえ。同じ日産勢として挨拶に来たんですよ。Q1突破おめでとう。そして、Q2では負けませんよ、ってね」

普通なら皮肉と挑発としか聞こえない言葉。しかし同じ日産勢というせいか本当に祝福しているように聞こえる。おもわず笑みがこぼれた俺はそっくりそのままお返しすることにした。

「そっちこそおめでとう。けどQ1の二の舞いをふませてやるよ」

「あら、楽しみだわ。ぜひともやってもらおうじゃないの。…ああ、もう時間ね。それじゃ」

再びシグナルがグリーンになり、Q2が開始されるのは彼女が去ってから5分経ったときのことだった。



(さて…どこまで行けるかしらね…)

そう思いながら私は画面を見守る。Q2の残り時間はすでに残り2分を切っている。現在はタキオンNSXがトップで私達は4番手のタイムのままで変わらない。ちなみにKONが2番手で3番手はNTTLC500だ。そう思っていると緋色のZが最終コーナーに差し掛かる。由衣の運転する、クイーンだ。メインストレートを通過するのを無言で見守る。タイムは…

『1分22秒4!自己ベストは更新しましたが順位は変わりません!…そしていまチェッカー!これで最後のアタックラップとなります。KONGT-Rが今、最終コーナーを立ち上がる!タイムが…1分22秒6!こちらも2番手のままです!もう変動はないか?…あ!タキオンNSXがピットに入りました!最後のアタックラップは行いませんでした!余裕が伺えます!そして?7番手のタイムだったアミューズメントスープラが全体ベストで来ている!!カーナンバー315番!アミューズメントGRスープラ、田中厚志が今、コントロールラインを通過。1分21秒5!タキオンNSXが公式練習で叩き出したコースレコードを塗り替え、初ポールを獲得しました!VGT初のポールポジションはトヨタGRスープラが奪いました!』

悔しさに顔がゆがんだ。


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