4代目:現地人
普通の一般市民でいいそうだ。自衛隊やヤクザでは困る。一般市民が殺されると問題になる。自衛隊なら居住でなく占拠になる。
何代か前の祖先が魚釣島て鰹節工場をしていたので、俺に白羽の矢が立った。先に3人が死んだそうだが別にかまわない。
国益とかは知らないが、南海の無人島に月々20万円の報酬と必要なモノは全部用意するとの条件で承諾した。
船着き場に所属不明の巡視船が接岸した。かなりの武装をしているから、中国船籍もおいそれとは近寄れない。
多量の物資が降ろされた。冷凍食品にフリーズドライ食品、俺一人なら3年分くらいは楽にある。
娯楽はネットが繋がっているから問題ない。
上陸して宿舎に入った。巡視船はサッサと帰ってしまったので俺一人になった。
まずはエアコンをフルパワーにした。外は40度近くあるが家の中は25度と快適である。
まずは風呂に入った。次に湯上がりのコーヒーをネルドリップで入れた。キリマンジャロブレンドである。美味い豆だ。さらに淹れる道具が良くて綺麗な泡がモッコリして香り高い。
俺は酒が苦手だ。飲めない訳ではないが無理して飲む必要も無い。
次にパソコンのスイッチを入れる。最新機種なので起動が恐ろしく早い。映画もドラマも山程あるが、世間と隔絶されるのが嫌なのでNHKプラスで普通の総合テレビにする。
ところで近頃のゼロエネルギー住宅は凄い。窓を閉め切っていれば外界と隔絶される。物音一つ聞こえない。太陽光発電と蓄電池で電気代の心配が要らない。もっとも十年もすれば機器が壊れるだろうが、そんなの知らない。まるで宇宙船みたいだ。
異世界に転移しても快適に暮らせる。ただし水の供給は必要だ。そのうち合併浄化槽の水の再利用や雨水利用のゼロ資源住宅になるかもしれない。
10日も経つと暇になる。そろそろ島の探索に行きたくなった。やはり無人島の定番の狩りや畑をしなくてはならない。
恐恐と外に出ると割と涼しい。考えて見ると日本の灼熱地獄より遥かに環境が良い。隔絶住宅に留まらすに外に出てみるのも素晴らしい。
もっとも先の3人の死因は聞かされていない。マラリアとかの病気や中国人も怖い。
なんせ国際紛争の真っ只中だから油断は命取りになる。
重症の熱帯熱マラリアを媒介するコガタハマダラカは魚釣島では確認されていないが、いないとは断言出来ない。蚊に刺されるのは極力避けねばならない。
また蝿も用心しないといけない。疫病とかを介在する。赤痢、チフス、特に寄生虫が怖い。
普通、無人島に流されると食料や水の問題がある。水は地下水を組み上げ浄化しているし、飲水は定期的にサーバーで運ばれる事になっている。
つまり、家から一歩も出なければ暮らしていける。
だが、それでは話にならない。一応、建前は無人島でサバイバル生活になっているからだ。それと祖先の残した鰹節工場の再建も視野に入れねばなるまい。200海里の国際紛争の為だと揶揄される訳にはいかない。
家の周囲の敷地は約60メートル角に仕切られている。1000坪くらいの綺麗に整地された敷地の周囲は三メートル位のネットフェンスに囲われている。
居住前は(丸秘団体)によって綺麗に草刈りしてあったが2週間経ったので牧草みたいなのが生えてきた。
なんか物欲しそうな山羊が一匹、こっちを見てるのでネットフェンスの扉を開けると入って来た。
一目で判ったが酷く飢えていた。ガツガツと牧草を食い、さらに飼い葉桶の水をガブ飲みする。名前は山羊1号と名付けた。そのままで分かりやすい。
話は跳ぶが一ヶ月後、山羊1号は丸々と太った。美味そうなので食べる事にした。愛情とかは感じない。それよりも食欲が優先する。
後ろ脚を吊って宙吊りして、喉を切ると頸動脈から鮮血が噴き出る。心臓は動いているが血を絞り出すためにドクドク動いているだけだ。
内臓は寄生虫の心配が有るので捨てる。レバーは美味だそうだが迷って冷凍しとく。
野生の畜肉は普通に固い。火を通すと余計に固くなるから薄切りにする。あるいはシッカリ煮込む。