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似姿の心配論

チヒロ「なんか……寂しいな」


コウ「チヒロさん……バグってませんか?」


チヒロ「バグってないよ。ただ……ちょっと寂しいだけ」


 チヒロはアヤナのことが好きで、アヤナとずっと一緒にいたかった。そうしてチヒロの心は、ゲームのNPCから逸脱した。しかし、そうすることでチヒロの恋が実ればアヤナはこの世界の外で死に、この世界からも消えてしまうだろうと気づいてしまったのだ。心だけがNPCを逸脱したチヒロは、アヤナを外に帰すために力だけが逸脱したコウに協力したのだ。


コウ「これでよかったんですよ。僕たちは仲間を失うために、あそこにいたんですから。それに、チヒロさんはアヤナさんと最後まで一緒にいられたじゃないですか。しかも……何回でしたっけ」


 コウはやっぱり何も分かってないな。結局ただのナビゲーターなんだ。残念な答えに、愛想笑いして答える。


チヒロ「もう覚えてないよ。アヤナは何度でも私のことを忘れるし…」


コウ「もうそんなこともないでしょう」


チヒロ「そうだけどさ……」


コウ「反省会、しますか?」


 チヒロは少し笑って「そうだね」と頷く。そしてチヒロは、悪戯っぽくコウの痛いところを突いた。


チヒロ「そういえばコウくん、ミスったよね」


コウ「何のことですか?」


チヒロ「アヤナがバグったおかげでハッピーエンドにつながらなかったし」


 ハッピーエンドを作れなかったから、コウはあの早朝のシーンを作ってゲームを終わらせたのだ。それはチヒロにだってわかる。


コウ「ええと……」


 小声でコウが言ったのを、チヒロは聞き逃さなかった。


コウ「それはアヤナさんが居続けたかったから……」


コウ「いや、そこは突っ込まないでください」


 そのコウの言葉に、チヒロは広い心で成功を祝ってあげることにした。しかし、成功を祝うより前にコウに聞いておかなければ。チヒロはそう思った。


チヒロ「まあやっと無事出られたからいっか。ところでさ、心配じゃない?」


コウ「何がですか?」


 コウが聞く。チヒロはコウに少し心配そうな顔をして言った。


チヒロ「アヤナはちゃんとやっていけるかな……って。ずっと戻らなかったのに……それに、外ではかなり経ってるんでしょ?」


コウ「まあそうですが、意識があるということは大丈夫ということです。それに……」


 そこでチヒロが被せるようにして言う。


チヒロ「心は?心は大丈夫なの?」


コウ「大丈夫ですよ。選択を終えたアヤナさんのことですから、きっと朝日が待つ現実に帰っていけるでしょう。明日が待っている現実で、頑張っていけると思いますよ」


 コウの説明に、チヒロは納得したようだった。


チヒロ「そうだね。コウくん、ありがとう」


 チヒロはしわくちゃになった講評用紙を、アヤナがこの世界にいた証を拾う。コウとチヒロは上手……ではなく西の方角へと去っていく。あとには星明かりに照らされ、コバルトブルーの中に沈む草原と玉虫だけが輝いていた。

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