第三話『下宿先の様子』
前回のあらすじ
外観分析に引き続き、店の中身をお客様としての視点から分析し始める銀次。従業員の純粋な白髪に嫉妬しながらも、店の全貌を理解する事に成功した。
今回は、銀次がこれから住まわせてもらう部屋を整理していくお話である。
という事で、俺は白髪の店員の指示通り表口から外に出て、裏に回る。するとすぐそこにドアがあったので、そこで店長が来るまで待つ。しばらくしない間に、店長と思しき方が現れる。少々背中が曲がって入るがベスト姿がピシッと決まっている、優しそうな顔をした御爺さんだった。
「こんにちは、あなたが店長であり、家主様である白風 徹様でいらっしゃいますか?」
「あぁ、そうだよ。よく来たねぇ。」
「初めまして、俺は灰根 銀次と申します。これから、お世話になります。」
荷物を横において、徹さんにお辞儀をする。
「いやぁ、ご丁寧にどうもぉ。ささ、上がって上がって。」
徹さんは、気さくで見たまんま優しい方だった。安心した。
「ありがとうございます、お邪魔します。」
俺は再び重い荷物を持ち、家の中に上がり込む。
「君は灰根山の伯鷹君の息子さんだよね?」
「はい、そうです。自慢の親父です!」
俺は、胸を張る。その様子を見て、徹さんはニコニコと微笑む。
「確かに、あれほどの紅茶の腕がある人はなかなかいないと思うよ、かくなる私も、伯鷹君にお茶の淹れ方を教えてもらったことがあってねぇ、カフェテリアに転向する時もだいぶ助かったよぉ。」
確かに、コーヒーが大半を占めていたメニューの中にも、種類は多いとは言えないがいくつか紅茶があった。あれを俺の親父が教えたと考えると、更に俺の親父が誇らしく感じるというものだ。
「カフェテリアに転向ですか?」
「そう、元々ここはカフェテリアじゃないんだぁ。」
「コーヒーの多さからして、元は喫茶店ですか?」
「そう!よくわかったねぇ!観察力があるよね君、いい才能だよぉ!」
「あ、ありがとうございます…」
いきなり俺のの事を褒められて、照れてしまう。
「おっと、立ち話も疲れるよね。部屋を案内するから、荷物の整理しよっか!」
「はい、これからお世話になります。」
「いえいえぇ、じゃあ僕についてきてぇ。」
そう言って、徹さんは廊下と二回に続く階段を歩く。俺はその徹さんについていった。
徹さんに案内された部屋は、綺麗に掃除された空き部屋で、今は誰も使ってないらしい。その割には、ベッドやら机やらタンスやらいろいろ整っている。元々誰か使っていたという雰囲気がするが、まあ、使わせてもらうのだからそんなことは気にしないでおこう。
という事で、荷物の整理をしよう。部屋を案内されたとき、
「荷物の整理が終わったら、君が使う部屋の二つ右隣にある僕の部屋のドアをノックしてね、あと、トイレは下の階の玄関のすぐ近くにあるから、そこを使ってねぇ。」
と言って、徹さんは二つ右隣の部屋に入っていった。だから、さっさと終わらせて徹さんに報告しに行こう。そう考えて、俺は荷物の入ったバッグとスーツケースを開く。中には私服や制服等の衣類、洗面用具、DVDモニター、古いアニメのDVD、携帯ラジオ、教科書や筆記用具、シャベル、茶葉の種子が入っている。タンスの中に入れる必要のあるものや、DVD、教科書、筆記用具、茶葉の種子等は整理をして定位置を決める必要があるが、それ以外は置くだけなので、この分ならそこまで時間をかけずとも終わるだろう。
そしてその予想通り、三十分もかからずに準備を終わらせることができた。パソコンやテレビゲームとかの面倒くさい電子機器とかがあればもうちょっと時間が掛かったのだろうが、生憎そういった機械は、そもそも持ち合わせていないのだ。まあ、早く終わるに越した事は無いのでいいのだけど…時代に乗れていない感は否めない…。まあそもそも、山の中の田舎で育っている時点で時代遅れは当然だ。気にしないことにしよう。
俺は、バッグとスーツケースを部屋の邪魔にならないところに置いて、廊下に出る。営業時間だからか、食器を洗う音や、フライパンで何かを焼いている音がする。が、それだけである。奥の部屋には徹さんがいるのだろうが、それ以外に誰か部屋にいるような気配が全くしない。部屋の数からして二、三人暮らしなのだろうが、徹さんの孫や子が、廊下の通る部屋にいる気配がない。まあ、今日は休日だ。どこかに出かけているのだろう。そう考えて、俺は静かな廊下を通って二つ右隣の部屋のドアに向かう。
徹さんの部屋のドアをノックすると、徹さんは瞬く間に部屋からドアから顔をのぞかせる。
「あれ?早かったねぇ!何時間かかかると思ったのに。」
「何故、何時間かかかると?」
「いやぁ、今どきの子はゲームだのパソコンだのの設定で忙しいのかなぁとね。」
「生憎、そういう類の物は持ち合わせていないので…」
「え、そうなの!?」
なんか、今どき有り得ない!みたいな顔されてしまった。そんな、俺より何十歳も年上の人に驚かれるほどなのか!?少し、時代の壁を感じてしまった。それも、俺よりも時代が遅れてそうな年の御爺さんに。人は見かけによらない…というより、人は年によらないというべきなのだろう。現に、俺よりも徹さんの方が時代の先を行っているようだしな。つまり、俺が進んでなさすぎなだけである。いろいろ買い揃えようかと考えたこの瞬間であった。
頑張れ銀次、流行に乗ることも庶民として、営業者としてかなり重要だよ。(by伯鷹(銀次の父))
次回予告、
次回は、下宿先であり、これからの勤務先である白猫カフェテリアで働く準備をしていくぞ!白猫カフェテリアは料理人が結構苦労する場所らしいが、ここのホール担当はどうなのだろう?
次回、第四話『都会で初めての勤務準備』
次回も見てくださいね。




