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古流武術異世界戦記  作者: タキケン
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サイオニック

61話


 しかし、思っていた通りの険しい山だ。優司達一行は頂上にある竜族の里を目指して山を登り続けている。山に入ったばかりの時は多種多様な生物に襲われた。積荷を狙う盗賊たちやギガース、ヒュドラといった魔物や怪物たちである。一番危険だったのはコカトライスであった。

 コカトライスは大きいニワトリの様な外見であったので、一見おとなしそうな感じがしたが、ダグザの顔が一瞬で強張り、吐き出す石化ブレスに注意するよう叫んでいた。その声にハヤタがいち早く反応して中和の法術を発動させていたが、恐らくハヤタが居なければ誰かが犠牲になっていたであろう状況であった。それほどハヤタの詠唱は速く、的確なものであった。

 山を登るにつれ、草木が生えていない岩場が多くなってきたときには襲ってくる生物は皆無となった。しかしながら、道などは無く、登ることが非常に厳しい状況となっていた。


「もうひと踏ん張りですじゃ!今日はこの辺りで野宿をしましょうぞ!」


「そうしよう!みんな疲れているだろうから!」


 ダグザの申し出に優司が承諾した。すると各人が素早く休息の準備を始めた。やはり、みんな疲れていた様子である。

 食事を終え、全員が車座になって向かい合う状況となっていたとき、優司がハヤタへ話し掛けた。


「しかし、ハヤタの詠唱は速いな!コカトライスとの戦闘のとき、ハヤタが居なかったら危なかったと思うよ!」


「そうですじゃな!大したものですじゃよ!よくそこまで鍛え上げたものですじゃ!」


 ダグザも優司同様ハヤタの魔法に関心している。そして、魔法使いであるルリとモンチが憧れる様な目でハヤタを見ている。


「何か特殊な訓練をしているのですか?詠唱を速くするために?」


 ルリが興味津々といった感じでハヤタに質問をした。


「いや、特には無い・・・。強いて言えば何度も繰り返し練習することだ・・・。それ以外にはない・・・」


 ハヤタは口数少なくルリの質問に答えた。しばらく沈黙したのち、珍しく言葉を続けた。


「詠唱は省略することはできないし間違えてもいけない。色々と試してはみたが、この条件は絶対の様だ。だから確実に素早く唱えるしかない。だから同じことを何度も繰り返して慣れるしかない」


 するとカイが口を挟んだ。


「それって剣術のときに優司が言っていることと同じだね!基本を何度も繰り返して慣れることが重要だって!」


「その通りだ!魔法も剣術も同じだと思う!」


 ハヤタはカイの言葉に同調した。


「でも、色々と試したって言ってたけど、基本以外のこともやってみたんでしょう?」


 モンチがハヤタが試したことに興味を示した。


「あぁ、私が目指すところはもっと先にある。できるかどうかは解らないが、追及を止めるつもりはない」


 ハヤタの言葉に優司が聞いた。


「追及って!?」


 するとダグザが代わりに答えた。


「無詠唱・・・。サイオニックですじゃな!」


「サイオニック?」


 優司が聞き返した。すると今度はレイナが答えた。


「魔法使いの最高峰、すべての魔法を無詠唱で行う者のことです。ハヤタはサイオニックを目指しているのです」


「簡単に言うと、サイオニックとは全ての属性の神通力が使える者のことですじゃ!まぁ、伝説ですがな・・・」

「ワシの長き生の中でも、一度もお目にかかったことは無い存在ですじゃよ!」


 ダグザが話を引き取って言った。しかしながら、ハヤタがダグザの話を否定するかのように話し始めた。


「確かに伝説かもしれません。しかし、同じ伝説であるマスラオが存在する以上、サイオニックも存在するかもしれません!であるなら、私も目指してみようと思っております」


「マスラオ!?伝説のマスラオは実際に居るんだ!?」


 優司が少し驚いて聞いてきた。それにカイが答えた。


「優司のことでしょ!」


「へ・・・、俺!?」


 優司が驚いているとハヤタが話し始めた。


「優司殿は間違いなくマスラオです。ここまでマスラオの定義に当てはまる人は居ません」

「あらゆる武器に精通し、無手での戦闘を熟す。さらに打撃も組技も出来るというのはマスラオとしか言いようがありません」


「・・・そうなんだ・・・、俺にとっては普通のことなんだけど・・・」


 優司がそう思っているとダグザが話し始めた。


「確かにそうですじゃがのぅ・・・、優司殿は異世界から来たお方じゃから・・・、こちらの世界の定義には当てはまらんのかもしれんじゃぞ・・・」


「そうかもしれません。ですが、基本的な道理はどちらの世界でも一緒だと思います。そうでなければ異世界で存在できること自体が不可能になると思いますので・・・」


 ハヤタが珍しく熱く語っている。


「確かに、な・・・。元の世界でもこちらの世界でも普通に呼吸はするし水も飲む。そういった基本的な道理が一緒ということは全てが同じなのかもしれないな・・・!」


 優司がそう話した。するとカイが優司に聞いた。


「どういうこと?」


「う~ん、例えば今いる世界と俺の居た元の世界は部屋が違うだけって感じかな・・・。同じ家の中にあるけど、部屋が違っていて住人が違うっていう様な・・・」

「部屋を利用する住人が違うから部屋の内装や家具の配置や種類が違うっていう様な・・・」

「まぁ、よくは解らないけど・・・」


 優司は考えながら話した。


「何はともあれ、高みを目指すのは良いことだ!明日も早いし、この辺で休もう!」


 優司の提案に全員が頷き、各々休み始めた。そんな中、優司は魔法に思いをはせて眠りについた。


「・・・魔法が使える様になってから元の世界に戻りたいなぁ・・・」


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