表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古流武術異世界戦記  作者: タキケン
6/86

剣術の稽古

5話


家から出てみると庭先でカイが木剣を振っていた。


「最近毎日来るなぁ!?剣術の稽古は楽しいか?」


俺は待っていたカイに話しかけた。

カイはレプラコーンという種族で身長120センチメートルぐらいの小さな亜人族だ。見た目も小学生ぐらいにしか見えない。実際の年齢は19歳というから驚きである。

カイはレプラコーン族の戦士ということだ。剣と魔法の世界だけあって、戦士の職業もやはりある。

しかしながら、戦士系は魔法と違い系統などはほとんど皆無のようだ。元の世界の様に何々流という流派などはまったく無いらしい。

こちらの戦いは身体能力オンリーの戦い方だ。種族の中で戦士をタイプ別に分けて分類するそうで、その分類も非常に単純だ。防御型、攻撃型、速攻型、狙撃型の4タイプとなるらしい。

防御型は盾を使い、攻撃型は威力の強い武器を使用、速攻型は速さを重視、狙撃型は飛び道具を使う戦士だそうだ。


「・・・そのまんまやないか~~いっ!!・・・」


とツッコミたくなった。


カイが型を見てくれと頼んできたので、確認してみた。


「ふむ、型の順序は覚えてきたみたいだなぁ。まあ、一か月ぐらいでこのぐらい出来れば上出来だよ。」


カイは照れくさそうに笑っていた。

初めてカイと出会ったとき、俺が元の世界で剣術をやっていたと話をすると、非常に興味を持って手合わせをお願いしてきた。木剣であればとの条件で申し出を受けた。

カイは見るからに速攻型、レプラコーンは体が小さい分、素早く動けることが所作で分った。素早さの身体能力では間違いなく勝てる訳がない。こういう相手には『後の先』で対処するのがセオリーである。

木ノ葉流武闘術、後の先の極意『空蝉』。相手に自分を打たせ、その攻撃を寸前で躱して相手を攻撃する技である。

剣術に『残心』という言葉がある。意味は心が途切れないということ。常に注意を払っている状態を指す。そして、もう一つ余韻を残すという意味がある。

この途切れない心を余韻として残す。まるで蝉の抜け殻の様に。この抜け殻を相手に打たせるのが空蝉の極意である。

元の世界でこの技を身に着けたとき、ほとんどの勝負に勝てるようになった。まぁ、勝負といっても不良に絡まれたときに相手の攻撃がまったく当たることがないっていうことだけであるが・・・。


案の定、速攻で木剣を振り下ろしてきた。

木ノ葉流武闘術は体捌きを重視する。木ノ葉流の体捌きは、木ノ葉が風に舞う様子、それから木ノ葉が小川の流れに浮かんで流れる様子。

この二つの様子から編み出された体捌きを『木ノ葉流舞』という。相手と自分の間合いに起こる意識と力の流れを読み、その流れに身を任せて舞う技である。木ノ葉流武闘術の基礎であり極意である。

カイの攻撃を空蝉で左斜め前に少し出ながら左半身になって躱した。カイは俺の横をただ通り過ぎただけとなる。すかさず振り返りながら木剣でカイの頭をコツンと叩いた。もちろん力はほとんど入れずに。

カイが頭を押さえながらビックリして振り向きながら言った。


『なっ!なんで!?いっ、今消えた!?』


身体能力のみに頼った者の正直な反応であった。

それから俺はカイに剣術を教えてくれと頼まれ、教える様になった。


カイが型について質問をしてきた。


「型は何のために覚える必要があるの?」


実戦を重視する者の普通の疑問である。


「技を体に浸み込ませるための反復練習だからだよ。」


「体に浸み込ませる?」


「そう、技は頭で覚えたり、理解しただけではダメなんだ。体に浸み込ませないと勝手に動くようにならないんだよ。」


「う~~ん?」


「実際の戦いのとき、次はこの技を出そうって考えながら出来ないだろ。考えている間に相手の攻撃が来るから、だから日ごろから技の手順を型として覚えておいて、それを反復練習することによって、実際の戦いのときは考えずに体が勝手に動く様になるんだよ。」


「へぇ~~、そんなものかなぁ・・・。」


「実戦を重視する者ほど、型を大切にするんだよ。もちろん、ただ型を覚えて反復運動をするだけじゃダメだ。型を覚えたら次は技の本質を理解しなくてはならない!それを繰り返して学んで行くんだよ。」


しっかりと基礎から教えている状況である。


「ちょっと休憩するか?」


カイが型稽古をやめて近寄ってきた。

柵に掛けていたタオルで汗を拭きながら技についての質問をしてきた。


「初めて手合わせをしたときの消える技?空蝉だっけ?あれを直ぐ身に着けることは出来ないの?」


「出来ないよ。」


「え~、なんで?」


「空蝉は後の先の最終段階だからだよ。」


「そういえば、後の先って何!?」


「相手とのタイミングの計り方って感じかなぁ。流派にもよるけどタイミングには『後の先』と『対の先』と、『先の先』ってのがあるんだよ。この三つのタイミングを覚えるにも段階がある。その段階を飛ばすことは無理なんだ。」


「え~、もしかして出来るかもしれないから教えてみてよ!」


「しょうがないなぁ、じゃあ教えるよ。空蝉は相手に打たれるんだよ。」


「えっ!?打たれちゃうの!?」


「そう、打たれるの。自分を打たせてそれを躱すんだよ。」


「???」

「わかんないよ!もっと解りやすく!」


「無理だなぁ、俺が空蝉で理解しているのはそれだけだから・・・。」

「え~、じゃあ前段階のものを教えてよ!」


「じゃあ、意識闘法を教えよう。相手の体や動きを見るのではなく、相手の意識の先をみて闘うんだ。そうすれば空蝉も陽炎も水鏡も出来る様になるよ。」


「はぁっ?全然わかんない!」


「だろうな!今の段階では解らないってことが判っただろ?まずは型がスムーズにできる様になることが大事だな!最低限、相手の枕を抑えることができないと話にならないから・・・」


「枕を抑える!?・・・枕って寝るときに使う?」

「・・・なんか騙されている気がする・・・。」


カイは怪訝な表情をしながらも型稽古を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ